わたし、マインクラフターのアレックス。今、ツリーハウスでお留守番しているの。千空は今、鹿を仕留めに行っているんだぁ。
「そのツリーハウス、床だけなのだがな」
欠陥住宅だった。いや、これの前には欠陥住宅など可愛く見えてしまう。
そんな未完成ツリーハウスを見つつ、あの時の事を思い出す。出会ったもの束の間の時の、会話の一部を。
『人類を石化したの、テメーか?』
『君は何を言っているのかな??』
何故かわたしは、黒幕認定されてしまっていた。遺憾である。
『その服装に靴、テメーは科学者か?』
彼は語る。
全ての人類が石化してから三千と七百年。その年月は文明を建造物を、そして身に付けていた衣類を失った。
千空は身を以て、知っていた。
現代の建築物の名残はあるかもしれない。しかし少なくとも自分が目覚めた時、衣類と上履きは残っていなかったと。生まれたばかりの赤ちゃんのように、スッポンポンだったと。
なるほど、一先ず理解し…たかったなぁ。
いや、理解はしていた。のだが、改めて思う。わたしが《くらふたーのせかい》に行っている間、本当に何がどうなっていたんだと。
とりあえず、返答しておいた。
『わたしは石化など知らない。わたしは科学者でなく、マインクラフターである』
『わたしは地獄とも表現出来る異世界に行っていたから、文明が滅んでいたとは予想だにしてなかった』
『この服装と靴は貰い物だ』
千空は納得してくれた。するんかい。石化現象といった非現実的は出来事が起きたためか、異世界があるのは今更だろうがと。
ま、嘘は言っていないぞわたし。嘘は。
人類が突如として、石化した事を知らないのは当然。
地獄は《ネザー》。《ネザー》にはちょっとだけ、寄り道をしていた。飛行する豆腐──ガストと、野球してたのである。
剣で火の玉を返す、楽しい野球を。防具が無いままするのは、とても快感であった。一回死んじゃったけど、まぁよし!
それに服装と靴は、女神──アインドラより貰った物。言ってないとすれば『転生した』だが、さして言う必要は無い。重要度が皆無。
…で、だ。
このツリーハウス、是非とも完成させたい。『ツリーハウスの建築、頼むぜ』と仰せつかっているし。ちょうど良い。しちゃいましょう。やっちゃいましょう。うずうずが止まらん。
材料、集めねば。移動を開始する。
先ずは、木を伐採する。原木をだ。伐採は楽しいな。これが上位の鉄の斧、更に上位のダイモンドの斧であればスイスイ進むことだろう。
木の斧は、石の斧にアップグレードしてくれるだけに存在するもの。アップグレード後は用済みとなり、燃料源とする。
金の斧は……うん、耐久性が無さ過ぎる。木の斧のほうが高い。金の斧は基本的、装飾を中心に使われる。例えば防具立てに、とか。
そうこうしていると、気づけば1スタック集まった。
このくらいの原木があれば、十分事足りる。葉からドロップした、苗木を植えることも忘れない。スケルトンの骨をクラフトし、骨粉をホイ。よし、立派に成長した。同じくドロップした、リンゴを収集するのも忘れない。
…全く、建築する様も見学して欲しいものだ。頼んでも、あれだ。
『ククッ、テメーだけで出来るだろうが。それだけ見ればわかるぜ、オレは』
わたし、あれだぞ。ただ、原木を伐採していただけなのに•••。今度は絶対に見学させてやる。
ちょうどお腹が空いている。リンゴを食べるとしよう。いただきます…うむ、美味い!
