魔法少女EX   作:MOPX

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ラストバトルEX

 

桃色の大地を黄の巨人(ナナ)が飛び立つ。

私はみるみる小さくなっていく大地を見つめていた。

……ナナの頭の上で。

 

この時空から元の時空に戻るにあたって、全員で理想(ナナ)に乗ることになった。

頭の上には私の作った橙の舞台があり、それを調和のツタで括りつけている。

 

舞台の上から魔法力を通じて問いかける。

 

「底面は加工して柔らかく仕上げましたけど……痛くないですか?」

 

『うん!! とっても良い感じ!! キララちゃんの優しさが伝わってくるよ!!』

 

髪は女の子にとって大切なものだ。

そこまで言われると照れてしまうけどよかった。

(横で禍々しい桃色オーラを出してる人もいるがスルーした)

 

「にしてもあの世界もこれで見納めか。ま、あんまり未練もないけどよ」「あら、あなたはバイクを乗り回せなくなるのを嘆くかと思ったけど?」「んなもん元の世界でも乗れるだろ。……アタシはもっと広い世界を感じてえんだ。テメエの目で見て、実際にいろんなところに行ってよ」「……なかなか素敵じゃない。免許はちゃんと取るのよ。高潔に」

自由がバイクの整備をしながら高潔とそんな話をしている。

まあ確かにいろいろなことがあったけど言うほどの未練はない。

 

あれは私達の意識が寄り集まってできた世界だった。

だからなくなっても、なくなったりはしない。

私達は今、ここにいるんだから。

 

希望がため息をはいた。

 

「アイドルさんのポエムは相変わらずね。でも、私もあの世界にはもう飽きちゃってたしその方が都合がいいわよね」

 

「え……? 都合がいいって……?」

 

「最後にあの世界を爆破するわ。爆風を推進力として少しでもナナの魔法力を温存する」

 

 

「ば、爆破ぁ!?」みんながワチャワチャしだす。

「いつ!?」「そろそろ」大地が桃色に光り出したかと思えば、次の瞬間には私達は光に押し出されていく。

どうやらあの世界は爆発したらしい。

 

『あはは!! ノゾミちゃんは相変わらず大胆だよね!!』

 

「これを大胆で済ますナナちゃんも大概ですけど……」

 

私が作り出した鉱石でとりあえず衝撃はブロック。

ナナが爆風に乗って加速する。

 

あの世界に帰ることはもうできない。

後は進むだけだ。

 

全員で元の世界に帰れるように。

 

 

 

 

「じゃあ時間停止を解除するわよ。……ナナ、準備はいい?」

 

それを受けたナナが全員に聞き直す。

私達はそれぞれ肯定の意を返した。

 

元の時空で動くためにはもちろん時間が進んでないといけない。

それはモンスターの活動も許すということだ。

時間をかければ私達の星――いや、宇宙(せかい)は完全に乗っ取られてしまう。

 

短期決戦の総力戦だ。

 

「でも私達の星に着くまでの時間で完全に滅んだりしないんですかね……?」と聞けば「私達は魔法力の塊。体感では普通の時間の流れに感じるけど実時間では一瞬にも満たないわ」と希望。

それならばと全員が納得する。

宇宙でも魔法力があれば意志の疎通はできるし、互いの場所もある程度は把握できるだろう。

「そもそも生身で宇宙に出て大丈夫か?」なんて今更すぎるので誰もツッコまなかった。

 

桃色のベールで覆われた空間が目の前に現れ、私達を乗せたナナがそこに飛び込む。

そして目の前に広がっていたのは――。

 

どこまでも広がる漆黒だった。

 

「宇宙……ですよね? 何の目印もないようですが……」

 

「はあ……、アイドルさんはずいぶんと呑気なことを言ってるのね。……この絶望(●●)的な状況に」

 

気付いた。

モンスターはどんな姿であろうが一様な黒だ。

目の前の漆黒は良く見れば細かな点の集まりであり、微かに動いていた。

 

視界に広がる黒色は、その全てがモンスターだった。

 

相手からすれば異物である魔法少女(わたしたち)を完全に排除するつもりなのだろう。

小型のそれが無数にこちらへと向かっている。

 

