魔法少女EX   作:MOPX

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確執EX

 

気付いてしまった事実。

姉を自称し、姉であることに誇りを持っている人間にとって一番の醜聞(スキャンダル)

調和の魔法少女、風斗木乃シラベは実の妹と仲が悪かった――。

 

「ふふ……なに勝手に話を進めてるの? お姉ちゃん、さすがに怒っちゃうなあ……」

 

相変わらずの笑顔は、されど禍々しい緑色のオーラを放っているように見える。

ここからが正念場だ。

 

「でも、この写真を見る限りは――」

 

「ああ、その写真を撮った時はね、たまたま妹とケンカしたの。生きた人間だったらケンカのひとつやふたつするでしょう? 問題は何もないわ」

 

「いいえ、それはおかしいです」

 

「……なんですって?」

 

この世界は夢のような世界。

いわば自分達の意識が反映された世界なのだ。

 

「高潔さんはナナちゃんとの思い出の品としてラーメンの湯切りを持っていた……でも、いくらナナちゃんでも湯切りを高潔さんに渡したとは思えません。高潔さんの『ラーメンをナナちゃんに食べさせたい』という想いが湯切りとして形になったんです」

 

つまりだ。

 

「この世界に持ち込まれるものはその人の性格や人間関係を象徴するものなんです。その写真がケンカした時のものというなら、なおさら妹とはずっと不仲だったことに――」

 

鈍くて低い音が部屋をこだまし、私の発言はさえぎられた(ちょっとびっくりした)

調和の魔法少女がオシャレな丸机に拳を叩き落したのだ。

 

「ふふ、キャンキャンキャンキャン(わめ)き散らして……妹ってのはどうしてこう性格がクソなのかしら……」

 

「じゃ、じゃあ認めるんですね……? あなたは妹と――」

 

「うるせえっつってんだろ!!」バァン!!

 

オシャレな丸机にヒビが入る。

なおも拳が落ち、オシャレな丸机は無様な残骸(ざんがい)と化していく。

 

「どいつもこいつもよお~!! 私が姉だつってるのによお~!! 姉の方が上なんだよお~!!」バァンバァンバァン!!

 

これこそが本音。

この女は世話焼きでも、こちらのことを(おもんばか)ってくれたわけでもない。

姉であることの優越感……相手を支配する征服欲。

それこそが根幹だったのだ。

 

禍々しい緑オーラが集約されていく。

それは光のドレスとなり少女の周囲に形作られていく。

 

「調和もたらす原初の森林……風斗木乃シラベ」

 

残骸と化していた丸机から根が生えてきた。

うねるように合流していき、一本の鞭と化す。

 

鞭から棘が生えてくる。

一撃でもくらえば致命傷になりそうな。

 

「調和ウィップ・アサルトモード!! ダメダメでクソカスな妹は……お姉ちゃんがシツケてあげないとねええええええ!!」

 

「不屈シールド!!」

 

眼前に巨大な鉱石を創り出すも、鋭い衝撃とともにそれは二つに砕かれた。

半分になった盾を素早く構えなおす。

 

いきなりの強襲形態(アサルトモード)

これこそが自称姉の真の姿。

鋭くしなる鞭がなおも絶え間なく襲ってくる!!

 

「ええダイッキライよ!! あんな性格の悪い妹なんか!! いつもいつも生意気なことを言って私のやることを邪魔してくる!!」

 

シールドがあっという間に粉微塵(こなみじん)にされていく。

その中でもっとも大きな破片を(つか)み取る。

 

「教えてあげる!! 私は元の世界で街に根を張ったの!! 全てを把握して魔法少女を管理するためにね!! 人間なんてゴミクソばっかりじゃない!! 私が管理する方がマシだってなんでわからないの!?」

 

鞭の動きに鉱石の破片を合わせる。

寸前のところで攻撃を受け流す。

 

「あの星ヶ浜って女だってそうよ!! 私が管理する完璧なテリトリーに偉そうにも入ろうとしてきた!! だからモンスターがいる外に締めだしてやったわ!! それでも戦い続けて……その姿を私が見て心を変えるとでも思ったの!? バカじゃないの!!」

