クラフトは不滅である   作:最高司祭アドミニストレータ

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わたしは、生まれ変わったのよ! わたしの名は•••ブラックマンタだ! 食らいなさい•••目からビーム!!(映画アクアマンで登場した男、ブラックマンタに脳やられてブラックマンタになりたい作者)


写真と黒い泥水

 石神千空は作業台に無数の部品を並べ、鋭い眼差しを向けながらも不敵な笑みを浮かべて、その配置を確認した。

 

 今回のクラフトは、カメラの製作だ。作業台の上に散らばる金属片、レンズ、ギア、精緻に切り出された木材──それぞれが目を引く。目の前に広がる部品を一つ一つ視線で追いながら、静かにその全体像を思い描いた。

 

 

「よし、やってやるぜ。科学の力で、かつての技術を復活させる!」

 

 

 その言葉と共に、彼の手が動き始めた。まず、光学の核心を担うレンズ作りからだ。石英砂を高温で溶かし、透明度の高いガラスを作り出す。そのガラスが冷却されると、千空は球面研磨を施し、凸レンズと凹レンズを組み合わせる。

 

 この過程で彼の目は研磨されていくレンズに釘付けになり、更に屈折率の調整を始めた。レンズが完璧に仕上がるまで、その手は決して止まらない。レンズの歪みを最小限に抑えるため精密に研磨を行いながら、酸化セリウムを使った研磨剤で仕上げていく。

 

 小さな歪みすらも許さず丁寧に仕上げられた、そのレンズは透明度が高く美しい。

 

 

「これでレンズは完成。次はボディだな」 

 

 

 次に千空はカメラボディを作り上げるため木材と金属を使い、遮光性に優れたボディを組み立てた。細部にまで気を配りながら、精密に削り出された木材が金属とぴったりと合わさる。

 

 内部には反射を防ぐために煤を塗り、レンズを固定するための穴を開ける。ボディの形が徐々に整っていく中で、千空は満足げにその出来栄えを確かめる。手に取る度、これから何を作り上げるのかという期待が膨らんでいく。

 

 その後、最も重要な部分である一眼レフ機構の構築に移る。ミラーボックスのため、銀メッキしたガラスを45度の角度で設置し、レンズから入った光がミラーに反射して、ペンタプリズムに導かれる。これにより、ファインダーに映し出される像が正立するのだ。

 

 この工程は視覚的にも重要なポイントであり、千空はガラスの角度を微調整し、最適な視界を実現するために、少しのズレも許さずに細心の注意を払う。光の反射を見極めるために何度も視界を確認し、その度に満足そうに微笑んだ。

 

 

「視認性も完璧だ。次はシャッター機構だな」

 

 

 シャッター機構には、フォーカルプレーン式を採用した。金属の薄板をスプリングとギアで制御し、一定の速度で開閉する仕組みを作り上げる。手で操作しスプリングの強さとギア比を計算しながら、露光時間を細かく調整する。

 手動レバーで制御できるように仕上げ、スムーズな動作を確認する。シャッターが動く度に正確なタイミングで光が制御され、撮影の精度が高まる感覚を感じる。

 

 

「これで光を正しく制御できる。あとはフィルムの準備だ」

 

 

 次に千空は、フィルムの代わりにガラスプレートを使って感光材料を作成した。硝酸銀をゼラチンと混ぜ、均一に塗布して乾燥させる。この工程で、撮影時に適切な化学反応が起こるように準備が整う。

 

 暗所で保管し現像液にはフェロシアン化カリウムと硫酸鉄を使用し、画像を定着させる方法を完成させた。これでカメラとしての機能が整い、撮影から現像までの流れが確立された。

 

 最後に巻き上げ機構を取り付け、撮影の度に新しいプレートをセットできるようにした。フィルム送りの精度を高めるために、ラチェット機構を導入し、一度の回転で正確に位置決めされるように調整。

 

 その小さな部品一つ一つが、このカメラの完成度を更に高めていく。全ての機構が完成すると、千空は一度全体を見渡し、完成の一歩手前で深呼吸を一つした。

 

 

「クククッ、これテメーにやるよ——フィルム式一眼レフカメラをよ」

 

