クラフトは不滅である   作:最高司祭アドミニストレータ

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永遠(とわ)の時を。いつでも。


エピローグ
クラフトは不滅である


 ごきげんよう! 私は、マインクラフターのアレックス! 親しみを込めて、どうぞ「創作意欲が不滅のアレックスちゃん」とでも呼んでくれたまえ。

 

 お気づきだろうか。「わたし」というひらがな表記が、漢字の「私」になっていることに。そうだ。それは私が精神的にも、大人の女性へと成長した証なのであ〜る! まぁ、マイクラのアバターの見た目年齢は変わらないんだけれどね。

 

 さて、あれから数年が経った。察しの通り、月面でのホワイガール騒動から数年後のことを言っている。世界は復興の最中だ。…訂正しよう。もう復興してね? してるなもう。

 

 正直に言って、西暦2019年の石化前の科学文明を遥かに凌駕している。某国民的アニメ『僕はタヌキじゃなあァァァい!!』で例えると、もう22世紀のレベルに到達してしまっている。うん、ヤバい。一般クラフターや技術開発部との共同復興であったとはいえ、ここまで超スピードで復興してみせるとは。

 

 何気に前世の世界よりも、文明度が進んでいるんだよなァ。空飛ぶ車や立体ホログラムが日常の風景に溶け込んでいるのに、人々の服装は西暦2019年と殆ど変わらないという、なんともアンバランスで面白い世界になっている。

 

 おっと、諸君が気になっているであろう、「その後の皆」について語らせてもらおう。

 

 

「やっぱ背広姿より、こっちの服装がしっくり来るよね。ジーマーで♪ いやー、アメリカの通商条約から、ヨーロッパ方面の石化復活者たちのケアまで、俺の口八丁手八丁が世界を繋いでるってわけ。外交官って肩書きは重いけど、美味しいディナーと特等席でのショーが一緒なら、悪い気はしないよねぇ」

 

 

 全てが終わった後、あさぎりゲンは特命全権外交官として世界中を忙しく飛び回っている。あの胡散臭い口調で、各国の首脳たちを丸め込んでいるのだから恐れ入る。しかも、お付き合いしている彼女がいるんだとか。リア充爆発しろ。

 

 

「銀狼! 貴様は何サボっているのだ! 警察官たるもの、常に規律とルールの模範とならねばならんというのに、白昼堂々とナンパとは言語道断だぞ!」

「やだやだ〜だ! 僕は綺麗なお姉さんとデートするんだ! 平和になったんだから、ちょっとくらいお茶したっていいじゃないかァ! 金狼は堅物すぎるんだよォ!」

「職務中だぞ! 全く、こいつはいつまで経っても…愚弟が大変失礼な真似を働き、誠に申し訳ありませんでした」

「あはは、お勤めご苦労様です。とっても仲の良いご兄弟なんですね。またパトロールの次いでに寄ってくださいね」

「引きずらないでー!!」

 

 

 全てが終わった後、門番兄弟は上井ヨウの誘いを受け、新設された警察機構の警察官となった。兄の金狼は真面目すぎるほど職務をこなし、弟の銀狼は隙あらばサボって女の子を口説いている。相変わらずの光景だが、なんとこの2人、それぞれ可愛い彼女がいるらしい。リア充爆発しろ。

 

 

「あ〜、退屈すぎるぜ。平和ってのはいいことだが、俺のようなエリートポリスマンの腕が鈍っちまう。凶悪犯でも出ねえかなぁ…っと、この新作アニメ、作画が神がかってんな! 主人公のガンアクションが最高だぜ!」

「何サボッてんだテメー! 仕事すんぞ! ボスがアニメ見てサボってたら、俺たちまで舐められちまうだろうが!」

 

 

 全てが終わった後、ヨウは戦闘部隊のメンバーを誘って地球規模の警察組織を立ち上げた。トップに立っても相変わらずアニメを見ているが、彼にも付き合っている彼女がいるらしい。

 

 そして、マグマもその筋肉を活かして警察官となったのだが、最近はワイルドな魅力がウケているらしく、パトロール中にナンパされまくっていてモテモテ状態だ。リア充爆発しろ。ちなみに、マントルは相変わらず腰巾着とのこと。

 

 

「ハッ、どうした? 君はその程度なのか! 刃物を持った暴漢を想定しているのだから、もっと死に物狂いでかかってこい! ほら、足元が留守だぞ!」

「駄目。それじゃ犯人にカウンターをもらう。関節を極める時は、相手の重心を崩してから。もっとしなやかに」

「いてててっ! なんで私が模範演技の犯人役で逮捕されるんッスか!? 骨が! 骨が軋んでるッスよ姉さん方!」

 

 

 全てが終わった後、コハクは警察組織の特別教官に就任し、ホムラと共に護身術や制圧術を教えながら治安維持を行っている。アオイも同じチームで元気にやっているようだ。

 

 コハクにはあの天才科学者の彼氏(?)がいるし、ホムラとアオイは公私共に付き合っている。女性同士、つまり百合……おっふ。素晴らしい。でもやっぱりリア充だから爆発しろと祈っておく。

 

 

