『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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九十話

 

 今日は年に一度、『秋』に開催される『収穫祭』の日である。

 

 そして、祭りとなれば思い思いに楽しむのは只人であろうが、森人であろうが、鉱人であろうが……どんな人種も変わらないし、冒険者や旅人は訪れる地域での祭りを楽しむのも当然変わらないし、祭りを行う地域がそうした者達を受け入れるのも変わらない。

 

 そう、今日は『収穫祭』……辺境の街でも朝からラッパを吹き鳴らし、太鼓を叩き、笛を鳴らし、そうした楽器だけでなく、幾つもの足音や笑い声が混じるなど音は絶えない。

 

 出店の主が声を張り上げ、大道芸が口上を叫び、行き交う人々の声は波のようになっているなど今までより、街は活気に溢れており、賑やかである。

 

 

 

 そして、どの人々も明るく笑っている。

 

「うんうん、やっぱり祭りってのはこうでなくちゃね」

 

「祭りを楽しむのは良いですが、すべき事も忘れないでくださいね」

 

「大事な人に会えて、浮かれているのが丸わかり……」

 

 そんな祭りに混じりながら、勇者に剣聖、賢者である三人の少女たちが街を歩いていた。年齢が若いとあって、この三人が魔神王を倒したなど誰も予想できないし、分かる訳も無い。

 

 

 

 やる事がやる事なので必要以上に注目を受ける事も勇者たちは避けていた。今回も祭りを楽しんでいるとはいえ、世界の危機を解決するためにこの辺境の街を訪れたという事情はあった。

 

 もっとも勇者たちにとって本当に嬉しかったのは『初恋』の相手であるゴブリンスレイヤーに出会えた事である。

 

 

 

 昨日の彼の言動から祭りに参加しているだろうと周囲を見渡しながら探してもいた勇者だが……。

 

 

 

「っ!? あ……」

 

『あ?』

 

 勇者は視線を巡らしているととある者を見つけ、そして声にならない声を出し、それに賢者と剣聖が戸惑った。

 

 そう、勇者が見つけた者とは……。

 

「今日も賑やかだな」

 

「そうだねぇ」

 

 ゴブリンスレイヤーと彼の腕に自分の腕を絡めている牛飼娘であった。

 

「あばばばばばば……」

 

 初恋の相手であるゴブリンスレイヤーが綺麗でスタイルも抜群で立派なドレスを着た女性と親し気に歩いているのを見て、勇者の脳は壊れた。

 

 

「うわ、勇者様が脳破壊された……」

 

「お、お気を確かに……でも、仕方ないですって」

 

 賢者は断じ、剣聖は慰める。

 

 

 

「ぅぅ、追うよっ!!」

 

「そういうの、駄目……」

 

「行動速すぎるっ!?」

 

 勇者はもう訳が分からなくなったまま、とりあえずゴブリンスレイヤーと牛飼娘の後を追う。

 

 

 

 そうして冒険者ギルドまで移動し……。

 

 

 

「やあ、今日は思いっきり楽しもう」

 

「色々とよろしくね」

 

「よろしくお願いします」

 

 そうして、冒険者ギルドの前では森人剣士に妖精弓手と受付嬢がゴブリンスレイヤー達を待っていた。

 

 

 

 

「……こ、これは……」

 

「これは予想外……」

 

「うん、まぁ……うん、こういうのは当人同士が良いなら……」

 

 ゴブリンスレイヤー達の関係に勇者は驚き、賢者もまた、意外な事態に驚き、剣聖は何とも言えない表情で考えつつ、当人たちの問題だと結論を出した。

 

 

 

「良し、これなら僕が入ってもいいよね」

 

『(なんか、失礼なこと言われた気がする)』

 

 女性がたくさんそばにいる事とスタイル抜群な女性ばかりじゃないのもあって、勇者はこれなら自分も混じれると破壊された脳を再構築してゴブリンスレイヤーの元に向かう事にする。

 

 妖精弓手と森人剣士の二人は勇者がスタイル抜群な女性だけをゴブリンスレイヤーが傍に置いていない事に安堵したその思考を察知したのであった……。

 

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