軍隊ごっこ大好き愛好会、通称軍事部。その名の通り、軍事系を嗜むマインクラフター達の集まりである。
とはいえ、特段そういった特別な組織ではなく、ただ武力を玩具とした『ごっこ遊び』を楽しんでいるだけに過ぎない。
軍事部の活動は多岐に渡る。
TNTキャノンの開発に勤しみ、その威力と飛距離を競い合う者。
ミサイルの如く発射される、レッドストーン機構を考案する者。
更には、軍事施設を建築しリアルさを追求する者まで。
自分達が作り上げる要塞や戦艦、戦場のジオラマは例え見た目だけのハリボテであろうと関係ない。『楽しいければそれで良い』──それが軍事部のモットーなのだ。
だが、軍服のアレックスが入部したことで、軍事部は新たな次元へと突入した。
アレックスが持ち込んだのは、これまでの軍事部には無かった概念──銃と戦車であった。
先ず、軍事部クラフター達が驚かせられたのは──銃。
弓矢のように飛び道具の一種でありながら、圧倒的な威力と射程を誇る武器。弓とは違い銃は精巧に作られた鉄の棒を組み合わせ、引き金を引くだけで発射される。
ボウガンも引き金を引けば撃てるは撃てるが、銃とは違い引き絞る作業が避けられない。その点、銃は連射もリロードも優れた。
弓矢とは比べものにならない速度と威力、即座に連射可能な利便性はまさに圧巻の一言。射撃時は煩いが、それがまたイイのだ。
引き金ひとつ、強くやる必要など無く優しくするだけで、即座に弾丸が飛び出す。そんなものがこの世に存在するとはと目を輝かせて、銃の研究に着手した。
そして、何よりも彼らの心を激しく揺さぶったのが──戦車だった。
巨大な鉄の塊。
キャタピラ。
長く伸びた筒。
軍事部は、初めて目にする戦車に目を見張った。鉄の箱に長く伸びた棒はTNTキャノンのようなものであれば…どういう理屈であのサイズにまで小型化することが出来たのかと。
まるで夢のような技術に思えた。鉄の箱に棒が付いてるだけのように見えたのに、実はキャノン砲であったのだ。
どんなツールなのか。
どんな構造なのか。
彼らの興奮は最高潮に達し、目を輝かせ、たちまち戦車の虜となった。
興味が尽きることはなかった。すぐさま、軍事部は戦車の研究に乗り出した。彼らは試行錯誤を重ねながらアレックスによって持ち込まれた戦車を再現し、それぞれの発想を形にしていった。
破壊の為の創造とはこうも心踊るものなのかと、興奮は上限突破しそうな程であった。ただのごっこ遊びが、いつの間にか真剣に『ちゃんとしてる』ようになるなんて思わなんだ。荒らしではありません。
そうして、軍事部の拠点には次々と戦車が並べられた。各々が独自の設計を施し、個性溢れる戦車を作り上げた。
機動力に優れた戦車や、キャノン砲を二門搭載した重装甲戦車などなど…。
軍事部は、かつてないほどの活気に満ちた。これからも戦車を巡る議論が絶えず交わされ、砲撃実験が繰り返されるだろう。それは、銃だって例外ではないのだ。
──銃がどうこう、戦車がどうこう。
これからも彼らは創造し、破壊し、また創造する。その無限のサイクルは、未来永劫に不滅である。これでも荒らしではありません。
「あ、あれって、まさか…ッ」
「ほ、本当だった、のか?」
「あ、アメリカ軍!?」
このストーンワールドに来ようとも、それは変わらない。自分達は荒らしであらず、ただ軍事系を愛する愛好会なのだ。
軍事部と捕らえられている同創造主は、笑顔で満ち溢れていた。
■□■□■□
ごきげんよう、皆の衆。私は軍事部のアレックス。
今、目の前で少々予想外の事態が発生している。
「こ、降伏! するから! 部下だけは助けてやってくれよ! 俺はどうなってもいいからさァ!!」
「よ、ヨウくん……!?」
司帝国の兵士たちが、突如として降伏を申し出てきたのだ。
いや、確かに中隊を前進させはしたが、それだけなのだ。砲撃を加えたわけでもなく、威嚇射撃すら行っていない。単に、堂々と進軍しただけである。隠れてすらもいない。
それなのに彼らは武器を投げ捨て、武装村人から村人へとなったのである。
私は思わず、開いた口が塞がらなかった。周囲を見渡すと、軍事部のクラフターたちも同じような反応をしている。
【え、えぇ…??】
【流石にそれはないでしょ…??】
【ちょっとだけ威嚇射撃したかったナァ】
いや、まあ、無血開城は理想的な展開だ。誰一人として傷つかないのであれば、それに越したことはない。だが、それでも……お披露目会を、もっと楽しみたかった……。
せっかくアメリカ戦車で揃えたのだ。それも、第二次世界大戦で活躍したM4中戦車を。
この戦車は世界的に有名で、人気も高い。戦車を使った架空の武道競技『戦車道』に登場するほど、日本の文化にも深く浸透しているのだ。あのアニメは本当に素晴らしい……あっ、これ前世アメリカ人だった頃の話です。
あまりにも好きになってしまった私は、転生後にどうしてもこの戦車を軍事部に持ち込みたくなり、ついアメリカ軍から拝借してきてしまった。そして、それは軍事部の仲間たちにも大好評だった。
だからこそ、この圧倒的な軍備を披露し、少しは戦わせてもらいたかったのだが──。
「ひっ…!」
あ、いや……この反応は、ひょっとして……怖がられている?
何か失礼なことをしただろうか? 無言で戦車に乗っていたのが悪かった? いや、だとしても、もう少し冷静に対応してほしい。とりあえず、親しみやすさを出すために笑顔を向けてみよう。
……いや、違う。これは逆効果だ。ますます震え上がっているではないか。
まるでこちらが悪役のようで…いや、待て…普通に考えて、これは悪役ムーブでは…?
このままでは誤解が誤解を生んでしまう。ならば──ここで、最終奥義を繰り出すしかないようだ。
「ウェーイィィィィ!!!」
「「「ワァァァァ!!!」」」
『救援に駆けつけました!』を力説すれば、司帝国の者達は歓声を上げ始めた。歓喜の声が響き渡る。
おや? これは、成功なのでは?
彼らは互いに抱き合い、涙を流して喜んでいる。中には感極まってその場に倒れ込む者すらいる。
更には、戦場でカップルが誕生するという謎の展開まで見受けられるではないか。アニメですら見たことない。
まあ、うむ、これはこれで良し。
よ、よかった…。
心の底から安堵した。作戦は無事成功し、司帝国の人々も喜んでくれている。 こうして無血開城は達成され、彼らは科学王国民になることを決めた。
さて、次は──奇跡の洞窟制圧作戦だ。 状況はどうなっているだろうか。確認しに行くとしよう。
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