石油精製プラントでは、精製機が稼働している。低く響く振動音が、空間を満たしていた。
黒い石油がパイプを通り、精製機の内部へと流れ込む。圧力と熱が加えられ化学反応が進行し、徐々に余分な不純物が取り除かれていく。
技術開発部のアレックスは、その過程を静かに見守っていた。
3700年という時を経て、再び人類は燃料精製をゲットした。かつての文明では当たり前に存在したものが、自分たち技術開発部によって復活させてみせたのだ。これぞ浪漫ゲフンゲフン…全ては、人類を救済し科学文明を復興させるために。
彼女は静かに腕を組み、目の前の光景を見つめた。ガラス張りのタンクの中、黒々としていた液体が徐々に透き通り始める。不純物が取り除かれ、やがて完全に精製された燃料がタンクに満たされていった。
「…良い仕上がりだな」
彼女は、指でガラスを軽くノックした。透明な燃料がわずかに揺れ、波紋を描く。
この瞬間を待っていた。3700年という時間を超えて、再び科学が前進する証。それがここにはある。人類を救済するのもまた浪漫ゲフンゲフン…ふぅ、危うく口に出すところであったと、アレックスはほっと胸を撫で下ろした。
「ッハァ~~!!」
隣では、石神千空が目を輝かせていた。視線は、タンクに注がれている。彼がどれだけ科学に飢えているか、ビシビシバシバシと伝わる。科学王国を率いるこの少年は、間違いなく"科学の申し子"なのだ。一番星。
「これで燃料の安定供給が出来る…!!」
アレックスは千空に目を向ける。彼の中では既に、この燃料をどう活用するかの構想が練られているのだろう。
火力発電。
船舶動力。
更なる科学技術の発展。
精製燃料があれば、あらゆる可能性が広がる。彼女は再びガラスをノックし、静かに言葉を紡ぐ。
「これは"精製燃料"。余分な不純物を取り除き、燃焼効率を最大限に引き上げたものだ」
落ち着いた声で、事実を述べる。彼女にとって、これは特別なことではない。当然のように、必要なことをしているだけ。
「扱いやすく、安全性も高い。火を点けただけでは爆発しないし、適切に制御すれば非常に効率の良いエネルギー源となる」
知識として理解している事実を、淡々と告げる。しかし、それを聞いたクロムの反応は違った。彼はタンクのガラスに顔を近づけ、驚きと興奮を隠せない様子だった。
「ヤベー!? さっきまでドロドロしてたのに、まるで水みてぇだぜ!」
ガラスをトントンと叩く。透明な燃料がわずかに揺れた。
「でも火を点けたら…スゲー爆発するんだろ!!?」
アレックスは彼の言葉に苦笑した。何度説明すれば彼は納得するのだろうか。正直なところ、今すぐにでも牛乳をがぶ飲みさせたくなるが、クロムの出身が石神村であり、百夜たちの子孫であることを思い出す。
そこで、やめることにした。それなら仕方がないと、うんうんと頷くのだった。
「違うな。ただの石油じゃねえんだ。燃焼の制御ができる。つまりはだ──"使いやすいエネルギー"ってことだ」
「ヤベー!!?」
視線を千空へと戻す。彼は腕を組みながら考え込んでいた。
「この燃料をどう使うか…」
当然の思考だ。せっかくのエネルギーを、どの用途に最適化するかが重要になる。火力発電、エンジン燃料、機械動力…どれも有効な選択肢だが、今すぐ試せるものがいい。
千空はしばらく黙考し、やがて答えを出した。
「モーターボートのテストだな」
「!? …もーたぼーと? あっ、船のことか」
既に大型機帆船にはディーゼルとガスタービンエンジンが搭載されている。
だが、これとは別にスターリングエンジンを用いたモーターボートを作り、この燃料でオイルテストせねばならない。彼は、そう言いたいのだろう。
「大型機帆船には既に十分な動力があるが、"燃焼効率" を調べるなら別の方法がいい。だから、新しくスターリングエンジンを搭載したモーターボート作るんだよ」
「それでこの燃料を試すンだな!?」
「クククッ、そういうこった」
燃料の消費量、航続距離、推進力。この燃料が実際にどの程度の力を発揮するのか、それを確かめる必要がある。
千空は唇の端を上げ、ニヤリと笑った。
「唆るぜ、これは…!!」
彼女の視線が再び燃料タンクへと戻る。
3700年の沈黙を破り、技術開発部によって科学は再び動き出した。
この燃料が自分たち人類をどこまで導くのか──答えを知るのは、これからだ。
「そういえばテメーもヒトだったな…クククッ」
「マインクラフターも人間に分類されると言ったろう??」
「何千年もヤベー歳とってるからヒトの訳…あっ、悪k」
この発言にブチギレたアレックスはクロムに対して、迷うことなく牛乳バケツをガブ飲みさせた。
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合金とは、複数の金属または金属と非金属を組み合わせた材料のことであり、純粋な金属よりも優れた特性を持つことが多い。かつての世界においても建築や工業、医療、電子機器。更には船舶や航空機に至るまで、あらゆる分野で不可欠な存在。
例えば、鉄に炭素を加えた
またチタン合金はその強度・軽さ・耐熱性から、航空宇宙産業や
このストーンワールドにおいても、こうした合金の知識は文明復興に不可欠だ。
船舶の耐久性向上やエンジン部品の強化、発電機の効率向上など。技術開発部のマインクラフターたちは、これらの技術を駆使して科学の進歩を更に加速させていく!
