ゴブリンスレイヤーは明日に迫る『収穫祭』に向けて辺境の街、周辺と少し離れたところにある牧場も含めて罠を仕掛けるなどした防備をする事にした。
少し前に森人剣士と共にこなした鉱山でのゴブリンの群れ討伐の依頼において魔神王の残党かどうかは分からないがゴブリンを兵士として使う者――恐らくは魔術師だろう者の影を感じたから余計に防備を整える事に決めたのだ。
牧場からその先にはゴブリンスレイヤーと幼馴染の牛飼娘の故郷である村もあるのだが、そこはもはや要塞か何かかと言わんばかりんの防備を施しているので問題無い。
ともかく、罠を仕掛けるための材料を調達するために辺境の街の冒険者ギルドへとゴブリンスレイヤーは向かう。
『おはようございます』
冒険者ギルドの前には昨日、ゴブリンスレイヤーの仕事を手伝うと約束した女神官に女武闘家、新米戦士に見習い聖女がいた。
「ああ、おはよう……手伝いを申し出てくれてありがとうな。本当に助かる」
ゴブリンスレイヤーが挨拶に応じて礼を言えば、女神官たちは喜んだ。
そうして、冒険者ギルドの中に入り、武具店へと向かえば……。
「うむむむ……」
重戦士と一党を組んでおり、この前においてはゴブリンスレイヤー達と至高神の神殿がある街でのゴブリン討伐の依頼を重戦士と共にこなした女騎士が品物を見ながら、唸っていた。
女騎士が唸っている品物というのは下着の如き鎧である。
胸当てや籠手、下腹部だけの鎧で部類としては軽装だ。装甲自体も優美な曲線を描き、手が込んで強固である。そうした事に関しては問題無いのだ。
ただ、やはり装甲部位が少なすぎるのが問題だった。なにしろ胸部、正しくは乳房と下腹部にしか装甲が無いのだから。
「野暮かもしれんが、あいつを収穫祭に誘って出歩くなら平服で良いと思うぞ」
「っ、そ、そうか?」
「急にこんなの着ようもんなら、心配されるだけだ」
「だ、だよな……ありがとう」
女騎士が鎧を前に唸っていた理由を察するとゴブリンスレイヤーはアドバイスをする。それに納得したように女騎士は頷いた。
「お、お前達は何を買いに来たんだ?」
女騎士はゴブリンスレイヤー以外にも下着の如き鎧を見て顔を赤らめている女神官に女武闘家、見習い聖女たちがいるのに気づくとわざとらしく、咳をしてゴブリンスレイヤー達へと問いかける。
「罠用に杭と綱を二巻、針金と材木の類、後は円匙の新調だ」
「罠用……何かありそうなのか?」
「どうもゴブリンを魔術師らしき者が兵士の如く使って、何かしようとしているようなんでな」
「助けはいるか?」
「本当に必要な時は頼むかもしれないが、今は大丈夫だ」
「分かった」
ゴブリンスレイヤーに対し、一度問いかけ、返答を聞くと軽く肩を叩いて女騎士は武具店から去った。
そして、ゴブリンスレイヤーは女騎士とのやり取りをしっかり聞いていた武具店の主である老爺から必要な物を購入する。
「それとこんなのはどうだ? 南洋式の投げナイフだが」
「ほう……」
老爺はゴブリンスレイヤーに持ち手から生えた刀身が三本に分かれ、枝葉の如く折れ曲がって伸びているという異様な形状で奇怪な短剣を出す。
「利点は?」
「見てくれはこうだが、あくまでも剣ってところだな。投げると回るから安定するし飛距離も伸びる。刺さるより斬る感じだ」
「そうか……良し、一振り買おう」
こうして、卍字型の投げナイフを買ったゴブリンスレイヤーは背中側に回して腰帯に吊るすと雑嚢とぶつかり合わないように逆手の抜剣を繰り返して位置調整をする。
その後、武具店を出ると食い物の問屋へと向かい、干し魚を樽で三つほど牧場に送るよう注文したのであった。
『(どう、使うんだろう?)』
ゴブリンスレイヤーに問いかければ干し魚も罠に使うというので女神官たちはどう使うのか、疑問に思うのであった……。