クラフトは不滅である   作:最高司祭アドミニストレータ

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落ち着いて聞いてください。私、作者は…お客様よりプレゼントされたワインで酔ってます! 押しに弱いのが災いしたか…ッ。

お客様「おお、今日も君は綺麗だねェ」

そんなことより酔い止m…あっ(作者は天国を見た


オフロードのクラフト

「うわー! 見てアレックス! この土の色、変態的に赤くない!? 大陸の成り立ちが地層から読み取れるみたいで、もう最高! ごめん、つい興奮しちゃって!」

 

 

 皆さんごきげんよう! わたしは、マインクラフターのアレックス! 親しみを込めて、「美少女のアレックス」とでも呼んでくれても構わんぞ。

 

 諸君、今日は実に喜ばしい、記念すべき一日となった。ついに南米大陸エクアドルに上陸したから? 否! 違うぞ…間違っているぞ、C.C.! ……久しぶりにその名を呼んだ気がするな。しかし、一体誰なんだ、C.C.とは? 流石のわたしも3700年も生きていると、記憶の混濁が起きるのかもしれない。

 

 寿命という枷がなく、疲労とも縁なマインクラフターが売りのはずだが。イニシャルだけの人間など、この世界に存在する訳がないというのに。

 

 

「ねぇねぇアレックス! 何ぶつぶつ言ってるの? もしかして新しいクラフトのアイデア!? その集中力、変態的だね! さいこう!」

 

 

 おっと、話が大きく逸れてしまった。我々科学王国に、Dr.チェルシーという、とてつもなく有能な地理学者が新たに仲間として加わったのだ。彼女もまた、自らの力で石化から復活を遂げた、いわゆる自力復活者の一人だ。

 

 その快活な緑の瞳と、探検家のようなカーキ色の服、そして何よりトレードマークであるカボチャを模した帽子が印象的な少女で…フッ。すまない。一瞬、彼女のとある部分を思い出してしまい、「ちっさw」と、つい失笑してしまった。己のとある部分と比較すると、どうも優越感をな。どうか許してほしい。

 

 

「ん? どうしたのアレックス? 私の顔に何かついてる? それともこのカボチャのヘタの角度が変態的にキマってるとか!? ごめん、よくわかんないけど!」

 

 

 しか〜し! 失笑したのは、ほんの一瞬、ほんの一点に関してだけだ。それ以外の部分、特に彼女の頭脳に関しては「ちっさw」どころか、「デッカ!?」と叫ばざるを得ない。正真正銘の天才なのだよ、彼女は。何せ、あのDr.ゼノにして「頭の中に地球が丸ごと収まっている」と言わしめるほどの、傑出した地理学者なのだから。

 

 その独特すぎる喋りのクセは、彼女が過去に執筆した論文でも遺憾無く発揮されているらしいが、その内容のレベルがあまりにも高次元であるため、学会でも許容されていたというのだから驚きだ。14歳で大学に飛び級で入学し、地理学を専攻。16歳の頃には、その独特な文法と高度な内容を併せ持つ論文が大きな話題となり、世界中の研究会に引く手数多だったという。

 

 そして、輝かしい未来が約束されていたであろう18歳の時。あの忌まわしき光によって、石化してしまった。

 

 

「えへへ、そんなに褒められると照れるじゃん! でも論文の文法はマジで変態的だってよく言われたなー! ごめん、お行儀悪くて!」

 

 

 偽り無しの天才…なのだが、どうやら致命的な弱点もあるらしい。スイカと同じ、極度の近眼なのだ。我々が彼女を発見する少し前、ゼノが科学王国の仲間を探すために立てた「Dr.チェルシー、北に来てくれ。拠点で待っているよ from Dr.ゼノ」というメッセージボードすら、彼女の目には映らなかった。

 

 結果、彼女は自ら「北か南か…ええい、こっちだ!」と二択問題を己に課し、そして見事に…南へ向かったという。「メガネないと見えないよ、私? アハ!」とは彼女の言だが、それは紛れもない事実だったようだ。一体どうやって、その視力で一年もの間、この過酷なストーンワールドを生き延びてこられたのか。ある意味、そのサバイバル能力には感心するものである。

 

 

「いやー、あの時はマジでさいあくだったよ! でも南に行ったからこそ、変態的に珍しい地衣類を発見できたんだから結果オーライだよね! ごめん、ポジティブすぎ!?」

 

 