 

 外に出ると、千空は完成したカメラを差し出した。

 

 

「…っ」

 

 

 それを受け取ったのは、北東西 南——かつての世界で報道に身を捧げた女記者だった。彼女の手が震え、カメラの冷たいボディに触れた瞬間、瞳に涙が滲んだ。唇が、震えた。

 

 

「…こんな日が来るなんて…」

 

 

 南はカメラをそっと抱きしめた。フィルムをセットするわけでもなく、ファインダーを覗くわけでもなく、ただその存在を確かめるように、両腕に強く抱き寄せた。

 

 その瞬間、最初は小さな粒だった涙が瞬く間に頬を伝った。目を閉じたまま彼女は深く息を吸い込み、無意識のうちにカメラを抱きしめる。涙が次々とこぼれ落ち、その涙は手のひらにこぼれたカメラの表面を濡らした。

 

 彼女の胸の中には、言葉にできない感情が押し寄せていた。

 

 

「ありがとう……本当に…」

 

 

 北東西 南にとって、カメラは単なる道具ではなかった。それは彼女が生きてきた証であり、誇りだった。

 しかし今、自分の手には再びカメラがある。石化して手から落ちてもいない、この世界でクラフトされたカメラがそこにはある。それは過去の再生ではなく、新たな未来の証明だった。

 

 

「これで…また、世界を記録できる…」

 

 

 涙の中に、確かな決意が宿っていた。

 

 目を開けた彼女はカメラを撫でるように指先でなぞり、その感触を確かめる。滑らかな金属の冷たさ、ボディの適度な重量感——すべてが懐かしく、それでいて新しい。北東西 南の胸の奥に、言葉にならない感情が込み上げた。

 

 震える指で、カメラのシャッターボタンを押してみる。カチリ、と小さな音が響いた。それだけで、胸がいっぱいになった。どれほどこの感触を求めていたか、どれほどこの音を恋しく想っていたか。

 

 彼女の脳裏に浮かぶのは、かつての世界。取材のために駆け回った日々、人々の物語を追いかけ、フィルムに焼き付けてきた瞬間。すべてが失われたかに思えたあの日々が、今この手の中で蘇る。

 

 

「また…撮れる…また、伝えられる…」

 

 

 かつて記者として世界を記録し、伝えることに人生を捧げていた。しかし石化によって文明は滅び、カメラという『記録する力』を失ったことで自分の役割も喪失していた。カメラは単なる道具ではなく、報道の使命と自己の存在意義を象徴するものだった。

 

 千空が自分に手渡した瞬間、それは単なる過去の復元ではなく、『再び世界を記録できる』という未来への希望を意味した。それがあまりにも嬉しくて、自分は涙を流しているのだ。

 

 南はカメラを胸に抱きしめ、嗚咽をこらえながらも涙を零した。これは単なる機械ではない。希望そのものだった。

 

 

「ありがとうッ……!」

 

 

 喉の奥が詰まり、言葉が震える。それでも、彼女は強くカメラを抱きしめ、まるでその温もりを確かめるかのように指を這わせた。

 

 

「このカメラで、私…必ず撮るから! ゼロから文明を作ってく…新世界の記録を…!!」

 

 

 涙で濡れた頬を拭うこともせず、彼女はまっすぐに千空を見た。その瞳の奥には、報道記者としての使命が燃えていた。

 

 

 

 

 

 ■□■□■□

 

 

 

 

 

 風がそよぎ、木々が静かに揺れる。広大な森が広がり、その間を川がゆったりと流れていく。遠くには富士の峰がそびえ、その雄大な姿が空に映えている。大地を満たすのは、澄み渡る空気と生い茂る緑の息吹。人工物など一切ない、ただ自然だけが広がる静岡の地。

 

 創造主たちは、大地を駆け巡っていた。馬を走らせ川を渡り、丘を越えながら未踏の土地を探索する。上空ではエリトラが滑空し、気球が大地をゆっくりと見下ろしていた。

 

 求めるのは大地に眠る黒き宝石──石油。

 

 それさえあれば船に動力を与え、さらなる文明の発展に繋げることが出来よう。

 

