クラフトは不滅である   作:最高司祭アドミニストレータ

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とある村人は語った…的にしないでもらえますかねえ…っとハァンをして。
それに対して、とある少女は言った…これぞアメリカ流だ受けとれやがれ! …っと満面の笑みをして。


狙撃

「Dr.ゼノは、俺の始まりのロケット作りの…科学の師匠に当たる男だ」

 

 

 月光が降り注ぐペルセウス号の甲板で、千空はいつになく静かな声音でそう言った。周囲にいた者たちの視線が彼へと集中する。だが本人はそれを意に介す様子もなく、過去の記憶を辿って話を続けている…。

 

 皆さんごきげんよう! わたしは、マインクラフターのアレックス! 創造主、とも呼んでくれてもよいぞ。

 

 いやはや、まさか千空に師匠がいたとは。しかも相手はアメリカ科学王国のリーダー、ドクター・ゼノと来た。ゼノとの出会いは当時10歳の時のようで、千空は小学1年生の時点で科学の知識を蓄えていた。

 

 世の中の大半の子供がランドセルの中に絵本やら図鑑やらお菓子やら詰め込んでいる時代──前世のわたしの友達がそうだった──で、彼の脳内はすでに宇宙へと飛翔していた。

 

 

 燃料効率。

 起動計算。

 酸化剤と燃料の比率。

 揚力と空力抵抗の天秤。

 

 

 そんな概念を科学少年は幼き日から噛み砕き、咀嚼していた。

 

 自分の夢を叶えるために様々な方法を駆使して、ロケットに関する科学の知識を得るために海外の論文にも辞書を片手に読み漁るほどの貪欲性。英語もその時点で覚え、マスターした。ヤバイな千空。

 

 それだけでは足りないと、ありとあらゆる研究機関に論文だけ読んでも解決することが出来ない疑問を、メールで送りまくる日々。

 

 そんなある日、NASAの本職から連絡があり、その日を堺にゼノとの交流は人類石化の日まで続いたそうな。

 

 

「フゥン。つまり、千空&ゼノ。科学使いの元師弟は同時期に目覚め、同じく目に着けた硝酸で──一人はヒトを活かす科学を作り続け、一人はヒトを殺す科学を作り続けた──という訳か」

 

 

 千空は世界の秘密や宇宙の秘密を知りまくりたいのに対し、ゼノは『科学があれば、賢い人間が衆愚を正しく導き支配することが出来る』と、ふたりの思想は異なる。ゼノは科学で人々を支配する目的で、独裁者として科学を極めんとしている。

 

 弾道ミサイルやら細菌兵器やらをニッコニコで語ったという、アメリカ科学王国リーダーには是非とも軍事部もしくは技術開発部に入部して欲しいものだ。

 

 ハッ!? 今のは誰も聞かれてないよな!? …ふっ、大丈夫か。千空がジト目してきてるだけか。ふっ、何ら問題はなかった。

 

 

「ゼノは科学武器の強さ死ぬほどご存知で、それで新世界牛耳ろうっつう奴だぞ? 石化装置なんつう超科学武器を無視できるわけがねえ」

「ハッハー! なるほどな。実際に使えるかどうかは、さして問題ではない。敵が有能すぎる科学使いだからこそ無敵の最終兵器として、ハッタリのカードに化けるということか…!!」

「表向きは、な? 実際の最終兵器は…クククッ! 分かるだろ?」

「…フゥン、すべて理解したぞ!」

 

 

 問題はないのだが、千空と龍水が悪〜い顔してわたしを見つめているのは何故だろうか? …いや分かったわ。思い出したわ。だからだ。ソフトクリームを食べている時からスパイのルーナに内緒で、日本語で語り合っているのだ。

 

 …その自称クールで出来る女は、バッテンして鼻に指突っ込んでいる……あいつは何をしたいんだ?? 最近の若者の行動は、実に意味不明だ。身体の動き一つ一つに、何か意味があるのか。それとも、本人が天然でやっているのか。

 

 どちらにせよ、不安になるぞ。少年漫画の乙女も流石にこうはならんだろう…知らんけど。

 

 

「おい千空、あれ…」

「クククッ、分かってるぜ。口パクパクさせて、情報伝達してんだろ」

 

 

 ナンダッテー!!? あれには、そんな重大な意味があったのか!? 鼻に指突っ込んだのも、そういう…っ。ルーナ、やるおるわ…!! 