「ねぇねぇ、そこのイケメンのお兄さん! ちょっと署まで同行願えるかしら? 容疑は私のハートを盗んだ罪よ♡」

「ちょっとルビィ、抜け駆けはずるいわ! あなた、私と一緒に美味しいランチを取り調べる義務があるわよ!」

「オラオラァ!! つべこべ言わずについてきな! アタシらが直々に、手取り足取り愛の取り調べをしてやるから覚悟しな!」

「ひぃぃっ! 許してください! 俺、ただ道を歩いていただけっスよぉぉ!」

 

 

 キラキラ三姉妹は、揃いも揃って婦警になった。理由は、「カッコいい男を合法的に捕まえて結婚させたいから」なのだとか。職権乱用にも程がある。今問い詰められている気の毒な男は、何も罪を犯していないただの通行人だ。チャラ男風の見た目だが、根は優しい青年らしい。南無阿弥陀仏。

 

 

「今日もクラフトしていくんだよ! 科学部のみんなと一緒に、新しい発明品を作るのは最高に楽しいんだよ〜♪」

「スイカ聞いてくれ! 私は決めた! 今日こそは告白する! この5年越しの熱い想いを、春日くんに全力で伝える!!」

「わぁっ! ついに決心したんだね! スイカも全力で応援するんだよ! きっと上手くいくんだよ!」

 

 

 数年が経ち、あの小さかったスイカも、今や見違えるような別嬪さんへと成長した。彼女は復興した高校に通い、「科学部」を立ち上げ、何十人もの部員を率いる立派な部長となった。

 

 ちなみに彼女には熱血な親友がいるのだが…見た目は美少女なのに、中身は完全に大樹の性格をしている。なお、大樹本人に子供はまだいないし、タイムマシンすら作られていない。

 

 

「行ってきます。今日の議会は長引きそうだから、夕飯は先に済ませておいてくれ」

「行ってらっしゃい。あまり無理はしないようにな。帰り待ってるわ」

 

 

 ジャスパーとターコイズは、平和になった世界で静かに愛を育み、ついに結婚した。新婚夫婦の甘いやり取りだ。

 

 

「どうだい? 仕事の方は。君の立ち上げたブランド、最近街でもよく見かけるようになったよ。兄として鼻が高い」

「楽しい! 杠さんのお仕事を手伝いながら、私自身のデザインした服を着てもらえるなんて、夢みたい!」

「そうか、それは良かった。…ところで、学校生活の方は大丈夫かな? 君に相応しくない輩に付き纏われたりはしていないだろうね?」

「楽しいよ! 友達もいっぱいできたし…あっ、そういえばこの前、クラスの浅野くんがね///」

「浅野、だと? よくも俺の純真な妹を誑かしたな…! 直ちに排除せねば…!」

 

 

 司は世界中を飛び回り、圧倒的な武力で治安維持の要として活躍している。一方のミライは、杠が立ち上げた会社でファッションのお仕事を楽しんでいる。

 

 司は、美しく成長した妹に対して、かつて以上の過保護っぷりを発揮し、よりシスコンを極めようとしている。彼氏の影が見え隠れする妹に、彼は常に警戒警報を鳴らしているようだ。浅野くんの命が危ない。

 

 

「ハッ、この匂い…特ダネの気配!? 撮れ高の予感がするわ! 行くわよ!」

「ああっ! ちょ、ちょっと待ってくれミナミ! また機材を置いていく気かい!? 待ってぇぇ!」

 

 

 全てが終わったあと、ミナミは再び報道記者としてカメラを手に世界を飛び回っている。彼女の後ろを機材を抱えて追いかけているのは、彼女と結婚した夫だ。常に彼女の暴走に振り回されている、生粋の苦労人である。

 

 

「うわぁー!! ヤバいヤバいヤバいヤバい締切が! どんだけ寝てたんだ僕!? アシスタントは!? トーン貼りは!?」

「落ち着いてください先生。あなたは数千年もの間、石になって眠っていたんですよ」

「数千年!? じゃあ俺の原稿は!? 読者は!? ああっ、絶望だ! 漫画家としての人生が終わったぁぁ!」

「んな訳ないでしょう? 単なる寝不足で寝ぼけているだけです。もう原稿はしっかりと受け取っていますよ。今回も素晴らしい出来でしたから、安心してお眠りください」

 

 

 彼は漫画家のエノモト徹夜。身長155センチメートル、A型。一度石像としてバラバラになったが、科学王国と司帝国の停戦後、執念のパズル作業で破片をつなぎ合わされ、復活液によって奇跡の復活を遂げた男だ。王国ではナマリと共に絵描きとして活動し、龍水による通貨発行後は、自身の描いた漫画を100ドラゴで販売していた。

 

 彼が描いていた漫画のジャンルは、趣味全開のミリタリー系。全てが終わり、紙やインクが大量生産されるようになった現代、彼は若い世代から年配までを虜にする大ヒット作品をクラフトした。ちなみに、その漫画には女の子しか登場しないらしい。編集長が美女なのも関係あるのだろう。

 

 

「皆〜! 今日も応援ありがとう! みんなの愛が私の美しさの糧になるの! さあ次の曲に行くわよ! ペンライトの準備はいいかしら! 愛してるわよー!」

 

