「はい、これで終わりだよ」
「いや〜ありがとうございます」
オールマイトと共に保健室へ訪れ、リカバリーガールの治療を受けた。リカバリーガールの治癒には少し驚かされるが傷ついた体は癒え、元の傷一つない状態に戻った。
「私は先に戻ってるから、着替えたら直ぐに来るように!」
「わかりました。それじゃあ、治療ありがとうございました!」
リカバリーガールから少しの小言を頂いてから、オールマイトは授業へ俺はコスチュームからジャージに着替えに保健室を出て更衣室に向かった。
「あーあ、コスチュームの寿命を僅か30分で迎えるとは…」
ボロボロのコスチュームを見て肩を落とした。
今度は大暴れしても破けにくい頑丈な素材で造って貰おうと要望を考えながらジャージに着替えた。
「なんでお前が此処に居るんだ?グラウンドβで授業だろ?」
「さっきまでオールマイトとバトっててコスチュームボロボロにしたんで着替えに来てたんですよ」
「何だって?」
ジャージに着替えた俺は更衣室の扉を開けたら、たまたま目の前を通り過ぎようとしていた相澤先生と鉢合わせした。更衣室にいる理由を聞かれて、さっきまでの事を話していたら頭抱えられた。
「はぁ…とりあえず、グラウンドβまで着いていく」
俺一人でも大丈夫なのだが、相澤先生がグラウンドβまで着いてきてくれるらしいので一緒に行く事になった。
「なあ西嶋。何故、お前はヒーローを目指した?」
無言のままだったから、何か話題を振らなきゃなって思ってたら相澤先生の方から話の話題を振ってくれるとは思わずびっくりした。
「俺は俺なりの自分の中にある正義ってやつを突き通す為にですかね」
「自分なりの正義ね…」
最初の頃は強くなって敵をボコボコにして最強ヒーロー!って考えていた時期があったが、この世界の歴史を勉強していくにつれて個性社会の闇を自然と見えるようになった。個性社会が作り出した闇に目を向けてから、俺自身の考え方が大きく変わった。
「まあ、変な道に行くことは無いんで安心してください。それじゃあ、目的地も近いんで失礼します」
グラウンドβの入り口に着き、相澤先生に着いてきてくれた礼を言ってクラスメイト達のいるモニター室に向かった。モニター室に入ると、誰か戦闘訓練をしている映像が目に入った。
戦闘訓練の対戦カードは飯田・爆豪VS出久・麗日だった。
「お!戻ってきたようだね西嶋少年!」
俺に気づいたオールマイトが声を掛けてきた。
オールマイトに釣られて、モニターを凝視していたクラスメイト達が一斉に俺の方へ向いた。そんなクラスメイト達からオールマイトとの対戦はどうだったのとか、どうやって鍛えてるのかとか質問攻めにあった。
「こらこら、今は授業中だぞみんな?西嶋少年への質問は放課後にしてくれ」
困っているところにオールマイトからの助け舟が出て、その場は収まったが放課後が大変そうだ…。
モニターを見ると爆豪と出久の幼馴染対決が繰り広げられていた。
「何か…スゲェ因縁が深そうな2人だな」
モニター越しに戦っている2人の姿を見て思わず言葉が出た。
出久から爆豪が幼馴染とは聞いている、小さい頃から何でも出来て憧れの存在だと儚げ表情で語っていた。仲は良かったらしいんだが、出久が無個性と診断されてから二人の仲は激変したみたいで皆の前で馬鹿にされたり、木偶の坊から木偶を取って『デク』と仇名をつけられたりと不仲になってしまった。
「この勝負…どっちが勝っても負けても関係が変わりそうだな」
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やっぱり勝っちゃんは凄いや…。
頭の中にあるヒーローノートをフル稼働させても、勝っちゃんには直ぐに対応される。
「個性使えやデク!!」
個性使いたくても使えないんだよ勝っちゃん。
0か100の出力しか出せない…出力調整が上手く出来ない現状で個性を使ってしまえば殺してしまうかもしれない。
「超パワーの個性を隠してて、ずっと俺を騙して楽しかったかオイ!」
勝っちゃんの言った事に対して、僕は何も言い返せない。
僕は勝っちゃんを騙そうとか微塵も思っていない、やっと勝っちゃんに追いつけるって…小さい頃から憧れている勝っちゃんに追いつける事が出来るって気持ちしかない。
──────────────────────────
なんと言うか、出久の言う通り爆豪は凄いヤツだ。
