クラフトは不滅である   作:最高司祭アドミニストレータ

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今話、「」でのセリフはアレックス基本的にありません。登場人物が多数いる関係により、誰が喋っているかの混乱を避けるためです。

なので、



「こんにちは」

あ、こんにちは。
挨拶が来たので返した。



となりますので、ご了承ください。

PS: 2026年3月10日から、上記の文体は改稿の関係上、少なくなっているかもしれません。ご了承ください。


霊長類最強の高校生、その名は•••!

「千空! 杠! アレックスが帰ってきたぞー!! …ん? …ナニー!?」

「ったく、どこ行ってんだよテメー…あ?」

「あっ、アレックスさん? 後ろの人ってもしかして…あわわ!?」

 

 拠点から少し離れた開けた場所で作業をしていた、三人の声が上がる。その視線の先には、逞しく練り上げられた筋肉を持つ見知らぬ男と共に帰還した、アレックスの姿があった。

 

 復活した時は生まれたままの姿だったが、今はもう裸ではない。正確には男の大事なところを千空がかつてそうしていたように葉っぱで隠し、アレックスが遭遇した雄ライオンを解体して手に入れた、モフモフの毛皮をマントのように羽織っている。その姿は、さながら古代の英雄のようだった。

 

「杠」

「うっ、うん!」

「ツルピカ猿なアイツに衣類を渡してやれ」

「わっ、わかった!」

 

 千空の冷静な指示を受け、杠はツリーハウスへと駆け足で向かう。そう時間はかからず、杠は手製の衣服を手に戻ってきた。

 

「文明人がツルピカ猿なのはマズイですので、これを着て下さい!」

「好意に感謝するよ。うん、ありがとう」

 

 杠は衣類を手渡すと、そそくさと千空たちの元へ戻っていく。運動部ではないというのに、その足は妙に速かった。男は渡された衣服を、静かに着こなし始める。その間も大樹は信じられないといった表情で、男を見つめていた。

 

「こっ、この男はもしやー!?」

「静かにしやがれデカブツ。ま、その気持ちは100億%わからねぇことはねぇがな。クククッ!」

 

 彼らのただならぬ様子を見て、アレックスは不思議そうに首を傾げた。

 

(先ほどから三人とも、驚きすぎではなかろうか。この男の姿を見た途端に、皆の様子がおかしい)

 

「驚かせてしまっているようだね」

 

 男は困ったように微笑んだ。

 

(もしかしてこの男はとんでもない有名人だったりするのだろうか…?)

 

「アレックスさん、ちょっと」

「悪いな。少しだけ待っててくれねぇか? 直ぐに終わるからよ」

「うん、待っているよ」

 

 男はにこやかに微笑んだ。その間アレックスは、杠にぐいと手を引っ張られていた。

 

(どうしたというのだろうか。何か内緒話でもあるのだろうか……?)

 

 男からある程度の距離を取ったところで、三人はアレックスを取り囲んだ。そこで千空たち幼馴染組はアレックスに対し、矢継ぎ早に事情聴取を行った。

 

 自力での復活者なのか? 

 これには復活液を使ったと正直に伝えた。

 

 ライオンの毛皮を羽織っているのは何故か? 

 ライオンの群れに襲われたものの、復活させたこの男が撃退してくれたこと。リーダーの雄ライオンを素手で仕留め、自分が解体したこと。

 

 そして最後に、こう質問された。──この男を知っているか、と。

 アレックスは正直に知らないと伝えた。すると三人は、信じられないといった反応を見せた。

 

「嘘…!?」

「本当に知らないのか…!? 全国にまで名が広まっているんだぞ…!?」

「クククッ…!?」

 

 三人のあまりの驚きように、アレックスは困惑しながら男の方をチラッと一瞥する。男はこちらの様子を気にすることもなく、キョロキョロと周囲を見渡していた。

 

「──現代レベルと見紛うほどのツリーハウスに、手入れの行き届いた畑。そして、あの研究室か。これを、高校生四人だけで…? それにしても不思議だ。彼女だけが現代の服装なのは、一体なぜ…」

 

 三人のただならぬ様子を気にすることもなく、司は興味深そうに周囲を見渡しながら、独り言を呟いていた。その鋭い観察眼は、わずかな時間でこの拠点の異常性を見抜きつつあるようだった。

 

 高身長。推定身長は二メートル近いだろう。風に靡く長い髪は陽光を浴びて、艶やかに輝いている。彫刻のように整った顔立ちは、ギリシャ神話の神々を思わせる。何事にも動じないその堂々とした佇まいは、生まれながらの王者の風格を漂わせる。

 

 そして、全身を覆う無駄なく練り上げられた筋肉は、まさに機能美の結晶体だ。

 

 どうやら本当に、桁外れの有名人のようだ。

 

(そんなにも…? もしかして、世界を股にかける珍獣ハンターとか…?)