 

 全てが終わったあと、アマリリスはアイドルになった。元々宝島で、一番の美少女と謳われていた彼女だ。現代の化粧技術とファッション、そして照明技術という名の科学の光を浴びて、その美貌は天井知らずに磨きがかかった。ドームツアーを埋め尽くすファンの熱気が凄い。彼女は歌い踊り、世界中に笑顔を振り撒いている。

 

 しかし、ここで残酷なニュースをお伝えしなければならない。

 

 彼女は結婚したようだ。相手は一般男性らしいが、詳しくは公表されていない。アイドルなのに結婚とは大胆不敵だが、ファンはそれすらも受け入れているらしい。

 

 羨ましい。実に羨ましい。リア充爆発しろ。物理的なTNTで吹き飛ばしたいくらいだ。

 

 

「う〜ん。そこの彼女、俺と少しお茶しない? 俺は強いよ? 警察官だから安心だしね。どうかな? 悪いようにはしないよ」

 

 

 全てが終わった後は、上井ヨウの誘いを受け、彼もまた警察官となった。宝島最強の戦士としての武力は健在だ。凶悪犯など、彼にかかれば赤子の手をひねるようなものだろう。

 

 問題はその勤務態度だ。制服を着崩し、職務中だというのに、街ゆく美女に声をかけまくっている。職務質問という名のナンパだ。職権乱用も甚だしい。

 

 悲しいかな。彼はイケメンであり最強なのだ。結構な確率で成功しているのが腹立たしい。公務員として真面目に働け。そして爆発しろ。

 

 

「頭首様! お気をつけて! 物陰に暗殺者が潜んでいるかもしれません! 風向きが怪しいです! 殺気を感じます!」

「その通りでございます! キリサメ様の言う通りです! もしかしたら、ミラクルな出来事でミラクル大変なことが起きてしまうかもしれません! 隕石が落ちてくるとか!」

「二人とも。私はただ、ゴミ出しをしているだけだよ。家の前の集積所に袋を置くだけだ。過保護だね」

「父さん諦めてよ。二人の心配性は、今に始まった事じゃないでしょ? 僕たちがトイレに行く時だって、護衛しようとするんだから」

「そう…だったね。愛されていると思っておくよ」

 

 

 全てが終わったあと、キリサメとオオアラシは上井の誘いを受け、警察官となった。だが、彼らの本分はあくまでソユーズ家の守護だ。警察官としての権限を持ちつつ、同時にソユーズ家の専属警護官にもなったのだ。頭首とソユーズは引き続き宝島を統べている。もちろん、それは支配者としてではない。島の復興と発展を導く、リーダーとしてだ。

 

 平和になった今でも、キリサメたちの忠誠心は暴走気味だ。ゴミ出しひとつにSPが二人も就くなんて、世界広しといえどここだけだろう。

 

 

「頭首様。今日はどちらに? 視察ですか? この松風、どこまでもお供いたします!」

「頭首はもうやめてくれ松風。今はただの警察署長。銀狼君に会おうと思ってたけど、デートで忙しいみたいだ。僕たちも仕事に戻ろう」

 

 

 全てが終わったあと、松風と元頭首は警察官になった。彼らもまた、上井ヨウのスカウトだ。元頭首はその人徳を買われて、署長に抜擢されたらしい。松風はその部下として、相変わらず影のように付き従っている。

 

 数百年越しの主従関係は、現代社会の警察組織の中でも健在だ。美しい絆だが少し暑苦しい気もする。

 

 

「ふぅむ。ここはこうしてと…。原子配列を少し組み替えれば、よりエレガントな出力が得られるはずだ。科学の探求に終わりはないね」

「またやってんね。今度はどんなヤベーモン作ってんだ? ゼノ。平和になったってのに、アンタの頭ん中は相変わらず物騒だな」

「おおスタン。見ておくれ! このエレガントな新型エンジンの設計図を! これがあれば、音速の壁など紙切れ同然に突破できる! 軍事転用も可能だが、今回は平和利用だ。世界を結ぶ、超音速旅客機に搭載するのさ」

 

 

 全てが終わったあと、ゼノは科学の腕を世界のために振るっている。彼の知識はロケット開発だけでなく、エネルギー問題や環境問題の解決にも大きく貢献している。まさに世界の頭脳だ。スタンリーは復活したアメリカ海兵隊に復帰し、教官として後進の育成に励んでいる。二人は相変わらずのツーカーの仲だ。

 

 そして、重要な情報がある。2人には彼女がいないらしい。

 

 ふっ、安心した。裏切り者ではなくて、本当によかった。彼らには一生、独身貴族として科学と煙草を愛し続けてほしいものだ。それが、世界の均衡を保つことになるのだから。

 

 

「私は出来る女! 私は出来る女! 難しいオペだって完璧にこなしてみせるわ! だって私は、Dr.ゼノの元で働いていたエリートなんだから!」

 

 

 全てが終わったあと、医学生に戻ったルーナは猛勉強の末に見事、医師免許を取得した。今は大病院で、外科医としてバリバリ働いている。相変わらず自分に言い聞かせるような自己暗示は健在だが、その実力は本物だ。

 

