励みになります。
「おはよう世界」
ベッドから起床し、う〜んと背筋を伸ばす。よく眠れた。スッポンポンなわたしは、衣類を纏う。この世界でもそうだが、前世では寝る際いつもスッポンポンだった。
先ず、解放感が凄まじい。下着やらパジャマやらで、就寝中の締め付け感が気になってしまう。こういった、締め付けのストレスから解放されるのはイイものだ。
それに、シーツなどの感触がとても気持ち良い。感じるって、最高。寝返りだって打ちやすくなるし、血行が促進される。
何よりも、リラックス出来るのだ。これがまた、うん……ヤメられない!
衣類を纏い終えたわたしはバルコニーに出ると、木製フェンスに手をかける。此処から見渡せる景色は、実に良い。今日も空は、よく晴れている。
さて、朝ご飯でも作るか。そのためにも、ジャガイモ畑に向かわないとな。
ツリーハウスの梯子を伝って、外に出る。お、土を踏む音、なんか心地よいな。
ジャガイモ畑に到着したわたしは、一マス分のジャガイモを収穫する。うむ、3つか。1つは植えて、残りの2つを朝ご飯にしよう。
収穫したジャガイモをインベントリに収納し、井戸に向かう。いやぁ、暇だったもんだから、水分補給で使う無限水源を井戸にしてみた。材料はなめらかな石ハーフブロックとオークの木材、あとはフェンス。
バケツで水を汲む。水バケツとなったそれをインベントリに収納し、梯子を伝ってツリーハウスへ向かう。
戻ったわたしは、
マインクラフトの
更には、ジャガイモなどを焼けるとキタ。煙は多少出るが、四散する。が、屋内でも煙突は要らない。メンテは殆どいらない。一つにつき、10秒で出来上がるのも魅力的。唯一注意しないといけないのは、燃料残量に気をつけることだ。
クラフトしていた木製ボウルにベイクドポテトを乗せ、いつも食べている位置である中央の床に置く。
少し離した位置に、インベントリから水バケツ取り出して置く。しかし、改めて実感させられる。マインクラフトでは小さいそれは、デカい。見た目はミニバケツだから、容量は4L入るのか。
考えると、よくこの量を飲めたな。マインクラフター、になった影響だろうか。そういえばわたし、家に押し入った強盗に『牛乳』を飲ませていたような……?
『おい強盗だ! 金を出せ!』
『え、嘘!? ほ、本当に…?!』
『そ、そうだ。だから金を──』
『記念写真してくれ!』
『なんでそうなる!? 訳がわからねェ…!』
懐かしい。興奮状態だった強盗のことを、まだ記憶に残っている。
『ヒドいじゃないか。刺すなんて…。わたしじゃなかったら死んでたぞ…?』
『ち、血が出てない…ッ。ば、バケモノめ…ッ!?』
『悪い子にはお仕置きだなァ……?』
『ガハッ!?』
確かあの時、エンチャントされた木剣でノックバック。その後は…。
『さぁ飲め! お前は良い子になるんだよォォ!』
『ゴポッ!? ゴポポポポ…ッ!?』
『はいはい、全部飲みましょうねぇ〜』
『!? ゴポポポポ…ッ!?』
倒れていた強盗に牛乳を飲ませ無力化。
仕方なかった、ってやつだ。相手はナイフを持っていたし、顔も真っ赤で汗いっぱい。わたしが、リスポーンさせれてしまう恐れがあった。あまりにも興奮状態だった強盗を落ち着かせるには、牛乳で正常化させるしかなかったのである。
あの選択に間違いは無いと、悔いは無いと、今でも信じている。
おっと、そうだった。わたしとしたことが。回想に集中している場合じゃない。
朝ご飯を作らねば。チェストに保管しているリンゴを取り出し、ナイフを使って縦半分に切る。このナイフ、切れ味が大変素晴らしい。千空がクラフトした、黒曜石製のナイフなのだ。
黒曜石。ネザゲートなどに使用される、岩盤を除いて最も硬いブロック。それを千空は……時間ある時に教えて貰おう。
縦半分したことで、二つに分かれたリンゴ。別に切らずとも、このまま食することは出来る。が、それはクラフターの場合。千空がいるのだ。切ってやらないと。
更に半分に切ったら、両側からV字に包丁を入れて芯を取り除く。
最後に皮を剥いて…はい、出来た! 可愛いいウサギさんリンゴの出来上がり!
