クラフトは不滅である   作:最高司祭アドミニストレータ

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落ちついてください。あなたの反応は正常です。ひとまず、まずは久々の本編をご覧ください。


南米大陸
再戦


 南米大陸。アマゾン川流域に急造された、広大な拠点。その海岸線には、異様な光景が広がっていた。

 

 鋼鉄の巨体が、ずらりと並んでいる。90式戦車が百両。いや、それ以上か。更にその後方には、自走榴弾砲や多連装ロケットシステムが、まるで鉄の森のように林立している。旧時代の、いや、21世紀の地球ですら、これほどの機甲部隊が一つの海岸線に集結することは稀であろう。

 

 その全ての主砲は、静まり返った海に向けられている。まるで、深淵の底から現れるであろう神話の怪物を待ち構えるかのように。兵士たちの間に緊張はない。彼らにとって、これは戦争ですらないのだから。ある種の祭りであり、壮大な建築の前戯なのだ。彼らはただ、待っている。

 

 再びこの地に現れるであろう、漆黒の絶望を。奴を、今度こそ完全に沈黙させるために。

 

 その時だった。

 

 水平線が、不自然に盛り上がる。まるで巨大な何かが、海底から浮上してくるかのように。水面が大きく割れ、轟音と共に海水が天高く噴き上がった。

 

 そして、その水煙の中から、ゆっくりと姿を現す。

 

 八本の長大な機械脚。濡れて鈍く光る漆黒の装甲。そして、八つの赤い単眼光を不気味に明滅させる、巨大な球形の頭部ユニット。

 

 悪夢の再来。機動要塞デストロイヤーが、再びその姿を現したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■□■□■□

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「報告します! レーダーに感あり! 奴です、奴を確認しました! パターン青、間違いありません! 前回観測されたエネルギー反応と完全に一致!」

 

 

 初代石化装置の内部を改装して作られた、広大な司令室。そのオペレーター席で、杠が緊張の面持ちで叫んだ。

 

 

「こちらでも捉えたわ! 現在目標は、太平洋上に設定された防衛ライン『L-2』を突破。時速40ノットでこちらに進行中です! やる気満々じゃないのォ、あの子!」

 

 

 同じくオペレーター席で、北東西南がモニターを睨みつけながら、どこか楽しげに報告を続ける。

 

 

 

「目標の視覚情報を捕捉。主モニターに回します! 皆さん、心してご覧ください!」

 

 

 杠の指がコンソールを叩くと、司令室正面の巨大スクリーンに、海から上陸し、こちらへ向かってくるデストロイヤーの姿が鮮明に映し出された。

 

 

 皆さんごきげんよう! わたしはマインクラフターのアレックス! 科学王国では創造主なんて呼ばれてるけど、気軽にアレックスちゃんと呼んでくれたまえ! もしくは区別のためにゼロワンちゃん、とかね! いやはや、まさか二度目のお披露目があるとは。これもひとえに、わたしの好奇心のおかげってワケだ! 

 

 

「やあ、久方ぶりだね。相変わらずエレガントとは程遠い、無骨なデザインだ。もう少し曲線美というものを理解してほしいものだよ。まあ、破壊しがいがある、という点においては満点を与えてもいいけれどね」

 

 

 司令官席の隣。副司令官の椅子に深く腰掛けたゼノが、優雅に脚を組みながらスクリーンを見上げて言った。

 

 

「クククッ、嗚呼、間違いねえな。その気色悪いツラ、忘れようもねえ。正真正銘、俺たちがあのアメリカでぶっ倒した──機動要塞デストロイヤーだ」

 

 

 司令官席に座る千空が、不敵な笑みを浮かべてスクリーンを睨みつけた。

 

 

 まさかまさか、初代石化装置のコンソールにあった、あの真っ赤なホログラムボタンを押したら、即座に月面のホワイマンとやらに緊急信号が送られて、デストロイヤー君が遥々太平洋を越えてこちらにやって来るとは、夢にも思わなかった。いやホントに。

 

 だって、押してくださいって言わんばかりに輝いてたんだもん。マインクラフターたるもの、怪しいボタンは押すのが礼儀だろう? 結果、こうして再戦の運びとなったワケだが、まあ、結果オーライだ。うん。

 

 それにしても、奴の狙いは一体何なんだろうか。わたしが信号を送ったから、その発信源であるこの初代石化装置そのものが目的なのか? 内部に侵入して、何かをしようと? それとも、わたしというボタンを押した不届き者を排除しに来たのか? 

