クラフトは不滅である   作:最高司祭アドミニストレータ

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文面がヤベーです。新しい人物やら用語やら突然登場します。ご了承ください。また今話より《くらふたーのせかい》かっこは〈〉になります。


レコード

 どうも皆さんごきげんよう。わたしはマインクラフターのアレックス。

 嬉しいニュースが飛び込んで来た。どうやら司帝国は数の武力で、この石神村を制圧するそうだ。帝国の総力を挙げた精鋭、大部隊で。

 

 vs司帝国が待ち遠しい。このニュースは女忍者、ホムラから入手したモノだ。

 ホムラは司帝国のメンバーだったが、それはもう過去のこと。表向きはそうであって、今や科学王国民だ。

 石神村の監視役である彼女はもう一人のわたし(アレックス02)より、欺瞞情報を送る役割を与えられている。とどのつまり二重スパイ。

 

 裏切ることはないだろう。女忍者はもう、ケーキ以下洋菓子の虜となった。人質が洋菓子というパワーワード。

 

 さて科学王国は携帯電話作り、略してケータイのクラフトに着手した。

 なぜこれ作ってるのか言うと…この度、科学王国は司帝国に対し、先制攻撃する運びとなりました! 

 そして司帝国を吸収して科学王国に…暗黒微笑が止まりませんなァ。

 

 人類200万年最強の武器、通信技術を作り出す。言い出した千空は興奮している。流石だ。

 村人は妖術だと騒ぎ、驚き絶句した。とある漫画の言葉を借りると、『どよどよ』してた。まぁ分からんでもない。前世のわたし、幼少期の時は『よ、よよよよ妖術ダァァァ!?』であったし。

 

 上手いこと連携すれば、『司帝国! 無血開城成功!?』だって夢ではない。

 それには内通者の協力が必要不可欠だが、これについての問題は解消済み。司帝国には大樹、杠、そしてシルファ先生の三人がいる。彼らもまた、科学王国民。

 

 ケータイ作りは順調…と程でもないが、ちょっと躓きながらも進んでいる。

 

 電気を溜めるバッテリーが出来て、マンガン電池も出来た。プラスチックと電線も。

 躓いたのは真空管だ真空管。高熱で電子を放出し電流の向きを揃えたり、増幅させることが出来ちゃう電子管。

 

 配線の膨張やらフィラメントやら、これがもう中々。

 

 けれど何だかんや、洞窟探検したことで真空管問題は解決した。タングステンが手に入ったからである。

 鉱石採掘は千空と創造主とで行って来た。興奮が止まらなかった。やはりクラフターが採るだけあって大きい。良いことだ。 

 ちなみにタングステンもそうだが、地球の鉱石は〈くらふたーのせかい〉には無い…あっいや、最近『新たな鉱石発見』ってあったしあるかも。

 

 そうして真空管が出来上がった。

 

 ちょうどその時、というより前日は千空の誕生日だった。ので天体望遠鏡、天文台をサプライズプレゼントした。

 その日は皆して祝った。嬉しさで泣いた千空が記憶に新しい。

 

 誕生日を祝ったその翌日である。無限の彼方に声を届ける現代戦、最強武器ケータイが遂に爆誕した。

 見た目は現代の、ではなかった。世界大戦時の、でもない。

 それでも完成したことには変わりない。マインクラフター含め、誰もが歓喜した。

 

 

「何事?」

「創始者様の声が聞けるらしいぞ!」

「えっ、創始者の!?」

 

 

 今現在、我々は即席再生機でレコードを聞くところである。

 レコードは瓶か何かで作られた物であり過去から未来、とどのつまり現代へ贈られたタイムカプセルだ。

 発見場所は墓地だった。墓石の内側にあったとは、たまげたものだ。

 

 あっ、わたしがもう一人います。

 

 

「おし! 回すぞ、銀狼」

「うん! ぐるぐるぐるぐる〜」

 

 

 クロムの慎重な手つきで、レコードに針が置かれた。

 

 

《──これを聞いている何百年後、何千年後のどなたかわかりませんが…私は宇宙飛行士の石神百夜と申します!》

「「「──ッ!!!」」」

 

 

