ドンッーー!っと快晴の空に空砲の音が響いた。
今日は雄英高校の一大イベント、体育祭の日がやってきた。雄英高校には生徒達だけで無く、一般人、テレビ関係者、プロヒーロー等の多くの人々が今日の主役である生徒達を見にやって来ていた。
「き、緊張してきた〜」
「やっぱスゲェな雄英体育祭!見ろよ!色んなプロヒーローが見に来てるぜ!」
選手入退場口に生徒達が集まっていた。
緊張する者、会場の雰囲気に興奮する者で賑やかになっていたがスピーカーに音声が入り、そろそろ開会式が始まると声が入った。
「まもなく開会式だ!各クラス毎に整列だ!!」
1-Aの委員長である飯田の号令で各クラスの委員長達が自分のクラスに整列を促し、号令から1分もしない内に各クラス毎に整列が完了していた。
「あ、あれ?西嶋くんは?」
「そろそろ始まるのにどこ行ったん?」
緑谷と麗日の二人はこの場に拳斗がいないのに気づき、探しに出ようとしたが開会式まで時間が無く捜索を断念した。
「緑谷...」
「轟くん?」
「客観的に見て実力は俺の方が上だと思う...だが、お前オールマイトに目をかけられてるよな?」
「……ッ!?」
「オールマイトがお前に目をかけてるってことはお前にはそれなりの何かがあるって事だと思っている...。お前に何があるか分からねぇが、俺はお前に勝つぞ」
緑谷は轟から宣戦布告をされた。宣戦布告をしてきた轟に対して緑谷は並ならぬ思いを感じとり、緑谷も自分の思いと共に轟へ言葉を返した。
「轟君が何を思って僕に勝つって言ってんのかは分からないけど...。僕より君の方が...ううん、同年代の中でも僕の実力は下の方だと思ってる。客観的に見ても、僕より優れてる人の方が多い」
「お、おい!緑谷もそんなネガティブになんなよ...」
「でも!僕は体育祭が始まる数日は遊んで過ごしていた訳じゃない!僕からも轟くんに宣戦布告させてもらうよ!僕は君に勝つ!!」
轟と緑谷のやり取りを爆豪は遠目から見ていた。
「チィッ!どいつもこいつもふざけやがって...」
緑谷も轟もまるで自分は眼中に無いって感じで、蚊帳の外へ放り出されているようで爆豪は腹を立てていた。だが、腹を立てている相手は緑谷と轟だけで無く、今この場に居ない拳斗にも腹を立てていた。
遡ること10分前...。
「悪い爆豪!開会式の選手宣誓任せるわ!」
「は?」
「じゃあ、そういう事で!」
学校に登校してきた爆豪は拳斗と会った瞬間に言われ、爆豪は何も返事をしていないのにも関わらず拳斗がその場から去って行った。朝の出来事から今の爆豪はニトログリセリンの様に、何時爆発してもおかしくない状態だった。
〇
『まもなく開会式を行い──────』
「おかき食べるかい?」
「いただきます!」
そろそろ開会式が始まる時間帯に俺はリカバリーガールに誘われ、保健室でお茶をしていた。開会式の様子は保健室にあるモニターで見られることができ、俺はモニターで登場するクラスメイトや他の科の人間の様子を見ていた。
「出たかったかい?」
「本音を言うと出たかった。まあ、開会式でたら体育祭参加出来ないって言われたら我慢しますよ」
生徒達の入場が終わり、いよいよ選手宣誓の時が来た。
選手宣誓は爆豪に頼んである、口の悪い爆豪が丁寧な口調で選手宣誓するのを楽しみに待っていたら...
『おい西嶋!テメェ、俺に選手宣誓押し付けやがってふざけんじゃねぇ!!』
全国放送なのに何時もの爆豪節が炸裂した。
というか、俺の名前出すなよ...選手宣誓と言うよりは俺へ文句を全国に放送している。
『俺はこの場に居る有象無象に興味はねぇ...テメェをぶっ倒して俺がNo.1になる!』
爆豪は選手宣誓?を終わらせて壇上から降りた。爆豪の宣誓に会場はポカンって感じの空気になっているのが画面越しに伝わる。爆豪の選手宣誓?に自然と口角が上がってニヤケる。
「どうするんだい?あんな熱烈な宣戦布告を受けてるよ」
「そりゃ勿論、全力で応えなきゃいけないでしょ。爆豪は人の名前を呼ばない...そんな奴がしっかりと名前を呼んでいる。男なら叩きつけられた挑戦状は受け取らないと」
公安が出張ってくる可能性がある以上、体育祭は程良く手を抜こうと考えていたが...公安なんてクソ喰らえだ。モブや変なあだ名で人を呼んでいた奴が俺の名前を呼ぶ、少なくても爆豪は俺をライバル視又は敵と捉えている。
「しっかり楽しんできな!」
「茶ありがとうございました!」
開会式が終わったのを確認し、俺はリカバリーガールから激励をもらって、保健室を出て第一競技の準備の為に移動を始めた。これからの事を考えていたらアドレナリンがドバドバ分泌してきて、テンションが上がってきた。爆豪だけで無く、色んな奴がどんな個性を出して体育祭をどうやって活躍するのかも楽しみだ。
〇
「派手な選手宣誓だったな爆豪!」
「うるせぇアホ面」
さっきの選手宣誓...かっちゃんは西嶋くんをちゃんと呼んでいた。初対面の人にモブや変な呼び方をするかっちゃんが西嶋くんにだけ、ちゃんと呼んでいることに対してささやかな嫉妬をしてしまった。
「よお、爆豪!さっきの選手宣誓良い感じだったぜ!」
「西嶋くん!開会式中は何処に行っていたんだ!西嶋くんが居なくなって心配したんだぞ!」
開会式中居なかった西嶋くんが、手を振りながら僕達の元にやって来た。何処に居たのか聞こうとしたら、僕より先に飯田君が西嶋くんに聞いていた。
「いや〜ちょっと腹痛くて保健室で休んでた!」
「む!今は大丈夫なのか?」
「休んだら良くなったから大丈夫!」
西嶋くんは腹痛で保健室に居たと笑いながら言った。
腹痛が治まるまでの間、温かいお茶を飲みながら開会式の様子を保健室にあるモニターで見ていたらしく、かっちゃんにサムズアップを送っていた。
「テメェの前でもう一度言ってやる。テメェをぶっ殺して俺が上だと証明してやる」
「ほう...」
「直接戦うまで首を洗って待ってやがれ」
「楽しみに待ってるぜ爆豪!」
かっちゃんは改めて西嶋くんに宣戦布告をした。
開会式を終えて体育祭ムードの影響で、かっちゃんと西嶋くんのやり取りは周りの人間のテンションを上げた。
「西嶋...」
「ん?今度は轟か」
「俺はお前に勝つ...」
「お前には無理だ」
「なんだと?」
轟君も西嶋くんへ宣戦布告をしたんだけど...かっちゃんの時とは打って変わって西嶋くんが冷めた表情でそう言った。かっちゃんの時とは違う西嶋くんに、この場にいる誰もが困惑した。
「つまらない奴を相手にしたくないんでな...勝手にやってろ」
「つまらないってどういう意───って待て西嶋!」
西嶋くんは轟君の言葉を最後まで聞くこと無く、この場から去って行った。残された僕らは気まずい雰囲気の中、第一競技の入場口に向かい始める。
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