クラフトは不滅である   作:最高司祭アドミニストレータ

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パターン青! これは…濃味です!


ソフトクリーム
怪しさMAXの女


 皆さんどうもごきげんよう! わたしは、マインクラフターのアレックス! ふっ、創造主様と、呼んでくれてもいいのだぞ? ゴホン。挨拶はここまで。このアレックス、言いたいことがある。

 

 

「助けてください! お願い! どうか、私を…!」

「どうした!? 大丈夫か!!」

「ひ、必死で逃げて来たの…ドクター・ゼノの、恐ろしい王国から!」

「うむ! 英語だからさっぱり分からん!」

 

 

 誰や、あの女は? 見たところ、同郷のアメリカ人。そして、怪我をしているようだ。船に招き入れ、怪我の手当のため南に連れられたが…胡散くさいナァ。怪しいともいう。勘のよい一部の科学王国民は、敵のスパイじゃないかと睨んでいる。

 

 事実、『一人じゃ危ないから〜』という名目でキリサメが監視し同行している。

 

 ったく、千空はどうかしてる。アメリカ科学王国のスパイを乗船許可するとは。あんな優しくて綺麗で性格が素晴らしい彼は見たことがない…は、やっぱりというか100億パーセント仮の姿だった。

 

 女からゼノたちの情報を引きずり出して、特殊部隊の司に暗号通信をするために、科学少年は『大丈夫かい? さあ、もう安心だ。船に入って』と偽千空の姿を出したのだ。

 

 水の女神アクアみたいにアホっぽい女は、名をルーナというらしい。自称クールな女という、残念なオプションも付いてくる。可哀想に。偽千空の姿で『おっふ!』と魅了されてしまうとは。

 

 ちなみに珍しく、わたしは『おっふ!』していない。十中八九、拒絶反応を起こしたからだろう。

 

 女性にも魅了状態になるわたしだが、例外筆頭はアクアだアクア。とても女神とは考えられないほど、実にだらしない印象を貰った。アホ筆頭も彼女だと、闇の女神アインドラがハァンして断言した。全くその通りである。

 

 ホワイマンをボッコボコにした後は佐藤カズマとかいう高校生がいる異世界に、お忍びで行ってみたいものだ。興味があるしな。魔王討伐は、彼らにお任せしますハイ。

 

 

「ルーナ様のお好みが分からない以上、予測するしかありませんね」

「フゥン。ならば世界で一番、嫌いな奴などいない食べ物。そう! それは…アイスクリームだ…!!」

 

 

 ルーナが大樹を見て目ん玉『ぇ!!?』と飛び出た昼から、時は流れて夜。今、フランソワの手によってソフトクリームが作られようとしていた。

 

 ペルセウス号の甲板上、フランソワは静かに準備を整えていた。彼女の隣には、合成装置の調整を終えたばかりの石神千空が控えている。材料の一つ、バニラ香料は千空の手によって科学的に再構成されたものだった。

 

 合成ルートは複雑を極めたが、あくまで常識の範囲で──チートと呼ばせぬ精緻な計算の積み重ねによって得られた成果である。

 

 フランソワは、手にした冷却装置を確認する。これは原始的な圧縮機構と氷塩冷却法を組み合わせた、石の世界での特製ソフトクリームメーカー。装置の冷却部には氷と塩を詰め込んだ密閉容器が据えられ、内部の攪拌槽を一定温度に保つ設計となっている。

 

 まず彼女は生クリームと牛乳を一定の割合で混ぜ、濃厚な乳脂肪分を持つベースを作る。そこへ砂糖を加え、緩やかに加熱しながら完全に溶かしていく。千空が合成したバニラ香料を加えると、淡く甘やかな芳香が立ち上った。

 

 液体が程よく冷めたところで、濾し器を通して滑らかにし、冷却装置の攪拌槽へと注ぎ込む。ハンドルを回し、一定の速度で撹拌を続けることで空気が含まれ、軽やかな口当たりが生まれる。冷却と撹拌は、まさに時間との戦いだった。

 

 やがて混合液は、滑らかで艶のあるクリーム状へと変化する。撹拌を止めたその瞬間、白く光沢を帯びた渦が、ひとつのかたちを成していた。

 

 フランソワは即座に円錐型のクラフトコーンを用意し、柔らかなクリームを螺旋を描くように乗せていく。形は均整を保ち、高さと角度にも一切の狂いがない。仕上げに、ごく薄く削った氷の結晶を数片あしらって──完成だ。

 

 まるで雲をすくったような一品。甘く、軽く、清らかな香りを持つこのソフトクリーム。科学と料理の粋を尽くした成果。

 

 

「どうぞお召し上がりください。バニラ味のソフトクリームでございます」

「「「おお〜!!!」」」

「どこからどう見てもソフトクリーム…ジュルリ、ジャパン流に習って…いただきます」

 

 

 ソフトクリームの誕生だ! おっと、間違えた。ゴホン。ソフトクリームの再誕だ! では、感謝の気持ちを込めて…いただきます。

 