ボウルにリンゴを乗せる。それを持っていく前に、剥いた皮と芯の処分をする。トラップドアを開けて、ゴミ箱にポイ。確認する。うむ、サボテンに消えた。ゴミ箱のトラップドアを閉めたら、リンゴをベイクドポテトの隣に置く。
ベイクドポテトもリンゴもボウルに乗せているのは、千空がいるから。ほら、直置きって色々とよくないでしょ?
だから、なのである。癖のあまりうっかり直置きしそうになった時もあったが、千空の指摘で事なきを得た。ありがとう、科学少年よ。
最後に水入りコップを置いたら、二人分朝ご飯の完成である。
…あ、千空が起きた。挨拶しよう。
「おはよう、千空。よく眠れたかな」
大きく欠伸すると、千空はこちらに顔を向けた。
「クククッ、寝心地が最高なんだよ。よく眠れたわ、100億%な」
もしクラフターがクラフトしたベッドを販売したら、いったいどのくらいの値段で売れるだろうか。高級ベッドにも負けない寝心地。そのぐらい、千空の評価する通り最高。
「朝ご飯が出来ている。食べよう」
「ああ、そうだなァ」
千空とわたしは座る。椅子は無いので、二人とも床座だ。
「「いただきます」」
手を合わせてそう言うと、朝ご飯に手をつける。
「うめぇ。クククッ、これが10秒でデキんっつーのは笑えるわな。味付けもされてるのも、今でも信じられねぇ」
ちらっと、を見やる千空。
「他の材料が無いってのもそうだ。この味付けだぞ? テメーの世界、どうなっていやがるんだ?」
確かに美味い。おかわりしたいぐらいに。マイクラでもそうだったが、ベイクドポテト出来上がった際、味付けするか確認してくる。
味付けしない、を選択するとホクホクに焼けただけとなる。転生してからもそうだったが、その時は色々と味付けを試したものだ。スタンダードな塩はそうだが、『明太子&チーズ添え』はこれまた美味かった。
いやぁ、不思議ちゃんだなぁ。
気づけばベイクドポテトは完食。デザートのリンゴも完食していた。現在は千空も、水を飲みつつ食休み中だ。
「これからもよろしくな、アレックス」
こちらこそ、千空。そう返すと、千空が口を開いた。どうやら、何か頼みたいことがあるようだ。
「デカブツ探すの、手伝ってくれや」
わたしは頷く。そして、声高に質問した。
…デカブツとは??
■□■□■□
どうやら、デカブツはあだ名らしい。いや少し考えればわかるか。そのデカブツ君の本名は大樹。千空の幼馴染だそうだ。
大樹の目星はついていたようで、千空の復活地点のすぐ側。同じ場所から同じように流された男。現在、千空が石のシャベルで掘っている最中。傷つけないよう慎重に。わたしも手伝いたいが、自分一人でやりたいそうだ。
ということなので石の剣を持ったわたしは今、周辺を警戒している。
「クッフフ…。見たくもねェほど見飽きた顔だがな」
掘り終わったようだ。デカブツ君こと大樹の姿を見る。好漢か? ゴツい手をしてるな。
「3700年ぶりじゃねぇか。よぉデカブツ」
隣で千空は泣きそうな顔をしている。
「さ〜て。千空研究所のスタートと行こうじゃねぇか…!」
一瞬だったが、嬉し涙かな? しかし、千空研究所か…建築が楽しみだぞ♪
「おいデカブツ。何すりゃオレみてぇに復活する?」
大樹の眉間をニヤニヤ突くな。突くなら優しく優しく。
「アレックス」
名前を呼ばれた。わたしは向き直る。
「テメーは知らねぇ。異世界に行ってたからな。そもそも3700年前のある日、人類全員がいきなり石化した。…その原因は何だと思う?」
おふざけが一切ない顔で千空は語る。
一つ目宇宙人説。地球人マジむかつくから石化させよう。石化ビーム! クククッ唆るぜこれは!
二つ目どっかの国の軍事兵器説。アーハッハ! 遂に石化装置を発明したぞ。起動! よし問題な……ってこれヤベェ自分たちまで!
三つ目新種のウイルス説。我らは石化ウイルス! 人間とツバメにだけ感染するんだぜ!