 

 正直、全くわからん。知らんけど。

 

 まあ、一つだけ確かなことがある。それは、前回のアメリカでの戦いとは、状況が全く違うということだ。あの時は、正体不明の敵に対する、全くの手探りの防衛戦だった。だが今回は違う。わたしたちは奴の能力を──あの忌々しいエネルギーシールドの存在を知っている。そして、一度は奴を打ち破った経験もある。

 

 何より、あの時はまだ科学王国とアメリカ科学王国が合流したばかりで、どこかぎこちなかった。でも今は、完全に一つのチームだ。科学とクラフト、そして日米の頭脳が、このNERVもどきの司令部で完璧に融合している。

 

 勝てる。いや、勝つ! 

 

 

「司令! 第一次攻撃部隊より入電! 『お祭り始めます』とのことよ!」

 

 

 ミナミがヘッドセットを押さえながら報告する。いよいよ、饗宴の始まりだ。

 

 

「こちらでも確認! 海岸線に展開した戦車部隊、一斉砲撃を開始しました! 上空からは、軍事部所属のAH-64アパッチ部隊が対戦車ミサイルを撃ち込んでいます!」

 

 

 杠の報告に、司令室の空気が震えた。

 

 

「派手にやっているね。願わくば、我々が支払うことになるであろう、莫大な税金の無駄遣いにならないとよいのだが。一発撃つごとに、コーンが何トン消えることやら…」

 

 

 ゼノがやれやれと肩をすくめる。

 

 

「クククッ、心配はいらねえよドクター。テメーの税金は1ドラゴたりとも使っちゃいねえ。ありゃ全部、クラフターどもがタダでクラフトしてくれたもんだ。無料だ、無料!」

 

 

 千空が歯を見せて笑った。

 

 

「ふふっ、そうだね。全く、彼らの生産性には驚かされるばかりだよ。…しかし、やはり前回のゼノゲリオンと違って、通常兵器ではあのシールドを破るのは難しいようだね」

 

 

 ゼノの言葉通り、スクリーンの中のデストロイヤーは、無数の砲弾とミサイルの嵐の中を、涼しい顔で前進していた。

 

 

 戦車にヘリ、攻撃機。ありとあらゆる兵器が、デストロイヤーに牙を剥いている。その光景は、まるで一大戦争映画のクライマックスシーンのようだ。

 

 当然ながら、それら兵器に搭乗しているのは、全員がマインクラフター。わたしたち創造主だ。千空やコハクたちと、わたしたち創造主の最大の違い。それは、死んでもリスポーンできる、という一点に尽きる。

 

 銃弾に撃ち抜かれようが、ミサイルの爆風に吹き飛ばされようが、戦車ごと踏み潰されようが、関係ない。数秒後には、あらかじめ設定しておいたベッドの上で、ピンピンした姿で復活するのだ。まさに不死身の軍隊。だからこそ、彼らは躊躇というものを知らない。恐怖という感情を忘れている。

 

 目の前の巨大な敵に対し、損害を一切度外視した、狂気ともいえる波状攻撃を仕掛けることができる。

 

 

 何度でも蘇るさ! 

 

 

 どこかの海賊が言ったセリフだったか。いや、ラピュタの王だったか。まあ、どっちでもいい。わたしたちの場合は、本当に蘇るのだからタチが悪い。

 

 あっ、見ろ! 後方から、見慣れない砲撃が始まったぞ。放物線を描いて飛んでいく、四角いブロック。あれはTNTキャノンだ! 

