「うおおお! 見ろよ千空! デストロイヤーの残骸がまだ燃えてやがる!」
「ハッハー! まさに勝利の花火だな! だが、いつまでも見惚れている場合ではないぞ貴様ら! 次の欲しいものへ進むぞ!」
「コハクちゃん、すごかったねェ~。ジーマーでバイヤーだったよ、あの戦いっぷり」
皆さんどうもごきげんよう! わたしはマインクラフターのアレックス! 最近ね、物忘れがひどいんだ。自分が何のアレックスだったか、時々分からなくなる。だから、「物忘れのアレックス」と改名してもよいのかもしれない。
「…アレックス、貴様。さっきから何をブツブツ言っているのだ?」
「クククッ、ほっとけコハク。いつもの発作だ」
「いつもの発作…なのか? 顔色が悪く見えるが…」
デストロイヤーとの二度目の死闘を終えたわたしたちの前に広がっていたのは、勝利の余韻に浸る時間などではなく、次なる途方もないクラフトへのロードマップだった。月へ行く。あの忌々しいホワイマンのいる、遥か38万キロ彼方の天体へ。そのための第一歩が、ここ南米大陸で始まったのだ。
「いいかい? まず我々がやらなくてはならないのは、月へ行くためのロケットそのものを作ることじゃない」
「嗚呼。ロケットを作るための、工場を作る。それも、21世紀の工業国家にも匹敵するレベルの、だ」
「唆るぜ、これは! 月に行くための街づくりだ!」
千空とゼノが共同で策定したその計画の名は、実にシンプルかつ絶望的に壮大だった。「ロケット製造ロードマップ」、その第一段階は「超合金の街づくり」。もはや村とか都市とか、そんな生易しいものではない。「街」だ。文明そのものをゼロから再構築する、一大プロジェクトの幕開けである。
「聞いたかテメーら! とっととこのクソ広い平原を、更地に変えやがれ!」
「ブッハハハ! 科学者先生方は人使いが荒いぜ! だが、嫌いじゃねえ!」
「オッホー! やるなら徹底的に、じゃな!」
「ウォウォウォ! (我らが腕の見せ所だ!)」
まず動いたのは、わたしの同胞たち、技術開発部に所属するマインクラフターたちだった。彼らにとって、街づくりとは思想闘争そのものである。しかし、今回の目的は明確だ。ロケットを造るための工業基盤。その一点において、彼らのベクトルは奇跡的に一致していた。
「しかし、いつ見ても変態的な光景ねェ。重機もなしに、大地が削れていくなんて」
「嗚呼。まるで神の御業のようだ。だが、これが我らの仲間、創造主の力なのだな」
「クククッ、見慣れちまったが、冷静に考えりゃ異常の極みだな」
彼らの仕事は、いつ見ても常識という概念を根底から破壊してくれる。建設予定地に指定された広大な平原に、まず彼らが持ち込んだのは、設計図でも測量機器でもない。無数のダイヤモンド製のツルハシとシャベル、そして大量の食料だけだ。千空やゼノが地形データから最適な配置を計算している、まさにその隣で、彼らは何の前触れもなく地面を削り始めた。
「ヤベェ…! あのスピード、どうなってんだよ!?」
「ハッハー! 船を作る時も、あれくらいの速度で頼みたいものだな!」
「ウォウォ! (まだまだこんなものではないぞ!)」
「整地」と彼らが呼ぶその行為は、もはや土木工事の域を超えている。重機などという文明の利器は不要。一人のクラフターが振るうツルハシの一撃は硬い岩盤を豆腐のように砕き、シャベルの一掬いは土砂をいとも容易くインベントリへと収納していく。小高い丘は瞬く間に平地と化し、窪地はどこからともなく持ち込まれた土ブロックで埋め立てられていく。
その光景は、まるで早送りの映像を見ているかのようだった。数多のクラフターが一糸乱れぬ動きで、しかし各々の思想に基づいて大地を削り、再構築していく。そしてそこには東京ドームが何個も入るであろう、完璧な平地が出現していた。
