クラフトは不滅である   作:最高司祭アドミニストレータ

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お風呂は最高デス。


科学船ペルセウス
最高機密会議室と遺跡を出るアレックス


 そこは科学王国の領内に存在する、表向きには存在しない最高機密の施設。

 

 あらゆる設備を完備し、独立稼働が可能。TNT爆撃すら無力化する鉄壁の構造を誇る。

 

 一見するとシェルターのようなその建造物は、実際には科学王国における最重要機関の一つ。

 しかし、その存在を知る者は極めて限られていた。科学王国のリーダーですら、その所在を知らない。

 

 そこに、一人の少女がいた。腕には『パナソル』の紋章をあしらった腕章。

 

 二重の鉄ブロックで守られたピストンドアをいくつも通過し、階段を降りる。暗証番号を入力し、最深部へと続くエレベーターに乗る。

 

 降り立った先には、青い制服を纏うアイアンゴーレムが警備に立つ厳重な会議室。

 

 室内には、既に二人の少女がいた。

 

 彼女たちもまた『パナソル』の腕章をつけている。技術開発部と軍事部、それぞれの責任者。そして、今まさに入室した少女も含め、三人は全員——転生者であり、創造主。

 

 

 統括のアレックス。

 軍事部のアレックス。

 技術開発部のアレックス。

 

 

 名も容姿も同じ。アレックス、という名を持つ者たち。彼女たちは円卓の席に座り、目の前の写真と設計図を見つめていた。

 

 

「パーフェクトな科学船に感謝」

「おっふ」

「なんと素晴らしい…結婚してください! ハァハァ」

 

 

 少女たちは興奮状態と化していたが、それはすぐに終わる。先ほどまでの異常なまでの興奮が嘘のように、今は真剣な表情で写真と設計図を見つめていた。円卓の上に広げられているそれは、科学船ペルセウスのもの。

 

 科学船ペルセウス。

 

 科学王国の最新技術を結集した、大型機帆船。設計から完成までに要した期間は約一ヶ月。その間に旧世界の技術を可能な限り復元し、実用に耐えうる形へと再構築した。

 

 推進システムとして採用されたのは ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンの二種。

 

 ガスタービンエンジンは、高出力・軽量・メンテナンス性の高さが魅力だった。構造上、動作部品が少なく、燃料の選択肢も広い。何より連続運転が可能であり、長期航海における信頼性も申し分ない。

 

 ——ただし、課題もある。

 

 燃費の悪さ。騒音と振動。

 

 特に燃費の問題は顕著であり、高速航行や機動力を重視する場面では有用だが、長距離航海には向かない。そこで、通常の航行には『帆とディーゼルエンジン』を活用することにした。

 

 ディーゼルエンジンは燃費に優れ、帆との組み合わせにより燃料消費を抑えつつ安定した航行が可能となる。

 旧世界でも 大型帆船にディーゼルエンジンを搭載する事例は多かった。特に風がない状況や港湾での運用時に役立つため、採用は自然な流れだった。

 

 

「ペルセウスの推進システムについて、改めて確認しようか」

 

 

 技術開発部のアレックスが、板チョコをかじりながら言った。

 

 

「主機はディーゼルエンジンとガスタービンエンジンの二種。当時においても、異論はなかったろう?

 ふふ、至極当然さ。ガスタービンは軽量高出力で、ディーゼルは安定した燃費効率。これを両方搭載すれば、状況に応じて最適な推進力を得られるってわけだ」

 

 

 軍事部のアレックスが、ボンボンショコラを口に放り込みながら頷く。

 

 

「ガスタービンは連続運転が可能で、長期航海にも向いている。でも、問題は燃費だ」

「そう。燃費の悪さと騒音、そして振動が課題だったな」

 

 

 統括のアレックスが、設計図の一部を指で軽く叩いた。

 

 

「そこで、通常航行にはディーゼルエンジンを使う。ディーゼルは燃費に優れ、長距離航海に最適だからね」

 

 

 技術開発部のアレックスが頷く。

 

 

「風があるときは帆、巡航時はディーゼル、緊急時はガスタービン。これなら、どんな状況にも対応できるってわけだ」

 

 

 軍事部のアレックスが腕を組みながら口を開いた。

 

 

「これだけ聞くと『それなら帆いらなくね?』って意見もあったろう?」

 

 

 技術開発部のアレックスが、ノンノンと指を振った。

 

 

「違う、違うよ。これはロマンなんだ。いいか? 帆があることで燃料消費を抑えられるし、長期航海にも柔軟に対応できる。しかも、見た目がカッコいい。いや、カッコよくない?! 唆っちゃうわ!」