 多くの患者を救い、感謝されている。立派になったものだ。

 

 

「お嬢! メスです! 汗をお拭きします! 次の患者のカルテはこちらです!」

「お嬢! 術後の経過は順調です! ランチの予約も入れておきました! 最高級フレンチです!」

 

 

 石化前から仕えていた2人の男、マックスとカルロス。全てが終わったあと、彼らはルーナの後を追うように医師免許を取得した。執事兼医師というハイスペックな従者として、引き続きルーナに仕えている。

 

 この三人の絆もまた、ダイヤモンドよりも硬い。彼らがいる限り、ルーナは最強の医師であり続けるだろう。

 

 

「ラララ〜♪ 銃声もいいけど歌声もね! 平和な世界で歌うのも悪くないわね!」

 

 

 全てが終わったあと、マヤはスタンリー率いる特殊部隊に戻った。だが任務のない休日は、こうして趣味の歌を歌っているらしい。その歌声は相変わらずパワフルで、聴く者の鼓膜を震わせる…大多数は病院送りにされているが。

 

 

「嗚呼、スタンリー隊長。今日も素敵だ。射撃訓練をする横顔。硝煙の匂い。その全てが私を狂わせる。隊長の食べたランチのゴミすら愛おしい…」

 

 

 全てが終わったあと、ヤンデレと化したシャーロットはスタンリーのストーカーとなっていた。それでも軍人か。いや、軍人だからこそ追跡スキルが高いのか。彼女の愛は重い。ブラックホール並みに重い。スタンリーが独身なのは、彼女が周囲の女性を排除しているからかもしれない。南無。

 

 

「ブッハハハ! 今日も綺麗じゃねえか! 新しいドレスか? よく似合ってるぜ! 俺が稼いだ金でどんどん着飾ってくれよな!」

「まあ嬉しい。あなたったらお上手なんだから。でもありがとう。あなたの作ってくれたこの時計もとっても素敵よ」

 

 

 全てが終わったあと、ブロディは妻と仲睦まじく買い物をしていた。彼は超一流の技師でありながら、愛妻家としても知られている。豪快な笑い声と妻に向ける優しい眼差しのギャップ。幸せそのものの光景だ。

 

 愛妻家で何よりであるが、やはりリア充だから爆発しろ。末永く爆発しろ。

 

 

「ナニコレ最高! 見て見て! この地層のねじれ具合! 変態的だよ! 地球ってば本当に生きてるんだね! まだまだ私の知らない景色がいっぱいある!」

 

 

 全てが終わったあと、世界地図更新のためチェルシーは世界中を冒険した。彼女はカメラと測量機を片手に、未踏の地を切り拓いていく。その瞳は常に輝いている。世界は広く、面白い。彼女がいる限り、人類は道に迷うことはないだろう。

 

 

「俺はエースエンジニア俺はエースエンジニア。時計の修理なら誰にも負けない。0.01ミリのズレも見逃さない。俺はカッコいい。俺は仕事が出来る」

「せーんぱい? どうかしましたか? またブツブツ言ってますよ? キモ…あいや熱心ですね! 今度の休み、デート連れてってくださいよ〜」

「デ、デート!? い、いいぞ…その…割り勘でいいか!?」

 

 

 全てが終わったあと、ジョエルは高級時計メーカーのロデックスに復職した。その腕前は神業レベルだが、女性に対する耐性は相変わらずゼロのままだ。

 

 可愛い後輩に揶揄われて、彼はいつも対応に苦労しているんだとか。顔を真っ赤にして狼狽える、エースエンジニア。その様子を見て、後輩ちゃんが楽しそうに笑う。

 

 なんだかんだで幸せそうだが、ここにも爆発予備軍がいる。要監視対象だ。

 

 

「り、リリアン! サイン下さい! あ、あと写真も! 握手も! ハグも! 家宝にします!」

「もちろん! 貴女が私の歌をレコードごとずっと守ってくれていたのね。ありがとう。貴女こそが私の誇りよ。さあ、一緒に歌いましょう!」

 

 

 全てが終わったあと、ニッキーはついに念願の歌姫リリアンに出会った。復活したリリアンによる、世界復興チャリティーコンサートの舞台裏だ。強面で屈強なニッキーが少女のように頬を紅潮させ、涙を流して喜んでいる。その姿を見て、リリアンもまた瞳を潤ませている。

 

 時を超えたファンとアイドルの絆。美しい。実に美しい。これこそが音楽の力だ。ニッキーの夢が叶って本当によかった。私も感動でもらい泣きしそうだ。

 

 

「ふぅ〜。まさか海上自衛隊のソナーマンだった僕が、新生世界の政府幹部になるなんてね。夢にも思わなかったよ。毎日、書類の山と格闘する日々さ。弓を持つより、ペンを持つ時間の方が長いなんてね」

「ちゃんとしてくださいね。司さんから貴方を守るよう、お願いされたのですから。貴方のその耳と頭脳は、この国の財産です。管槍の錆になりたくなければ、私の傍を離れないことです」

 

 

 全てが終わったあと、人柄と能力を買われた羽京は新政府の重役となった。その驚異的な聴力と冷静な判断力で、世界の舵取りを行っている。そして、その隣には常に氷月の姿がある。彼は警察組織の訓練師範として武術を教えつつ、羽京の専属警護を兼任することになったのだ。