リンゴを食べた後、建築を開始する。今回のツリーハウスは、木を使った材料で建築していく。作業台を地面に置いて、原木から木材をクラフト。ハーフブロックもクラフトする。
全部を木材にしてしまうのは、いただけない。ので、三分の一は残しておく。
『かまど』をクラフトし、燃料源として木炭を作る。一通り出来たら、それを松明にする。木炭一つと棒一つで、4つも出来る。お得である。
さて、床を斧で撤去しよう。荷物が無かったため、直ぐ撤去は完了した。これで、建築が始められる。
最初に支柱となる原木を適当な高さまで積み上げるのだが、今回の場合は積み上げることはない。ので、ハーフブロックを木の周りに取り付けるだけ済む。
ただ、注意が一点。
「ハーフブロック」を木に取り付ける時は下側でなく、上側に取り付けねばならない。
まぁ、その注意は些末なものだ。取り付け後は、3段上にツリーハウスの土台となる「ハーフブロック」を新たに取り付ける。
そこが出来た後ツリーハウスの土台に向け、「フェンス」を取り付けていく。
これで土台は出来た。では次だ。屋根と壁を作り、建物の形を仕上げていく。屋根にはクラフトした階段ブロックを使用、壁には続けて木材を使用する。
そう時間が掛かることはなかった。
高さ3ブロック、幅4ブロック、奥行き5ブロックが出来上がった。高さだけをメートル換算で例えるならば、3ブロックが3mある。このツリーハウスは、3人が生活しても問題ない空間を確保してある。詰めれば、後一人は大丈夫かも。それでも、狭くなることはないだろう。
建物としての全体の形が出来上がった後は、仕上げに移行する。
壁に穴を開けていた箇所には、板ガラスを填め……ようとしていた手を止める。
ふと閃いた。ここはトラップドアにするべきではないか、と。フェンスも確かに良いが、トラップドアを窓にしているツリーハウスも悪くない。《くらふたーのせかい》ではそうだったし。
よし、トラップドアに変更しよう。クラフトした板ガラスには申し訳ないが、板ガラスは次回にお預けだ。
トラップドアをクラフトし次々と付けていけば、トラップドア窓の出来上がりである。
窓が完成したら、バルコニーを作っていく。一人の人間が通れるくらいの広さを、だ。よし、バルコニーが出来たぞ。フェンスも置いてあるから、転落死することはない。
まぁそもそも、この高さで死ぬことなどあり得ないのだが。ハートがほんのちょっと減るくらい。
いよいよ最後の仕上げ、内装に取り掛かる。
壁を設置して部屋を区切ることも出来るが、今回それは除外とする。作業台と釜戸を置いた後はチェストをクラフト、それを置いていく。二個ならべればラージチェストの出来上がりであるので、それをもう一つやっていく。二個のラージチェストが出来た。
インベントリに有る、元々ツリーハウス内に存在していた物を置くことも忘れない。室内を照らす、松明の取り付けも忘れない。
ベッドを設置。わたしを含め、4人分を。設置後、 取り付けていた梯子で外に出た。自分の目で作り上げた建築物を確認して、遂に完成となるのだ。
振り返り、ツリーハウスを見上げる。生まれ変わっている。ビフォーアフターだ。完成としよう。
「千空はさぞ、喜んでくれるに違いない」
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アレックスは完成したツリーハウスを背に、仁王立ちする。胸を張り得意げな顔で、帰還した科学少年に言った。
「どうかなツリーハウスの出来は? 暇だったから畑も作った。それにベッドもクラフトしたからぐっすり眠れるぞ」
その言葉に千空はただ黙っていた。いや言葉を失っていた。床しかなかったはずの無残な骨組みが壁を持ち、屋根を備え、バルコニーまである完璧な家へと生まれ変わっていた。物理法則を完全に無視した創造物。彼の科学的常識が音を立てて崩れていく。
「ククッ。マンパワーにも程があるだろ。開いた口が塞がらねぇぜ。…でだ一つツッコませろや」
「ツッコミ?」
千空は大きく息を吸い込む。それをゆっくりと吐き出した。もう我慢の限界だと言わんばかりの表情で。
「( ´ー`)フゥー…人間ヤめてんのはテメェの方じゃねえか! アレックスさんよォ?! あの時もそうだ。根元から上が浮いてるのは意味がわからなかったぜ!? 重力はどうなってんだ!?」
怒涛のツッコミにアレックスは一瞬目を丸くする。しかしすぐにむっとした顔で言い返した。
「フフッ…取り消せよ今の言葉! レディになんと失礼な! アイアムヒューマン! 原木を伐採したくらいで驚くな! たかがそれくらい!」
「自称人間の間違いだろアレックス。だがよ、テメェの力、最高じゃねぇか!」
呆れ返った顔が一転する。千空はニヤリと口の端を吊り上げた。その瞳は目の前の少女の異常性を脅威ではなく、最高の切り札だと捉えていた。
「どうもありがとう。褒められるのは悪くない」
素直な称賛に、アレックスは少し照れたようにそっぽを向く。そんな二人を夕日が、オレンジ色に染めていく。千空は遠く地平線を見つめ、高らかに宣言した。
「全人類を石化から復活させて、科学文明を復興させる! 唆るぜこれは…!!」
その声には、絶対の確信が満ちていた。不可能を可能にするという、揺るぎない意志があった。科学とクラフト。出会うはずのなかった二つの力が、今このストーンワールドで確かに手を結ぶのだった。
次回は畑作り。千空が見学してるかどうかは、次回までのお楽しみ。
作者、最高司祭アドミニストレータでございます。
原作が完結した今でも、ドクターストーンは愛されております。アニメ四期の制作がされているのも、その証拠です。
わたしはこの原作の二次創作を執筆し、本日投稿させていただきました。これからもお付き合いいただけると、幸いです。
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