 

鉱石をの角度を変えて攻撃の当たる角度を調整する。

その端面はもはや鋭く磨かれていた。

 

「どいつもこいつもお姉ちゃんの邪魔ばかり!! あの日……いつものように星ヶ浜が来る前……私はテリトリーの中で私への悪口を拾った!! ザコ魔法少女をしつけるために直接出向いて鞭で一撃入れようとしたら……飛び出してきたのよ妹が!! 『お姉ちゃんこんなことはもう止めてって』って!! バカがよ!! いまさら良い子ぶりやがって!! 私の攻撃を受けて……妹は動かなくなったわ!! 死んだのかもね!! 逃げちゃったし、どうなったかなんてわからないわよ!!」

 

鞭が一層のオーラを放つ。

次の一撃で決めてくるつもりだ。

 

「本当に……あの子が……あの子さえいなければ私は完璧なお姉ちゃんでいられたのに……どうしてあの子が妹だったのよ……」

 

調和の魔法少女は涙を流していた。

零れ落ちたそれは鞭に当たって弾けて消えた。

 

「この力も元の世界も、世の中全部ダイキライよ!! アイドルなんて笑わせないでよ!! あなただって夢を叶えれるわけない!!」

 

鞭が獰猛(どうもう)にしなる。

私は鉱石を構え直した。

 

「そのサイズの鉱石で私の攻撃は受け切れない!! 終わりよ似非(えせ)アイドル!!」

 

その通りだ。

この限界まで砕かれた鉱石では攻撃は受けれないだろう。

それは最早、盾と呼ぶには細く尖っていた。

 

まるでナイフのように。

 

「不屈カッター!!」

 

鞭の先端を切り飛ばす。

調和の魔法少女は苦虫へと変わりつつあった奥歯を嚙み潰し口から緑の液を吐く。

 

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”!! 貴様……!! 私の攻撃をわざと……!! こんな……こんな屈辱をお姉ちゃんである私に……!!」

 

「あなたは私のお姉ちゃんじゃないです」

 

そう、私はアイドルだ。

人をワクワクさせて楽しませる、そんなアイドルだ。

 

「元の世界で成功するわけがない? そんなことあなたが決めることじゃないです。……高潔さんや自由さんに言ったことだってそうです」

 

幸せになれるか疑問。

困ったちゃん。

 

これらは私達を慮って言ってくれた言葉ではない。

元の世界に帰りたくない調和の魔法少女自身の気持ちを私達に投影していたのだ。

実の妹がどうなったか、確かめる勇気がなくて。

 

「私達はもう前を向いてるんです。高潔さんや自由さんの過去のことは知らなくても……ちょっとの間でも協力してやってきた仲間です!! 二人のこと、私は悪い人だと思ってない!!」

 

演舞を始める。

鍛え上げられた体幹に裏打ちされたその動きで鞭を切り刻む。

 

調和の魔法少女の絶叫が響き渡る。

それは自らの敗北を察してのものだ。

頼みの綱である鞭は完全に露と化しているのだから。

 

演舞を終えて、私はナイフを天高く掲げた。

調和の魔法少女が驚いたようにこちらを見上げる。

 

「あなた……トドメをささないの?」

 

「さしません。……私はアイドルですから、見てる人に楽しんでもらえたら、それで終わりです」

 

 

 

「へへ、やったな」

 

自由の魔法少女がおしゃぶりを吹っ飛ばしながら笑みを浮かべる。

「一人で立てるわよ」「助けるのも自由だろ」そんなことを言い合いながら高潔の魔法少女に肩を貸して。

 

「おい、調和の自称姉。アンタには言いたいことがある」

 

「ふふ、何かしら……? 私にはもう何も残ってないのに……」

 

「初めて会った時に逃げ出して……悪かったよ。話くらいは聞いても良かった。今はそう思う」

 

「……。もう遅いのよ何もかも」

 

部屋が揺れた。

地震かと思い身を屈めながら外を確認すれば異様な光景が目に飛び込んだ。

森全体が緑色に怪しく光り、揺れていたのだ。

 