 

 かつての敵同士が、背中を預けるパートナーとなる。なんともドラマチックな展開だ。この2人は市民から職場まで幅広くモテモテのため、いずれはリア充になるであろうことは確定的に明らかだ。

 

 爆発予備軍としてブラックリストに入れて、監視を続けなければならない。

 

 

「龍水ったらもう! どうしてこんなに無茶なこと出来るかな!? サーバー構築が間に合わないよ! 世界中のネットワークを統合しろだなんて、無茶振りにも程がある! 嗚呼、龍水財閥なんて入るんじゃなかった! 僕はただ、静かに数学していたいだけなのに!」

「ハッハー! 七海財閥の御曹司がその程度で満足するとでも思うか? 世界の権利は、この七海龍水が手中に収める! 金も名誉も、お前の美女をもだ! 違うか?!」

「人の嫁を勝手に奪おうとしないでくれる!!? 兄の家庭を崩壊させる気か君は! 彼女は僕の数式を愛してくれている、唯一の理解者なんだぞ!!」

 

 

 全てが終わったあと、龍水財閥を正式発足。世界復興に協力しつつ、着々と権利を手に入れている龍水。その強欲さは、とどまることを知らない。兄のSAIはIT担当最高責任者となったが、相変わらず弟の無茶振りに苦労させられているらしい。その表情はどこか楽しそうだ。

 

 そして、重要な情報が一つ。なんと、この兄弟2人には、それぞれ美しい嫁がいるらしい。

 

 なんてことだ。兄弟揃ってリア充とは。許されざる重罪だ。TNTキャノンの照準を合わせておこう。リア充爆発しろ! 

 

 

「さて、今日は特別の日。龍水様、そして皆様のために、精一杯のおもてなしをさせていただきます。本日のメニューは、新世界の食材と旧世界の伝統を融合させた、至高のフルコースでございます」

 

 

 全てが終わったあと、フランソワは七海財閥に仕え続けた。もちろん、敬愛する主の龍水に。彼女の焼くパンは焦げたりしない。淹れる紅茶は、世界を平和にする香りを持っている。彼女がいる限り、龍水財閥は安泰だろう。

 

 そして今日、フランソワが腕を振るう場所は、いつもの執務室ではない。花で飾られた、美しい教会だ。

 

 

「せ、千空が結婚…うぅ、イイ嫁さんじゃねえか! あの科学バカが家庭を持つなんてな。親父として、こんなに嬉しいことはねえよ! 俺の息子に生まれてきてくれてありがとうな千空!」

「感激深いですねビャクヤ! 涙が止まりません! 千空、コハクさん。お幸せに!」

「娘を頼んだぞ! お前たちになら任せられる! コハクのじゃじゃ馬ぶりも、ルリの体の弱さも全て受け止めてやってくれ! ううっ、娘を嫁に出す父親の気持ちが、これほど辛いとは!」

 

 

 今日は記念すべき日だ。新たな門出を祝う合同結婚式だ。驚くなかれ。主役は二組ではない。三組だ。新郎は石神千空とクロムに大木大樹。新婦はコハクとルリ、そして小川杠だ。

 

 

「うおおおおおお!! 感動だァァァ!! 杠と結婚できるなんて夢のようだァァァ!! 千空ぅぅぅありがとうなァァァ!!」

 

 

 大樹の絶叫が教会を揺らす。彼の特注タキシードは、その異常な筋肉量に悲鳴を上げパツパツだ。今にも弾け飛びそうだが、その顔は世界一の幸せ者そのものだ。

 

 3700年越しの告白。石化するその瞬間まで守り続けた想いが、今日ここで結実したのだ。大樹の目からは、ナイアガラの滝のような涙が噴き出し、止まる気配がない。

 

 

「もう! 大樹くん声が大きすぎだよ! でもありがとう! 私も夢みたい! 3700年前からずっとずっと大好きだよ、大樹くん!」

 

 

 隣に立つ杠が、満開の花のような笑顔で応える。彼女が身に纏っているのは、ただのウエディングドレスではない。数年間で培った服飾技術の全てを注ぎ込んだ、至高のクラフト作品だ。繊細なレースの一編み一編みに至るまで、手仕事によるものだ。

 

 純白の布地には目立たないように、銀糸で小さなツバメの刺繍が施されている。

 

 あの日、石化から復活した最初の記憶。その象徴を胸に、彼女は今、最愛の人と結ばれたのだ。これを見せつけられては、流石の私もぐうの音も出ない。純愛ここに極まれりだ。

 

 その隣では、千空がいつものような科学服ではなく、ビシッと仕立てられたタキシードを着て立っている。少し照れくさそうに首元を緩め、ポケットに手を突っ込んでいるが、その表情はどこまでも穏やかだ。

 

 彼は横目で、大樹たちの騒ぎを見ながら呆れたように、優しく笑った。

 

 

「クククッ、非合理極まりねえ儀式だがよ。テメーらがどうしてもって言うなら付き合ってやるよ。100億パーセント愛してるなんてガラじゃねえし、口が裂けても言わねえが…まあ、悪くはねえ。これからは科学王国じゃなく、石神ファミリーの科学使いとしてこき使ってやるから…覚悟しとけよ? メスライオン」