 

 

 統括アレックスが苦笑しつつも頷く。

 

 

「実際、あの堂々たる三本マストと白い帆が風を受ける姿は、まさに威風堂々だったよな。龍水や千空が『これで行く』と言ったとき、思わず納得してしまったものだ」

 

 

 軍事部アレックスも、感慨深そうに言葉を紡ぐ。

 

 

「…まぁ、見た目だけじゃないけどな。このハイブリッド機関なら、戦術的な柔軟性も段違いだ」

 

 

 静粛性が求められる場面では帆。また長距離航海にはディーゼル、瞬発力が必要ならガスタービン。どんな状況にも適応出来るということ。

 

 これに、技術開発部のアレックスが指を鳴らす。

 

 

「つまり、カッコよさと実用性の両立ってことだよな? ふふ、イイじゃないか。確かに前世でも旧世界でも、この三種を搭載した船なんて存在しなかった。でも、それなら作るしかないじゃないか」

 

 

 やらない理由はない。前例なんて関係ない。自分たちは創造主で、創り手なのだ。

 

 統括アレックスが、グラスを手に取りながら微笑んだ。

 

 

「科学王国の名の下に、前例なきハイブリッド機帆船を完成させた」

 

 

 軍事部アレックスが拳を突き上げる。

 

 

「唆ったろう?! 」

「「その通〜り!!」」

 

 

 円卓に笑い声が響く。こうして、科学船ペルセウスについての議論は締めくくられた。

 

 

「じゃ、科学王国の分岐と乾杯しようか」

「西暦5740年4月5日、ペルセウス 竣工完了…だな!」

 

 

 この日を境に、科学王国は二つのチームに分かれることとなった。一つは、石化の謎を解くために世界を巡る『世界冒険チーム』。もう一つは、本土に残り文明を復興させる『本土チーム』。

 

 世界冒険チームには、選ばれた人間と創造主が乗り込む。一方、本土チームには『船員リストに呼ばれていない者たち』が、科学王国の地盤を支える役目を担う。

 

 この決定に、誰もが納得していたわけではない。ペルセウスに乗り込めるのは限られた者だけ。石化の謎を解くという大義のもと、選ばれた者たちは前へ進む。しかし、本土に残る者たちもまた、自分たちの使命を理解していた。

 

 

「この王国を発展させるのは、ここに残る私たちの役目」

 

 

 ペルセウスに乗り込む者たちが世界の謎を解くのなら、本土に残る者たちは、新たな科学都市を築き上げる。

 

 

「それぞれの戦いがある。どちらが欠けても、この戦いに勝つことは出来まい?」

 

 

 その決意が、彼女たちの心に刻まれていた。

 

 

「では、わたしたち!」

 

 

 アレックス01が指を鳴らす。給仕のアイアンゴーレムが全員にグラスを渡し、ワインを注いだ。それぞれが手に取ったグラスを掲げる。

 

 

「科学文明の復興と、全人類復活計画というロマンに」

「『ホワイマンを〜、ぶっ飛ばす!』に」

プロージット(乾杯)!!」

「「「プロージット(乾杯)!!」」」

 

 

 そして、彼女たちはワインを一気に煽った。静寂が訪れる。それぞれがグラスを置きながら、ふと考えた。技術開発部のアレックスが、チョコを齧りながらぽつりと呟く。

 

 

「そういえば…アレックス04は、今どこで何をしているんだろうな?」

 

 

 軍事部のアレックスが、ボンボンショコラを指で転がしながら肩をすくめる。

 

 

「あいつのことだ。どこかのバイオームを気ままに歩いてるんじゃないか?」

 

 

 統括のアレックスが、グラスを軽く回しながら微笑む。

 

 

「ふふっ、スーツ姿でタバコをくゆらせながら、気まぐれに旅を続けているのかもな」

 

 

 それぞれの脳裏に、朝日に照らされるアレックス04の姿が浮かぶ。技術開発部のアレックスが、口元に手を当てながら少し考え込む。

 

 

「…ま、あいつなら大丈夫だろ」

 

 

 軍事部のアレックスも頷く。

 

 

「ああ、どうせまた気が向いたらひょっこり現れるさ」

 

 

 統括のアレックスはグラスを掲げ、静かに言葉を添えた。

 

 

「なら、アレックス04の旅に──プロージット(乾杯)!」

 

 

 再び、軽くグラスを合わせる音が響く。

 

 彼女はどこにいるのか。

 今、何をしているのか。

 

 それは誰にもわからない。だが、アレックスたちは知っている。

 