 するとどうでありましょう。千空の父親、白夜の肉声が聞こえたではありませんか。すっごい。

 創始者の声が入っているという千空の予想、見事に的中したようだ。

 

 

「クククッ、懐かしい懐かしい声でクソ安心したわ」

 

 

 わたしは初めて聞く声だったが。

 

 

《なーんつってな! 堅っ苦し〜建前、ハイ終わり!》

「え、えぇ…」

《石化から自力で復活して、石神村ゲットして、今このレコード聴いてんのは…千空、お前だろ? 分かるんだよ…俺にはな♪》

 

 

 お見通し、ということか。

 凄いな百夜…これが父親か。

 

 

《千空、忘れんな。俺はずっと、ずっと──》

 

 

 感激深い。親は子を想い、愛している。子もまた、親を…。

 わたしの場合、親が『愛しのアレックスた〜ん! 愛してるぞ♡』でも、子は父親を『途中まではそうだけど、今は恨んでる』である。

 

 

《千空、もしもお前が、まだ村の仲間たちの心を掌握できずに困っていたら…これを聴かせるといい! 音楽の灯が消えた、彼らに…!!》

 

 

 聞き覚えのあるメロディーが響き出された。

 

 

「これが、歌…!」

「こんなの、綺麗過ぎるんだよ!」

「天女の声じゃわい!」

 

 

 銀狼が感動のあまり泣き、語彙力を無くしてる。

 クロムもだ。

 

 

「リリアンちゃんはオレらの時代でも、歌唱力トップの歌姫だから。そんなの聞いちゃったら、ね」

「ヤベー…人類の200万年、ヤベーよ! …千空! めっちゃ昔にはこんなヤベー音楽が沢山あったのかよ?!」

「ああ、音楽だけじゃねえ!」

 

 

 その通り、音楽だけじゃない。

 

 ゲーム。

 テレビ。

 漫画。

 映画。

 

 

「どいつもこいつも科学の進歩で作れるようになった、エンタメどもだ」

 

 

 リリアンの歌と同じくらい、世界には面白いモノが山程あった。現実は消えてしまったが、全部人類の心の中に残っている。

 

 

「テメーらに見せてやるよ! 司帝国ブチ倒して、世界中の石像復活させたらな」

 

 

 もしも本当に、人為的な事で石化現象が引き起こされたのなら。

 わたしは必ず…お仕置きしてやるゾ! 

 

 

「あっ、その、え、えと、それは」

 

 

 あっ、そういえば二枚目もあったな。レコードを交換っと。

 少しノイズが走る。

 

 

《皆さんごきげんよう! わたしは、マインクラフターのアレックス!》

「「「えっ?」」」

 

 

 すると、わたしの声が響いた……ハァ? 

 

 

《驚かれたことでしょう? なぜ石神百夜だけじゃないと? なぜ二枚目もあるのかと? フッ》

 

 

 …あれ? これはもしかしなくても? 

 

 

《わざと! そうわざと! レコード二枚クラフトしました! 二枚目はわたし創造主で、一枚目は創始者の…石神百夜ァァァ!! フッフゥー!!》

「「「…」」」

 

 

 あっ、完全にアレックス(わたしの声)ですねハイ。

 そして殺到する視線。いやはや、人気者は困っちゃうな。

 …一切記憶にございません。知らんぷりしたい。

 

 

《人類とは何か? それは──》

 

 

 何か始まった。

 かくかくしかしか、要略すると人類って凄いんだよを力説してる。

 

 

《ロケットで月まで行ったスゲー種族なのです!》

「わたしだこれ!?」

 

 

 犯人が見つかった。過剰なまでに反応。軍服のわたしだったかぁ。

 

 

《前世では人間だったわたしは、転生して創造主! ならば! 文明復興させようと決意した訳なのですが…》

「や、やめろ…やめてくれェェェェ!!!」

《3700年間ド忘れてしちゃいました! テヘペロ》

「ちゃ、ちゃうんスよ! これには訳あってですね!!」

 

 

 てかよく見たら軍服の上から白衣を纏っている。このことからアレックス02ではなく、技術開発部のアレックス03だと分かる。

 

 

「こ、こここれをクラフトしてましてですね!!」

 

 

 そう言って出されたのは、上半身の人間そっくりロボットだった。それを見て、千空が『オレが白夜の職場で見たロボットの模型じゃねえか!?」と驚いていた。

 白夜に誘われたとのことで曰く『着衣水泳と千空のエピソードで宇宙飛行士になれたお礼』だと。

 もう一人のわたし(アレックス03)だけしか作ってないと思っていたが、当該模型の先駆者は白夜だったのか。

 

 

《〈くらふたーのせかいで〉で軍隊ごっこにハマってたぜ!》

「ギャァァァ!?!?」

 

 

 他にも理由あったか。

 何してんの?? 