 

 

「内緒話ってズルいなー!!」

「大樹くん。私たちも内緒話してるんだよ? 日本語で」

 

 

 しかもペルセウス号の通信機に、ノイズが走ったぞ。千空や念話越しの海賊部や軍事部、技術開発部そして裁定部によるとこれは…あらま〜、スクランブルだって。本格的に暗号機かました通信だそうだ。解読するには、スペクトルアナライザが必要らしい。

 

 スペクトルアナライザとは電気信号や電磁波に含まれる周波数成分を分析し、周波数ごとの強度をグラフで表示する測定器。横軸を周波数、縦軸をレベルとして表示することで、信号の周波数特性を可視化することが出来るそうな。

 

 そう! 何故ルーナが乗っているのか? とどのつまり、その目的は──

 

 

「会話内容は重要じゃあない。ルーナが何か動いたのを見て、通信が行われた」

「それはつまり〜?」

「つまり〜…狙撃だ☆」

「狙撃か〜…全員何かの後ろに隠れやがれー!! そんでクラフターどもの盾で身ィ守れー!!」

 

 

 空気が破裂するかのように、緊張が走った。科学狙撃銃でキーターゲットのみを速やかに排除し、最小限の被害で戦闘を決着させるためか!? おお! ゼノの言葉を借りるなら、なんてエレガントな科学的戦闘なのか! 実に素晴らしい考えだ! 精密な殺意。無駄のない戦術。

 

 慌ただしく走ったり、しゃがんだりして隠れたりする科学王国民。うむ、ターゲットが絞りやすくなるんじゃあないか? 該当者はルーナの見ろという視線を追って、狙撃手を見る…おお…!! 成り行きで周到な一手を醸し出しるルーナはスパイとしては『ダメよ〜、ダメダメ☆』だが…いやはや〜、感服である。

 

 

「アレックス様、お隠れください」

 

 

 その点を褒めてると、わたしに対する声が。その声の主はフランソワだった。警戒の色が宿っている。この状況楽しもうよと、視線を送る。叱られた。ぴえん。まぁやめないけど。

 

 ほうほうと関心していたわたしは、フランソワのバーでカクテルを飲む。う〜ん、美味しいかな美味しいかな。この状況を楽しむのもまた、創造主にとって最高に唆るものだ…!! イイね〜。狙撃手に狙われる該当者はきっと、幾何学的最適解のポイントへ退避することだろう。経験あるから分かるんだ、この統括のアレックスは。

 

 

「ハァ…ハァ…っ」

「千空様…!」

 

 

 あら来たわ奥さん。

 そうね千空くんが来たわね。

 まあ私には関係ないのだけどね。

 でも貴女、彼に転ばされてるわよ? 

 

 

 な、ななな何でだー!!? おい千空? 何をしてるんだ! わたしを盾にするな! フランソワもだぞ? ナニ協力しちゃってるんだ!? ふたりとも力強いなもう! バチが当たるぞ…!! 

 

 

「『ものは試し』ってよく言うだろ? クククッ! 防弾チョッキ代わりがバーにいて助かるぜェ」

「申し訳ありません。悪趣味ではありましょうが、ちょっと興味がありまして」

 

 

 く、狂ってやがる! わたしは正常だというのに、こやつらは異常! 即刻、牛乳を飲まさねば…無理っぽいナ。

 

 や、やだ…痛いのはヤダァァァァ!!! 最高に刺激的な瞬間が訪れるけども! それでも痛いのはごめんダァァァァ!!! 

 

 

「よっしゃ成功だ!!」

「血のクラフトも出来ましたね、千空様」

「ああ! クククッ、本職サマもこれで『死んだ』と信じるだろうよ」

 

 

 あっ、ハートが削れた。




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