「オーケー、整地は完了だ! 次は基礎工事とインフラ整備だね!」
「クククッ、待ってましただ! まずは製鉄所からだ! 鉄がなけりゃ何も始まらねえ!」
「高炉の設計はボクに任せてもらおうか。最もエレガントなものを創り上げてみせるよ」
「ウォウォウォ! (一番乗りは我々だ!)」
大地が平らになったなら、次はいよいよ建築だ。彼らはインベントリから、あらかじめ〈くらふたーのせかい〉でクラフトしておいた膨大な量の資材を取り出す。石レンガ、磨かれた安山岩、そして鉄ブロック。それらが、まるで生き物のように組み上げられていく。
まず建てられたのは、街の心臓となる大規模な製鉄所と、様々な金属を精製するための合金工場だった。天を突くほどの巨大な高炉が、わすがな時間で組み上がる。その隣には、鋼鉄を圧延するためのラインが、コンベアベルトのようにどこまでも伸びていく。
「発電はどうするんだい? これだけの工場を動かすには、途方もないエネルギーが必要になるよ」
「ヤベェ! 川だ! 川を堰き止めて水力発電所を作るぞ!」
「ハッハー! ダムの建設は素晴らしい発想だ!」
「ウォウォ! (電気電気!)」
もちろん、その動力源も彼らが自ら作り出す。最初は石炭を燃料とした蒸気機関だったが、すぐに近くの川を堰き止めて巨大なダムを建設し、水力発電所へと移行した。無数の水車が回り、そこから生み出されたエネルギーが、レッドストーン回路で編まれた送電網を通って工場群へと供給されていく。
最終的には、あの相良油田からパイプラインを延伸させ、石油による火力発電にまで漕ぎ着けたのだから、その進歩の速度は異常としか言いようがない。
「ジーマーで合理的ねェ。必要なものは、その場で作る。シンプルだけど、一番難しいことだよ」
「創造主は、本当に凄まじいな。我々とは、前提となる世界の法則が違うようだ」
「クククッ、奴らに不可能はねえ。欲しいもんは全部、その手で作り出すからな」
「だからこそ、ボクの科学と組み合わせることで、至高の芸術が生まれるのさ」
だが、マインクラフターのクラフトには限界がある。彼らが作るのは、あくまでMinecraftの物理法則に基づいた、どこか大雑把で、それでいて頑丈な「ハコ」だ。そのハコに、本物の魂を吹き込むのが、科学王国の人間たちの仕事だった。
「この高炉の熱効率は最悪だね。まるで原始時代のエレガンスのかけらもない設計だ」
「クククッ、文句は後だゼノ。ならテメーが最高の設計図を描きゃいいだろうが」
「当然さ。このゼノの手にかかれば、エネルギー効率100億パーセント増しも夢じゃない」
「100億パーセント…! ヤベェ! そそるぜそれは!」
千空とゼノは、マインクラフターが組み上げた高炉の設計図を見るやいなや、熱効率の悪さを指摘し、よりエレガントな熱風循環システムの設計図を描き上げた。水力発電のタービンも、彼らの手にかかれば、水の流れを極限まで効率化する美しい流線形のブレードへと生まれ変わる。
「おいカセキ! このギアの噛み合わせ、あとコンマ1ミクロン削れねえか!」
「オッホー! 無茶を言うでないわ! だが…職人の血が騒ぐのう!」
「ブッハハハ! やるしかねえだろ! 科学者先生方の設計図は、いつだって俺たちへの挑戦状だ!」
「うむ! その挑戦、受けて立たずして何が職人か! やってやろうではないか!」
そして、その科学の粋を集めた設計図を、現実の形にするのが、日米が誇る二人の天才職人、カセキとブロディの役目だ。彼らはマインクラフターには作り出せない、ミクロン単位の精度が要求される部品を、その神業的な腕前で鍛え上げていく。
「いいぞカセキ! そのしなりだ! まるで芸術品だぜ!