コスチュームの要望で上手く個性を使って広範囲の爆発を起こしたり、攻撃を仕掛けた出久に対して爆破で目眩し兼軌道を変えて背後に爆破をお見舞いする等、戦闘センスが凄かった。
「これ止めなくていいの!リンチだよこれ!」
「そうだぜオールマイト!このままじゃ緑谷がヤベェぞ!」
爆豪が一方的に攻め立て、出久は防戦一方で爆豪の攻撃をくらい続けていた。防戦一方だった出久が何を思ったのか、窓際の方まで走り爆豪と距離を取った。
二人の決着を静かに見届けようとしていたら、クラスメイト達がザワザワと騒ぎ出した。
「静かにしろお前ら!」
「緑谷がリンチされててなんとも思わねぇのかよ!」
「ヒーローがヴィランにやられてたら…ヒーローが可哀想なので辞めてくださいってヴィランに言うのか?」
爆豪にボコされてる出久を見て何も思わない訳じゃない…。
だが、戦闘訓練とはいえヒーローとヴィラン、対峙すれば勝敗を決めなければならない。
「俺達は子供のお遊びでヒーローごっこをする為に此処にいる訳じゃねぇ。お前らは、命掛けてヴィランや災害から一般人を守るヒーローになる為に此処に居るんじゃないのか?」
「「「「・・・・・」」」」
俺の言葉に納得してくれたのかガヤガヤしていたのが静かになった。出久と爆豪の戦闘が続いていたが、何を思ったのか防戦一方だった出久が爆豪に背を向けて逃げ場のない窓際まで下がった。出久は何かを決心した表情で拳を握りながら、追ってくる爆豪に向かって走り出した。
お互いに何か叫びあっているようだが、このモニタールームには二人が何を言っているのかを確認する術が無い。二人の距離がぶつかり合いそうになる瞬間、出久は拳の向きを爆豪から天井に変えて拳を振り上げた。
「これが…出久の個性か」
出久が振り上げた拳は天井をぶち破った。
出久達が居る階から最上階まで天井をぶち破り、ダミー核が置いてある部屋で対峙していた麗日が個性を使って出久の個性によって出来た天井の破片を野球の様に打ち、飯田を翻弄して核に触れた。
【ヒーローチームWIN!!】
麗日が核に触れた事でヒーローチームの勝ちで戦闘訓練が終わった。
「勝った方がボロボロで負けた方が無傷って…」
ヒーローチームは確かに勝ったが、出久は個性による反動で腕が紫色…多分骨折に加えて至近距離で放たれた爆豪の爆破を片方の腕でガードして火傷を負った。麗日は個性のキャパがギリギリなのか気持ち悪そうに核にへばりついて飯田が心配そうに駆け寄ったりととてもじゃないが勝利したチームには見えなかった。
オールマイトが駆け足で出久達のいる建物に向かった。
負傷している出久は担架の乗せられてロボ達が保健室へと搬送して、残る三人はオールマイトと共にモニター室へ帰ってきた。
「さて、講評の時間だ!」
三人が帰って来て早々に講評の時間が始まった。
オールマイトが今回の戦闘訓練のMVPを飯田に選び、飯田が選んだ理由をクラスメイト達に尋ねた。飯田がMVPである理由を率先して答えたのが、推薦組の1人・八百万百が淡々と戦闘訓練の全体的な講評を言った。
飯田は好評な評価が嬉しいのか顔が緩んでいる横で、八百万に噛みつきそうな爆豪が借りてきた猫みたいに大人しくしていた。
「所で西嶋少年は何か無いかい?」
「俺に振るんすか…」
次の戦闘訓練を始めるのかと思いきや、大方八百万が言ったのに俺に何を求めてるんだこの人…。
「俺的には爆豪の私怨丸出しの行動は悪く無かったと思う」
「どうしてでしょうか?ヴィランチームとはいえチームプレイが必要なのに単独に加えて大規模な攻撃は最悪としか評価のしようがないと思いますが?」
「ヒーローを前線でやっているオールマイトなら分かると思いますが、ヒーローはヴィランから恨みを買いやすい。私怨丸出しで襲いかかってくるヴィランを沢山見てきてますよね?」
「ま、まあ、そうだね…。西嶋少年の言った通り、私も数え切れない程そういったヴィランと戦ってきた」
今回の戦闘訓練の勝利条件は核を取るか守るかの二択、だが本当の現場だったらどうだろうか?
「単独行動?大規模攻撃?恨んでるヤツが目の前にいるならそいつを優先して消す…合理的だろうが非合理的だろうが関係ない、私怨を持つ奴ほど怖いものは無い。これが俺が思った事の全てだ」
俺はそう締めくくった。
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