クラフトは不滅である   作:最高司祭アドミニストレータ

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中々進まず。
それでも、薄味にならないように。


地中をスケスケ/湧き潰し、大事だな

 科学王国は技術開発部と共に、レーダーとソーナーをゲットした。レーダーで空と陸を探り、ソナーでは水中を調査する術を。彼らは次々と新たな技術をクラフトし、この石の世界に科学を取り戻してきた。

 

 だが、まだ手つかずな領域があった。

 

 地面の下──つまり地下の世界である。

 

 

「なあ千空!! 地面の中ってどうなってんだ!?」

 

 

 クロムが突拍子もなく叫んだ。マインクラフターたちは作業の手を止め、ツルハシを持ったまま彼を見た。

 

 

「そりゃ、土と石と鉱石があるに決まってるだろ?」

「それは分かってるけどよ!! 俺たち空も海も探れる科学あるってのに、地下だけ…なんか悔しくねぇか!?」

 

 

 確かに、その通りだった。地下には鉱石が眠り、未知の資源が埋まっている。それを探す手段がないのは、まるで『世界の半分が見えていない』ようなものだ。

 

 

「地中も見えたら便利かもなァ? クククッ」

「よっしゃ! レーダーでスケスケしようぜ!」

 

 

 各々のマインクラフターはツルハシを持って、空高く掲げる。同志諸君…地中レーダーを作るぞ!! ひゃっほォォォ!! こうして、科学王国と技術開発部の次なる挑戦が始まった。

 

 マインクラフターたちはハゲ山の洞窟に到着すると、早速作業台をズラリと広げた。

 

 

「見えないものを見えるようにする──それが科学だろ!」

 

 

 クラフターたちはスニーク姿勢で『その通り!』と同意した。少しずつだが、ハァンハァン語を理解しつつあるのだ。

 まず作るのは、地面に向かって電磁波を発射する装置だ。銅と錫の合金を使い、真空管を組み立てた。高電圧により、マイクロ波を発生させるのである。

 

 

「これが地中レーダーの『眼』になるわけだ」

 

 

 次に、電磁波を受信するアンテナを作る。金属製の導波管とパラボラ型の受信機を組み立て、微弱な反射波を捉えられるように調整。

 

 

「でもよぉ…地面の中の電波って、すぐに吸い取られちまうんじゃねぇのか?」

「クククッ、100億満点やるよ。だからだ。地盤に合わせて最適な波長を選ぶ。砂なら低周波、岩なら高周波って感じだ」

 

 

 受信機の調整が終わると、最後に映像を表示する装置をセット。ブラウン管ディスプレイ、が今回も活躍することとなった。

 

 

「さ〜て、これで準備完了だ」

 

 

 千空がスイッチを入れる。地中レーダーが、ついに起動した。

 

 あっ、おそばせながらだ。皆さんごきげんよう。わたしは、マインクラフターのアレックス。

 

 本日、技術開発部のわたし(アレックス03)はお休みをいただいております。歌姫リリアン似の上半身模型アンドロイドをギューと抱きしめて、グッスリと眠っていらっしゃいます。したがいまして、技術開発部はこのわたしが率いることとなりました。

 

 いやはや、洞窟内の空気はひんやりとしている。肌で感じ取れるって、イイね。ニッコリしちゃうよ。

 

 壁に沿って燃える松明の灯りが、影をゆらゆらと揺らしているのが分かる。湿った岩肌、鉱物のきらめき、微かに響く水滴の音──。

 

 3700年前、人類が掘削した鉱山跡かもしれない。あるいは、自然が気の遠くなる時間をかけて作り上げた洞窟かもしれない。

 

 

「よーし、いよいよ試験開始だぜ!!」

 

 

 クロムが興奮気味にスイッチを入れる。今更ながら、今回のクラフトは彼の閃きで行われているものだ。『レーダーでスケスケ』だけで地中レーダーを…『クロムの中身、記憶リセットされた転生者なのでは??』と思ってしまうものよ…。

 

 レーダー装置が静かに起動し、発振器が微かな唸りをあげる。送信機から発射された電磁波が、地面へと放たれた。

 

 ──しかし。

 

 ブラウン管には何の映像も映らなかった。ノイズすらない、ただの暗い画面。

 

 

「お、おい!? 何も見えねぇぞ!!」

 

 

 クロムが焦る。マインクラフターたちも不安そうに画面を覗き込んだ。わたしもである。まさかのポンコツ装置だったの!? ポンコツ、ではないようだ。千空は微動だにしていないから。むしろ、笑っていた。写真撮りてェ。

 

 

「クククッ、そりゃな?」

「ど、どういうことだよ?」

「レーダーなんざ調整が命だ。波長を変えてやりゃ〜、ちゃんと映る」

 

 

 冷静に操作パネルのダイヤルを回し、周波数を調整する。すると画面に、僅かに何かの影が映り始めた。

 

 

「お!? なんか出たぜ!!」

 

 

 調整を続けるとノイズ混じりながらも、地層の輪郭が浮かび上がった。土、砂、岩盤の層がブラウン管に映し出される。えっ、スゴ…!!? 映った…!! わたしは同志たちと、スニーク姿勢で感動を分かち合った。なんか煽ってるような感じがしないでもない。気の所為であろう。

 

 

「おおお! 妙な影が映ってるぞ!!」

 

 

 クロムがブラウン管を指差した。映像の中に、不自然な影が浮かび上がる。明らかに周囲とは異なる、鉱脈のような何か…否! 鉱脈だ…鉱脈に違いない! 