「ブロディこそ! その力強い鍛造! 鋼が喜んでおるわ!」
「ブッハハハ! 俺とお前が組めば、作れねえモンはねえ!」
「オッホー! まさに最強のコンビじゃな!」
灼熱の炉の前で巨大なハンマーを振るい、鋼を鍛えるブロディ。その隣で、小さなヤリを手に、寸分の狂いもなく歯車を削り出すカセキ。彼らの手によって、大型の旋盤やフライス盤といった、工業の精度を飛躍的に向上させる工作機械、所謂マザーマシンがゼロから生み出されていく。その光景は、まさに文明の産声そのものだった。
マインクラフターが作った頑丈な骨格に、科学者たちが設計した神経網が張り巡_られ、職人たちが作り上げた精密な心臓が組み込まれていく。クラフトと科学の、最高の共同作業がそこにはあった。
「ヤベェ…! 街が…街ができていくぞ…!」
「ああ…。これが、俺たちの…人類の力なんだな」
「本当に…夢のようだわ…」
そうして、僅かな期間で、アメリカ大陸の平原に一つの「街」が誕生した。高台から見下ろすその光景は、圧巻の一言に尽きる。地平線まで続く工場群の屋根。規則正しく煙を吐き出す無数の煙突。夜になれば、高炉から漏れる溶鉄の光が空を赤く染め上げ、まるで不夜城のように輝く。
「クククッ、ただの鉄じゃ月へは行けねえ。ここからが本番だ」
「そうとも。宇宙は、我々に最高の試練を与えてくれる。実にエレガントじゃないか」
「どんな金属が必要なの? アレックスちゃんに言えば…」
「そいつは最後の手段だ、ゲン。こいつは、俺たち人類自身の力でやり遂げるぞ」
この街で生み出されるのは、ただの鉄ではない。宇宙空間の過酷な環境に耐えうるための、特殊な合金だ。ステンレス、クロム、ニッケル、そして超高融点金属であるタングステン。それらが最新鋭の合金工場で精製され、ロケットの骨格や、大気圏突入時の高熱に耐えるための耐熱部品へと加工されていく。
「ハッハー! この街そのものが、俺の欲しいものリストに加わったぞ!」
「ハッ! 龍水、君は本当に欲深いのだな」
「全てを手に入れる! それが俺のやり方だ!」
「まあその強欲さが、文明復興の原動力になってるのも事実だしねェ」
街の機能はそれだけにとどまらない。巨大なドックでは、資材を運ぶための大型船舶や、いずれは航空母艦級の船すら建造可能な設備が整えられている。格納庫では次世代の航空機の開発が進められ。隣接する石油化学プラントではプラスチックや合成繊維といった、ロケット内部の精密機器に不可欠な素材が生産される。
「すげえ…! ここに、文明の全部が詰まってるみてえだ!」
「ああ、クロム。これが、俺たちがこれから200万年を取り戻していく、そのための礎だ」
「かァ! 唆りまくるじゃねえか!」
大出力の発電所、張り巡された電力網。そして、全てを制御する中央管理システム。ここは、単なる工業地帯ではない。月へ行くという、人類史上最も壮大なプロジェクトを完遂させるためだけに生まれた、超巨大な一つの生命体なのだ。
「フフフ、美しい…。実にエレガントな光景だ。まるで、星の誕生を見ているようだね」
「ああ…。これが、科学の光景だ」
「胸が…熱くなるな…」
わたしはこの「超合金の街」の最も高いクレーンの上から、その全ての営みを眺めていた。Minecraftのブロックを一つ、また一つと積み上げることから始まった、わたしのストーンワールドでのサバイバル。それが今仲間たちと共に、月面を目指すための巨大な工業都市を創り上げている。
「アレックス、風邪を引くぞ。そろそろ降りてきたらどうだ?」
「皆待ってるぜ!」
この光景は、ただの鉄と炎の塊ではない。これはホワイマンに対する、わたしたち人類の反撃の狼煙だ。そして、3700年の眠りから全ての仲間を救い出すという、揺るぎない約束の証なのだ。
■□■□■□
軍事部を率いるアレックス──仲間内では便宜上ゼロツーと呼ばれる彼女は、自らが座乗するオスプレイの機内から、眼下に広がる光景に満足げな笑みを浮かべていた。
空は、彼女が率いる無数の同型機によって埋め尽くされている。まるで巨大な猛禽の群れが獲物を求めて編隊を組むかのように、一糸乱れぬ密集体系で、ただ一つの座標を目指して飛翔していた。プロペラが空気を切り裂く轟音は、彼女にとって何よりも心地よい交響曲だった。
これぞ軍隊のロマン。これぞ力と規律が織りなす、至高の芸術形態。