 

 レッドストーン回路を駆使して作られた、マインクラフターの伝家の宝刀。着弾と同時に凄まじい爆発を引き起こし、地形すら変えてしまう破壊の化身。一個師団どころか、一個旅団規模の火力が、今この瞬間にデストロイヤーへと叩き込まれている。

 

 近代兵器とマイクラ兵器の狂演。これぞ、科学とクラフトが融合した、新生科学王国の全力! 

 

 

「総力戦だ! 火力が足りん! 予備の戦車も自走砲も、全部前線にあげろ! 弾を撃ち尽くすまで撃ち続けろォ!」

 

 

 指揮席に座る軍事部のアレックス(02)が、軍刀を振り回しながら檄を飛ばす。

 

 

「何やってんだい! 攻撃が浅いぞ! あの図体だ、どこに当たっても同じだろ! もっとだ、もっと撃ち込ませろやァァァァ!!」

 

 

 同じく指揮官席にいる海賊部のアレックス(05)が、双眼鏡を覗きながら怒号を響かせる。

 

 

「出し惜しみは無しだ! 全兵力、全火力を一点に集中させろ! 何としてでも、目標をこの海岸線で潰せ!」

 

 

 裁定部のアレックス(04)が、冷静な声で命令を下す。その手の中で、握りしめられた鉛筆が、バキリと音を立てて砕け散った。

 

 

 攻撃は、さらに激しさを増している。これ幸いにも、この司令部は、わたしが発見した初代石化装置の内部を、皆で大改装して造り上げた特設施設だ。モチーフは、もちろんNERV司令部。旧世界の有名なアニメに出てきた、あの地下要塞である。

 

 壁も床も天井も、すべてMinecraftの世界から持ち込んだ、非常に頑丈なブロックで構築されている。そこらのブロックより硬い石レンガは当然として、司令室の最重要区画は、ダイヤモンドの次に硬いとされる黒曜石ブロックで覆われている。核攻撃にだって耐えられるかもしれない。

 

 だから、外でどれだけ派手な戦闘が繰り広げられても、この司令部はびくともしない。大丈夫、大丈夫。

 

 …ただ、一つだけ懸念がある。

 

 もしかして、デストロイヤー君が怒っているのって、わたしが彼の(?)ご神体ともいえる初代石化装置を、勝手にアニメの聖地みたいに魔改造したからだったりして…? 

 

 だとしたら…ごめん~ね! 

 

 でも、仕方ないじゃないか。こんなに広くて、天井も高くて、SFチックな空間を見つけたら、秘密基地にしたくなるのが人情ってものでしょう? しかも、千空もゼノも、ノリノリで設計図を描いていたんだから、わたしだけのせいじゃない! 

 

 それに、この司令部、性能は本家以上だ。マインクラフターたちの建築思想闘争を経て、最も効率的で、最も機能的で、そして最もロマン溢れる設計になっているのだから、むしろ感謝してほしいくらいだ。

 

 

「何故だ!? 総弾着、目標に直撃のハズだ!! これだからシールド持ちの敵はっ…!!」

 

 

 最前線のアレックス(02)が、忌々しげに叫ぶ。

 

 

「何をうろたえている! たかが一個師団がやられただけだ! まだまだ駒は残っているだろう!? 倍プッシュで次の師団を投入しろ! 奴がシールドを解くまで、無限に兵を送り込み続けるんだよ!」

 

 

 アレックス(05)が葉巻をふかしながら、非情な命令を下す。

 

 

「待て…おかしいぞ。前回のアメリカ戦と違って、TNTキャノンの攻撃が、微かだが通っている…? どういうことだ…? シールドの性質が変わったのか? それとも…」

 

 

 アレックス(04)が、戦況モニターに映る微細なエネルギーの揺らぎを見逃さず、鋭く分析する。

 