 

 

《あっ、最近ね、石神村に遊びに来ました!》

「くぁwせdrftgyふじこlp!?!?」

 

 

 遊びに来ただけ?? 

 被告人は有罪だ! 

 

 

《アデュー!》

 

 

 ツッコミしていると、再生が終わった。

 もう一人のわたし(アレックス03)は土下座を披露し。

 もう一人のわたし(アレックス02)は『あちゃー』してる。

 

 

「皆様方、どうかお許しください。この通りですので」

 

 

 …スッゴイ目つきで見てる千空とゲンと、村人達。

 全く、何をしてるんだか……わたしにも来てるなこれ。

 ちゃ、ちゃうんスよ。わたしだけどわたしじゃないんスよ。確かにわたしはやるけどわたしじゃ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■□■□■□

 

 

 

 

 その後、何があったか。

 正直に言おう。あまり言いたくない。

 創造主としての威厳に関わるからだ。いや、もう威厳なんて欠片も残っていない気もするが。

 

 ただ、事実として記録に残すならば…。

 わたし(01)、軍服のわたし(02)、そして白衣のわたし(03)。

 この三人の『アレックス』は千空とコハク、そして普段は温厚なカセキ爺さんから、こってりと、みっちりと、骨の髄まで響くような『お叱り』を受けた。

 

 絵面を想像してみてほしい。同じ顔をした三人の少女が、それぞれTシャツ、軍服、白衣という出で立ちで、神妙な面持ちで砂利の上に正座している光景を。

 シュールだ。シュールすぎる。

 

 

「テメーらなァ…。3700年だぞ? 3700年。その膨大な時間を、軍隊ごっことロボット遊びで潰したってのか? あ?」

 

 

 千空が仁王立ちで我々を見下ろしている。その目は笑っていない。100億%のガチギレである。

 

 

「ちゃ、ちゃうんスよ千空さん。わたし03はあくまで、白夜に付き合って…」

「黙れ。連帯責任だ」

「ひっ」

 

 

 白衣のわたし (03) が縮こまる。隣で軍服のわたし(02)が、「わたしは関係ない、わたしは後から来た援軍だ」と目で訴えているが、コハクの無言の圧力(手には木刀)の前に沈黙を余儀なくされている。

 

 そして、このわたし(01)。完全なる巻き添えである。冤罪だ。わたしはこの世界に来てから、真面目にサバイバルし、文明復興に尽力してきたはずだ。

 なのに、なぜ同列に並ばされているのか。

 

 

「お前たちは『創造主』なのだろう? ならば、もう少しこう…責任感というものを持ってだな…」

 

 

 足が痺れてきた。マイクラには『正座』のエモーションなんて実装されていないはずなのに、この世界の物理エンジンは無駄にリアルだ。血流が阻害され、感覚が失われていくデバフ『足の痺れ』が付与されている。

 

 創造主を、神にも等しい存在を、砂利の上で正座させて『お叱り』するなんて…人間とは、なんと罪深く、恐れ多い生き物なのだろうか! 

 バチが当たるぞ! クリーパーの呪いがかかるぞ! 

 

 

「…何か言いたげな顔だな、アレックス」

「ッ! ふ、ふざげでないです、ずびばぜん! はんぜいじでまず!!」

 

 

 わたしは即座に額を地面に擦り付けた。プライド? そんなものは、インベントリのゴミ箱に捨てた。右隣で02が、左隣で03が、同じように綺麗なフォームで土下座を決める。見事なシンクロ率だ。流石は同一人物。

 

 わたしたちは仲良く並んで、深い反省の色を示したのだった。




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