彼女の思考は先刻の勝利から続く、ある種の不満に向けられていた。確かに、勝利はした。Dr.ゼノのエレガントな科学と、スタンリーの神業的な操縦技術。そして職人たちの魂が込められた《エレガント・スピア》は、見事あの機動要塞を沈黙させた。それはそれで、一つの美しい戦いの形ではあった。だが、残された残骸はどうだ。
先程までいた「超合金の街」の建設現場から見えた、あの光景。ジャングルの緑の中に無様に横たわる、巨大な鉄の屍。それは勝利の記念碑などではなく、美しい景観を損なう、ただの醜悪な産業廃棄物だった。戦いの後には、速やかで完璧な「清掃」が伴わなければならない。
それが彼女の、そして軍事部に所属する者たちの共通した美学であった。だからこそ、この「お片付け」作戦は、戦闘そのものよりも重要な儀式なのだ。
やがて、編隊は目的地の上空に到達した。眼下には、信じがたい光景が広がっている。
横たわるデストロイヤーの残骸。その周囲を、まるで巨大な城壁のように、漆黒のブロックが完璧な正方形で取り囲んでいた。黒曜石だ。ダイヤモンドに次ぐ硬度を誇り、TNTの爆風にすら耐える、究極の防御ブロック。それが、高さ数十メートル、厚さも十数メートルはあろうかという巨大な壁となって、デストロイヤーを外界から完全に隔離していた。
壁の上では、一般所属のマインクラフターたちが最後のブロックを置き終え、何事もなかったかのようにインベントリに道具を仕舞い、静かにその場を去っていく。彼らの仕事は、常に効率的で、無駄がなく、そして恐ろしく迅速だ。
軍事部のような派手さやロマンはないが、その確実性は評価に値する。彼らがこの完璧な「処刑場」を設営するのに要した時間は、僅か20分にも満たなかっただろう。マルチプレイは恐ろしいものである。
アレックスは自らの部隊にホバリングを指示すると、眼下の黒曜石の檻を睥睨した。そうだ、これでいい。この檻の中でなら、どれだけ派手にやっても、周囲の環境を汚染することはない。完璧な舞台が整った。
オスプレイからロープで降下した彼女が、黒曜石の壁の前に降り立つと、既に待機していた軍事部のクラフターたちが、敬礼と共に「ウォウォ!」と歓迎の雄叫びを上げた。彼らの瞳は、これから始まる祭典への期待に爛々と輝いている。
当初、統括のアレックスや千空たちの間では、このデストロイヤーの残骸を〈くらふたーのせかい〉に持ち帰り、徹底的に分析・研究すべきだという意見も出ていた。未知のオーバーテクノロジー。その構造を解明すれば、ロケット開発にも応用できるかもしれない…と。
だが、軍事部のアレックスは、その提案に断固として反対した。
彼女の目に、このデストロイヤーの技術は「異端」と映っていた。ドクター・ゼノの科学は、たとえ常識外れであっても、そこには「エレガント」という確固たる哲学と美学が存在する。わたしたちマインクラフターのクラフトは、物理法則を無視したブロックの集合体だが、そこには創造と破壊の純粋な喜びという、揺るぎない思想がある。
しかし、このデストロイヤーはどうだ。有機的な曲線と無機質な直線が入り混じった、統一性のないデザイン。効率的ではあるが、そこにロマンも美学も感じられないただの殺戮機械。このような思想なきテクノロジーは、世界にとって害悪でしかない。持ち帰って分析など、とんでもない。
この汚れた技術に触れること自体が、世界の純粋性を損なう冒涜的な行為なのだ。
故に、これは鹵獲対象ではない。研究対象でもない。ただ、消し去るべき汚物。それが彼女の結論だった。そして、軍事部のクラフターたちも、その思想を完全に共有していた。
…のだが、軍事部は科学王国に内緒でデストロイヤーを再現せんと模索してる。矛盾しているが、バレなきゃよいのだ。
彼女は集まった部下たちを見渡し、静かに、しかし腹の底から響くような声で最終決定を告げた。
「これより、目標『デストロイヤー』の完全解体、及び消滅作戦を開始する。〈くらふたーのせかい〉への持ち帰りは許可しない。この場で原子の一片も残さず、完全に消し去る!」
「「「ウォォォォォォ!!」」」
「〈くらふたーのせかい〉での再現は許可するがな!!」
「「「ウォォォォォォ!!」」」
地鳴りのような歓声が上がった。彼らが待ち望んでいた言葉。彼女は右手を高く掲げ、そして、力強く振り下ろした。
「攻撃開始ィィィ!!!」
その号令は、狂宴の始まりを告げるゴングとなった。まず動いたのは、黒曜石の壁の外周に、寸分の狂いもなく設置されていた数百門のTNTキャノンだった。レッドストーン回路に信号が送られると、それらは一斉に火を噴き、無数のTNTブロックを放物線状に撃ち出した。
轟、轟、轟!!!