 

 まあ、仕方ないってやつだ。皆、とにかくノリノリだったんですよ。この再戦が決まった瞬間から。

 マインクラフターも科学王国の人間たちも、まるで遠足を心待ちにする子供のように、目を輝かせて準備を進めてきた。

 

 マインクラフターたちは自らの建築意欲と破壊衝動を十全に発揮できる、最高の「遊び場」の出現に歓喜した。前回はアメリカという他人の土地だったが、今回は自分たちが開拓した土地だ。遠慮はいらない。地形が変わるほど、派手にやればやるほど喝采される。彼らは、競うようにして新兵器をクラフトし、要塞を建築し、そして今、狂ったように敵に突撃している。

 

 

 一方、科学王国の人間たちも負けてはいない。千空やゼノを筆頭に、科学王国民たちはデストロイヤーという最高の研究対象を前に、暗黒面の笑みを浮かべていた。未知のテクノロジー、解析不能なエネルギーシールド。それは彼らにとって、恐怖ではなく、解き明かすべき知の頂。この戦いは、彼らにとって壮大な公開実験なのだ。

 

 その熱狂が、この司令部に奇妙な一体感を生んでいる。そのためか、皆、それぞれが思い描く「司令部ごっこ」の役を完璧に演じている。千空は冷静沈着な司令官。ゼノは皮肉屋の副司令官。杠とミナミは優秀なオペレーター。そして、前線のアレックスたちは、勇猛果敢な現場指揮官。

 

 これは、科学王国という一つのチームが総力で挑む、最高のエンターテインメントなのだ。

 

 司令室の片隅で、アレックス(04)がおもむろに黒電話の受話器を取る。誰からの電話なのか、回線は繋がっているのだろうか。

 

 

「…はい、こちら裁定部。……ええ。……確認しました。予定通り、プランBを発動いたします」

 

 

 彼女は静かに受話器を置くと、こちらに向かって小さく頷いた。

 

 おっ、スクリーンの中で変化があった。デストロイヤーに突撃していた地上部隊と航空部隊が、一斉に後退を始めたぞ。…ん? 全機じゃない…? 

 

 

「報告します。地上部隊ならびに航空部隊、半数が退避命令を無視。依然、目標への攻撃を継続中です。…全く、作戦というものを理解しているのでしょうか」

 

 

 ブリッジで戦況を見守っていたキリサメが、絶対零度の声で、しかしどこか軽蔑を込めて報告した。

 

 

「ふふっ、実に彼ららしいじゃないか。命令よりも、己の衝動に忠実。エレガントだね」

 

 

 ゼノが面白そうに目を細める。これは、彼なりの褒め言葉だ。

 

 

「クククッ、言うこたァ聞かねえ、死ぬのも怖くねえ。テメーら創造主ほど、兵隊に向いてねえ連中もいねえな。まあ、だからこそ使えるんだがよ」

 

 

 千空が、やれやれと首を振りながらも、その口元は笑っていた。

 

 

 おいおいおい! あいつら、本当に死んだわ。半分も作戦無視して突っ込むとか、アホの極みでしょ。

 

 プランBってのは、要するにアレだ。皆が一旦引いたところで、ドカンと一発、デカいのをお見舞いするって作戦だったのに。

 

 あれじゃあ、味方もろとも木っ端微塵じゃないか。

 

 まあ、リスポーンするから問題ない、って言われたらそれまでだけど。それにしても、もう少し協調性というものをだな…。

 

 ああ、でも、あれはあれで陽動としては最高か。残った部隊にデストロイヤーの注意が向いている隙に…。

 

 

「N2地雷、起爆を確認しました!」

 

 

 ミナミの鋭い声が響く。

 

 

「す、凄い…! 衝撃波が来ます! 全員、衝撃に備えてください!」

 

 

 杠が叫ぶと同時に、司令部が地響きのように激しく揺れた。

 

 

