クラフトは不滅である   作:最高司祭アドミニストレータ

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羽田空港の自販機ラーメン美味しいなァ。


感動の再会

 皆さんどうもごきげんよう。わたしは、マインクラフターのアレックス! 親しみを込めて、どうぞ「統括のアレックス」とでも呼んでくれたまえ。

 

 月面でのホワイガール騒動も無事に片付き、ストーンワールドには真の平和が訪れた。

 

 さて、今日は特別な日だ。科学王国のリーダーである石神千空を連れて、わたしたちのホームグラウンドである〈くらふたーのせかい〉に行く日なのだ! 

 

 〈くらふたーのせかい〉は別名オーバーワールドとも呼ばれる、全てが立方体のブロックで構成された物理法則の異なる別次元だ。そのあたりの基本設定は、今更語るまでもないだろうから割愛する。

 

 問題はどうやって、その別次元にアクセスするかだ。千空のような現地人を連れて行くには、当然ながら正式なルートを通る必要がある。

 

 そこで登場するのが、黒曜石で作られたネザーゲートだ。これを通って灼熱の暗黒界ネザーを経由してでないと、〈くらふたーのせかい〉の正確な場所には行けないのだ。

 

 ネザーとオーバーワールドは、座標の比率が1対8になっている。現実の地球からネザーへ入り、そこからオーバーワールドの特定のポイントに出るためには、厳密な座標の確認が何よりも大事になる。技術開発部がレッドストーン回路と謎の計算式を駆使して、安全なゲート網を構築してくれているから迷子の心配はない。

 

 

「クククッ! いよいよ、テメーら創造主の根城にカチ込みってわけか? 最高に唆るじゃねえか! どんなデタラメな科学が隠されてるのか丸裸にしてやるぜ」

 

 

 千空は悪人面を浮かべてワクワクしているが、その前に準備が必要だ。わたしは彼に、分厚い特殊な防護服を手渡した。

 

 

「悪いがこれを着てくれ。ネザーは文字通りの地獄だ。溶岩の海と灼熱の空気が充満しているからな。生身の人間が装備なしで足を踏み入れれば、肺が焼け焦げて死ぬ恐れがある。絶対に脱ぐなよ」

 

 

 千空は舌打ちしながらも、大人しく防護服を着込んだ。

 

 

「テメーらは普段、あんなふざけたTシャツ一枚で平気なツラしてんのによ。どういう熱力学してやがる?」

「わたしたちマインクラフターは平気である。ちょっと熱いなァ程度だ。それに防火のポーションを飲めば、溶岩の海を泳ぐことすら可能だぞ。創造主の体は頑丈なのだ」

 

 

 わたしが胸を張ると、千空は「理不尽極まりねえな」と呆れ顔でヘルメットを被った。…そんなに理不尽だろうか? 

 

 準備が整い、わたしたちはゆらゆらと紫色の粒子を放つネザーゲートへと足を踏み入れた。視界が歪み、特有の吐き気を伴う転移感覚。そして目を開けると、そこは赤黒い岩肌とマグマの海が広がるネザー空間だった。どうやら千空が想像していたような、危険な地獄の風景はそこにはないらしい。

 

 なぜならここから先のルートは、技術開発部によって完璧に整備されている施設だからだ。ガストの火の玉もスケルトンの矢も届かないように、天井と壁は、分厚い防爆ガラスと黒曜石で完全に覆われている。足元には滑らかな氷塊が敷き詰められ、ボート使用の高速道路が完備されているのだ。危険とは無縁のトンネル。

 

 これぞ、マインクラフターの圧倒的な環境制圧能力の賜物だ。

 

 氷の道を滑るように進み、やがて目的の座標に設置された出口ゲートに到着した。ここが、〈くらふたーのせかい〉に通じる最後の扉だ。ゲートの前には、分厚い鉄の自動ドアが設置されている。白衣を着た技術開発部のクラフターがコンソールを操作して、安全確認を行っている。

 

 

「オーバーワールド側のスポーンチャンク安全確認完了。敵性モブの湧き潰し済み。ゲートを解放」

 

 