「じゃ、行ってくるか」

 

声の方を向けば自由がバイクを吹かせていた。

パーカーに付いたフードの下では瞳に強い紫を宿らせて。

その真意を聞けば、あっけらかんと答えが返ってきた。

 

「大ボスってやつは希望でも無理だったんだろ? だったら全力のナナさんに倒してもらうしかねえ。そのためにはナナさんの魔法力を温存する必要がある。あの小型ザコどもを倒すんなら私の浄化技が一番効率が良い。いじょ」

 

ここまで一息。

自由は既にこういう展開を予想していたのだろう。

「いじょ」なんて軽いノリで言ってるが、要するに捨て駒ということで――。

 

「そんなのダメです!! 私達はみんなで帰るって……」

 

「オイオイオイなんだそのノリ。余計に死にそうな感じがしてくるだろ……」

 

「……自由さん、あなたのその行為。高潔だと思うわ。……でも私のお株を奪わないことね」

 

高潔がバイクの後部座席に座る。

 

「……何のつもりだ?」と自由が問えば「私がどうしようが自由でしょう?」としてやったりの表情。

 

ため息とともにバイクが加速する。

 

『キョウちゃん!! ミユちゃん!! お願い……無事に帰って来てね!!』

 

残った四人の気持ちを代弁するようにナナの声が宇宙に響いた。

 

 

 

 

黒い虫がうごめいていた。

それは空間に寄生し全てを飲み込んでいく。

存在するはずだった可能性を(むしば)みながら。

 

あらゆる物理法則が通じないそれは世界のバグ。

人も、モノも全てをかき消す恐怖そのもの。

 

魔法少女のドレスすらも侵食するこいつらは、並みの魔法少女であればタダのエサ。

体に取り付き、絶望の汁を吸い、その勢いを増長するだけだ。

 

その虫が紫に腐食し破裂した。

 

何もないはずの空間には紫の霧が満ちていた。

虫がその出所へと飛ぶも、出所は超高速で動いていた。

 

追尾に適した蜂型が飛ぶ。

駆け巡る紫を無数の黒が追う様は、引き連れているようにすら映る。

 

それでも黒の方が早かった。

紫に追いついたそれらは、全てを貫通する針を勢いよく発射し――。

 

青い刃に全て()ぎ払われた。

 

紫煙の中で青い刃が踊る。

縦横無尽に走るそれらが黒い虫を倒していく。

 

モンスターは知る由もない。

霧の出所であり、青い刃を振るっているのは二人の少女ということを。

 

「ヒャハハハ!! さしずめ宇宙の大掃除ってとこか!! この調子でいくぜ!!」

 

「まったく相変わらずの笑い声ね。……私は謝らないといけないわね」

 

「あ? こんな時に何の話だ? 死亡フラグっぽいのは止めてくれよ?」

 

「あなたのこと、最初は見かけで判断してた。人がどんな恰好をしてどんな笑い方をしようが自由なのにね」

 

「……。別に構わねえよ。アタシはこういう人間なんだ。浄化技だって毒霧だしな」

 

「毒っていうのもあなたがそう言ってるだけでしょう? 根は真面目だったし……あなたの魔法力、けっこう好きよ」

 

「……何のコトはねえ。自由には責任が伴うってだけだ。アタシはそれに気づくのに時間がかかっちまった……」

 

「『テメエを殺す自由という名の毒』ね。自由を貫き通すのも、また高潔……。私も向き合わないといけないのよね」

 

「ヒャハハ!! アタシ達似た者同士……って言ってほしいのか!? そういうのハズいだろ!!」

 

「似てはない。……でも、分かってきた気はするの。世の中にはいろんな人がいるんだって」

 

軽口を叩きながらもモンスターを倒していく。

そして景気づけと言わんばかりに叫ぶのだ。

 

「テメエを殺す自由という名の毒!! 自由の魔法少女、毒島ミユ!!」

 

「凍てつく絶対零度の高潔!! 高潔の魔法少女、氷鏡キョウ!!」

 

高潔と自由の両翼が宇宙を駆けた。

 

 