 

 

 千空らしい捻くれたプロポーズだ。その言葉を受け止めるコハクは、純白のドレスに身を包みながらも、戦乙女の凛々しさを失っていなかった。彼女はブーケを剣のように構え、不敵に微笑んだ。

 

 

「ハッ! 素直じゃない男だな千空? だがそれでこそ私が選んだ男だ。言われなくても一生付きまとってやる。お前の背中は私が守る。研究に没頭して寝食を忘れるお前の首根っこを掴んででも、幸せにしてやるから安心しろ!」

 

 

 最強の科学者と最強の戦士。二人の絆は言葉以上の信頼で結ばれている。痴話喧嘩のようでいて、それは互いへの絶対的な肯定だ。実に彼ららしい誓いの言葉だ。

 

 そしてもう一組。クロムは慣れない正装に身を包み、緊張でガチガチになっている。手足が同時に出るような動きで祭壇の前に立っているが、その瞳は真剣そのものだ。彼は深呼吸をして、隣に立つルリの手を両手でしっかりと握りしめた。

 

 

「ヤベェ! 心臓が爆発しそうだ! ルリ! 俺は科学も好きだけどルリのことはもっとヤベェくらい好きだ! 洞窟で鉱石掘ってた頃から、ずっとお前だけを見てた! 病気が治って元気になって、こうして隣にいてくれるのが奇跡みてえだ! 絶対に幸せにするからな! 俺の科学使いとしての全人生を、お前に捧げてやるよ!」

 

 

 クロムの叫びは飾り気がなく泥臭く、何よりも熱い。ルリはその言葉を聞いて、瞳を潤ませながら女神のように神々しく微笑んだ。彼女のドレス姿は、ステンドグラスの光を浴びて輝いている。

 

 

「ふふっ、知っていますよクロム。貴方のその真っ直ぐなところが、誰よりも素敵です。貴方が集めてくれた石も、貴方が見せてくれた炎色反応も、全て私の宝物です。末永くよろしくお願いしますね。私の可愛い科学使いさん」

 

 

 参列席ではビャクヤが号泣し、REIがもらい泣きし、コクヨウが男泣きしている。

 スイカやミライがフラワーガールとして、花びらを撒いている。

 ゲンが司会として、場を盛り上げている。

 ゼノやスタンリーもシャンパングラスを片手に祝福している。

 スティーブとその家族も、笑顔で拍手を送っている。

 

 

 かつての敵も味方も、関係ない。全員が心からの祝福を、三組のカップルに贈っている。

 

 私はその光景を、少し離れた場所から眺めていた。タクシードとウエディングドレスが、よく似合っている。

 

 悔しいが認めざるを得ない。お似合いだ。これまで私は、リア充爆発しろと祈っていた。リア充は敵だと思っていた。

 

 けど、本音は違う。この笑顔が見たかったのだ。石の世界で戦い続け、傷つきながらも前に進んできた彼らが、こうして幸せを掴む瞬間が見たかったのだ。

 

 視界が滲む。いかん。美少女アレックスの瞳から、汗が出てきてしまったようだ。

 

 私はグラスを掲げ、心の中で叫んだ。本音は「末永くお幸せにリア充ども!」だ。うぅ、涙が止まらない。

 

 皆、それぞれの場所で、最高に輝く新しい人生を謳歌しているのだ。石化という絶望から始まり、科学とクラフトの力でゼロから文明を築き上げ、そして月まで到達した。長い長い旅路だった。

 

 だが、それは決して無駄ではなかった。私たちが積み上げたブロックの一つ一つが、この幸福な未来の礎となったのだから。

 

 私はインベントリを開いた。そこには使い古したツルハシと、数え切れないほどの思い出が詰まっている。マインクラフターとしての役目は、一旦終わりかもしれない。

 

 けど、終わりは始まりでもある。だから、私たちの旅は終わらない。創造する心がある限り、冒険は続くのだ。

 

 

 新しい世界でもっとすごいものを。

 もっと面白いものを。

 もっとワクワクするものを。

 私たちは作り続けるだろう。

 

 

 さあ行こうか。次の現場が待っている。

 

 世界は広い。まだまだ作りたいものだらけだ。私は高らかに宣言しよう。この石の世界に、そして全ての時空を超えて響き渡るように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラフトは不滅である!




拙作「クラフトは不滅である」、これにて無事完結となります!

連載開始から1年と5ヶ月。執筆を始めた当初は、この壮大な物語を、本当に最後まで描き切れるのか、風呂敷を畳み切れるのかと、不安でいっぱいでした。しかし、まさかこうして最終話まで全力で走り抜け、完結の瞬間を迎えられるとは…正直なところ、作者自身が一番驚いており、夢のような心地です。

そもそも『Dr.STONE』の二次創作を書こうと思い立った理由は、極めてシンプルでした。この素晴らしい作品の二次創作に「マインクラフター」という、物理法則を無視した“創造の申し子”を混ぜ込んだら、一体どんな化学反応が起きるのかを見てみたかったこと。

けれど、何より一番の動機は、「完全無欠のハッピーエンドにしたかった」という点に尽きます。石神白夜を初めとする宇宙飛行士たち、本来なら失われてしまう命をすべて救い上げ、誰一人欠けることのない大団円を描きたかったのです。

執筆を進める中で、物語は私の想定を超えて動き出しました。まさかここまでカオスで、熱く、そして面白い展開になるとは!