 ボタンが押される。ギミックの塊のような模様式の巨大な自動ドアが、重々しい音を立てて左右に開かれた。それと同時に、『ウゥゥゥゥン』という甲高い警報が鳴り響いた。ゲートの開閉を知らせるためのアラートだが、初めて聞く人間には心臓に悪い音かもしれない。

 

 

「さあ行くぞ千空! わたしたちの真の世界へ!」

 

 

 紫色の渦に飛び込むと、わたしたちは〈くらふたーのせかい〉に到着した。

 

 目の前に広がるのは見渡す限り、全てが四角いブロックで作られた大自然だった。四角い土。四角い葉っぱ。四角い木の幹。そして空に浮かぶ、四角い太陽と四角い雲。風に揺れる葉っぱ一枚に至るまで、完全に立方体のドット絵で構成された世界。

 

 千空は防護服のヘルメットを脱ぎ捨てて、ポカーンと口を開けて周囲を見回している。

 

 

「マジで全部四角形じゃねえか。曲線って概念が存在しねえのか、この世界は。重力も光の屈折も地球の物理法則とは根底から違ってやがる。クククッ、こいつはヤベェ! 調べがいがありすぎるぞ!」

 

 

 彼は早速足元の土ブロックを素手で殴ってみたり、落ちている花を拾い上げたりして興味津々だ。科学者にとって、この非常識な世界は、究極のテーマパークのようなものだろう。

 

 その後ろで腕を組んで景色を眺めていたのは、護衛として同行していた不良騎士のアレックスだ。彼女はオレンジ色の髪を風に揺らしながら、どこか遠くを見るような懐かしげな瞳をしていた。

 

 

「嗚呼、そういえばここで転生したんだったか。創造主に」

 

 

 彼女がポツリと呟いた言葉にわたしも頷く。そうだ。わたしたちアレックスは、最初からこの世界の創造主だったわけではない。

 

 元々は地球という別の世界で生きていた、ただの人間だ。それぞれが全く違う人生を歩み、そして死を迎えた後、なんやかんやあって女神アインドラの導きにより、マインクラフターとしてこの四角い世界に転生した存在なのだ。

 

 だからこそ、この世界の景色には特別な感慨がある。第二の故郷であり、永遠の遊び場。そんな感傷に浸っていた時だった。

 

 

「おお! 久しぶりだな! 千空!」

 

 

 背後から掛けられたその声。快活で底抜けに明るく、それでいて誰よりも深い愛情に満ちた男の声。

 

 千空の動きがピタリと止まった。彼は持っていた土ブロックを取り落とし、信じられないものを見るように、声のした方へとゆっくりと振り返った。その顔には、いつもの余裕に満ちた笑みはない。ただ純粋な驚愕と混乱が張り付いている。

 

 

「…は?」

 

 

 千空の口から間抜けな声が漏れる。無理もない。わたしだって今、全く同じ表情をしている自信があるからだ。目の前に立っていたのは、白衣を着た一人の男。逆立った髪。無精髭。そして、あの特徴的な笑顔。石神白夜。さあ、最高のサプライズといこうじゃa……ありえない人物!?

 

 えっ!? なんで!? なんで石神白夜が、このオーバーワールドにいるのだ!? 初耳だぞ!? わたしは統括のアレックスだぞ!?

 

 白夜は3700年前に寿命で死んだはずだ! 石化する前に、寿命で天寿を全うしたはずだ! それがなぜ、こんなピンピンした若い姿で笑っているのだ!? しかも、このタイミングで千空の前に現れるなんて、何のドッキリだ!?

 

 わたしは視線を泳がせ、そしてある人物の顔を見て全てを理解した。白夜の隣でドヤ顔をして立っている、技術開発部のアレックス03。あいつだ。あいつが何かをやらかしたのだ。わたしを完全に蚊帳の外に置いて、技術開発部が単独で超特大のやらかしを起こしやがったのだ! 

 

 千空のフリーズした顔と、白夜の満面の笑み。そして、03の悪魔のようなニヤニヤ顔。統括のわたしだけが状況を飲み込めず、完全にパニックに陥っていた。

 

 ちょっと待て! 聞いてないぞこんな話!! 

 

 

「う、うそ…だろ?」

 

 

 千空の口から再び間抜けな声が漏れた。わたしも彼と同じように漏らしたいが、まずはナレーションしてから…ゴホン! 

