『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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九十五話

 

 暗黒の肌持つ闇人は大量のゴブリンを雑兵にしつつ、混沌の神々からの託宣を使命に『収穫祭』の時期なので気が抜けている人々を儀式の生贄にしようと『辺境の街』とその周辺の村などを襲おうとした。

 

 しかし、村においてはどこぞの城が如くの防備と罠が大量にあったため、消耗も考えて断念。多方向から辺境の街を襲おうとゴブリン達を分散してぶつけた。

 

 そして夜の嵐という襲撃するには絶好の機会の中、闇人は三十のゴブリンを手勢として率いる中、辺境の街から南であり、近くに牧場がある場所を進んでいた。

 

「妙だな……囮とはいえ、こうも連絡が途絶えるとは」

 

 闇人にとってゴブリンの雑兵は囮である。本命は彼の手中にある百手巨人(ヘカトンケイル)の力を宿す呪物に生贄を捧げて百手巨人を覚醒させる事である。

 

 そして、それこそが混沌の神々から受けた託宣であり、使命なのだ。

 

 とはいえ東北西に送り込んだゴブリンの部隊と連絡を取れない事は訝しむ。この牧場とは少し離れた村での防備が厳重であるのもそうだが、かなり悪辣で巧妙に罠が仕掛けられていたのも妙だった。

 

 

 

「私の狙いが気づかれているのか?」

 

 まさか、自分達の事がばれているのかと闇人は思考する。もしばれているならいっそ……。

 

 「否っ!! 賽は投げられているのだ。もはや事ここに至っては前に進むより他ありえぬ!!」

 

 そう、たとえ狙いがばれ、罠が待ち受けようとも行動してしまっているのだから今更後に戻る事は出来ない。

 

 闇人は決断し、牧場を襲いながら辺境の街を攻めようとしたが……。

 

 

 

 

 「む……これは煙幕の類……否、毒煙か!?」

 

 闇人の五感は森人同様に鋭敏であり、その五感が異様な物を感じ取った。

 

 鼻と目に刺さるような生臭い……海の磯の臭いが漂っていた。しかも雑音をも掻き消すような雨風の中で僅かな光さえも遮断する黒い靄が風に乗り、平野を、戦場を覆うように漂い出しつつあった。

 

 

 

「ち、い……おのれ、冒険者の癖に味な真似を!!」

 

 闇人は口元を隠したが、ゴブリン達は煙によって目から涙を流しつつ、呻き出した。

 

 そして、次の瞬間には煙の臭いなど物ともしない白き骸骨兵士が飛び出し、ゴブリン達を薙ぎ払い出すのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴブリンスレイヤーは牧場の外れにある小さな煉瓦造りの小屋にて窯を使い、干し魚を燻し、それによる煙を鉱人道士の簡単とはいえ、風寄せのまじないで風勢を増させたり、納屋にあるゴブリンスレイヤーの武器を借りた二体の≪竜牙兵≫をゴブリンとゴブリンを指揮する者へと向かわせたりしていた。

 

「そろそろ術を撃ってくるかもしれない。頼むぞ」

 

「はい」

 

 女神官へとゴブリンを指揮する者は術者だと予測しているのでそれに備えさせるための指示を出す。

 

 そうして、少しすると女神官は動き……。

 

「≪いと慈悲深き地母神よ、か弱き我らを、どうか大地の御力でお守りください≫!!」

 

 「≪万物(オムニス)……結束(ノドゥス)……解放(リベロ)≫!!」

 

 女神官が不可視の結界を張った直後、迸る白光が戦場を貫き、梅雨を払い、竜牙兵を打ち砕き、ゴブリン共を巻き込んで塵芥へと変えながら突き進む。

 

 

 

 しかし、女神官による不可視の結界にぶつかると……。

 

 

 

「くっ、ぅぅ……」

 

「おっと……」

 

 精神的衝撃余波に倒れようとした女神官を森人剣士が抱き止める。

 

「良くやった……≪トニトルス(雷電)……オリエンス(発生)……ヤクタ(投射)≫!!」

 

 ゴブリンスレイヤーは女神官を褒めると白光が来た方向に指輪を付けた腕を向けながら、≪稲妻(ライトニング)≫の術を放った。

 

 

 

 それはゴブリンスレイヤーの全力の魔法であり、よって先程の光よりも遥かに極大規模な稲妻がゴブリンの群れと術師たちへと向かっていく。

 

「(勇者がいたとでもいうのか……おのれぇぇぇぇぇぇぇっ!!)」

 

 どうにもならず、闇人とゴブリンの雑兵は稲妻に呑まれ、消滅する事となったのであった……。

 

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