 わたしはソフトクリームを受け取ったその瞬間、手のひらに伝わるひんやりとした感触が、まず心を落ち着かせた。風も音も消えたかのような静寂の中、ただそこにある白い螺旋だけが、世界の中心に存在していた。

 

 

「ワオ! 口の中にふわっと溶ける! 冷たいのに優しいって、こういうことだったんですな〜」

「ウマい! ウマいぞー!!!」

「ふふ。もう、大樹くんったら」

 

 

 先端をゆっくりと舌先に触れる。冷気と共に広がるのは、淡く甘やかな香りと、なめらかにとろける質感。冷たいだけではない。舌にのせた瞬間から、ほんのわずかな空気を含んだ軽やかさが、口内全体に柔らかく広がっていく。

 

 その味わいは、驚くほどに繊細だった。乳脂肪のコクは濃厚でありながらも決して重たくはなく、むしろ後味はすっと引いていく。千空が合成した香料は、ただの代用品ではない。純粋でまろやかな甘さの中に、ふわりとした香りが優しく鼻を抜ける。

 

 一口目の余韻が消えないうちに、二口目を運ぶ。今度は舌の上でゆっくりと転がすように味わう。ミルクの甘み、クリームのなめらかさ、微細な氷結結晶が舌の上で静かに溶け、やがて一体となる。

 

 冷たさに舌が慣れてくると、味の層がより明瞭に感じられる。ベースとなる乳製の味わいが芯を支え、仄かなバニラ香がそこに寄り添う。甘みの設計は緻密で、砂糖の量は最小限に抑えられているはずなのに、口当たりは驚くほど優しい。

 

 

「コーンの香ばしさと相性バッチリ! サクッと音がして、ソフトと一緒に食べると…う〜ん! 最高ですな!」

「幸せだー!!!」

「だね!」

 

 

 コーンとの相性も見事だった。外側は軽く炙られ、かすかな香ばしさを持ち、内側はサクッとした歯ざわりを残している。ソフトクリームと一緒に噛むことで、冷たい柔らかさと温かみのある歯応えが口内で交差する。

 

 その一体感は、まさに食べる者の意識を飲み込んでしまうほど。心地よい甘さと滑らかさが舌に広がるたび、次の一口が欲しくなる。だが、同時にこの味が終わってしまうのが惜しいとも感じる。

 

 時間を忘れる。会話も、空気も、ただこの味の中に溶けていく。残された螺旋がわずかに揺れるたびに、口の中には幸福な余韻が満ちていった。

 

 食べ終えた時そこに残るのは、ただ静かな満足だけだった。

 

 なんてパーフェクトな味わいなんだ。

 

 

「ワァァオ、大樹くん…じゃあ、あ〜ん…してくれる? あ、ちょっとだけだから、ゆっくりね? 私も、ほら…はい! 大樹くん、あ〜ん! うふふっ、こういうの、なんだか新婚さんみたいですな〜♪」

「う、うぉぉ…!! じゃ、じゃあ、こ、こっちからも…あ、あ〜ん。杠のために、全力で優しくな! 食べるの見てるだけで、俺の方がドキドキして心臓がバクバクと…でも、嬉しいのは良いことだ!」

 

 

 甘く照れくさく、温かい空気が漂うことがなければ! 月光が柔らかく降り注ぐ中、ふたりの少年少女はソフトクリームを手に向き合っていた。

 

 小川杠が笑顔を浮かべて差し出した一口に、大樹は少し戸惑いながらも顔を赤らめつつ素直に受け取る。慎重に口を開け、そっとクリームをすくうように味わうその姿は、まるで大切なものを壊さぬようにと祈るようだった。

 

 今度は大樹の番だとばかりに、彼はぎこちなくも真剣な顔つきでソフトクリームを差し出す。杠はそれを見て微笑み、迷いなく応じた。頬が紅に染まり、でもどこか嬉しそうなその表情が、ふたりの距離を一層近づけていた。

 

 まわりの喧騒から切り離されたような静かな時間。指先の動き、目の動き、呼吸のテンポすら互いに調和しあい、そこには言葉以上の温もりが漂っていた。

 

 その光景は、ただそれだけで誰かの心をほっとさせる。ああ、これは純愛だな──と、思わず頬が緩むような情景だった。

 

 

「そ、そうだね///」

「うむ///」

 

 

 同時に、リア充は爆発しやがれとも、嫉妬を抱いた。それを誤魔化そうと、わたしは──

 

 

「あ、ソフトクリームが服に…と、取ってあげるね///」

「あ、ああ///」

 

 

 やっぱ無理だわクソ! わざとか? わざと見せてるのか!? 前世で恋人出来なかった、このアレックスにケンカでも売ってるのか! この、この! はよう結婚しやがれ!! 

 

 涙していたわたしは、フランソワのバーでゴクゴクとビールを飲んだ。フランソワは、わたしの背中を撫でていた。




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