才禍の怪人   作:でるぱ

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原作で大きな進展があったのでぼちぼち再開します。


第12話 殺帝殺

 

長い夢を見ていた気がする*1

それに私の「知識」もアップデートされた。これで2回目だ。

「量産型レヴィス」みたいなのは予想の範疇だが、呪詛(カース)の方は予想外だった。

無効化出来る私がタイマンでなんとしても仕留めないと。

更に「穢れた精霊」は思っていた以上に面倒臭い相手らしい。

悪意なくあそこまで冒涜的に人の尊厳を踏み躙り、害悪な存在に成れるのは驚きだ。

私はこの世界の怪物(モンスター)をまだまだ見くびっていたらしい。

ディオニュソスの仕込みもまだ他にもあったみたいだし…もう捕まったけど。

だが私もレベル4になった。基礎アビリティも申し分ないくらい溜まったので即ランクアップした。オッタルもレベル8になった。

あと、「知識」に併せて分身魔法(エインセル)がパワーアップした。お母様と2つに別れても弱体化しないのだ。

ただ、魔力は私の物だけを使うので、全力だと消耗が大きい。戦闘中に使うならほぼ切り札だろう。別々に行動する時は抑えめにしないとな。

ダイダロス通りに集結したロキ・ファミリア。そこにアリスも合流する。ベル以上の頭のおかしい成長速度だがレベル4にもなれば見くびる者はほぼ居ない。

 

さて無理に正史(ほんらい)通り事を進める必要もないが、似たような筋道を辿るほど予測が外れることも少なくなり、優位に事を進められるのも事実であった。

フィルヴィスが不在になったとはいえある程度原作(ほんらい)通りに事は進んだ。エインが誘導するはずだった役割は闇派閥(イヴィルス)の構成員が(おこな)っていた。

ヴァレッタあたりの差し金でフィンさんを誘い込んで始末したいのだろう。「鍵」は既に量産済みだがそのあたりは話していない。誘い込まれたように見せて人造迷宮(クノッソス)にそのまま突入した。

ヴァレッタは最初の遭遇で仕留めたいからだ。そのための策も用意した。フィンさんとベートさん、レフィーヤのパーティに私も加わっていた。フィルヴィスと私が入れ替わった形だ。

お母様は目を閉じたままでも行動に支障が出ないだけあって気配には敏感だ。そのあたりの技能も引き継いだ私は殆ど未知の場所であっても戸惑うことはない。

そうしてその広間(ルーム)に出た。ここが恐らく───

 

「フィ~~~~~~~~~~~~~ン~~~~~~~~~~~~ッ!!」

 

あの女の墓場だ。

 

この前のヘスティア・ファミリアのホームでの話し合いで。作戦は既に立案されていた。

 

「あの手の輩は自身の優位をこれみよがしに翳そうとして、まず間違いなく『鍵』を使おうとするでしょう。その対策に作ってもらったのがこの【妨害魔力波装置(ジャマー)】です。

これを起動すると半径30(メドル)以内で()()()()は使えなくなります。この複製した方の鍵ならその【妨害魔力波装置(ジャマー)】起動中でも普通に使えます。

奪われたら面倒だから1つと2つしか作っていないですけどね。」

 

向こう側の赤いらしい鍵と区別するためか、紫の球体と青い2つの球体を見せるアリス。こういう時は原作知識と現代知識様々であろう。既知である概念だから元現代人からすれば意外でもなんでもない普通の発想なのだが、

電波の概念もない現地人にはかなり奇異で突飛な発想に映る。単純に強い相手には役に立ちにくいが、策やら罠やらの仕掛けを使う相手に、原作+現代知識とフェルズの組み合わせは鬼門だ。

 

「ヴァレッタを発見したらまずこの【妨害魔力波装置(ジャマー)】を起動して私が接近します。奴への道が先に閉ざされてしまった場合はこちらの青い鍵で開きます。

まず私の魔法で足止めするので、フィンさんはその隙に距離詰めて仕留めてください。奴の口上に付き合う必要は有りません見敵必殺(サーチ&デストロイ)です」

 

「因縁の相手だから譲る」と言っていた割には随分容赦ない。これでも気遣ってくれたほうなのだろう。「『確実に仕留める』という最優先の部分は譲れない」というか、相手を見下している節があるのに一切油断がない。

既にアリスは【妨害魔力波装置(ジャマー)】を起動させて駆け出している。レベル差があってもあの音魔法(サタナス・ヴェーリオン)を躱すのは難しい。

 

「ア?テメェは…「福音(ゴスペル)!」ぐがっ!?」

 

アリスの魔力で1レベル差程度なら普通にかなりダメージを与えられる。とはいえ1発で仕留めるのは流石に無理だが。

 

そして鍵を操作しようと掴んだ右手を突き出してたまま血を流しながらふっ飛ばされたヴァレッタを既に詰めていたフィンの槍が胸元を抉る。

 

「アッ!!!????」

 

心臓を抉られたのにまだ少し息がある。レベル5ってすげーな。

 

「じゃあね、『それ』は既に対策済みだよ」

 

「他人から与えられただけの古い既存の仕掛けに頼るからですよ…タネさえ分かっていれば、時間と技術者さえいれば対策は容易い。貴女は『フィンさんと頭脳で張り合えている』と思い込んでいたようですが、

悪辣で手段を選ばないゲスな手法で『自分の頭が良い』と勘違いしていただけ…自身の力を鍛えてレベル6になっていればこうも容易く殺られなかったでしょうに…」

 

フィンさんと私をガクガク震えながら睨んで、「クソッ…」と悪態を()いてそのままヴァレッタ・グレーデは息を引き取った。ロキ・ファミリアの面々はあまりに早い展開に眼を白黒させていた。

 

「ヘタに死体を再利用されて怪人(わたしたち)のようになられても困りますからね【花開け(アルガ)】」

 

ボウッと燃え盛った炎を浴びせられ、ヴァレッタの亡骸が焼かれる。「私達?」と疑問に思う平団員達。この場でアリスの正体は幹部陣とレフィーヤにしか伝えられていない。

 

「凄い連携だったっす。団長と通じ合っているような…」

 

「ティオネさんに睨まれるから止めてくださいよラウルさん。単に打ち合わせ済みだっただけです」

 

「いや、知ってはいたけど、非の打ち所がない動きだったよ、オッタルがもう認めるているだけはある」

 

「あの【猛者(おうじゃ)】が!?」

 

「私なんて…まだまだですよ…お母様ならヴァレッタ如き初撃で仕留めていたでしょうし…」

 

「レベル7と比較するのは流石に無茶じゃないかな…」

 

「お母さんのこと本当に好きなのねーアリスちゃんカワイイー」なんて女性陣は呑気に言っている。

 

その「お母さん」のことを少しは知っているラウルは顔を青くしている。フィンは曖昧に笑っている。

 

「それにアリスは少し前にオッタルと共闘して向こうの最高戦力を撃破しているからね」

 

「だからあんま才禍(そいつ)甘く見るなよ」的な感じで釘を刺すフィン。

まあ別に平団員たちは、決して尊敬する団長と見事に連携して敵幹部を討ち取った彼女のことを甘く見ていたわけではないのだが。

 

 

 

*1
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