レスキューのプロフェッショナルから学べると楽しみにしていた授業がヴィラン共の襲撃によって、強制中止にせざるを得ない状況になった。
「この間の奴か…」
先日、職員室に現れた奴もこの場にいた。
見るからに今回の襲撃の首謀者らしく、黒いモヤと脳みそ丸出しの人間って言っていいのか分からない奴を背後に控えさせて堂々と立っていた。
「13号…生徒に頼むのは悪いが西嶋、13号と共に生徒を守りながら逃げろ」
「こんな状況じゃなきゃ泣いて喜んでたんですけどね…」
「殿は俺が務める…行け!」
「で、でも!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは個性を無効化しての拘束…正面戦闘は───」
「一芸だけじゃヒーローは務まらん───頼んだぞ」
相澤先生は首に掛けていたゴーグルを付け、単身でヴィランに突っ込んで行った。大人数を相手に抹消や捕縛布を巧みに操って、襲撃に参加したヴィラン達を次々倒していた。
「相澤先生が殿してくれている間に逃げ───ッチ」
逃げようとする俺らの進行方向に噴水広場に居たはずの黒いモヤヴィランが現れた。何かあった時の為に俺はみんなの前に出た。
「先日ぶりだな黒モヤ!悪いがそこを通してくれねぇか?」
「先日ぶりですね西嶋拳斗。悪いですがここを通す訳には行きませんね」
どうやって俺の名前を知ったんだ?
あの時は互いに会話らしい会話をした覚えは無い、黒モヤがあの水色髪の男を咄嗟に死柄木弔と言ったくらいしか言葉のやり取りは無かった筈だ。
「何が目的だ?」
「先ずは自己紹介を…我々はヴィラン連合。我々の目的はオールマイトの殺害───そして貴方です西嶋拳斗」
「どういう意味だ?」
「貴方の事は色々と知りました。どうでしょうか?我々の元に来る気はありませんか?」
ヴィラン連合からヘッドハンティングされた。
俺の名前を知っていたり、何処まで知っているか分からないが俺の情報がヴィラン連合に流れている。
「我々の所に来ればあなたの欲しいものを与えられますよ───個性をね」
個性を与えるか…。
つまりヴィラン連合の中に他人へ個性を与える事が出来る奴が仲間に居るって事だよな?そいつの個性讓渡が創造して作られた個性───もしくは何らかしらの方法で得た個性を讓渡する…どちらにしても厄介極まりない存在が居るって言うのが分かった。
「ダメですよ西嶋くん!ヴィランの言葉に惑わされないでください」
「そんな馬鹿みたいな話に乗りませんよ。悪いな黒モヤ?俺は日陰にいるよりは日向にいる方が好きなんでな、勧誘だったら他当たれよ」
「そうですか───なら、無理矢理連れて行きます」
黒モヤが個性を発動させて自身の黒いモヤで俺を包み込んできた。
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【西嶋(くん)(ちゃん)!!】
クラスメイト達が黒モヤに包まれた拳斗に向かって叫ぶ様に名前を呼んだ。爆豪や切島が拳斗を助けようと動こうとした時だった…拳斗を包み込んでいた黒いモヤがいきなり四散した。
「何処へ連れて行くつもりか分からねぇが、俺を簡単に連れて行けると思うなよヴィラン?」
「私の個性が弾かれた?情報によれば貴方は無個性の筈!何をした!」
「聞いた事をなんでも教えて貰えると思うなよ?取り敢えずお前を取っ捕まえて色々と話してもらおうか」
拳斗は拳を鳴らし覇気を体全体に纏わせながらヴィランへ突っ込んで行く。
「計画が狂ってしまいましたが…まあいいでしょう、私の役目は───」
「!?しまった!」
ヴィランは個性を発動させ、拳斗以外の人間を黒いモヤで包み込んだ。拳斗はヴィランを速攻で倒そうとしたが、数秒の遅れで黒いモヤに包まれたクラスメイトの大半がその場から消えていた。
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相澤先生に頼まれていた事が出来なかった…。