 ——アレックス04は、きっと気ままに旅を続けているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 ■□■□■□

 

 

 

 

 

 

 風が吹き抜ける音が静寂を破った。かつて誰かが築き、そして誰にも顧みられることなく忘れ去られた遺跡。その石造りの壁はひび割れ、蔦が絡みつき、長い年月の流れを物語っている。だが、その中から現れた者は、その場の荒廃とは対照的に洗練された雰囲気を漂わせていた。

 

 黒のスーツに身を包んだ一人の少女──アレックス。彼女はゆっくりと足を踏み出し、廃墟の入り口から姿を現した。サングラス越しに鋭い眼差しを隠しつつ、彼女の表情は静かでありながら、どこか満足げにも見えた。

 

 太陽の光が降り注ぎ、彼女の長いオレンジ色の髪を照らし出す。光を受けてわずかに輝くその髪は、風に乗ってふわりと揺れた。無造作に流れる髪の下では、彼女のエメラルドグリーンの瞳がサングラスの奥で冷静に世界を見つめている。その視線の先には、広大な荒野が広がっていた。

 

 スーツは体にぴたりとフィットし、彼女の引き締まったシルエットを強調する。黒のジャケットのボタンはきちんと留められ、胸元の白いシャツは一切の乱れもない。袖口からわずかに覗く手首には、黒革のグローブがぴったりとはめられていた。

 

 彼女は手を軽く広げると、グローブ越しに掌を見つめ、ひとつ息をつく。

 

 

「ふう……まぁ、こんなものか」

 

 

 遺跡の奥で何をしていたのか、彼女以外に知る者はいない。ただ、彼女の口元にわずかに浮かんだ微笑が、その結果に満足していることを物語っていた。

 

 振り返ると、背後の遺跡はひっそりとそこに佇んでいる。まるで時の流れから取り残されたかのようなその構造物に、アレックスは一瞥をくれた。

 

 

「…さて、と」

 

 

 彼女はジャケットの裾を軽く払うと、足元の瓦礫を踏みしめながら歩を進める。ブーツのかかとが乾いた地面を叩く音が、静かな空間に響いた。

 

 荒れ果てた土地を見渡しながら、アレックスはふと考える。

 

 

(次はどこへ向かおうか……)

 

 

 目的地はまだ決めていない。だが、彼女にはその必要すらなかった。旅は常に、予期せぬ発見の連続である。行く先々で何かが待ち受けているのなら、それに身を委ねるのも悪くない。

 

 ふと、彼女の口から小さな笑いが漏れた。

 

 

「次は…車をクラフトして、ドライブでもするかなぁ」

 

 

 科学王国の技術開発部は、過去にすでに「車」のクラフトに成功していた。陸上の移動手段を確保する──それは、文明の基盤を築く上で重要なステップだった。

 燃料には、相良油田の精製燃料を使用。坂道も難なく走破出来る駆動力を持つ。探索班には軽量のバギーを、物資輸送には大型のトラックを開発。そして科学船ペルセウスに搭載されている、動くラボも開発された。

 

 チョコをクラフトしてチョコパーティーするのも悪くないな、とも思う。カカオの木は栽培され、レシピもある。クラフトの自由度が高く、様々なバリエーションが楽しめることだろう。

 

 

「科学の進歩に終わりがないように──クラフトもまた不滅である」

 

 

 そう呟くと、彼女は内ポケットから細長い箱を取り出した。蓋をスライドさせ、中から一本のタバコをつまみ上げる。白と黒のコントラストが、彼女の指先で映える。

 

 タバコを唇にくわえ、片手でライターを取り出し、カチッと音を立てて火を灯した。炎が揺れ、煙草の先端を赤く染める。

 

 

「ふぅ…」

 

 

 静かに吐き出された紫煙が、ゆっくりと風に流されていく。彼女はサングラスの奥で目を細めながら、遠くを眺めた。

 

 旅は続く。アレックスの足取りは、まるで迷いを知らないかのように軽やかだった。




統括のアレックス01→牛乳大好き!(享年16歳)
軍事部のアレックス02→軍隊ごっこ大好き!(享年16歳)
技術開発部のアレックス03→ロマン技術大好き!(享年16歳)
背広姿のアレックス04→タバコ大好き!(享年16歳)

「「「一ヶ月もかかってしまったナァ」」」
「逆に一ヶ月しか、なんだよナァ•••タバコ最高なり」

共通して稀に見るリスポーンで、マインクラフターに転生! 

「01、02、行ってらっしゃい。本土は任せたまえ」

ちなみに船員リストには、統括と軍事部のアレックスあります。
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