魔法少女EX   作:MOPX

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最終フォームEX

 

「もう面倒くさくなってきたなあ。全部爆破しようかなあ」などと言っている桃の少女は、私の方から姿を現すと微かに笑みを浮かべていた。

 

「もう覚悟はできたのかな? 【希望】を捨てて私に屈服する覚悟が」

 

「見えたんです。あなたと向かい合う……そのための【希望】が」

 

「はああ?」と驚く少女に語り掛ける。

相手のことを少しでも知るために。

 

「桃夢園ノゾミ……あなたの浄化技、いやあなたの戦い方には弱点がある!! 今までたくさんの浄化技を使ってきたのにそれを十分活用しない理由……!! それは……!!」

 

相手のことを知ることは時として相手を傷つける可能性がある。

……調和の魔法少女と戦った時と同じだ。

それでも、最後には彼女とも分かり合うことができた。

 

だから、どういう結果になろうとも勇気をもって言うのだ。

 

「あなたは一度使った浄化技をもう一度使うことができないんです!! もしくは出力が大きく落ちてしまう!! だからいろんな浄化技を使わざるをえなくて……」

 

「……で?」

 

「え?」と思わず声が出る。

目の前の少女はイタズラが成功した子供のようにニタニタと笑っている。

それはこちらの覚悟を嘲笑っているようにも感じられた。

 

「そうだよ。私は自分で飽きちゃった浄化技は使わない。……で? だから何? それを聞いて私がビックリして『もうダメだ~』とか言い出すと思ったの?」

 

「それは……」

 

正直なところ、それを期待していた。

少しでも戦意を削いで最終的には戦うのを止めれたら――。

 

「やっぱりあなたもしょうもない人間ね。周りみんなそう。いくら人がいたって意味なんてないのよ。全員同じ。それって全員いなくても同じってことでしょう?」

 

そう言いながら桃色のぬいぐるみが至る所に設置されていく。

水平移動で突っ込んでくるそれらを鉱石で捌きながら桃夢園の表情を確認する。

 

心底つまらなそうな表情だった。

全てに飽きてしまったような。

 

「私ね、昔からすごい飽きっぽいんだー。玩具も、絵本も……人間にも。すぐに『もういいや』ってなっちゃうの。でも……ナナだけは特別だった」

 

玩具が、絵本が飛んでくる。

捌き切れなかった童話の本がドレスをわずかに斬り裂いた。

 

「ナナだけは物語の主人公みたいだったの!! 最初はちょっとウザいなって思ってちょっかいを出したけど……そんな私にもナナは向き合ってくれた……。ナナだけは私をちゃんと見てくれたの!!」

 

「キャ~」と黄色い(ももいろ)歓声を上げながら桃夢園がロッドを持ったまま手をブンブン振る。

手を振る度に桃色衝撃波が飛んできていることを除けば少女漫画のような可愛らしい一幕かもしれない。

 

「そして気づいたの……ナナみたいな真っ直ぐな子は幸せにならないといけないって。ナナはどんなにすごいことをやってもそれを当たり前としか思ってなかったから……。でも……世界はどんどんおかしくなっていった!!」

 

ぬいぐるみからウジ虫が湧き、さながら様子はパニックホラー。

手足のようにウジが湧きもはや別の生物となったそれらを何とかかわす。

 

「私達魔法少女が……ナナみたいな子が戦わなくちゃいけない時点であの世界はおかしかったのよ!! あの世界には魔法少女があふれすぎた……!! 本来モンスターにしか効かないはずの浄化技が他のものにも影響を出し始めた!! 当然の報いよ……!! 魔法少女に頼りすぎた世界が、魔法少女に滅ぼされるんだから!!」

 

ぬいぐるみが周囲を取り囲み、桃色に発光を始める。

咄嗟に鉱石で全身を覆うもすさまじい衝撃が体を襲う。

 

「がはっ……!!」

 

膝は付かない。

だが、橙色の光が私の口から漏れていた。

 

「はっきりと言ってあげる。あんな世界、守る価値なんてなかった。だから私は――」

 

そう言ったきり、桃夢園は下を向き手持無沙汰にリボンをいじる。

気を取り直してと言わんばかりに光を吐き続ける私へとにっこりと笑みを浮かべるのだった。

 

「アイドルが舞台で反吐をまき散らすなんてオシマイだね。もう諦めたら?」

 

「……」

 

確かにみっともないことこの上ない。

でも、どんなにつらくても頑張ることを肯定してくれた人がいる。

そして、気づいたのだ。

 

「あなたは……私と同じです、桃夢園ノゾミ……」

 

「はあああああ? ちょっと何を言ってるかわかんないんだけど」

 

「私だけじゃない……高潔さんも自由さんも調和さんも……みんな心に孤独さや悩みを抱えていた……そこをナナちゃんに助けられたんです」

 

「ちょっとやめてよ!! 私のナナへの想いをあなた達カスといっしょにしないで!!」

 

「いいや、いっしょです!! 私は……独りでふさぎ込んでいた時期がありました!! 周りなんて全然見えてなくて……今のあなたも自分のことしか……」

 