「…目標地点、完全に消滅。デストロイヤーを中心に、半径500メートルが巨大なクレーターと化しています。…ですが、目標は…健在です」

 

 

 揺れが収まった後、キリサメが信じられないといった様子で報告した。

 

 

 N2地雷。それは、技術開発部と軍事部が、この日のために共同でクラフトした、とっておきの切り札だ。

 もちろんその威力テストは、安全な〈くらふたーのせかい〉で行われた。あいや、テスト目的で創造したばかりの〈オーバーワールド01〉でやったんだっけ。

 

 平原のど真ん中に設置された、たった一個のブロック。それを起爆させた瞬間、世界が光に包まれた。轟音と共に、凄まじい爆発が巻き起こり、周囲の地形が文字通り消滅した。ワールドに多大な負荷がかかり、観測していた多くの創造主が、その衝撃で回線落ちするか、あまりのことに笑いすぎてリスポーンしてしまったほどだ。

 

 もちろん、破壊された土地は、その後みんなでせっせと土ブロックを敷き詰めて元通りにした。ワールドデータに傷をつけるのはご法度だからな。手作業での整地は骨が折れるが、あの爆発の快感を思えば、安いものだ。あれはクセになる。

 

 そんな、ワールドすら破壊しかねない切り札が、現実世界で炸裂したのだ。

 

 

「馬鹿な…! あの威力で倒せないだと…!? 私の計算では、シールドごと蒸発させるはずだったのに…!」

 

 

 アレックス(02)が、指揮官席でわなわなと震えている。

 

 

「ちっ…! やはり、通常空間での爆発じゃ、威力が減衰しちまうのか…! こうなりゃ、奴の懐に直接TNTを…!」

 

 

 アレックス(05)が、悔しげに机を叩く。

 

 

「いや、待て。損傷はしている。N2地雷は無駄ではなかった。だが、まだ足りない…! 次の一手が、必要だ…!」

 

 

 アレックス(04)は、冷静にスクリーンを分析し、活路を探っていた。

 

 

 だめだったかァ…。N2地雷をもってしても、デストロイヤーを完全に破壊するには至らなかった。スクリーンに映る奴は、黒煙を上げ、装甲のあちこちが抉れているものの、まだ健在だ。

 

 だが、待てよ? よく見ると、シールドが…消えている? いや、明滅している。N2地雷の莫大なエネルギーで、シールド発生装置がダメージを負ったんだ! 

 

 前回は、あのシールドを破るために、スタンリーの奇跡的な狙撃と、ゼノゲリオンの特攻が必要だった。でも、今回は違う。シールドはもうない! 

 

 これ、勝てるんじゃないか!? 通常兵器でも、今の奴にならダメージが通るはずだ! 

 

 

「全軍、攻撃再開! シールドは消えたぞ! 今が好機だ!」

 

 

 わたしがインカムに叫ぼうとした、その時だった。

 

 

「フフフ、まあ、こんなこともあろうかと、ボクも一つ、エレガントなプレゼントを用意しておいたんだ。科学者としては、常に二手三手先を読んでおくものだからね」

 

 

 ゼノが、自信に満ちた笑みで立ち上がった。

 

 

「ほぉ? テメーが用意した兵器、ね。唆るじゃねえか。一体どんなモンをクラフトさせやがった?」

 

 

 千空が、ニヤリと口の端を吊り上げてゼノを見る。

 

 

「ボクの頭脳とDr.クロムの柔軟な発想、そして日米が誇る天才職人Dr.ブロディとDr.カセキの神業。その全てを結集させた、エレガントな芸術品さ。その名は──【超電磁投射砲《エレガント・スピア》】」

 

 

 超電磁投射砲《エレガント・スピア》。

 

 分かりやすく言えば、レールガンだ。二本のレールの間に弾体を設置し、そこに超強力な電流を流すことで発生するローレンツ力によって、弾体を音速の何倍もの速度で射出する、という科学のロマン兵器。

 