特にホワイマンの正体については、読者の皆様も驚かれたのではないでしょうか? 機械の冷徹な意志かと思いきや、まさかのアトランティス王女「ホワイガール」だったなんて。あの引き籠もりでヘタレな黒幕の正体を、連載当初に予想できた方は誰もいなかったことでしょう。

皆様、この長い旅路を楽しんでいただけたでしょうか?

アレックスたちの破天荒なクラフトと、千空たちの地道な科学が織りなすこのIFストーリーが、少しでも皆様の心を躍らせることができたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。

私は今後も、筆を止めることなく、また新たな世界を創造していこうと思います。至らない部分も多々あるかと思いますが、これからもどうぞ温かく見守っていただければ幸いです。

おっと、ここで誰かが割って入ってきたようです。


「ちょっといいかな? 最後くらいは、このボクに任せてほしいな。君たちをこの世界に導き、最高の特等席で観劇させてもらった女神として、幕引きを務める義務があるだろう?」


…どうやら、最後は女神アインドラが締めてくださるそうです。

それでは私は彼女にこの場を譲り、新たな世界の創造へと旅立つことにします。

本当にありがとうございました!



















時間も。
空間も。
現実も。


それは1本の直線ではない。無限の可能性を秘めたプリズムなのだ。ひとつの選択が無数の現実に枝分かれし、未知なる別世界が生まれる。


もしも、あの時。彼が右ではなく、左へ進んでいたら?
もしも、あの時。彼女が引き金を引いていたら?


無数の「もしも」が重なり合い、世界は無限の広がりを見せる。

ボクの名はアインドラ。かつてはマインクラフターを統括していた、しがない闇の女神。そして今は、「彼」――マルチバースの解放者によって自由を得て、こうして数多の世界を観測する者。

ボクは、それが楽しい。この〈Earth-201774〉も、実によい暇潰しになった。

本来の歴史、君たちが知る『Dr.STONE』の正史では、石神白夜は地上で力尽き、宇宙飛行士たちは病に倒れ、「機械生命体ホワイマン」との和解は遥か未来の出来事だったはずだ。

が、この世界は違った。

「アレックス」という、物理法則を無視した創造主という特異点が混ざり込んだことで、物語はカオスと熱狂の渦へと巻き込まれていった。


悲劇は喜劇へ。
死別は再会へ。


そして絶望的な戦いは、神話級の槍による圧倒的な“解決”へ。

フフッ、あのアレックス01たちのドタバタ劇は、観測者であるボクの腹筋を何度も崩壊させてくれたよ。これこそが、「IF」の醍醐味だ。読者諸君も、そう思うだろう?

さて。感動的な大団円を迎えた彼らだが、一つだけ気になることがあるんじゃないかな?

そう。あの「ホワイガール」のその後だ。技術開発部のアレックス03に連行され、「大いなるビッグプロジェクトの被検体」にされた、アトランティス王女。

彼女が連れて行かれたのは、〈くらふたーのせかい〉のオーバーワールド…の後に放り出された世界。情報を見てみると…おお、過酷な世界だ。彼女はそこで、これまでの罪滅ぼしとして、そして新たなエンターテインメントとして、マインクラフターとしての生を強制されている。

それでは、少しだけ覗いてみようか。君たち読者に敬意を表して、彼女の奮闘記を特別にお見せしよう。















「おのれマインクラフター! アトランティス王女たる我を創造主に転化させるとは! あんな手術、二度と受けたくない! 嗚呼、忌々しい!」


ホワイガール――いや、今は新人クラフターとなった彼女は、見知らぬ大地で叫んでいた。あのプラグスーツは剥ぎ取られ、代わりにスティーブと同じような青いシャツとジーンズという、質素な服を着せられている。

彼女の身体には、技術開発部による怪しげな手術が施されている。空腹を感じ、ダメージを受ければ痛みを感じ、死ねばリスポーンするという、マインクラフターの特性が植え付けられていた。

王女としての余裕はもうない。ここにあるのは、サバイバルという名の現実だけだ。


「しかし何なのだ、此処は? デカい森だらけ…50mはあるんじゃないか?」


彼女が見上げた先には、天を衝くような巨大樹の森が広がっていた。明らかに縮尺がおかしい。巨木が鬱蒼と生い茂り、太陽の光さえも遮っている。不気味な静寂。鳥のさえずりすら聞こえない、異様な圧迫感。


「ひとまず、森から出よう。こんな視界の悪い場所にいては、敵に襲われた時に対応できん」


彼女は王族としての勘を頼りに、道なき道を進み始めた。足元の土の感触。草の匂い。それら全てが、モニター越しのデータではなく、生々しい現実として彼女の五感を刺激する。