 だが、捜索は難航していた。どれだけ地表を調べても、それらしきものは見当たらない。地下水を掘り当てても、湧き出るのは澄んだ清水のみ。山肌を削れば粘土や岩が顔を出し、湿地帯の泥を掬っても、ただの水分を含んだ土が手に残るばかりだった。

 

 気球の上から見渡せば、地平線の先まで続く森と丘陵。美しく豊かな大地がどこまでも広がっている。しかし、そこに石油の気配はない。3700年という永い時を経て、地形は変わり果ててしまったらしい。

 

 それでも、創造主たちは歩みを止めなかった。同志アレックスによるとかつてこの地には、日本最古の油田──相良油田が存在したと記録されている。もしその名残がどこかに残っていれば、今もなお地下から石油が湧き出している可能性は十分にあり得た。

 

 問題は、それをどう見つけるかだった。

 

 彼らは可能性のある地点を一つずつ検証していく。川沿いの土を掘り返し、丘陵の地質を確かめ、黒き宝石の痕跡を探して歩き回る。しかし、どこを調べても求めるものは見つからない。

 

 探索を続ける中、一人の創造主が足を止めた。目の前に広がるのは、黒く濁った泥の溜まり。周囲の土とは異なり、妙に粘り気がある。

 

 しゃがみ込み、指先でそっと掬い上げる。液体はどろりと重く、ゆっくりと指の間を流れ落ちる。水とも土とも違う、独特の感触であった。微かに鼻を近づけると、土の匂いに混じってどこか刺激的な香りがした。

 

 かのクラフターはそれ以上気にすることなく、それを払い落とした。これはただの泥水に違いない。雨で土が流れ込み、こうした溜まりが出来ることもあると聞く。特に珍しいものではなかろう。

 

 3700年という年月が経過したこの地では地層の変化も激しく、逆に石油があるのかすら定かではない。いやしかし石油を利用していた科学村人が石化したのだから、豊富にある筈なのだが。こんなものに、こんな泥水に時間を割いている暇は無い。

 

 

【見つかったか? 同志よ】

【いや、まだ未発見だ。黒い泥水なら見つけたが…まさか、これが求めているものではあるまいて!】

【黒い泥水が石油の訳がないからな!】

【まさにその通〜り!】

 

 

 立ち上がり、再び歩みを進める。森の中では小動物が草むらを駆け抜け、木々の間からは鳥のさえずりが聞こえる。川のせせらぎは穏やかで、水面には光が反射してきらめいていた。葉の揺れる音が風に乗り、あたりは静かでありながらも、生命の鼓動が感じられる世界だった。

 

 探索は終わらない。どこかに必ず、石油はある筈だ。静岡の広大な大地のどこかに眠る黒き宝石を求める、マインクラフターの歩みは止まらない。広大な大地のどこかに眠る石油を求めて、彼らはひたすら前へと進み続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 ■□■□■□

 

 

 

 

 

 

「こ、こら!? わたしを離せ! なんで千空と一緒なんだ! なんで撮られるんだ! 嫌じゃないけれども!!」

「クククッ、科学少年と創造主の写真が七海博物館に展示…唆るじゃねえか…!!」

 

 

 科学王国のリーダー・千空は、まるでアインシュタインを彷彿とさせる知性に満ちた表情を浮かべ。隣にはマインクラフターのアレックスが頼もしげにダイヤのツルハシを肩に担いで立っている。

 

 科学と創造の象徴ともいえる二人の姿は時を超えて語り継がれ、やがて遠い未来、新世界の歴史を記した七海博物館に堂々と展示されることとなった。そこに刻まれた名は人類がゼロから築き上げた文明の証として、永遠に輝き続けるのだった。

 

 

【同志アレックス、未だ石油は見つからん】

【黒い泥水を発見。求めているものではないと判断、現在捜索を続けている】

 

 

 と、わたしこと軍事部のアレックスはそう考えます。

 

 …ハァ…ブラックジュエル、石油はまだ見つからないなァ。今日でもう2日だ2日。黒い泥水しか見つからないだなんて、どうなっとるのやら全く……ファ??




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