ゴブリンスレイヤーは『収穫祭』を行う辺境の街やその周辺にある牧場へ魔神王の残党にして、ゴブリンを配下とする魔術師が襲撃を仕掛けてくるかもしれないと予測しているのでそれに備えるため、罠を仕掛けようとしていた。
必要な物資などは用意しており、ゴブリンスレイヤーは早めに女神官と女武闘家、新米戦士に見習い聖女たちと早めに昼食を済ませると杭、材木、針金、網といった荷物を冒険者ギルドの裏手の訓練場の隅へと移動し、木陰に腰を下ろす。
「良いか、お前達は……」
ゴブリンスレイヤーは腰帯から短剣を引き抜き、杭を削って尖らせていきながら、女神官たちにも指示をして材木に切り込みを入れて曲げていき、網を奇妙な形に結ぶ作業をしていく。
「本当、師匠はこういう細工を良く思いつくよなぁ」
ちゃんとどういう罠のためにこうした作業をするのかを説明すれば、新米戦士は感心したような息を吐く。
「色々と聞いたり、調べたりした結果だ」
そうして、罠を準備していく中……。
「おお、やっとるやっとる」
「ほほう、これまた変わった細工をしているようで」
鉱人道士に蜥蜴僧侶の二人が近づき、声をかけてきた。
そうして、ゴブリンスレイヤー達の隣を借りたいと申し出て、鉱人道士は下敷き代わりの大布を広げて腰を据える。蜥蜴僧侶は抱え込んでいた荷物を紐解き、品を広げていく。
「天灯か」
「流石にかみきり丸は聡いの」
「祭りの風物詩で天に浮くというのを見たくありましてなぁ」
蜥蜴僧侶が品を広げたそれは細くしなやかな竹ひごに色とりどりに染められた薄手の紙と油紙だ。
それからゴブリンスレイヤーは鉱人道士と蜥蜴僧侶が何を作ろうとしているのかを察した。そして、鉱人道士と蜥蜴僧侶は肯定する。
祭りという事で天灯の話題が出て、鉱人道士の地元でも用いられた物であったから鉱人道士が拵えてやろうとしたとの事だ、
「時にこれは、どのような謂れがあるのですかな?」
「儂も外来のもんだからの。天灯は知っとるが、この祭りに使う理由というと……」
「師匠は知ってる?」
蜥蜴僧侶の疑問に鉱人道士は答えられなかった。それにすかさず、新米戦士がゴブリンスレイヤーに質問する。
「俺に聞かなくても其処に専門家がいるだろう」
「えっと、知っているならお譲りします」
ゴブリンスレイヤーは女神官の方を見て言ったが、女神官は苦笑を浮かべながらゴブリンスレイヤーに振った。
「……まあ、良くある類だ。善き魂を導き、悪い魂を放逐する。死者を招き、返す道標。野菜提灯とかと一緒だ」
『おおおっ!!』
ゴブリンスレイヤーが説明すると皆が感心したような声を上げる。
「詳しいの」
「故郷の近くの祭りだ。知らない訳が無いだろう」
「そういう事なら、一層丁寧にやらねばなりませぬな」
「お、鱗の……やる気が出とるの。なら、儂も手は抜けぬの。鉱人一世一代の天灯を拵えてやっか!!」
ゴブリンスレイヤーの言葉により蜥蜴僧侶はやる気を出し、鉱人道士もそれに付き合い始める。
そうして皆で固まって作業をすれば当然、目立つ。
「皆で何を作ってるの」
「随分と大所帯になっているな」
妖精弓手が森人剣士と共に現れて声をかけた。
ともかく、そうしてゴブリンスレイヤー達は準備をしていく。
「皆、助かった。後はもう大丈夫だ」
罠の用意も出来たので解散とする。もう、夜となっていたが……。
「オルクボルグ……一緒にご飯食べましょ。その……色々、話をしたいし」
妖精弓手が顔を赤らめながら、ゴブリンスレイヤーを食事に誘う。
「分かった」
妖精弓手の意図を察して誘いに応じる。
「彼女に応えてやってくれ」
森人剣士はゴブリンスレイヤーの肩に触れながら、小声で語りかけた。
そうして、辺境の街内にある一つの酒場へと向かう。
「オルクボルグ……何も言ったりはしてこなかったけどさ。ちゃんと覚えてるからね……好きよ、優しい貴方の事が……私は好き」
「節操無い、俺をか?」
「でもちゃんとそれぞれに対して応えているじゃない」
「やるべき事をやっているだけだ」
「そんな貴方だからこそよ」
酒場で食事をしながら、これからの関係についての話を交わす。
「えへへ、それじゃあよろしくね」
「ああ」
妖精弓手が酔ったのもあって、酒場の二階の部屋を借り、運ぶと口づけを交わして眠りにつかせた。そうして、食事代は妖精弓手が払うとの事だったので彼女にツケつつ、宿代は払って酒場を去り、罠の用意へと向かうのであった……。