 

 

紫の毒と青い大寒波が環境(せかい)を作り変えていく。

漆黒の敵を倒していき私達の進路は開かれた。

 

『……』

 

浮かない表情をしているナナに調和が「二人を拾おうなんて考えてはダメよ」と(さと)す。

……その通りだ。

今戻ればその分だけ魔法力を消費することになる。

それは二人のやったことを無駄にするこということだ。

 

本当に高潔と自由に報いるなら、早く大ボスを倒してモンスターそのものを消すしかない。

調和は誰かが言わなければいけないことを言ってくれた。

――のだけど、希望は気に入らなかったらしい。

 

「そんなことを言って結局は我が身かわいさじゃない。……みんなどうせ自分のことしか考えてないのに。そこの調和なんて特にそうでしょ」

 

「希望さん!! 何でわざわざ煽るようなことを……!!」

 

「いいのよ。本当のことだから」と当の調和に(いさ)められる。

その一言もこの場に合わせてのものかもしれなかった。

 

私達の不和を嘲笑うように敵は一糸乱れぬ動きで迫ってくる。

希望が「はあ……」といつものようにため息を吐いた。

 

「今度は私が行くわ。ザコどもに魔法少女のなんたるかをわからせてやらないとね」

 

「え?」

 

正直、意外だった。

あんなにナナ、ナナと言っていたのに。

 

「うるさいわね。……私は一度ナナを助けることができなかった。本当にナナのことを考えるからあなた達に希望を託すのよ。……何か知ってるんでしょ? ナナに何かあったら許さないからね」

 

静かに頷く。

希望の魔法少女にそこまで言われたらやるしかない。

 

「ナナ、じゃあまたね」それだけ言い残すと小さな羽を生やして希望は飛び立っていた。

かつての変身姿を考えれば本調子でないのは歴然だった。

 

『今のノゾミちゃんじゃあ……!! お願い、戻って……!!』

 

「ふう、お姉ちゃんの出番かしらね」

 

そう言って調和の魔法少女が腰を上げる。

私はたった今、ナナのことを任されたから都合がいいのだけれど――。

 

「さっきキツいこと言われたばかりですけど……気にしてないですか?」そう聞けば少しの自嘲がこもった笑みが返ってきた。

 

「ううん、生意気に振舞われてるのは慣れてるもの」

 

 

 

 

「私がこんなザコに後れを取るなんて……」

 

桃色の少女が肩で息をする。

目の前には巨大な四足歩行の獣がいた。

狼……熊……獅子……見覚えのある獣の頭を全身に張り付けた乱雑な集合体。

 

醜悪なそれの鋭い爪を小さな杖で捌くのももう限界。

ドレスが破れ、声が漏れる。

 

最強クラスの魔法力を持っている少女が劣勢な理由は簡単だ。

相手の方が純粋に力が上だったのである。

 

「そう……これが運命だっていうんだ。最初からそんなもの興味ないけどね……。私はナナが無事ならそれで……きゃっ!!」

 

獣の爪が少女を捉える。

トドメといわんばかりに黒いオーラを発生させ、全力で突進をしてきた。

少女が全てを察する。

希望の名を冠するが故にすぐにわかってしまったのだ。

 

自分ではこの相手に勝てないと。

 

「ナナ……。ごめんね。どんなに迷惑に思われても、私はやっぱりあなたのことが――」

 

黒い衝撃が魔法少女の言葉を打ち砕いた。

 

「きゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

桃色の羽根が千切れ、漆黒の空間を舞う。

無様にも吹っ飛ばされ、希望は完全に――。

 

「ふう……さっさと先に行っちゃって。お姉ちゃん、追いつくのに時間がかかっちゃった」

 

希望の魔法少女の体には緑のツタが巻き付いていた。

先にはやれやれと言った表情の調和の魔法少女がいた。

 

「……誰が助けてって頼んだのよ!! あなた達はナナを守ってくれればそれで……!! 私のことなんかどうだっていいじゃない!!」

 

「ふふ、どうやら希望ちゃんはわかってないみたい。自分が消えたら星ヶ浜ちゃんも他の子も……私だって悲しむってわからないの?」

 