「唯一はっきりしてんのは、人間とツバメだけがピンポイントで狙われたってことだ」
「『異世界から帰還したら文明が滅んでいた件』。小説のタイトルならこれだな」
危なかった。異世界に行っていなければ、わたしも石化していたのか。
……あれ? ってことは、わたし何歳になるんだ? 流石に3700歳はないだろうし。もし3700歳だったら、ふふ、人間やめてるな。ウケる…ウケるが、千空は真面目な顔してるし、わたしもそうしよう。
「一見ムチャクチャなファンタジーだが、何かルールがある。だったら戦える! ルールを探すのが科学だ!」
刹那ニヤニヤしだす。怖ッ。
「今前人未到の科学が、オレの前にある。唆るじゃねぇか……!」
そういえばそれずっと気になっていたが、石化の破片だったのか。側にあるということは、千空のか。その彼は、すぐ近くの大石に腰掛けた。
「アレックス。オレの石化はどうして破れたと思う?」
どうしてだろう。石化してないわたしにはさっぱり。経年劣化かなと答えておく。
「100億%ハズレだ。経年劣化で復活するなら吹きっさらしの表面ほど、石化が解けるはず。…解ける? だが石像は──」
わたしは要らない子かな? 自分の世界に入っている。口に手を当て考え込みだした。考える人のポーズ、初めて生で見たかも。
「──オレだけが表面は…そういうことか!」
おっ、何か気づいたようだ。
「表面だけは劣化してて細胞には戻れなかった。だから石の殻になったんだ」
うん?
「表面でもたまたま劣化が少ねぇとこは、細胞に戻ってる」
うん、どうしよう。
「経年劣化なんかじゃねぇ! 別の外的要因で復活した……!!」
全くわからん。わかってますよの顔をしておこう。頷くのを繰り返していた時だった。
「黒?」
石で囲んでいた復活場所を座って、じっと見ていた千空の前を黒い物体が横切った。見てみると、その正体はわかった。
「コウモリか」
千空も気づいたようだ。一緒にその出処を辿ると、近くに洞窟があった。ここから距離は二十…いや十m。それを目にしたわたしと千空は、洞窟へ向かい歩き出す。
洞窟に入り、一歩一歩進んでいくと、天井の尖ったツララ、つまり鍾乳石らしきものからポタポタと垂れていた。液体なのは明白だが、この特徴的な匂いは何だろう。
「ほのかに甘い匂いがする。千空、これはなんだ…?」
そう質問すると、鼻を押さえている千空は答えた。
「硝酸だ。この外的要因で復活したかもしれねぇ。ものは試しだ!」
そう言うと、千空は突然首に手を伸ばし髪を抜いた。何をしてるんだと思ったが、どうやらまだ石化してる髪を抜いたようだ。それを硝酸に差し出したということは、石化から復活するか試すのだろう。
石の髪が硝酸の雫に触れた瞬間、ピシピシと音を立てて崩れていく。それはただの風化ではない。硬質な鉱物がまるで雪解けのように溶け、生命の細胞へと回帰していく奇跡の光景だった。千空は確信を得た科学者の顔で、歓喜の声を上げた。
「ハハ! 硝酸で戻ったぜ」
その笑い声が、薄暗い洞窟に響き渡る。わたしはその光景を、ただ見つめていた。マイクラのクラフトとは違う。世界の法則を一つ一つ解き明かし、不可能を可能にする科学の力。その眩しさに、少しだけ目を細めてしまう。
なるほど。どうやら千空は、これで復活したらしい。たった一人で3700年もの間、思考を止めずに。その果てに掴んだ希望の正体が、これだったのか。復活の瞬間そのものを、この目で見られなかったことが少しだけ悔やまれる。
千空の視線は、もはや手の中の髪にはない。彼の目は洞窟の外で待つ親友の石像を、真っ直ぐに見据えていた。
「これならデカブツも起きれるぞ!」
抑えきれない興奮が声になる。その言葉を合図に、千空は振り返ることもなく、洞窟を飛び出していった。一筋の光に向かってひた走るその背中は、希望そのものだった。
「…えっ、ちょっと待ってくれ?!」
突然の疾走に、わたしは呆気にとられる。科学のことになると、周りが見えなくなる彼の性格を思い出し、やれやれと肩をすくめた。
ついて行かねば。わたしは、その科学バカの後を追った。
作者、最高司祭アドミニストレータでございます。
原作が完結した今でも、ドクターストーンは愛されております。アニメ四期の制作がされているのも、その証拠です。
わたしはこの原作の二次創作を執筆し、本日投稿させていただきました。これからもお付き合いいただけると、幸いです。
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