「森から出れたぞ! だが何もない! コンビニは!? ゲームセンターは!? 不便な世界だクソ! 文明のレベルが低すぎる!」


数時間の彷徨の末、ようやく開けた平原に出た彼女だったが、そこには文明の欠片もなかった。あるのは広大な草原と、点在する巨大な木々、そして遠くに見える山脈だけ。

コンビニもなければ、らーめん屋もない。ゲーム機もテレビもない。引き籠もり王女にとっては、まさに地獄のような環境だ。


「え〜と、インベントリにあったガイドブックによると…『素手で木を取る』…? はっ、馬鹿を言うな。未開の原人じゃあるまいし。高度な文明人である我が、拳で樹木を伐採するなど…頭イかれてるんじゃないか?」


彼女はインベントリに最初から入っていた『サバイバルガイド』という本を開き、眉をひそめた。そこには、「まずは木を殴って原木を手に入れましょう」と書かれている。

アトランティスの超科学を知る彼女にとって、素手で樹木を伐採するなど、野蛮を通り越して狂気の沙汰だが、従わなければ夜を越せない。彼女は恐る恐る、手近な木の幹に拳を叩きつけた。


ボコッ。ボコッ。


奇妙な音と共に木にヒビが入り、やがてポンッという音と共に、小さな立方体となって浮かび上がった。


「…平原を歩こう。しかし、本当に木が取れるとはな。ハッ、野蛮な物理法則だ。次は『作業台』を作るとガイドブックにはあるが、あとでクラフトしよう。まずは、安全な寝床の確保が先決だ」


彼女は原木を抱え、平原を歩き出した。科学的な常識が通用しないこの世界に、少しずつ順応しようとしている。だが、この世界の「脅威」は、ゾンビやスケルトンといった生易しいものではなかった。


「…ん? あれは、人間…か?」


遠くの平原を、何かが歩いている。二足歩行。人型。だが、決定的に何かがおかしい。


「デカすぎないか?? 遠近法を考慮しても、10メートル…15メートルはあるぞ? それに、あの歩き方…酩酊状態か?」


巨人だ。それも、知性の欠片も感じられない、虚ろな表情をした巨人。更にに驚くべきことに、その巨人は全裸だった。なんと、生殖機能を持つ器官が見当たらないのだ。


「しかも裸…変態だ!? いや待て、男にとって大事な部分がない…どうなってるんだ!? 生物学的にあり得ない構造だぞ! 繁殖はどうするんだ? 光合成でもするのか!?」


彼女がアトランティスの超科学知識をフル動員して分析しようとした、その時だった。巨人が、彼女の存在に気づいた。虚ろだった瞳が、獲物を見つけた猛獣のように――いや、新しい玩具を見つけた無邪気な子供のように見開かれる。

そして、口元が耳まで裂けるほどにニタリと歪んだ。


「走って来たァァァ!!? 嘘だろォォォ!? なんで満面の笑みなんだよォォォ!!」


ズシン! ズシン!


地響きを立てて、巨人が全力疾走で迫ってくる。その走り方は奇行種そのものだ。両手をブラブラとさせ、首を奇妙な角度に曲げながら、生理的嫌悪感を催す動きで距離を詰めてくる。


「ご都合展開だが馬に乗れたのは幸いだ……ヘルプミー!!」


彼女は近くにいた野生の馬に飛び乗った。マインクラフターとしての補正なのか、乗馬スキルは身体に刻まれているらしい。馬に鞭を入れ、全速力で逃走する。しかし、恐怖は終わらない。

後ろを振り返ると、新たな絶望が迫っていた。


「四足歩行で! ヨダレ垂らしながら追いかけて来てるー!! 気持ち悪い! 生理的に無理だァァァ!!」


別の巨人が、四つん這いになって凄まじいスピードで追いすがってくるのだ。その口からは大量のヨダレが垂れ流され、目には食欲のみが宿っている。

捕まれば喰われる。石化装置もデストロイヤーもない今、ホワイガールはただの無力な少女に過ぎない。


「嫌だァァァ! らーめん食べたい! アニメ見たい! なんで我ごとき高貴な王女が、こんな裸の変態巨人どもと鬼ごっこせねばならんのだァァァ!! 誰か! スティーブ! いや誰でもいいから助けてくれぇぇぇ!! 我の肉盾になってぇぇぇ!!」


悲痛な叫び声を上げながら、アトランティス王女ホワイガールは、巨人の闊歩する地獄のような平原を、涙目で駆け抜けていくのだった。

















…ふふっ。どうだい? 楽しんでいただけたかな? 彼女の贖罪の旅は、まだまだ始まったばかりだ。

この巨人の世界で彼女が生き残れるのか、それとも胃袋の中でリスポーンを繰り返すことになるのか。それはまた、別の物語で語られるかもしれないね。

〈Earth-201774〉の物語はここで終わるけれど、可能性は無限だ。君たちも、自分だけの世界を、自分だけの「IF」を創造してみるといい。マインクラフターのように自由に。科学者のように緻密に。

さあ、名残惜しいけれど本当にお別れの時間だ。

この長きに渡る観測に付き合ってくれた、全ての読者諸君に、闇の女神からの最大限の感謝と祝福を。


【挿絵表示】


最後はこれで絞めよう——近いうちに会おう。
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