 

 彼は目の前に立つ石神白夜を、上から下までジロジロと舐め回すように観察した。その瞳には、いつもの冷静な科学者の光は無い。激しく動揺し必死に現実を処理しようとする、混乱の色が浮かんでいた。

 

 

「ありえねえ。親父は3700年前に死んだはずだ。病気か寿命かは知らねえが、百物語を残して天寿を全うした。それは紛れもねえ事実だ。誰だテメーは? 幻覚か? それともホワイガールのホログラムか? クククッ…悪趣味な冗談はやめやがれ!!」

 

 

 千空は自分に言い聞かせるように、言葉を早口で紡いだ。彼の頭脳がどれほど状況を否定しようとも、目の前の存在の圧倒的なリアリティが彼の心を揺さぶっていた。白夜は千空の言葉を聞いて、困ったように頭を掻いた。かつて地球で見せていたであろう、あの豪快で温かい笑みを浮かべた。

 

 

「相変わらず理屈っぽいな千空。幻覚が、こんなに男前なわけないだろうが。ホログラムだって? だったら確かめてみろよ」

 

 

 白夜は両手を広げて、息子の前に歩み寄った。千空は無意識のうちに手を伸ばした。震える指先が白夜の頬に触れた瞬間、千空の強靭な理性が感情の波に飲み込まれて崩壊した。

 

 彼の大きな瞳から、ポロポロと大粒の涙が零れ落ちた。合理主義の塊であり、どんな絶望的な状況でも決して泣かなかったあの石神千空が、子供のように顔を歪めて泣きじゃくったのだ。

 

 

「親父…バカ親父…! テメー、どんだけ俺を待たせりゃ気が済むんだよ…!!」

「悪かったな千空。ずっと一人で頑張らせちまって。でもな、お前なら絶対に人類を救うって信じてたぜ。よくやったな千空。本当によくやった」

 

 

 白夜は泣き崩れる千空を、力強く抱きしめた。千空も父親の背中に腕を回し、その胸に顔を埋めた。3700年という想像を絶する、時間を隔てた親子の抱擁。わたしはその光景に息を呑んだ。これは反則だ。こんなものを見せられて、泣かない奴はいない。

 

 

「ビャクヤァァァァァァ!!!」

 

 

 突然空気を切り裂くような悲鳴が響いた。いつの間にかオーバーワールドにやって来ていた、リリアン似の美少女アンドロイド。REIだ。彼女はエヴァンゲリヲンのプラグスーツ姿のまま、猛スピードで突進してきた。そして、白夜と千空の抱擁の塊に、横から全力でダイブしたのだ。

 

 

「うおっ!? おお、REIじゃないか! お前も無事だったんだな! ハハ、別嬪さんになりやがって!」

「会いたかったです! ずっとずっと待っていました! 3700年間ずっとです! ビャクヤ! ビャクヤ!」

 

 

 REIは白夜の首に腕を回し、涙を滝のように流して大号泣している。千空も白夜もREIも、一緒くたになって泣いている。家族の再会だ。ひとしきり泣いて落ち着いた後。千空は真っ赤になった目をこすりながら、いつもの不敵な笑みを取り戻した。

 

 

「クククッ、感動の再会は結構だがよ。どういう科学のトリックを使った? 石化事件から数十年後に寿命で死んだはずのテメーが、なんでここにいる? しかも、俺が別れた日の若い姿のままでな…説明してもらおうじゃねえか?」

 

 

 千空の鋭い問いかけに、白夜は苦笑いしながら事の顛末を語り始めた。

 

 

「俺も最初は夢かと思ったんだがな。白髪のヨボヨボの爺さんになって、さあ死ぬぞって時にだ。急に目の前が緑色に光って石になったんだよ。そんで気づいたら、この四角い世界で目が覚めた。そしたら、あの白衣のお嬢ちゃんに、なんか変なビン投げつけられてな。体が一気に若返って、この姿さ。千空、俺はイケオジだろ?」

 

 

 白夜が指差した先には、技術開発部の美少女アレックス03が立っていた。彼女は腰に手を当てて、ドヤ顔で胸を張っている。

 

 わたしは全てを察した。若返りのポーション。技術開発部が研究していたアイテム。それを完成させて、白夜に使ったのだ。問題はそれだけではない。どうやって、3700年前の過去から白夜を回収したのだ。タイムマシンでも完成させ…あっ、違うらしい。じゃあ、なんなんだ!? 