 

 アレックスは見当違いな推測を、頭の中で巡らせていた。

 

「アレックスさん、よく聞いてちょうだい」

「そうだぞ。テメーは世間の情報に疎すぎるからな。耳かっぽじって、よ〜く聞きやがれ」

 

 杠の真剣な声と千空の呆れたような声に、アレックスはハッとして意識を戻す。なんだろうか? 三人のあまりの剣幕に、アレックスもゴクリと唾を飲み込み、真剣な表情で聞く姿勢を執った。

 

「彼の名前はね──“霊長類最強の高校生”獅子王司くんなんだよ」

 

 …え、あの? そのあまりにも大仰な肩書きに、アレックスは一瞬思考が停止した。そういえばテレビで、そんな特集をやっていたような気がする。格闘技の世界で、敵なしの天才がいるとかなんとか。なるほど。どうやら本当に有名人らしい。

 

 アレックスの反応は、どこか薄かった。

 

「…なんだか、あんまり興味なさそうに見えるけど」

 

 杠が心配そうに、アレックスの顔を覗き込む。

 

「いやある」

 

「え?」

「本当なのか?」

 

「ああ」

 

 アレックスの瞳に初めて強い光が宿った。それは恐怖でも驚愕でもない。未知の強敵を前にしたマインクラフターとしての、純粋な好奇心と闘争心だった。

 

「奴は人間をヤメている…! マイクラの世界に登場するネザーの住人ゾンビピグリンやウィザースケルトン級どころではない。村の守護者として絶対的な強さを誇るアイアンゴーレム級だ…! いや、下手すればそれ以上の戦闘能力を秘めている…! 今一度はっきり言おう。奴は間違いなく人間をヤメている…!!」

 

 アレックスの脳内では、目の前の男のステータス分析が高速で行われていた。

 

「あははは…。ゾンビなんとかとかアイアンなんとかは、さっぱりわからないけど。でも人間ヤメてるのって、アレックスさんにも同じことが言えるんじゃないかな…?」

「100億%言えてるな。色んな意味で諸々だな」

「うむ。なんたってこの場にいる誰よりも年寄りだからな」

「ちょっと大樹くん! それは流石に内心で留めておかないと失礼だよ…」

「ディスってらっしゃる? ねっ、そうでしょう? そうなんでしょう?」

 

 三人の容赦ない言葉に、アレックスのこめかみがピクリと動く。

 

「ゴホン! とっとにかく話は変わってだな!」

「そっ、そうだったね!」

「クククッ、そうだな」

 

 逸らしやがったな、この幼馴染組。アレックスは三人に冷たいジト目を送るが、内心では助かっていた。これ以上、年齢の話をされるのは流石に堪える。

 

「それにしても凄いぞ! 霊長類最強の男が仲間になってくれるなら、こんなに頼もしいことはないじゃないか!」

 

 大樹が子供のように目を輝かせて言った。

 

(…確かに。司が仲間になれば戦闘面では怖いものなしだ)

 

 アレックスも、その点には同意だった。

 

「じゃあもし、司が欲望もろだしの悪代官みてぇな奴だったらどうする? そうなっちまった場合、銃もねぇこの世界じゃ、誰にも止めようがねぇぞ」

 

 千空の冷静な指摘が場の空気を引き締める。欲望もろだしか。アレックスにはその具体的なイメージが全く湧かなかった。

 

「だっ、ダメだ! 杠はオレの大切な人なんだ! そんなことは絶対にさせない! それはダメだ!」

「!? 〜〜///」

「あーあ、バカだコイツは」

 

 アレックスはポンと自分の手を叩いた。

 

(大樹が想像したのはあれか。所謂NTRというやつか。司の周りに麗しい村人…じゃなかった。何人もの美しい女性が侍っておりそこに『さあこちらへ近寄れ杠〜』と誘われた杠が『いや〜ん司様!』と…)

 

「なるほど…。奴は純愛を脅かす、危険な存在というわけか。ならば処す? 処しちゃう? そうかそうか。よし処しちゃおう♪」

 

 

 アレックスがインベントリに手をかけようとした、その時だった。

 

「処すな! バカかテメーは! そんなわけないだろ!」

「そっ、そうだよアレックスさん! 早まっちゃダメだからね…?」

「そうだぞ! まだ何もしてない人を悪く言うのはダメだぞ!」

 

 三人に全力で羽交い締めにされ、アレックスは思い留まる。

 

(命拾いしたな。霊長類最強の男つかさ…なんだっけ? あつきみんか。いやいや違う。司だった)

 

「まあ、奴の存在は一抹の不安材料だろうが、協力してくれる内は心配しなくてイイ。友好的に接しろよ、テメーら」

 

 千空の言葉に、大樹と杠は力強く頷いた。

 

「もちろんだ!」

「うん! 排他的になるつもりは毛頭ないけど、了解であります!」

 

 アレックスもこくりと頷いた。

 

 こうして様々な思惑が渦巻く中、霊長類最強の男──獅子王司は、アレックスたちの仲間に迎えられたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■□■□■□

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて、獅子王司だ。気軽に司と呼んでくれ。…ところで。うん、これはあくまで俺の予想に過ぎないんだけど──」

 

 司はアレックスに向き直ると、穏やかな笑みを浮かべた。

 

「──この見事なツリーハウスを含めた建築物の数々は、君が一人でやったのかな?」

 

「?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、アレックスの中で何かがカチリと音を立てて変わった。

 

(一つわかったことがある。なんだコイツ。ちゃんと人の仕事を評価して褒めてくれるなんて、とんでもなく良い奴じゃないか)

 

 その瞬間、アレックスの司に対する好感度は、警戒レベルから一気に急上昇していったのだった。




最後の「?」はアレックスです。

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