「そこまで!全員、筆記用具を置いてください。解答用紙を集めますので、まだ席を立たないで待っていてください」
チャイムが鳴ったと同時に13号が筆記試験の終わりを告げた。
俺は手に持っているペンから手を離してテストの解答用紙が回収されるまで席から立たずに待った。
「次は実技試験の説明会場に行ってもらいます。会場に案内をするので荷物を持って廊下に出てください」
解答用紙の回収が終わり、13号から雄英高校ヒーロー科受験の山場である実技試験の説明が行われる会場に移動するから着いてくるようにと指示をされ、13号の後に続いて筆記試験会場を後にして説明会場に向かった。
「受験生のリスナー、今日は俺のライブにようこそ!エビバディセイヘイ!」
この場に受験生全員が集まってから、舞台に立っていたボイスヒーロー《プレゼント・マイク》がめちゃくちゃハイテンションで始めた。
「こいつはシヴィー!そんじゃ受験生リスナーにサクッと実技試験の内容をプレゼンしていくぜ!」
たまにラジオで聞くようなテンションで始めたが、誰一人も反応する奴が居なかった。誰も反応しないまま、プレゼント・マイクは実技試験の説明を続けた。
「試験内容は入試要項通り、リスナーにはこの後10分間の模擬市街地演習を行ってもらう。プレゼン後は各自指定の演習会場に向かってくれよな。」
渡されていたプリントに目を向けると4種の仮想敵が書かれている。
「演習会場には仮想敵を3種多数配置しており、攻略難易度に応じて1〜3のポイントを設けてある。各々の個性でコイツらを行動不能にし、ポイントを稼ぐのがリスナーの目的だ。もちろん他人への攻撃や妨害などアンチヒーロな行為はご法度だぜ!」
次の実技試験では模擬市街地に出てくる仮想敵を倒して多くのポイントを獲得するゲームの様な内容だった。
「質問よろしいでしょうか!」
会場全体によく通る声で1人の少年が手を挙げた。
手を挙げた受験生はきっちり着こなした制服とメガネを掛けていて、生徒会長か学年委員をやっていそうな感じの好青年が手を挙げたことにより、周りが注目する為にかライトで照らされた。
「プリントには
真面目メガネ君が4種目の仮想敵ロボについての説明が無いと、プレゼント・マイクに指摘した。
しっかし、プレゼント・マイクもまだ説明終わってねぇのに誤載やら恥ずべき痴態とかめっちゃズバズバ言う奴だなぁ〜って頬杖をついて真面目君の話に耳を傾けていたら...
「ついでにそこの縮れ毛の君!」
「えっ、僕?」
今度は受験生に噛みついていた。
噛みつかれた受験生の声に聞き覚えがあると思ったら、今日少しの間行動を共にしてた出久だった。突然の事で出久がアタフタとしていた。
「さっきからボソボソと気が散る。物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!!」
これってアンチヒーローな事に入らないのだろうか?
真面目メガネ君が言った通りに出久がボソボソと何かして気を散らせたのかもしれないが、こんな大勢の前で糾弾しなくてもいいと思うんだが。オマケに俺の近くに居るヤツらがボソボソと「ライバルが1人減った」なんて呟いてやがるしよ、ヒーローを目指す奴らの言うことかよ。
「オーケー!オーケー!受験番号7111君ナイスなお便りサンキューな!4種目の敵は0ポイント、いわゆるお邪魔虫ってやつだ!各会場に1体所狭しと暴れ回るギミック。倒せないことは無いが倒しても意味は無い。リスナーには上手く避けることをオススメするぜ!!」
不快な気持ちのまま実技試験の説明が終わり、各自指定された模擬市街地の演習会場に向かった。俺の実技試験が行われる演習会場はG会場だった。
大きな門の前で試験官を待っていたが五分経っても現れる気配がしない。試験官の到着は何時になるんだろうかと考えていたら、目の前の門がいきなり開いた。
はいスタァァーート!!
なんか急に始まったから走った。
他の受験生達も演習会場に入るのかなって少し振り返ったが、突然の事でフリーズしたのか誰一人その場から動こうとしてなかった。
『どうした!実戦にスタートの合図なんざねぇんだよ!走れ走れ、賽は投げられてんぞ!』
プレゼント・マイクの声でフリーズが解け、俺が先に行く姿に慌てて次々と演習場に駆け込んで行った。
──────────────────────────
「ブッコロス!」
「やかましい!黙っとれ!」
口の悪い仮想敵をワンパンで沈めた。
ロボだからそれなりの強度があるのかと思ってたんだが、少し力を入れて殴っただけで大破した。
「これで30体位か?」
索敵して遭遇したロボ、他の受験生がロボに徒党を組まれて囲まれているところに乱入したりしてだいたい30体位は倒した。実技試験の時間が残り僅かになった時、地面が揺れて空が暗くなった。
「なんだあれ?」
空を見上げると巨大なロボが居た。
──────────────────────────
クッソ…俺の個性と実技試験の内容が合わない…。
俺の個性は対人にしか効果が無い『洗脳』だ。俺の個性はロボ相手には通じずに身一つだけで戦わなくてはいけない。俺がそんな状況に追いやられている中で、ワンパンでロボを次々と倒している奴が目に入った。
「増強系の個性にはおあつらえ向きの試験だな」
あんなパワーを自在に使えて羨ましいと思った。
実技試験も残り時間が僅かになった時、突然地面が揺れ出して空が暗くなった。俺もその場にいた受験生達も空を見上げたら、巨大なロボが俺達を見下ろしていた。
「に、逃げろ!!」
誰かが発した一言でその場にいる全員が後ろを振り返って走り出した。俺も他の受験生達と一緒に逃げようと走り出した。走りながらロボの進行を確認しようと後ろを振り返ったら一人その場から動かない奴が居た。ロボをワンパンしていた受験生だった。
「お、おい!突っ立ってないで逃げるぞ!」
俺はそいつに大声で逃げるように呼びかけた。
「逃げるならさっさと逃げろよ」
「お前も逃げるんだよ!あんな巨大ロボに立ち向かったって意味ないだろ!」
「なあ...お前は此処へ何になる為に居る?ヒーローって敵を前にして背中向けて逃げる奴が何処にいる?」
「それは...」
そいつの言う事が正しくて言葉に詰まった。
だけど向かってくる敵は巨大過ぎる...俺達が言い合っている間に巨大ロボはどんどん近づいてくる。巨大ロボが近づいてくる中、目の前に居る奴は不敵な笑みを浮かべていた。
「そこで待っとけ、この敵を俺より後ろには行かせねぇから」
その受験生は地面を強く蹴って、巨大ロボの顔面まで跳び上がった。そいつが拳を強く握ると拳が黒く染まり、赤黒い雷みたいなものが体にまとわりついた。
ギャラクシィーー!!インパクトォォ!!
あいつが放った拳は巨大ロボの顔面を捉えて後方へぶっ飛ばした。巨大ロボがぶっ飛んで行く姿に俺や近くに居た他の奴らの開いた口が塞がらなかった。
終了!!
「どうだ見たか!人間やろうと思えばなんだって出来る!」
「は、はは...すげぇなお前」
豪快に笑っているあいつを見て自然と言葉が漏れた。
読んでいただきありがとうございます!