「周期はたったの数百年だぞ? 富士山の大噴火…一発でも地形変わるレベルの大惨事だっつぅのによォ」
「わしらが石化中の3700年で4〜5回…なのかの?」
「少なければそうだが、多けりゃ10回以上ブッ放してる」
皆さんごきげんよう。わたしは、マインクラフターのアレックス。
流石は龍水、嵐の接近を事前に察知するとは…船乗りの勘は偽りではなかったか。
こういうのって…気象学、だったか。気温や湿度を体で感じ取る能力を持つことで、より高精度な気象予測が実現するとは…おったまげたものよ。
そんな龍水は、圧倒的な強欲さで通貨を復活させた。ストーンウォーズ後に復活した漫画家の男に、新紙幣をデザイン。
龍水財閥が発行する、旧世界には無かった新たな貨幣──ドラゴ。このストーンワールドでは『ただの紙くず』も同然の筈が、今や『本物の通貨』として機能している。
「め、めっちゃ怖いよォ、助けて…お兄ちゃん!」
「うん、うん、うん! 助けるさ! 俺は…お兄ちゃんだからね!」
「…あたしは何を見せられてるんだい…?」
ドラゴは石油を購入するために作られたが…男、龍水は野望を抱いていた。笑顔で素敵でございました……が流石にムカっとした。
『俺の航海術で地球の裏まで連れて行ってやる』
『船長報酬として発見した油田の権利は俺が貰う』
『ハッハー! 新世界は俺を求めている!』
なんと龍水は条件を提示しやがったのだ。まだ見つかってすらもいない、相良油田の権利を手始めに主張して。
ストーンワールドで資本を中心とした新たな利潤体制を確立する、とも高らかに宣言した。ドラゴは、この発言以降に作られたのである。
ふざけてるのかこいつと、牛乳飲ませてやろかの気持ちを我慢せざるを得なかった。航海術に秀でていなければ我慢する必要は無かったのだがな。
《海岸線も内地もボコボコだしね…新しい地図がいるよ》
「現代人の地形図なんざ、もうクソの役にも立ちやしねえなァ」
《おう! んなもんなくたって何とかすんぜ!》
《右も左も分からず闇雲に油田を探すなんてのは、ただの神頼みだし危険過ぎるよ》
地球の裏側に行く。ならば、燃料が必要不可欠なのは言うまでもないこと。
建造中の大型機帆船は、一応船そのものの形は出来ている。
だが、その…うん…やっぱり石油が必要のよう…くそっ、何故なんだ…なんでマグマが駄目なんだ…ッ、拒絶するなよエンジンさんよォ…くぅ…ッ。
あっ、エンジンはガスタービンを採用してます。
「お兄ちゃん」
「ミライ」
「お兄ちゃん」
「ミライ」
主機エンジンはガスタービンの他、ディーゼルを採用した。これもまた、技術開発部のおかげで再誕出来た代物である。
ガスタービンエンジンは、大型機帆船においても興味深い選択肢となり得た。このエンジンは旧世界で幅広く使用されていた技術。高出力と効率性、他のエンジンタイプに比べて軽量で、出力対重量比が優れているのもポイントだ。
柔軟性も利点の一つといえた。多様な燃料で運用可能だからだ。
「わたしね、大きくなったらお兄ちゃんと結婚するんだ!」
「フフッ、俺は嬉しいよ…ミライが大きくなったら、うん…しようか!」
「わぁーい!」
「あんたら、イチャイチャタイムするんじゃないよ! 場所を弁えな! 手繋いでるだけでもね!」
何よりも素晴らしいといえるポイントは、メンテナンス性だろうか。一般的にガスタービンエンジンは機械的な動作部品が少ないため、メンテナンスが比較的容易だ。
また連続運転が可能であるため、長期航海においても信頼性がある。揺るぎない信頼性だ。
「「えっ、やだ」」
「や、やだ!?」
利点ありまくりとはいえ、旧世界同様…課題が無かった訳ではない。ガスタービンは確かに高出力を発揮するが…燃料消費が高い。
騒音と振動も課題の一つといえた。動作中に発生する騒音や振動で、運航中の快適性に影響を与える可能性がある。高速運行や迅速な機動力を求める場合には非常に有効な選択肢となるであろうが、燃料効率などの課題を考慮する必要があるだろう。
「あんたも何か言って…」
「若いって、イイのォ」
「ちくしょうこのロリババア役に立たねェ!!」
「おっふ」
「『おっふ』…じゃねぇよ!!」
特定の条件下においてはガスタービンを活用することも十分に考えられるが、ディーゼルも主機の一つとして採用しているのだ。通常は帆と低速機のディーゼルエンジンで運用されることになるだろう。
「鳥になって見れたらよかったんだよ」
「あ?」
大型機帆船にディーゼルエンジンを搭載することは、一般的に『あり』なのである。
多くの大型帆船やヨットは帆による航行だけでなく、エンジンを補助的に使用することが多いため、ディーゼルエンジンを装備していることがよくある。このようなエンジンは特に風がない時や、港への入出港時に役立つ。
またディーゼルエンジンは効率的で耐久性があるため、長距離航海を行う船舶では理想的な選択といえる。
ただし環境への配慮から、前世や旧世界ではクリーンエネルギーを活用したエンジンの導入も徐々に進んではいたが…そもそもわたしは死んで創造主になったし、そもそも旧世界は滅んでストーンワールドになったし…関係ないないである。
「あんなスッゴイ上からなら地面がどうなってるかなんて、きっと全部わかるんだよ」
「上から…地面…」
一部の復活者より『ガスタービンとディーゼルエンジンあるなら、帆…いらなくね?』…というツッコミをいただいたが、千空と龍水とで黙らせた。ロマン、を力説すれば…フッ、造作もないことよ。
真面目な話、それ自体技術的には可能だが…実は前世と旧世界では殆ど採用されていないのである。
まず、運用上の複雑さだ。
『帆・ディーゼルエンジン・ガスタービンエンジン』三種類搭載すると、推進システムが複雑となり、運用や整備の負担が増えてしまう。特にガスタービンエンジンは高回転型で燃費が悪いため、長距離航行には不向き。
次に、燃費と効率の問題。
帆は燃料不要で環境負荷が低く、風頼みなので安定した推進力が得られない。
ディーゼルエンジンは燃費が良く商船や軍艦の主流だが、加速性能には劣る。
ガスタービンエンジンは軽量で出力が大きく軍艦や高速船に適すが、燃費が悪い。
この3つを組み合わせると、運用効率が悪化する可能性があるだろう。そんなことさせないが。
最後に、既存の採用例と現実性だ。
帆とディーゼルの組み合わせは実際、実験的な貨物船で採用例がある。
ディーゼルとガスタービンの組み合わせは軍艦で一般的だが…『帆・ディーゼル・ガスタービン』三種類搭載した大型船は、存在しない。
「鳥になれたら…よかった…」
結論。
理論上は可能だが『実用性・コスト・整備』の観点から、『帆・ディーゼル・ガスタービン』の3つを併用する大型船は現実的では無いだろう。
だが! だが! だが!