そう、自分(●●)のことしか見えていない子供なのだ。

だからこそ、それをわかってもらうためには――。

 

桃色の鉄拳が飛んでくる。

瞬時に詰め寄った桃夢園――希望の魔法少女が放ったものだ。

 

「黙りなさい!! いい加減にしないと減らず口を叩けないように顔面をボコボコにするわよ!! 希望は私!! あなたには少しも分けてやらない!!」

 

「いいえ、もう自分で見つけました!! こうやって守り続ければ……あの三人が帰ってくる!!」

 

そう、自分は不屈の魔法少女だ。

今も無節操に繰り出される攻撃を全部受けきっている。

 

「クソ……なんで……なんで倒れないのよーーーーーーー!! なんで……私の方が強いのにぃ!!」

 

「私ひとりならそうです。でもこれは……みんなの力なんです!!」

 

桃夢園の計画ではビッグバンで私達を気絶させてからの奴隷フォームで完全に打つ手がなくなるはずだったのだ。

実際、自分一人の力では奴隷フォームを破ることはできなかった。

 

「何でよ!! あなた達はナナと私の間に入ろうっていうの!? 必要ない!! 私とナナ以外の人間なんて……この世界に必要ない!!」

 

桃夢園から巨大な羽根が生え、ドレスが多重構造を取る。

 

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

人とは思えぬ唸り声。

天へと掲げた手から、桃色の雨が降り注ぐ。

 

周囲だけでなく自分すらも撒きこむ破滅の光。

 

「それなら……!!」

 

瓦礫と化した鉱石を頭上に集める。

それは、私の身のみだけではなく希望の魔法少女も守るものだ。

 

「そんなことしても意味なんかないのよ!! バーカ!!」

 

意味はある。

希望の魔法少女――桃夢園ノゾミを守ることができたのだから。

 

そして歌う。

精いっぱい自分の声が届くように。

私の声に呼応した鉱石が私達を守るドーム会場へと早変わりする。

 

「余計なことしないでよ!! そんなことをやって恩を着せるつもり!?」

 

「ファンを大切にするのは……アイドルとして当然のことです!! 私は……あなたみたいな人に自分の歌を届けたい!!」

 

そうだ。

この子はかつての私。

 

だったら自分は――。

 

かつての星ヶ浜ナナのようにこの子を励ましたい。

 

「まだそんなことを言って……!! 私にはナナだけいればいい!! そう言ってる!!」

 

「違う……あなたは自分自身どうしたらいいのかわからないだけだよ……!! だからナナちゃんを……」

 

「私が……? 私がナナに何をしたっていうの!? ほら、言ってみなさいよ!!」

 

言わなければいけない。

もしもここで自分達が負けてしまったら――。

 

 

この世界に桃夢園ノゾミは独りぼっち(●●●●●)になってしまう。

 

 

桃夢園はナナがしゃべっていた理由を私達に何かあると考えた。

でも、それは違う。

ナナが今、しゃべっていないことに理由があったのだ。

 

そしてそれは――。

 

「桃夢園ノゾミ……あなたがナナちゃんにしゃべってほしくないと思っていたから……だからナナちゃんはその想いを()んでしゃべらなくなった……」

 

桃夢園が言った通りナナは人に合わせていた。

だが、その対象は私達ではなく桃夢園自身だった。

 

「本当はわかっているんじゃないですか……? こんなことをしてもナナちゃんは喜ばない。だからあなたは……無意識にナナちゃんに黙っているように望んだ……」

 

「……るさい」

 

「え?」

 

 

 

「うるさああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」

 

 

 

喉が裂けんばかりの叫び声とともに桃色のドレスが巨大さを増す。

地面が揺れ、竜巻が起こり、濁流がこちらを飲み込んだ。

 

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!! うるさーーーーーい!! 死んだ? 死んだよね!? ねえ死んだ!?」

 

「……生きてますよ」

 

「はああああああああ!? 何で生きてんだよクソボケがあああああああああ!!」

 

瓦礫になったって鉱石はその輝きを失わない。

私はあらゆる桃色天変地異(ディザスター)を防ぐ防壁を鉱石で作っていた。

 

「ごめんなさい……でも伝えなくちゃいけないと思ったから……じゃないと、あなたの世界にはナナちゃんすらいなくなっちゃいます!!」

 

このままずっと攻撃を防ぎきれば……。

そう思った矢先だった。

桃色の少女が一際強い光を放ったのは。

 

「私がナナを苦しめてるなんて……そんなこと……そんなことあるわけが……」

 

桃色のドレスがぶくぶくと肥大化していく。

この世界に来てから、私の直感はだいたい当たっている。

そして今、最悪の予想が頭に浮かんでいた。

 

自爆。

 

調和の魔法少女の時と同じだ。

桃夢園ノゾミは自分の作ったこの世界とともに消えようとしている――。

最終フォームを文字通りの最後の姿とするために。

 

「なんだかエラいことになってんじゃねえか!!」

 

声の方を見れば、桃夢園ノゾミをはさんで反対側に紫のバイクが見えた。

自由に調和、意識を戻した高潔。

 

そして、ぬいぐるみの姿があった。

 

 

 

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