 

 

「その道を誰が敷いたと思ってる?」

 

 

 03が悪びれる様子もなく堂々と語り出した。その顔は世界最大の謎を解き明かした、狂気の天才科学者のそれだ。白衣の裾をバサリと翻し、彼女は主役のように両手を広げた。

 

 

「日本列島で薬を調達しようとして、ボートで危険な海に出たヤコフとダリヤの二人。彼らが嵐に巻き込まれて消息を絶った歴史。あれは嘘だ。溺れ死ぬ寸前に、わたしが透明化して近づき、石化装置でカチンと固めてインベントリに回収したんだ」

「肺炎で倒れたコニーと、その後を追うように病に倒れたシャミール。彼らが病で死んだというのも、嘘だ。呼吸が止まるそのコンマ一秒前に、石化光線を浴びせてこの世界に拉致した」

「歌姫リリアン。彼女は本当に一度死にかけた。が、わたしはこっそり、不死のトーテムを握らせておいたのだ。生き返ったところで、何が起きたか分からず混乱している彼女を、石化して連れ去った。もちろん、残された白夜たちの記憶からは、わたしが干渉した事実を綺麗さっぱり消去させてもらったよ」

 

 

 歴史の裏側で暗躍し、宇宙飛行士たちの死を偽装して、彼らをこの四角い世界に拉致していたのだ。03は続ける。

 

 

「すべては、このわたしが敷いてやった道だ。そう偽装しなければ、千空に繋がる『百物語』の歴史は始まらない。千空が目覚めた時に、石神村が存在しなければならない。だから彼らには、一度歴史の表舞台から『退場』してもらう必要があった」

「白夜、君もだ。老衰で命の灯火が消えるその瞬間まで、君には百物語を伝え続けてもらった。そして役目を終えた、最後の瞬間に回収した。君たちには、本当に感謝しているよ。ホワイガールとの戦争に完全勝利した今、歴史の役割は終わった。だから彼らを一斉に石化解除して、あの若返りのポーションをぶっかけた」

「つまりだ──輪廻転生だ、ベイビー」

 

 

 倫理観の欠如もここまで来ると清々しい。彼女は創造主にでもなったつもりか。人の生死と歴史のうねりを自分勝手な理屈で切り貼りして、パズルを完成させたのだ。

 

 …創造主だったわ彼女。

 

 

「待てー! このクソガキィィィ!」

 

 

 突然怒号が響き渡った。03の背後にある小高い土ブロックの丘から、五人の男女がものすごい剣幕で走ってきた。復活したばかりの宇宙飛行士たちだ。全員が血相を変えて、03に向かって突進してくる。

 

 

「オッホー! あの小娘、ワシらを騙しおったな! ボートで漂流して死にかけた時、急に石にしおって! ワシは海坊主の呪いかと思ったんじゃぞ!」

 

 

 ヤコフが、筋骨隆々の体を激しく揺らして激怒している。その隣では、妻のダリヤも怒髪天を突く勢いだ。

 

 

「ちょっと待ちな! 急に光を当てるなんてどういう神経してんだい! 死ぬなら安らかに死なせておくれよ! 目覚めたらいきなり四角い世界で若返ってるなんて、心臓に悪いだろ!」

「もう! 本当にびっくりしたんだから! 自分がアンデッドになったのかと思ったわ! でも…皆が生きててよかった!」

 

 

 リリアンは怒りながらも、涙を浮かべて嬉しそうだ。

 

 

「論理的ではないが、結果には感謝しよう。けど、お仕置きは必要だな…確実に捕獲するぞ! 陣形を組め!」

 

 

 シャミールがパイロットらしい、冷静さで包囲網を構築している。

 

 

「逃がさないわよー! 捕まえたらお尻ぺんぺんだからね!」

 

 

 コニーも楽しそうに走っている。

 

 