 ちなみに、そんな彼女がなぜ南米にいたかというと、千空が科学の復活を発信するためにネット上に残した膨大な書き込みと、そこに記されていたツバメの石像の話。その情報から、ツバメの地理的分布を照らし合わせ、石像ツバメが本物であるという統計を導き出し、その専門家会議に呼ばれていたから、とのことだった。

 

 

「そうそう! 千空の書き込み、熱量が変態的すぎて一発で本物だってわかったよ! ツバメの分布と照らし合わせるの、最高に楽しかったな〜」

 

 

 では、我々がどうやって彼女を発見したかと言うと…これがまた、壮大な一幕だった。彼女は「助けて」を意味する「HELP」の文字を蓄光塗料で描いた、巨大な凧を夜空に揚げていたのだ。闇夜にぼんやりと光る巨大な物体が空に浮かんでいるのを発見した時、船上は一時騒然となった。ホワイマンの新たな攻撃かと勘違いし、誰もが息を呑んだものだ。

 

 

「美少女のアレックス! いよいよ石化光線が見えるように!?」と、わたし自身、本気で身構えてしまった。いやほんと、マインクラフターまで石化されるなんて事態は、洒落にならないぞ。幸い、それは杞憂に終わり、我々は無事に彼女を保護することができた。目が視えない問題は、スイカや金狼と同じく、ゼノが作り上げたレンズを研磨した特製のメガネで、あっさりと解決した。

 

 

「あの凧、変態的にデカかったでしょ!? 蓄光塗料の配合、めっちゃ頑張ったんだから! ホワイマンと間違えられたのはごめん! でも目立って最高だったよね!」

 

 

 メガネをかけた彼女が最初に見たのは、わたし達が作り上げた船だった。その時の歓声は、今も耳に残っている。彼女のコミュニケーション能力は異常に高く、ほぼ初対面であるはずのゼノに対して「あ! ゼノじゃん」と旧知の友のように指を指したほどだ。チェルシーの中では、過去に国立公園の有識者会議の前日にチラっと見かけただけで、もう「仲良し」の判定になるらしい。

 

 挨拶を交わせば、皆が仲間。実にシンプルな基準だ。「凄い」という言葉を「変態」に言い換えるのが彼女の口癖で、「みんなメンタル変態すぎさいこう‼︎」「超見える! 変態! 変態的に見える‼︎」と、常にハイテンションだ。誰彼構わずこの調子なのだが、そこに一切の悪意がないため、誰も彼女を怒ったりはしない。一応、自分でもお行儀が悪いという自覚はあるらしく、すぐに謝るスタイルも彼女らしい。

 

 

「だって挨拶したらみんな仲良しじゃん! ゼノのオーラ、変態的にエレガントだったからすぐわかったよ! この船もゼロから作ったとか、みんなのメンタル変態すぎ最高!! 創造主マジやばァ」

 

 

 さてさて〜っと! 新たな仲間も加わったことだし、感傷に浸っている暇はない。南米大陸の踏破には、新たな乗り物が必要不可欠だ。この、見渡す限り岩と砂ばかりの荒野を走破するため、オフロードバイクとオフロード車のクラフトを大至急で進めねばな。何よりも、千空たちが既に着手しているのだ。科学のトップランナーが走っているというのに、わたしが手を貸さなければ、マインクラフターの名折れというものだ。

 

 

「オフロードバイク!? 何それ何それ!? 岩だらけの荒野を走るための乗り物!? 発想がクレイジーすぎ! そんなの考えつく千空もゼノも、やっぱり頭の中が変態だね! さいこう!」

 

 

 思えば、この乗り物のクラフトは、はるか洋上から始まっていた。この機械の脚となるタイヤ、その材料を手に入れるのも、決して楽な道のりではなかったな。南米へ向かう航海の途中、我々はゴムを確保するためだけに、海図にも載っていない熱帯の島へと立ち寄ったのだ。むわりと肌に纏わりつく湿気と、生命が過密に凝縮されたような濃い緑の匂い。鬱蒼と茂るジャングルの中、わたし達技術開発部の仲間たちと共に、目的の木、パラゴムノキを探し回った。

 

 …わたし達マインクラフターは例外で、むわりと肌に纏わりつく湿気は感じなかった。さ、寂しくなんかないんだからね! 