「そんなの口先だけよ!! 私のことなんか放って――」

 

黒い獣は少女二人の会話になんて当然、興味はない。

機械的に先ほどよりも強い体当たりを放とうと加速をする。

 

「調和ウィップ・ファイナルモード!!」

 

緑のツタが際限なく伸び無敵の要塞を形作る。

獣を弾き、なおも続く攻撃を受け続けた。

 

要塞の中で少女達は態勢を立て直す。

 

「魔法少女たるもの、衣服には気を付けないとね。……最低限破れてるところは直せたと思うけど」

 

調和が希望の身なりを整える。

桃色ドレスに緑の縫い目。

「私のドレスにこんな……!! あとこのツタ爆発しないでしょうね?」「よく馴染むように縫ってるから大丈夫よ。あと爆発はしないわ」なんてやり取りの後、希望が神妙な顔をする。

 

「……。どうして私を助けたの。私を妹扱いするつもり?」

 

「私の妹は一人だけよ。……残された人だってつらいってこと、あなたにも覚えていてほしいから……かな」

 

「……」

 

黒い獣の咆哮が宇宙を揺るがす。

物量作戦。

無数の同型の獣が四方八方から襲い来る。

 

「ふふ、お姉ちゃん要塞もいつまでもつか……。さて、どうしようかしらね」

 

「……私がやるわ。とっておきの浄化技があるし」

 

「……? あなた、もう使える技が残ってないんじゃ……」

 

「いま思い出したわ。魔法少女の定番で、使ってないやつ。……協力してくれる?」

 

「もちろんよ、だって私は……調和の魔法少女だもの」

 

 

緑の要塞からツタが伸びる。

その先には希望の魔法少女をしっかりと固定して。

 

「調和もたらす原初の森林!! 調和の魔法少女、風斗木乃シラベ!!」

 

「希望司る未来への光!! 希望の魔法少女、桃夢園ノゾミ!!」

 

希望の魔法少女が杖を構え、叫んだ。

 

「ビックバン・希望ビーム!!」

 

惑星サイズの直径の光線が少女から放たれる。

射線上にいた獣を跡形もなく吹き飛ばし、そして――。

 

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

そのまま薙ぎ払われる。

フレンドリーファイア(どうしうち)をしないように気を付けつつ、鞭のしなる軌道に合わせて桃色ビームが四方八方に巻き散らされる。

全座標、全方位に瞬時に打ち込める最強砲台が獣を殲滅していく。

 

「もう甘ったれたことは言わない……私は帰る……絶対にナナのところに!!」

 

「ええ、帰りましょう……会わなくちゃいけない人がいるもの!!」

 

調和がもたらす希望の光が漆黒の空に瞬いていた。

 

 

 

 

「派手にやってますね。……って派手すぎないですかね!?」

 

『うん!! ノゾミちゃんとシラベちゃんも協力してて……私、うれしいな!!』

 

宇宙は空気がないから声は聞こえないはずだが、魔法力でその意志ははっきりとわかる。

ナナが笑顔で喜んでいる様子が。

 

「……」

 

結局、私達二人が残った。

これも運命というやつなのだろうか。

そうであっても、なくても関係ない。

自分の役目は――。

 

「ナナちゃん、この戦いが終わった後ですけど――」

 

『あ……!! 見えてきたよ!! あれが……!!』

 

「……!!」

 

魔法力(いしき)を前方に集中させる。

まずはこの戦いを終わらせるのが先だ。

 

黒い星が見える。

全てを飲み込むような巨大な漆黒の星が。

 

「あれが……私達の星……」

 

自粛せずに最大サイズとなっているナナが赤子に見えるくらいの巨大さ。

恐らくは元々の星の大きさよりも一回りも二回りも大きくなっている。

 

「あんなに大きくなって、どうしようっていうんですかね……」

 

『……あいつらはね、どこまでも大きくなること自体が目的なの。……そうして宇宙ごと飲み込んで、また別の宇宙に行く』

 

「……。マルチバースってやつですか? 何だか話が大きくなってきましたね」

 