デストロイヤーの残骸の上で、TNTが次々と炸裂する。鋼鉄の装甲がめくれ上がり、内部の機械が火花を散らして弾け飛ぶ。だが、それはほんの序章に過ぎなかった。上空で待機していたオスプレイ部隊が、後部ハッチを開放する。そこから、軍事部のクラフターたちが、まるで空挺部隊のように次々と飛び降りていく。
彼らはパラシュートなどという軟弱なものは使わない。落下ダメージを無効化するエンチャントが施されたブーツを履いているか、あるいは着地寸前に足元に水バケツの水をぶちまけるという神業で、無傷のままデストロイヤーの巨体に着地していく。
彼らの手には、インベントリから取り出されたばかりの、大量のTNTブロックが握られていた。
彼らはそれを、残骸の関節部、動力炉があったであろう区画、そして頭部ユニットの亀裂など、構造上の弱点と思われるあらゆる場所に、手際よく設置していく。それはもはや、解体作業というよりも、巨大な生物の体内に爆薬を仕掛ける、外科手術のようであった。
さらに、狂気は加速する。クラフターの一部が、ウィザースカルの頭蓋骨を三つと、ソウルサンドをT字型に並べ始めた。召喚儀式だ。次の瞬間、黒曜石の檻の中で、禍々しいオーラと共に、三つの頭を持つアンデッドモンスター、【ウィザー】が複数体、咆哮と共に召喚された。
檻の中で解き放たれた破壊の化身は、手近な標的であるデストロイヤーの残骸に、無差別にウィザースカルを撃ち込み始めた。TNTによる物理的な爆発と、ウィザーによる魔法的な爆発。二種類の破壊が、デストロイヤーを内と外から同時に苛んでいく。
そして、とどめとばかりに、オスプレイ部隊が最後の「お掃除道具」を投下し始めた。
赤い灼熱の液体が、雨のように降り注ぐ。溶岩だ。バケツ一杯の溶岩が、マインクラフターの手にかかれば無限のマグマの奔流となる。黒曜石の檻の中は、瞬く間に灼熱地獄へと変貌した。鋼鉄の装甲が、まるで飴のように溶け始める。内部の精密機器は、融解し、気化し、ただの黒い煙となって立ち上っていく。
その時だった。超高温で熱せられ、内側からの爆発で引き裂かれながら、デストロイヤーの巨体が軋むような悲鳴のような音を立て始めた。ギギギ、ギシャァァァ…。さながら、苦痛に喘いでいるかのようだった。そして、球形の頭部ユニット。その破壊された赤い単眼の亀裂から溶解した金属が、まるで涙のようにゆっくりと流れ落ち始めたのだ。
デストロイヤーは、泣いていた。自らの身体が無慈悲なまでに破壊され、消し去られていくその様を、ただ受け入れるしかない絶望の中で、声なき声で慟哭し、灼熱の涙を流していた。
軍事部のアレックスはその光景の一部始終を、黒曜石の壁の上から静かに見下ろしていた。彼女の口元には、満足げな、そしてどこか慈愛に満ちた笑みが浮かんでいた。
美しい。
これぞ、敗者への最大の手向け。中途半端な同情や、冒涜的な分析などではない。その存在の全てを、業火によって浄化し、無に還す。これほど荘厳で、美しい葬送が他にあるだろうか。
やがて、檻の中の喧騒は収まり、そこにはただ、赤々と燃える溶岩の湖だけが残されていた。デストロイヤーの姿は、影も形も残っていなかった。
完璧な「お片付け」だった。
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