「同志諸君…クラフトの時間だ!」
「「「ウォ!!!」」」
「なんて言ってんだ? 『ウォ!』『ウォ!』しか言ってねえぞ」
「クククッ、創造主サマの言語だぜ? 俺たちには理解出来ねえモンだ。アレックスに通訳して貰うぞ」
3700年の時を経て、人類は再び科学の力を取り戻そうとしていた。
技術開発部のマインクラフターたちが新たに挑むのは、五人乗りのモーターボートの開発。燃料テストのための実験機であり、更なる水上輸送の発展を目指した一大プロジェクトである。
そのために必要なのは、強固な船体に効率的なエンジン、そして安定した燃料供給システム。
まず最初に取り掛かるのは、合金のクラフトだ。
「確かヨォ、船を作るには木材だけじゃダメなんだろ?」
クロムが腕を組みながら言うと、千空が頷いた。
「当然だ。木製の船体は軽くて浮力はあるが、エンジンの振動や水流の抵抗に耐えられねェ。だからこそ、強度と耐久性を兼ね備えた合金が必要なんだ」
「合金って…普通の鉄と、どう違うんだ?」
「簡単に言えば『金属に別の元素を混ぜて、より優れた性質を持たせたもの』ってことだな」
例えば鉄に炭素を加えた
「簡単に金属の性質が変わる、って覚えていやがれ」
「ほえ~、やっぱ科学ってスゲーな!」
マインクラフターたちは早速、鋼鉄とブロンズの精製作業に取り掛かった。
次に、
「これで船体のフレームとエンジンの部品が揃ったな!」
「モーターボートの基盤となる素材は、準備オッケー」
素材が揃ったことで、次は船体の組み立てに入る。強度と浮力を兼ね備えた木材と鋼鉄のハイブリッド構造を採用し、耐久性を確保するのが狙いだ。
船体の骨格はオークの木材を加工し、鋼鉄フレームを組み合わせて形成。
木材の浮力を活かしつつ、鋼鉄の強度を利用することで、エンジンの振動や波の衝撃にも耐えられるよう設計された。
クロムは船体を叩きながら、不思議そうに呟く。
「これ、木と鉄を組み合わせてるけど…こんなんで沈まないのか?」
「浮くか沈むかを決めるのは、密度だ」
千空はオーク材の板を、手に取りながら説明した。
「純粋な鉄は密度が高くて沈むが、木材はその逆。船全体の密度を上手く調整すりゃ、鉄を使っても沈まねェ。更に鋼鉄を適切な位置に配置することで、バランスが取れて安定する船体が完成するって訳だ」
「なるほどな•••つまり鉄を適当に使うんじゃなくて、ちゃんと考えて配置すりゃいいのか!」
「クククッ、テメーに百億万点やるよ」
マインクラフターたちは慎重に鋼鉄フレームと木材の配置を調整しながら、五人が乗れるサイズのモーターボートの船体を完成させた。
そして、次に取り掛かるのはエンジンの搭載である。
スターリングエンジンは通常のガソリンエンジンとは異なり、外部から熱を加えることで動力を得る仕組みだ。そのため、燃焼室と冷却装置を適切に配置しなければならない。
エンジンの動作を安定させるため、ブロンズ製のピストンを採用。これにより摩擦が軽減され、スムーズな動作が可能となる。
更に冷却システムとして、水冷機構を導入した。船体内に水タンクを設置し、エンジンの過熱を防ぐ仕組みを作り上げたのだ。
「よし、エンジンは搭載完了だな!」
エンジンが取り付けられたが、動かすためには燃料供給システムが必要となる。
スターリングエンジンは、精製燃料を燃焼させ、その熱エネルギーを動力へと変換する。そのため、燃料の供給を安定させるためのタンクとパイプラインが不可欠だった。
燃料タンクは船の重心を考慮し、最適な位置に配置。これにより、船のバランスが崩れることなく、航行中の安定性が確保された。
次に、燃料をエンジンへと送るための流体パイプを設置する。タンクから燃料を一定量ずつ供給し、エンジンの燃焼を最適化する仕組みが整えられた。
クロムは燃料パイプを眺めながら、不思議そうに尋ねる。
「ただの管みたいだけどよ、どうやって燃料を流してるんだ?」
「液体を移動させるには、圧力差を利用してるんだよ。タンク内の燃料がエンジンに向かって流れるように、高さを調整したり、バルブで圧力を制御したりすンだ」
「圧力で流れをコントロールするのか! ふぉえ〜」
最後に、エンジンへ燃料を送り込むバルブを設置した。
これにより、必要に応じて燃料の供給量を調整可能となるのだ。
「モーターボートの完成だ•••!!!」
これにて燃料供給システムが完成し、すべての準備が整った。
アレックスが静かに燃料タンクをノックする最中、マインクラフターたちは二隻のモーターボートを作るのであった。
技術開発部のわたし!
どうしたかな、ゼロワン?
わたしが出てないじゃないか!!?
出番次だぞ? なに勘違いしてる?
あっ。