ゼロが何百個もならぶような数の宇宙のひとつを飲み込んだところで、こいつらには何の感慨もないのだろう。

植民地をひとつ増やすくらいの感覚か、もしくは物事はもっと大きなスケールで動いていて食事を取るくらいの感覚なのかもしれない。

 

ナナがなぜそんなことを知っているのかは、聞かないことにした。

 

『こいつは絶対に……私が浄化して見せる!!』

 

「……この大きさでちょっと役に立てるかわからないです。でも……」

 

歌う。

自分はアイドルだ。

 

舞台の上でいつだって人を鼓舞することができる。

 

『うん、ありがとう!! ……あんまりうまくないけど』

 

「な、ナナちゃんまでそんなことを……!!」

 

『でも……勇気をもらえたよ。キララちゃんの歌を聞くと……絶対に諦めないって気持ちになれるから』

 

黒い星から触手が伸びる。

一本一本が全てを滅ぼす厄災級のそれが、黄の魔法少女へと向かう。

 

『理想ウィング!!』

 

少女が蝶のような羽を生やす。

指揮棒を激しく振るような高速旋回。

激しく揺れる舞台の上で、私はただ歌を届ける。

 

この戦いを終わらせるために。

 

「大地を照らす不屈の輝き!! 不屈の魔法少女、雲母岩キララ!!」

 

そして――。

 

『理想いきつく星々の海!! 理想の魔法少女、星ヶ浜ナナ!!』

 

元の世界へと帰るために。

 

黄の軌跡が舞い踊り、黒い線をかいくぐる。

そして、黒い星に向かって一直線に伸びていった。

 

『理想パンチ!!』

 

最大の力を最小に時間に圧縮した攻撃。

魔法少女の理想ともいえる一撃は――。

 

『……!!』

 

黒い星にヒビを入れただけだった。

黄の少女(ナナ)の体に、そのドレスに黒い触手が巻き付いていく。

 

『でも大丈夫……後は――』

 

「ヒビが入ったのなら……十分ですよ!!」

 

私は舞台から飛び降りながら鉱石を作り出す。

理想(ナナ)(うで)不屈(わたし)進む(すべる)

 

即席の鉱石コースター。

鍛えられた体幹で振り落とされないようにしがみつく。

 

小型の触手が突っ込んでくる。

ナナの腕から黄の光が吹き出して応戦する。

 

「……!! ナナちゃん!!」

 

『私、ずっとどこかで……自分一人で戦わなくちゃって思ってたんだと思う……。だから……』

 

黒い触手に耐えながら黄の光で援護を続けている。

ナナは泣いているのだとわかった。

 

『本当に……ありがとう、キララちゃん』

 

鉱石が跳ね上がる。

私は空中でくるくると回転しながらマイクを取り出す。

 

雲母岩キララ。

一世一代の大舞台。

 

「不屈アタック!!」

 

マイクを黒い星に突き立てる。

ヒビが大きくなっていく。

 

私は夢の世界に着いたばかりのことを思い出していた。

魔法少女のラーメン屋。

その場所を浄化技の勢いで壊してしまった時のことを。

マイクが触れていたのはモンスターのはずだったのに。

 

ラーメン屋は音――振動に共鳴する形で崩壊していたのだ。

だったら、今回も同じことだ。

どんな大きさのものだろうが、揺れを止めることのできない周期が存在する。

 

私達は叫んだ。

二人ぶんの想い(こえ)を重ねて。

 

『いっけえええええええ(「いっけえええええええ)ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』(ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」)

 

宇宙に響くはずのない音が響きわたる。

まるでこの世界全てを揺らすみたいに。

 

黒い星から黄と橙が漏れていき――。

最後の瞬間は白い光に包まれていてた。

 

星の浄化に成功した。

この宇宙から脅威は消え去るのだ。

 

そして、次の瞬間には白い光に飲み込まれていた。

目の前には一人の少女がいる。

少し寂しそうな笑みをたたえて。

 

『……今までごめんなさい。それにありがとう。あと、最後に――』

 

私は少女へと手を伸ばすと――。

 

『さようなら』

 

その手を鉱石で固定した。

 

 

 

私にとって、本当の意味で最後の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

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