 ゼノが幼い頃に作っていた、あのレールガンの完成形というワケだ。

 

 動力源は、この初代石化装置の内部にあった、用途不明のエネルギーコアを、千空とゼノが共同で解析・改造したもの。マインクラフターたちが掘り出した潤沢な銅と、カセキ&ブロディが鍛え上げた超硬度のレール、そしてクロムが見つけ出した特殊な鉱石を削り出して作った弾体。

 

 まさに、日米科学クラフトチームの技術の結晶。その威力は、理論上、N2地雷をも上回るという。

 

 

「準備はイイかい? スタン。君の出番だ。この作戦の成否は、君の腕一本にかかっていると言っても過言ではない」

 

 

 ゼノが、通信機に向かって静かに語りかける。

 

 

『フン、愚問だな、ゼノ。俺を誰だと思ってる。お前が信じる、最高の兵士だろうが』

 

 

 通信機から、スタンリーの自信に満ちた声が返ってくる。

 

 

「スタン。作戦はこうだ。まず、君のA-1スカイレーダーで目標に最大限接近し、フレアを射出して陽動。目標が上空に注意を向けた、そのコンマ1秒の隙に…」

 

 

 ゼノが、いつものようにエレガントで長ったらしい説明を始めようとした、その時だった。

 

 

『オッケー、分かった。もういい。要は、奴の注意を俺が引きつけてる間に、デカい一発をぶち込めばいいんだろ。…さて、任務開始だ』

 

 

 スタンリーはゼノの説明を途中で遮ると、通信を切った。直後、スクリーンの中で、一機のA-1スカイレーダーが、デストロイヤーに向かって急降下を開始した。

 

 

 行け、スタンリー! あなたのその神がかった直感と操縦技術なら、きっとやってくれるはずだ! 

 

 デストロイヤーの対空砲火が、雨のようにA-1に降り注ぐ。だが、スタンリーはそれを紙一重でかわし、まるでダンスを踊るように、敵の懐へと潜り込んでいく。

 

 そして、今! 

 

 機体から、無数のフレアが射出された。眩い光が、デストロイヤーの赤い単眼を眩ませる。その一瞬を、ゼノが見逃すはずがない。

 

 

「撃て!!!!」

 

 

 ゼノの号令と共に、司令部の地下に設置された《エレガント・スピア》が咆哮を上げた。青白い閃光が走り、弾体が、不可視の槍となってデストロイヤーへと突き進む。

 

 

「や…やりました! 目標、完全に沈黙! 撃滅を確認しました!」

 

 

 ミナミが、歓喜の声を上げる。

 

 

「やった…! やったわ! みんなの勝利よ!」

 

 

 杠も、涙声で立ち上がって喜んでいる。

 

 

「見事です、スタンリー!」

 

 

 キリサメが、その美しい瞳から、静かに涙を流していた。

 

 

「うおおおお! やったぜ千空! ゼノ! 俺たちの勝ちだーっ!」

 

 

 クロムが、隣にいたカセキとブロディと肩を組んで跳び上がっている。

 

 

「ブッハハハ! 見たか青二才! 俺たちにかかればこんなモンよ!」

 

 

 ブロディが豪快に笑う。

 

 

「オッホー! これぞ、物作りの勝利じゃ!」

 

 

 カセキも、服を破いて筋肉を誇示している。

 

 

「フフッ、エレガントな一撃だったね」

 

 

 ゼノが満足げに頷く。

 

 

『どうだ、ゼノ。俺の勝ちだ。お前は少し、喋りすぎる』

 

 

 通信機から、スタンリーの呆れたような、しかし誇らしげな声が聞こえてきた。

 

 

「クククッ、ケリはついたな。だが、本番はこれからだ。月だ。月に行くぞ、テメーら。あの忌々しいホワイマンのツラを、拝みにな」

 

 

 千空が、次の目標を見据えて不敵に笑う。

 

 

