よろしくお願いします   作:やかんづる

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第1話

朝起きた時、27日目にして、ようやく杖と契約出来ていたのがわかった。

 

…そして、前世の記憶を得たのもその時だった。

 

「これって2次で良くある転生モノだよな」

前世の記憶を取り戻して最初に考えたのはそんなものだった。

 

我ながら擦れているとは思う。

 

だが、僕の自我は、6歳にしてはけっこう完成していたのだ。

少なくとも、前世の人格は、僕にとってあくまで唯の

「過去の記憶」にすぎないと断言出来るぐらいには。

 

しかし、ゼロ魔で、トリステインの辺境の代々ドットの貧乏貴族と言うのはなんだかなぁと思うが、ロマリアの平民とかで無いだけマシだと思う事にした。

 

なんて事を考えていたら、おかんが寝坊した次男(僕だ)を叩き起こしにやって来た。

 

怒りのおかんに、「やっと杖と契約出来たので感動していたんだよ勘弁してよ」と泣き落とし、なんとか許しを貰えた。

しかし、転生モノの貴族の母親は、若くて美しいのが定番だと思うのが、ウチの母親はモロに「おかん」である。

紫色のチリチリパーマに、先代領主のおじいも反論出来無い押しの強さ、オークが目を逸らす鋭い眼光、豹柄の上っぱり(マジで)を愛用し、2.5メイルの鋼鉄のメイスを杖にしている、異形の土ドットだ。

 

おとんが隣の領地に挨拶(行商とも言う)に行く途中で、2頭のオーガに襲われた処、はぐれメイジの母に助けられたのが馴れ初めだそうだ。

男女が逆ではなかろうか。

 

尤も、おかんの許しを貰えたと言っても、僕の仕事がなくなる訳ではないので、きっちり一仕事を済ませる。

山羊は、僕がどうあろうと餌は食べるし、糞はするのだ。

前世の感覚では、朝食の前に野良仕事と言うのは、貴族のやる事では無いのだが、我が家では常識なので、今更だ。

 

「名ばかりの貧乏貴族」と言う話は良く聞くが、それでも、始祖の時代迄遡られるの家柄の子爵家なのに、最後に基本無料の魔法学園に入学出来たのが4代も前の長男だとか、一寸オカシイだろうと思う。

 

我が家が潰れなかったのは、あまりにも貧乏で、領地にも財産にも旨味が無く、借金さえ出来なかったのが、その理由だそうだ。

 

……嘘でも本当でも堪らん。

 

去年、お兄が、例えはぐれメイジになっても、爵位や領地を売って、移住した方がマシな暮しが出来るのではと、おとんに聞いてていた事があった。

 

だが、「6000年、係累縁者にラインになった者さえ1人もいない、呪われたドットのサトー子爵家」

と言うと、それなりに有名らしく、他家からは嫁入りも婿取りも養子縁組も出来無い程だそうだ。

つまり、我が家の爵位は、一文の価値も無いどころか、負債に当る訳だ。

 

加えて、我が領内は何処の隠れ里かと言う程の秘境で、ろくな産物も無いなくせに、6000年も続く血族がぞろぞろいる、めんどくさい土地である。

そら、誰も欲しがらんわ。

 

なにせ、最後に我が家が一般の貴族と婚姻が出来たのは5000年以上前になるそうだ。

我が家では嫡男でさえも、ドットのはぐれメイジを嫁に出来れば御の字というぐらいで、普通は領内に6つ在る分家からしか嫁を取れないのだ。

その分家の嫁の大半は富農ですら無い、ただの平民である。

 

シャレにならん家である。と言うより、未だ本家・分家共にメイジの家系である事の方が驚異なのではなかろうか。

 

が、まあ、コレならばゼロ魔のストーリーと絡むことはあるまい。無双出来る様な知識も力も無いが、この辺境を少しでも豊かにして平穏に過ごそう。

 

と、思ったのはフラグだった様だ。

 

 

17歳の僕の前に、ヴァリエール公爵一家がいる。

「は、はじめまひて、シャド家次男、ダニエルと申します。よろしくお願いひます。」

 

噛んだのは仕様です。(涙)

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