黒いモヤが晴れると飯田や麗日を始め、芦戸、瀬呂、砂藤、障子と13号先生がこの場に残っていた。見聞色をこの施設全体に範囲を広げて、居なくなったクラスメイト達を探した。居なくなったクラスメイト達は各災害エリアに飛ばされたらしく、誰1人施設内から居なくなったヤツはいなかった。
「外部へ応援を要請したいが…」
「スマホが圏外…」
電波が妨害を受けているのか、この場にいる全員のスマホが全て圏外になっている。
「飯田…悪いがちょっと走って助け呼んで来てくれ」
「僕も西嶋くんと同意見です。現状、この施設に備わっている警報、そして通信機器は電波妨害を受けている状況…この緊急事態を知らせるには誰かが学校へ行くしかない」
「俺は何故かヴィランに狙われているし、下手にここから出て被害を拡大する訳にはいかない。この中で最速で動けるのはお前だけだ飯田」
「人を救う為に個性を使ってください委員長!」
13号先生は出入り口に立っている黒いモヤをブラックホールで吸い始めた。ブラックホールの引力で動きが封じられている間に飯田を行かせようとした時だった…13号先生の背後に黒いモヤが現れた。
「マズイ!13号先生後ろ!!」
俺は13号先生を助けようと突き飛ばすがブラックホールの吸引力が速く、俺の右腕の皮膚と13号先生の背面のコスチュームを吸い込んだ。俺の右腕は皮膚が無くなったことで出血して、右腕が血塗れになった。
「はあ…もっと見聞色を鍛えねぇとな。さっきから後手に回ってばかりで情けねぇ」
「に、西嶋くん、う、腕が…」
「俺は大丈夫だ、それより13号先生の方が重症だ」
うつ伏せで倒れて動かない13号先生に目を向けた。
コスチュームと一緒に背中をブラックホールで吸い込んだのか、小さい声で呻いていた。
「13号先生はそのままの体勢で動かないでください。そして飯田!今から俺が全力で黒モヤを足止めするから行け!」
俺はコスチュームを脱いで右腕に巻き付けた。
皮膚が無くなった右腕は正直めちゃくちゃ痛いが、泣き言は今日を生き延びたら言おうと決めて黒モヤへ突っ込んだ。
「その怪我で単身で来るとは舐められたものだ!」
「うるせえな黒モヤ!こっちはさっきから後手に回されまくってイライラしてんだよ!」
「そんなこと知っ───ヴォフォッ!!」
「今だ行け飯田!!」
黒モヤを武装色を纏わせた左拳で殴り飛ばした。
実体のない体かと思いきや肉体はちゃんとあり、黒モヤを発して肉体を隠していたようだ。
「行かせるか!!」
出入り口に向かって走る飯田に黒モヤヴィランが個性を発動させ、飯田をどこかへ飛ばそうと黒いモヤが包み込もうとした。
「この場には飯田君や西嶋君だけじゃない!私達だって居るんだ!」
黒モヤヴィランが飯田に意識が向いている隙に麗日が黒モヤに接近して触れた。
「ナイスだ麗日!!そいつを俺に投げろ!」
「分かった!!」
麗日の個性で重力が無くなった黒モヤヴィランを俺の方へ投げてもらった。
「この場から失せろヴィラン!!」
「このガキが!!」
重力が無いお陰で今いる場所から遠くへぶっ飛ばすことに成功した。飯田も無事に出入り口を出ていく所を見届けられ、後は飯田が応援を連れてくるだけだ。
「ナイスフォローだ麗日」
「西嶋君が怪我して戦っているのにビビってられないもん!」
「大丈夫か西嶋?右腕に巻いてるシャツが真っ赤だぞ」
「正直痛いが耐えられる。それより、俺は今から広場に行ってくる…相澤先生が危ない」
広場を見ると相澤先生が右腕をだらんとぶら下げながらヴィランと戦っている。遠くてハッキリとは見えないが、相澤先生もヴィランの攻撃で右腕を負傷しているようだ。
「行くなら俺も行く」
「障子…分かった、悪いがついてきてく!?」
俺達が話している間に状況が一変した…。
脳みそ丸出しのヴィランが相澤先生をボコボコに殴り、更に左腕を叩き折り相澤先生が戦闘不能になった。
「相澤先生がやられた!急いで行くぞ障子!」
俺はその場から飛んで相澤先生の元へ駆けつけた。
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