特殊な実験船として…採用した! 1号艦のみに! ロマンがあるから! ハイブリッド唆るから!
「クッ、クククッ…」
それにしても、龍水が協力的だったのは正直驚いた…まぁ事前にダイヤ1スタック渡したからであろう。賄賂が役立ってよかった。
「それダァァァァ!!!」
「ヒェー!?!?」
いやァ、建造完了が楽しみである。
■□■□■□
暗闇に包まれた静寂の空間。その中心に『Sound Only』とある漆黒のモノリスが四基、暗闇に包まれた空間で威圧的なまでの存在感を放ちながら浮かび上がっていた。
それらが円を描いて包囲されている中央には、黒いサングラスを掛けた男がいた。秘密組織パナソルに呼び出された、石神千空である。科学王国リーダーの彼は中央に設置された椅子に座し、机に肘をつけて、指を組み口元を隠していた。
黒い背広に包まれた姿は、この異様な空間にあってなお、確固たる意志を示しているように見えた。
「科学王国と司帝国の戦争は終結。司帝国の民は全て科学王国へと吸収され、龍水の復活も完了。そして、大型機帆船ペルセウス建造計画も始動……概ね規定通り、というところか」
モノリスの一つ、刻まれた識別番号[01]が冷静な口調で現状を総括する。
《本来のシナリオでは、『ホムラによる奇跡の洞窟の崩壊』『本性を現した氷月の奇襲で、司は重傷を負う』『コールドスリープされている司に、石化現象を逆用しその命を救う』…筈だったが、どうやらそのイベントは発生しなかったようだな…予定外ではないか?》
創造主も予定にはない要素だと、[04]はそう続けた。
「そうだが、シナリオの進行には何ら致命的な影響は無い。むしろ、より良い結果とも言える。我々の目指す結末はハッピーエンドだ……ただし、人類を石化させた黒幕を除いて…だがな」
「多少の誤差ならば修正の範囲内。問題はなかろう」
千空は無言で、モノリス達の音声を聞いていた。暗闇の中に響く声はどこか機械的ではあるものの、確かな意図があるようだった。
「ご安心を。船の建造には一年も要しません。今月中…いや…遅くとも来月には完成する見込みです」
沈黙を守っていた千空が、初めて口を開いた。それは事実である。人間だけであれば来年の秋あたりに完成であろうが、科学王国にはマインクラフターがいる。彼らの異常なクラフト能力であれば一年を必要とすることはなく、短い期間で完工することが可能だ。
「うむ」
「1号艦以後の建造も計画通りにな」
モノリス達は微かに光を放ち、再び情報を整理するように沈黙する。
数秒後、モノリスに刻まれた[04]と[03]と[01]は言葉を紡いだ。
《科学王国とマインクラフターの適切な運用は君の責務だ。失望させないでくれよ?》
「左様。先の一連しかり、これらは創造神との契約の極一部に過ぎん」
「科学文明の復興、全人類復活計画…その遂行こそが、我々の究極の願いだ」
千空は不敵の笑みを浮かべると、落ち着いた声でモノリス達に告げた。
「承知しております──全ては、パナソルのシナリオ通りに」
その言葉を最後に、会合は再び沈黙へと包まれた。
「アレックスsども! とっとと仕事に戻んぞ!!」
「「「おかのした」」」
最もこれはただの茶番劇に過ぎない。創造神もパナソルも、今回のためだけにでっちあげた神と架空の組織である。
アレックスsと、いつもの服装に着替えた千空。三人の創造主と科学使いは、共に仕事場に戻ったのだった。
マグマ「は、離せェェェ!!!」
創造主「こら溶岩! 動くんじゃない•••あれこいつ村人?? えっ、あっ、えっ? 村人じゃん!?」
アレックス「溶岩バケツはここだぞ? ひどい勘違いだな」
創造主「おお同志アレックス、感謝する! あっそこの村人クン、帰ってくれて結構、もう用は無い•••村人クン?」
マグマ「」
アレックス「運びやすくしたかった。ので腐肉を食わせて牛乳飲ませて気絶させた•••ドヤ」
創造主「おっ、ナイス〜」
アレックス「でしょう〜」
龍水「•••ハッハー•••とんでもない光景を目撃してしまった•••!?」