「ふふ……ごめんね。この部屋で一緒に暮らそうって言ったのは半分ウソ。私はこの世界に来た時から、魔法力を流し込んで少しずつ森を大きくしていた……。何でそんなことをしたと思う? 最終的に暴走させて、全部消し飛ばすためよ」

 

「ええ!? そんなことをしたらあなた自身が……!!」

 

「そのためよ。もう全部イヤになっていたからね。でも魔法力で自分を傷つけるのは難しいからこういう手段を取ったの。……思ったよりも早く済んだのね。あなた達を巻き込んで申し訳ないけれど」

 

調和の魔法少女が力なく笑った。

 

「あと一分でこの森は爆発するわ」

 

「あと一分でこの森が爆発!?」

 

「チッ!! 乗れ!!」

 

自由が魔法のバイクを出し、そこに急いで乗り込む。

部屋でうなだれる調和の魔法少女へ向かって自由が叫ぶ。

 

「何やってんだ、アンタも早く乗れよ!!」

 

「私は……でも……あなた達を……」

 

「助かるのが先!! 話は後!! オーケイ!? あと付け加えるなら……」

 

後部の高潔が微笑んでいるのがわかった。

 

「このバイクは4人までは大丈夫なのよ。そういう設定」

 

「……なにそれ」と言いながらも調和の魔法少女が乗り込んだその瞬間、バイクはトップスピードで小屋の壁をぶち破り駆けていく。

横を見やれば木々の一本一本が膨れ上がり爆発寸前という風だった。

 

「ふふ……もうおしまいよ。間に合わない。まだ外まで半分くらいよ? 私を乗せてなかったらもっと速度を上げれたかもしれないのにね」

 

「いいや、諦めないです……!! だって私達は――」

 

ナナの笑顔が頭に浮かんだ。

調和の魔法少女の話でもナナはナナだったのだ。

心を閉ざしていた彼女に会いに行き続けたのはきっと最後まで諦めなかったからだ。

 

だって、星ヶ浜ナナは――。

 

「魔法少女なんですから!!」

 

橙の鉱石が私達を包む。

どうせ間に合わないのなら、完全防御して爆発をやり過ごす!!

 

自由の魔法少女がバイクを走らす。

高潔の魔法少女も高潔ブリザードを背後に撃って加速を試みるも鉱石に包まれてそれもできなかったので声を張り上げて応援していた。

 

「本当にバカよ……あなた達……」

 

ギリギリの脱出なんて夢のまた夢。

森の中ほどで木々は爆発を始め、誘爆していった。

 

緑の衝撃の中を、鉱石に包まれたバイクが突き抜けていく。

 

開けた視界と背後の爆音で私達は自分達が助かったのを知るのだった。

 

「やったです!!」「ヒャハハ!! 何だかアタシ達の行く先、爆発してばっかだな!!」「ばぶ……じゃなくて高潔な勝利だったわね」

思い思いにそんなことを言う中、調和の魔法少女だけは何やら思案顔だった。

 

自分としても少し気になることはあった。

 

「もともと調和さんに会いにいったのはナナちゃんの思い出の品を探したいからという理由もありましたけど……それに関しては手がかりなしでしたね……」

 

「そのことなんだけど……」

 

調和の魔法少女、風斗木乃シラベは星ヶ浜ナナの戦っている姿を見ていただけだ。

だからこそ、自分はそう発言したのだが。

 

風斗木乃シラベはドレスの内ポケットからぬいぐるみを取り出した。

 

「星ヶ浜ナナの戦っている姿は私にも印象に残った……だから、残っていたのね。このぬいぐるみが」

 

「星ヶ浜さんに似ててかわいいわね……!! そのぬいぐるみは高潔よ!!」

 

「クッソ運転中で見づれえ!! 毒霧とばすか!!」

 

「はは……!!」

 

思わず笑みがこぼれる。

ぬいぐるみは自分の内ポケットにある化粧パクトとも共鳴していたからだ。

 

星ヶ浜ナナにまた会うことができるのだ。

 

 

 

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