 

 

「うわっ! これがゴムの元なの!? なんかミルクみたいで美味しそう…じゃないか! ごめんごめん! このドロっとした液体があの強靭なタイヤになるって、想像しただけでワクワクが止まらないんだけど!」

 

 

 文明が滅びたこの世界では、一つ一つの素材が、文字通り宝探しだ。やがて、特徴的な三枚葉を持つその木を発見すると、わたし達は慣れた手つきで、その幹にナイフでV字の切り込みを丁寧に入れていく。すると、まるで樹木の白い血液のように、切り口から乳白色の液体が、とろりと滲み出てきた。

 

 これが天然ゴムの原料となる、ラテックスだ。わたし達はその下に粘土を焼いて作った容器を設置し、一滴また一滴と貴重な樹液を辛抱強く集めてい…いやそんなことなかったぞ? 技術開発部による採取で大量ゲットしたわけだし。数日間かけて集めたこともなかった。

 

 何であれラテックスは、この先のクラフトに欠かせない、まさに文明復興の血液だった。

 

 そして今、我々はエクアドルの乾いた大地の上で、その集大成ともいえる壮大なクラフトに挑んでいる。作業場には、活気と熱気が渦巻いていた。千空の脳内にある100億通りの設計図の中から最適解として導き出された青写真を元に、カセキの真っ赤に焼けた___という設定のただの鉄塊___を鍛え、力強いフレームを組み上げていく。

 

 オッホー! という雄叫びと共に振り下ろされるハンマーの一撃一撃が、ただの金属に生命の骨格を与えていくようだ。

 

 

「うわー! 見てアレックス! カセキの筋肉、変態的に動いてない!? ただの鉄の塊があんな芸術的なフレームになるなんて、もう最高! ごめん、つい興奮しちゃって!」

 

 

 その隣ではクロムが「ヤベェ! なんだこの形!?」と目を輝かせながら、山と積まれた鉱石の中から不純物の少ないものを選別し、部品の整理を手伝っている。彼のその尽きない好奇心は、時に思わぬ発見をもたらす起爆剤となる。不純物なんぞゼロだが、それは野暮だろう。

 

 

「クロムもヤバいね! ただの石っころ見てあんなにキラキラした顔できるなんて、探求心のベクトルが変態すぎ! そういうの、地理学者的にさいこうにそそるよ!」

 

 

 そして、わたし達マインクラフターと技術開発部は、この機械の心臓部、エンジンやギアといった超精密なパーツの大量生産と、全体の組み立てを担当する。鉄鉱石を炉で溶かし、不純物を取り除いて___という設定___強靭な鉄のインゴットを作り出すように、この世界のありふれた資源から、文明の利器を一つ一つ創造していくのだ。

 

 

「何これ何これ!? このちっちゃい金属のパーツたち、全部手作りなんでしょ!? 信じらんない! この精度、変態的すぎるよ! 私の脳内地球儀もビックリだわ!」

 

 

 内燃機関、すなわちエンジン。その原理は、制御された連続爆発に他ならない。燃料と空気を混ぜた「混合気」を密閉されたシリンダーの中に送り込み、火花で点火する。すると、混合気は爆発的に燃焼し、その膨張する力で内部のピストンを猛烈な勢いで押し下げるのだ。

 

 このピストンが押し下げられる直線的な運動を、クランクシャフトという巧みな機構が、くるくると回る回転運動へと変換する。

 

 

「っていうかさ、みんなの作業スピード、人間やめてない!? 流石はマインクラフターだね! 技術開発部の人たち、同じパーツを寸分違わず無限にクラフトしてるし…連携が変態的にスムーズすぎて、一つの巨大な生き物みたい! 見てて飽きないよ、マジで!」

 

 

 その回転が無数の歯車、ギアを通じて最終的に車輪へと伝わる。言葉にすれば単純な原理だが、その実現には、ガス漏れ一つ許されない、ミクロン単位の精密な加工技術が要求される。わたし達は、鋳造した鉄のブロックから、寸分の狂いもない完璧な円筒を削り出し、その中を滑らかに動くピストンを、何度も何度も研磨して作り上げた。作業台? 何それ美味しいの? 

 

 

「え、ちょっと待って! 中でちっちゃい爆発を連続で起こして動かすってこと!? 発想がクレイジーすぎ! そんなの考えつく千空もゼノも、やっぱり頭の中が変態だね! さいこう!」

 

 

 燃料を霧状にして空気と混ぜ合わせるキャブレター、点火の火花を飛ばすためのスパークプラグ。粘土を焼き固めて作ったセラミックの絶縁体に電極を取り付け、磁石とコイルで発生させた高圧電流を流す。全てがゼロからのクラフトだ。一つ一つの部品が、科学の法則という名の設計図通りに組み合わさり、やがて一つの生命体として機能し始める。

 

 