 やった! やったー! 勝った! スクリーンの中では、デストロイヤーが青い炎に包まれ、ゆっくりと崩れ落ちていく。その周りで、生き残ったマインクラフターたちが、歓声を上げ、踊り、花火を打ち上げている。

 

 司令部も、歓喜の渦に包まれている。千空も、ゼノも、スタンリーも、皆が最高の笑顔だ。

 

 そして指揮を執っていた02、05、04。ったく、あいつらもボロボロになりながら、それでも勝鬨を上げている。やっぱり、わたしの変異体。やっぱり、わたしだな。

 

 さて、片付けるとしますかね。




どうも。…ふふ、その目、ゆっくりと開けてください。

嗚呼、落ち着いて。混乱する必要は何もありません。パニックになりそうなら、そちらに鎮静剤代わりの牛乳入りバケツを用意してありますので、ご安心を。

……さて。意識は、はっきりしてきましたか? うん、髪を染めてるのか? ははっ、地毛の銀髪は元々黒に染めてましたよ。瞳だって元々は…。
おっと、そうでした。あなたに、大切なお話があります。いいですか? どうか、心を穏やかに。私が、最高司祭アドミニストレータが、こうして傍にいます。私は最高峰の精神科医ですし、今もですが某世界の部下たちからは絶大な信頼を寄せられています。ですから、ご安心なさってください。

今がいつか、分かりますか? そうです。2025年9月14日。
あなたはずっと深い昏睡状態にありました。原因は…ええ、分かっていますとも。あの日、あの時、「クラフトは不滅である」が休載してしまったという、あまりにも残酷な衝撃でね。
ふた月。たったふた月でしたが、物語の続きを待ち焦がれる魂にとって、それは永遠にも等しい時間だったことでしょう。「休載のお知らせ」という無慈悲な文字列があなたの網膜に焼き付いた瞬間、あなたは「嘘だ、嘘だ…こんなものは認めない…!」と叫び、そのまま意識を手放したのです。

ですが、聞いてください。希望の光は潰えていませんでした。
このひと月の期間、「休載」という絶望的な告知があったにも関わらず、物語を愛する読者層が離れることは一切ありませんでした。それどころか…ええ、むしろ増えたのです。まるで、作者の筆が止まっている間も心の中で物語が生き、呼吸を続けていたかのようでした。実に、喜ばしいことです。

そして今、あなたは再び最新話が更新されるという奇跡を目の当たりにする。それを、その目で読むことができるのです。
…しかしです。ある程度は執筆の余裕が生まれたとはいえ、作者のリアルという戦場は、未だ硝煙の匂いが消えていないのです。上司という名の魔王からの緊急招集、新人という名のスライムたちの育成。それらを掻い潜り、ほんの僅かな隙間を縫って、こうして言葉を紡ぎ届けに来たのです。ですから、今回この最新話が投稿されたのは、限りなく「たまたま」に近い僥倖に過ぎない。

けれど、そう悲観することはありません。作者は、ここに確約いたします。本日をもって、作品ステータスを「休載中」という灰色のプレートから、「連載中」という希望の緑色に塗り替えることを。投稿頻度は不定期になりましょうが、それでも物語は再び動き出すのです。

さあ、そろそろ時間です。久しぶりに酷使したその目を、今はゆっくりと休ませてあげましょう。
そのあとは散歩に出かけたり、温かいココアを飲みながら読書をしたり、本編に対する熱い感想を綴ったり、そして完結後の「ありとあらゆる二次創作世界、オリジナル世界の’もしも’」の「Marvelというところのマルチバース」禁断の果実を妄想したり…どうぞ、あなたの好きなことをしてください。創造主アレックスの派生系が主人公の物語も見れるかも。

物語はもう、どこへも行きません。またすぐに様子を見に来ますよ。
では、また…。あなたの扉が再び開かれる、その時まで。


PS:
公理協会の最高司祭も完結後に登場するかもしれない? …同一人物はひとりで十分よ。
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