「あはははは! 鬼ごっこかい? 捕まえられるものなら捕まえてみな!」

 

 

 03は全く反省する様子もなく、エンダーパールを連続で投げまくって、ポンポンと瞬間移動しながら逃げ回っている。宇宙飛行士5人が彼女を追いかけ回すという、シュールなドタバタコメディが目の前で展開されている。

 

 ワロタ。本当に腹を抱えて笑いたいところだが、状況はわたしにとって非常にまずい方向へ傾きつつあった。

 

 背筋に冷たい汗が伝う。視線を感じる。冷たくて痛くて、逃げ場のない絶対的な殺気を伴う視線だ。千空とビャクヤとREI。そして、護衛の不良騎士のアレックス。この四人が並んで、わたしをじっと見つめていた。完全に、わたしをロックオンしている。

 

 

「おい。統括ってことはテメーもグルか。随分と手の込んだ悪ふざけをしてくれたじゃねえか。俺の感情をどこまで振り回せば気が済むんだ? テメーら創造主は」

 

 

 千空の目が全く笑っていない。科学の探求者としての顔ではなく、マジギレした人間の顔だ。

 

 

「ちょっとお嬢ちゃん。流石にやりすぎじゃないか。俺たちを歴史のモルモット扱いとはな。再会できたのは嬉しいが、やり方ってものがあるだろう。息子の前で、父親の尊厳をどうしてくれるんだ」

 

 

 白夜も笑顔の奥に凄みを利かせている。

 

 

「ビャクヤの歴史を弄んだ罪は重いですよ。私が3700年抱え続けた悲しみをどう責任を取るつもりですか。ISSごと落下させて潰しましょうか」

 

 

 REIの背後から、謎の黒いオーラが漂っている。AIの怒りは静かで、底知れないから一番怖いのだ。

 

 

「君たちマインクラフターは、本当に倫理観というものがないのか。人の命と尊厳を何だと思っている。同じ顔をしているのが、本気で恥ずかしくなってきたよ。私が代わりに腹を切って詫びるべきか?」

 

 

 不良騎士のアレックスが軽蔑の目を向けている。

 

 

 怖い。

 怖い怖い怖い! 

 誤解だ! 

 冤罪だ! 

 わたしは本当に何も知らなかったのだ! 

 全部、あの技術開発部のイカれ女が単独でやったことなのだ! 

 わたしはただ千空をこの世界に案内して、のんびり観光するつもりだっただけなのに! 

 

 

「ち、違う! わたしは無実だ! 本当に初耳なんだってば! 誓って言う! わたしは何も知らない! むしろ、わたしも被害者だ! 統括だからって、全部の部署を把握してるわけじゃないんだよ!」

 

 

 わたしは必死に両手を振って弁明したが、彼らの冷ややかな視線は一向に緩む気配がない。完全に共犯者扱いされている。連帯責任というやつだ。

 

 なぜだ。なぜわたしは、いつもこうなるのだ。世界を救うために、一生懸命働いたのに。ヘロブラインに殺されかけたのに。わたしも驚いた最高のサプライズを用意してあげた結果になったのに。

 

 なぜわたしが、こんな針のむしろに座らされ、お説教されなければならないのだ。理不尽だ。この世界は、美少女に厳しすぎる。

 

 

「結果オーライだろ! 全員生きてるんだから! 家族が揃ったんだから! 誰一人欠けることなく平和になったんだから! 科学の力とクラフトの奇跡が生んだハッピーエンドだから、いいじゃないかァァァ!!」

 

 

 わたしの魂の叫びは、四角い空へと空しく吸い込まれていった。四人からの無言の圧力に耐えきれず、わたしはその場に崩れ落ちて、土ブロックの上で完璧なジャンピング土下座を決めた。額を地面に擦り付けながら、わたしは心の中で血の涙を流した。

 

 こんなに美しい大団円を迎えたのだ。死んだはずの親父に会えて、幼馴染たちも救えて人類の未来は明るい。だからこそ。だからこそこの感動のフィナーレに免じて今日だけは許してほしい。土下座ならいくらでもする。

 

 

「「「ぎゃーぎゃーぎゃー」」」

 

 

 でもやっぱり説教はやめて欲しい。




物語は、遂に——
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