「うわっ、何この匂い!? これがガソリン!? 可燃性の液体をわざわざ作って、それをエンジンの中で爆発させるなんて…正気の沙汰じゃないよ! 科学って、時々最高に変態的なことするよね! ごめん、鼻が曲がりそうだけど興奮はする!」

 

 

 よし! 寸分の狂いもなく組み上げられたエンジンがフレームに搭載され、車体はほぼ完成した! あとは、あの島で手に入れた文明の血液とも言うべきゴムで、この機械に大地を掴む脚、タイヤをクラフトしてやるだけだ…っと。

 

 わたしは大事に保管しておいたラテックスの樽を開ける。乳白色の液体は、まだ甘い樹液の香りを放っている。このままでは、ただの粘り気のあるベタベタした液体に過ぎない。これを強靭なタイヤへと変えるには、科学の魔法が必要不可欠だ。

 

 まず、この液体からゴムの成分だけを取り出す。わたしはラテックスに、発酵させて作った酢酸、つまりお酢を少量加える。すると、液中に分散していたゴムの微粒子がみるみるうちに繋がり合い、おぼろ豆腐のように白く凝固し始めた。水分とゴムの成分が綺麗に分離した瞬間だ。この凝固した生ゴムの塊を取り出し、二つのローラーの間に挟んで、水分を絞り出しながら薄いシート状に引き延ばす。

 

 

「見て! お酢入れたら一瞬でお豆腐みたいになった! 化学マジックじゃん! こういう目に見える変化って、地理的な地殻変動とは違うベクトルの変態さがあって、もう最高にクール!」

 

 

 次にこの作業の最も重要な工程、科学者チャールズ・グッドイヤーが発見した奇跡、「加硫」だ。出来上がったばかりの生ゴムは、夏の暑さでベタベタに溶け、冬の寒さでカチカチに硬化してしまう、非常に気まぐれで不安定な素材だ。この致命的な欠点を克服するため、わたしは硫黄の黄色い粉末をシート状の生ゴムに均一に練り込んでいく。

 

 

「へぇー! あの黄色い粉がキモなんだ! ゴムと硫黄が出会って最強になるって…なにそれ、運命の出会いみたいじゃん! ロマンチックすぎて逆に変態! ごめんね、変なこと言って!」

 

 

 そして、それを密閉可能な鉄製の釜の中に入れ、高圧の水蒸気で一気に加熱するのだ。この熱と圧力によって、ゴムを構成する長い鎖状の分子(ポリマー)の間に、硫黄の原子が橋を架けるようにガッチリと結合し、強固で立体的な網目構造が形成される。これによって、ゴムは驚異的な弾力性と強度を獲得し、温度変化にも揺るがない、安定した工業製品へと生まれ変わる。まさに、科学が生んだ錬金術だ。

 

 

「分子と分子の間に硫黄が橋を架ける…!? 何そのミクロの世界の超巨大建築! 変態的スケール! それってつまり、ゴムの分子たちが手と手を取り合って最強のチームになるってこと!? うわー、エモくて最悪ゥ…じゃなくて最高!」

 

 

 わたしは加硫を終え、黒く、逞しく生まれ変わったゴムを、あらかじめ砂で型取りして作っておいたタイヤの鋳型へと押し込む。オフロード走行を想定し、深く、そして複雑な凹凸が刻まれたトレッドパターンの鋳型だ。再び加熱し、圧力をかけて成形する。冷却後、鋳型から慎重に取り出されたそれは、見慣れた黒い輝きを放ち、大地を力強く掴むためのトレッドパターンが刻まれた、紛れもないタイヤそのものだった。

 

 

「キターー!! 完璧なオフロードタイヤじゃん! この黒光りするフォルム、力強いトレッドパターン。もう全部が変態的に美しい! これでどんな悪路も走れるって考えただけで、アドレナリンがヤバい!」

 

 

 ふふ、出来たぞ…オフロードバイクとオフロード車の完成だ! かつて黄金の稲穂が文明の心臓たるコーンシティーを築いたように、この黒い円環は、荒野を駆ける我々の新たな脚となるだろう。未知なる大地への挑戦は今この瞬間、確かな一歩を踏み出したのだ。

 

 …しっかしなァ。

 

 

「バイクも車も、マジでゼロから作っちゃったんだ…! 皆の知識と技術を結集した、動く科学の結晶だね! この変態的な乗り物で南米大陸を駆け抜けるなんて、最高にクレイジーな冒険が始まるじゃん! あ〜もう、ごめんうるさくして! でも最高!」

 

 

 元気あって何よりだが、正直うるさいな。わたしの剣が君をグサしそうだァ…牛乳でも飲んでも精神安定させよっと。




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