魔法少女EX   作:MOPX

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大舞台EX

 

「ぷっ!! 何を言ってるのあなた!! 私はナナが幸せならそれでいいの。それ以外の全部がいらないの。まだわかってなかったの?」

 

「じゃあ……わからせてあげます!! アイドルの魅力ってやつを!!」

 

たとえ夢見た大舞台とは違っても。

目の前の人間一人を魅了できなくて何がアイドルか。

 

そのためにはまず舞台が必要だ。

(きら)びやかで幻想的(非日常)な雰囲気の――。

 

「不屈スーパーアリーナ!!」

 

地下室の天井が割れる。

漆黒の空のもと、橙に光る鉱石が地下室を彩っていく。

倒れている高潔、そしていまだ動けない状態の自由と調和を安全な特別指定席へ。

 

私の周囲の床がせり上がる。

光る鉱石がその結晶をゆっくりと、しかし確実に成長させていく。

 

轟音とともに橙に光るリフトが私を更なる高みへ押し上げる。

私のパフォーマンスを見せるための最強の舞台が出来上がる。

 

盤石の布陣。

いかなる攻撃もこの高さでは届かない。

全てのものは声援を送る観客と化すだけだ。

 

音が聞こえた。

私しか立つことが許されないはずのステージに足を踏み入れる音が。

 

「はい、ステージの上に不審者とーじょー♪ あなたのステージ、めちゃくちゃにしてあげる。ズンチャ、ズンチャ、ズンチャ♪」

 

「……!!」

 

踊りってこんなもんでしょ?

そう言わんばかりに桃夢園がおどけた動きを披露する。

 

「それがあなたの表現なの? 桃夢園ノゾミさん!!」

 

「はああ? さっきからずっとポエムってるし……私はこんな派手な舞台好きじゃないのよ。いかにも人に見せびらかしてまーすって感じ。……本当にくだらないわ」

 

そう言って桃夢園は桃色の斧を取り出すと、リフトの根元にガンガンと打ち付けだした。

舞台が揺れ、態勢を崩しそうになる。

 

「そんなに目立ちたきゃネガティブなニュースでトレンド一位を取らせてあげる!!」

 

「鉱石……頑張るです!!」

 

自分で創り出したものでもそう思わずにはいられない。

だってこれは、自分の大舞台への想いを、周囲のスタッフたちへの感謝を込めたものだから。

……そう、周囲の人たちの仕事があってこその主役なのだ。

そんな簡単なことだって自分はやっと気付けた。

 

「この世界はいろんな人たちの力で成り立っているんです……!! 希望の魔法少女……わからないんですか!?」

 

「……」

 

下に小さく見えていた少女がぽいっと斧を投げ捨てた。

やっぱり彼女だって魔法少女なのだ。

話せばわかって――。

 

「斧じゃラチがあかないわね。希望のチェーンソォォォォ!!」

 

「え……ええええええ!?」

 

杖から生えた桃色刃が高速回転を初めている。

物騒な音とともにリフト切り倒されていく。

 

「う、うわあああああああああ!!」

 

高度数十メートルからの自由落下。

激突の瞬間に鉱石で全身を覆わなければ凄惨(せいさん)な現場と化していた。

 

瓦礫(がれき)と化した舞台から少女の高笑いが聞こえてきた。

 

「あはははは!! ざっこ!! 不屈なんて耐えてるだけのザコ概念じゃない!! 希望を司る私に勝てるとでも思ったの? こーんな作り物の舞台で満足できるなんて、本当にちっぽけな人間よね!!」

 

「バカに……するなです……」

 

遠距離射撃を警戒しつつ立ちあがり希望の魔法少女と向かい合う。

自分の想いを伝えるために。

 

「作り物でも……そこには作ってる人の想いが込められている……それはムダなものなんかじゃないんです!! 私は……もっと広い世界を見たいし……見せてあげたい……あなたにだって!!」

 

「か~!! そういうノリいいから!! 私にはナナがいればそれでいいの!! いいから……ナナとお話させてよ、ねえ」

 

チェーンソーがこちらに向かってぶん投げられる。

軽いステップで回避しながらマイクを構える。

これくらいで諦めるほどヤワじゃない。

 

「不屈ライブ!!」

 

聞かせる。

全身全霊の歌声を――。

 

「何これ……へったな歌。どんなに偉そうなことを言ったってこんなものじゃない。口パクで通したら? あなたの歌に価値なんて――」

 

拍手が聞こえた。

安全な特別指定席の方から。

 

「へへ……相変わらずヘタな歌だよな……でも……一生懸命なんだよな、アンタは」

 

「ふふ、子守歌には少し騒がしいみたい。……お姉ちゃん、復活しちゃった」

 

「自由さん!! 調和さん!!」と叫んだ時には既に奴隷フォームを破り捨て変身した二人がいた。

……頭にはひとつの考えがあった。

この状況を打開するための唯一とも思える方法が。

それは復活した二人にこそ頼めることだ。

 

「自由さん!!」自由の魔法少女が目配せで応える。

気を失っていても魔法力でだいたいの状況は把握しているのだろう。

バイクに調和の魔法少女と乗り込みツタで高潔を括りつけるとそのまま瓦礫と化した舞台を爆走。

階段から地上へと抜けていった。

 

桃夢園が動かなかったのは不思議だが、私達にとっては希望が繋がった。

 

「あのザコ三人を今更逃がしてどうなるの? ……ま、あんな連中いつでも捕まえれるし、今はあなたに自分の立場をわからせるのが先だからね」

 

にっこりと笑みを浮かべる希望の魔法少女。

自宅で襲撃された時の妖精軍団を使われなかったのは助かったと言うほかない。

 

……こうして思考を巡らせてる間もピストルやマシンガンの射撃攻撃を警戒しないといけない。

今も物陰に隠れているが、リフトが倒れ瓦礫と化した舞台で上手く立ち回る他ない。

それにしても切り倒す用途の浄化技だけで斧とチェーンソーの二つを持ってるなんて――。

 

(あれ……? 多すぎないですか……? 浄化技……?)

 

今まで相手が使った技を勘案しないといけないと思ったからこその疑問。

妖精軍団、記憶操作、テントを破壊した爆破技、謎の光、ビッグバン、奴隷フォーム付与、小型杖、ピストル、マシンガン、大型杖、リボン、斧、チェーンソー。

 

あまりにも多様、そして脈絡がない。

ビッグバンを使わないのははナナを巻き込まないためと解釈できる。

 

だが他はどうだろう?

 

初手で妖精軍団をとりあせず出せばいいんじゃないか?

遠距離攻撃ができるなら牽制にでも使えばいいはずだ。

もう一度、奴隷フォームを付与してこない理由は?

チェーンソーが使えるなら最初から斧を使う必要はない。

 

「ふふ、耐えるだけのクソザコ魔法少女が逃げちゃって……。そろそろ飽きてきたし、もう終わらせよっか?」

 

(……飽き(●●))

 

桃夢園がたびたび使っていたそのワードで橙色の脳細胞がフル回転する。

そう、桃夢園の浄化技の特性は「何を」使ってるかでなく、「どう」使っているかなのだとしたら。

 

多様な浄化技を【持っている】ではなく、【使わざるをえない】だとしたら――。

 

 

 

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