 

 ダイヤのツルハシを持って、いざ往かん! 振りかぶり──カンッ!! 硬い音が洞窟に響く。クロムだ。ふむ、目に見える変化はない。彼は更にツルハシを振り下ろす。

 

 

 カンッ!! カンッ!! 

 

 

「ぐぬぬ、見えねぇな!! ちくしょう!!」

 

 

 わたしは、じっと彼を見ていた。合点が云った。そういえば、クロムは創造主ではなかったな。わたしは同志たちに対して頷くと、一斉にツルハシを構えた。エイヤささ、エイヤささとするとだ。鉱石がブロック化した。

 

 

「ぇ??」

「どうやら、こいつらが掘るとブロックになるらしいな」

 

 

 クロムが硬直している。新しい鉱石だからな。驚きのあまり固まってしまうのも仕方がない。理解出来る。

 

 

「ナ、ナルホドォ」

「おい」

「ハッ!?」

 

 

 理解出来るが、流石に固まり過ぎだ。状態異常ではと疑ってしまう。どうした千空? …ぇ、クロムは正常? なるほど、新しい形態か! 教えてくれて感謝する、千空…なぜ『困った女だなァ、テメーはよ』しているんだ君は?? そんな目でわたしを見るな。何もしてないと思うのだが…? 

 

 

「しっかしこれ…鉄か? いや、これは…タングステンか…超高温に耐えられる金属じゃねーか!!」

 

 

 タングステン。3700年前の科学文明においても、耐熱合金や電球のフィラメント。軍事技術にまで使われた貴重な金属。それが、ここに眠っていたのだ。

 

 

「科学の世界じゃ、こいつがなきゃ作れねぇモンもある」

 

 

 千空はブロック化したタングステン鉱石を掲げ、ニヤリと笑った。

 

 

「地中レーダー、大成功ってワケだ!!」

「やったぜー!!」

 

 

 クロムは拳を突き上げる。わたしたちはスニークしながら、新たな科学の扉が開かれたことを祝っていた──。

 

 

 

 

 

 

 

 ■□■□■□

 

 

 

 

 

 

 

 《くらふたーのせかい》のアレックスは満足げに微笑みながら、湖畔に腰を下ろしていた。

 

 目の前には、水面に揺れる釣り糸。そして、その向こう側──フェンスの外には、緑色の脅威が立ち尽くしている。

 

 

「おっ、また来たな、クリーパーくん?」

 

 

 フェンスの向こうで、クリーパーがじっとこちらを見つめている。だが、今の自分に怖いものはない。ここは完全に囲まれた安全地帯なのだから。

 

 

「どうだ? こっちに来たくても来れないだろ~?」

 

 

 挑発するように笑いながら、アレックスは釣り糸を再び垂らした。フェンスの外にいるクリーパーは爆発することも出来ず、ただ虚しく立ち尽くすのみ。

 

 

「いや~、平和って素晴らしいねェ」

 

 

 浮きが揺れる。アレックスは満足げにそれを見つめた。クリーパーの視線なんて気にならない。ここは安全なのだから。

 

 ……だが、その時。

 

 

「……シュー」

「…?」

 

 

 すぐ背後で、不吉な音が響いた。

 

 

「……ぇ」

 

 

 笑顔が凍りつく。ゆっくりと振り向いた彼女の視界に入ったのは──フェンスの内側に、堂々と佇むクリーパーの姿だった。

 

 気の所為か、アレックスにはクリーパーが笑顔を浮かべているように見えた。ニチャア、である。

 

 

「ナンデェ!?!? こ、ここ! フェンスで囲ってるよね!!?」

 

 

 だが、考える時間はない。クリーパーの体が膨らみ始める。

 

 

「いや待って…いつ湧いた? どうして!!? ていうかなんでよりによって今!?」

 

 

 焦ったアレックスだったが、そういえば今は夜だったことに気づいた。昼間だと思って油断していたが、実際には夜になっていて、クリーパーが湧きやすい時間帯だったのだ。フェンス内の湧き潰しが甘かったことにようやく気づく。

 

 

「ふふっ、今からでも間に合う。友達になr」

「♫」

「ダメかァ」

 

 

 ドカァァァァァン!!!! 

 

 

 爆発と共に、アレックスの視界が真っ白になった。

 

 

 

 

 

「ハッ!?」

 

 

 ぱっと意識が戻る。次に見えたのは、自分が知っている天井だった。

 

 

「あぁ、ベッドか」

 

 

 アレックスは、布団の中でぼんやりと天井を見つめながら、さっきの爆発の余韻を噛み締める。

 

 

「…湧き潰し、大事だな…」

 

 

 まさか、フェンス内で湧くとは思わなかった。次こそは万全の体制を整え、完璧な釣り場を作る……いや、待てよ。

 

 

「…もう釣りはいいや」

 

 

 アレックスは布団を被りながら、小さく溜め息をついた。

 

 

「明日は旅でもしようかなァ…」

 

 

 釣りもいいが、たまには気分を変えて遠出するのも悪くない。気持ちを切り替え、次の目標を思い描きながら、アレックスは眠りについた。




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