そしてお待たせいたしました。
予告した通りに二つ目の外伝です。
『D』の頭文字から分かるように、今回は兵藤物語に、世界の破壊者がやってきます。
尚、この『D』STORYはあくまで外伝なので本編には影響はありません。
そして感想蘭で要望された事をできるだけ詰め込んだ外伝なので、今から述べる注意事項に抵抗を感じる方は注意してください。
・世界の破壊者がやってくる。
・オーバーロードが出る。
・D×D世界にインべス発生。
・アーマードライダー召喚
・展開が少し早い。
・一樹が若干空気。
・おのれディケイドォォォォ!!
『D』 STORY 上
世界の破壊者、ディケイド―――
幾つもの世界を巡りその瞳は何を見る―――
「……ここは何処だ?」
青年、門矢士は異世界を巡る旅の中で不可解な現象に戸惑っていた。
様々な世界を回ることで、その世界の人々と絆を深めながら世界を転々と旅していた彼は『仮面ライダードライブ』の世界から、未だ見ぬ新しい世界へ赴こうと灰色の壁を潜る際、それは起こった。
突如、士の目前に迫った灰色の壁がまるで差し替えられるように、その色が黒く染まり士の身体を飲み込んだ。
思わず目を瞑ってしまった彼が次に目を開けた時、最初に目に入ったのは、何処かしらの校門前。困惑しながらも周囲を見渡すと、どうやらどこかの学園の敷地の中にいるらしい。
加えて、相当遅い時間なのだろう、周囲は暗く人っ子一人いない。
何故、学園?と思い困惑する士だが、自身の服装が変わっている事に気付くと深いため息を吐いた。
「大体わかった……」
要するに、またこの世界の自分の立場というものが勝手に決められてしまったらしい。
「鳴滝の仕業かぁ?」
最近、腐れ縁と化してきた中々に面倒くさい男、『鳴滝』の高笑いを脳裏に思い浮かべるが、よく考えれば奴は今更自分にこのような手の込んだことをする必要はない事に思い至り、その考えを自ら否定する。
腕を組みながらもとりあえず自分が現在居る場所を確認しようと、校門の校章に近づき読み上げると、そこには仰々しい書体で『駒王学園』と書かれている。
「……駒王学園、555の世界ではないようだな。……見覚えがないから当然だろうがな」
しかし、ここは何処の世界だろうか。
ある程度のライダーの知識はあるつもりだが、情報が足りない今では全く見当がつかない。
とりあえずは、歩けば何かあるだろうと思い、学園内に入り込もうとすると―――
キィ―――ン!
「なんだ?」
学園の敷地内で、戦闘音らしき音が聞こえる。
爆発やら剣戟音で色々察した士は、深いため息を吐きながらも気だるげにその場所に向かって歩き出す。
「はぁ、全く退屈させないな。俺の旅は」
「なんっだよこいつらぁ!!」
兵藤一誠、及びグレモリー眷属は正体不明の敵と 交戦していた。
夜遅くまで部活動をしていたグレモリー眷属、何時ものように一日が終わるかと思いきや、異変は予期せずにやってきた。
「―――!!」
「―――!!」
「部長!なんですこいつら!!」
「分からないわ!!」
灰色の丸みを帯びた上半身が特徴的な化物。そいつらが大量に学園に出現し、突如暴れ出した。最初はコカビエルの時のような襲撃だと思ってはいたが、戦っているとただ暴れまわっているだけの獣にも見える。
加えて―――
「クソ!」
「……打撃が効きません」
「魔力の類も効果が薄いですわ……」
一樹と小猫、朱乃が表情を渋めながら、化け物から距離を取る。
リアスの消滅の力も、木場の聖魔剣も多少の効果はあるようだが、決め手にはならないのか攻めあぐねている。
【オレンジスカァッシュ!!】
「皆には手出しさせねぇ!!」
唯一、鎧武オレンジアームズに身を包んだ一誠だけが、大橙丸で化け物を切り裂き消滅させるが、依然として化け物は校庭に10体以上出現している。
「埒が明かない……ッ」
長時間闘っていては、皆が保たないと判断した一誠はゲネシスコアとレモンエナジーロックシードを取り出し、フォームチェンジを行おうと構えようとすると―――
『そいつらの名前は『インべス』ヘルヘイムの森に生息する怪物だ』
仲間の誰でもない第三者の声が校庭に木霊する。
思わず手を止め、声のする方向に目を向けると、校門がある方向から一人の男子生徒がゆっくりと歩いてくる。
リアス達も見覚えのない第三者に戸惑うような視線を向ける。
だが、見た所人間だ。
一誠のように、特異な力がなければ簡単に殺されてしまう……最悪の可能性を予測した一誠は、男子生徒に逃げるように促す。
「お、おい逃げろ!!ここは危険だ!!」
「俺を知らない……?それにこの声、やはり葛葉紘太じゃないな」
一誠の声をスルーしその場で考え込むように腕を組んだしまう男子生徒。そんな彼に化け物―――『インべス』と言われた白い怪物の一体が、鋭利な爪を鳴らしながら近づく。
「くそ!!」
自分もリアス達も、他のインべスに道を阻まれ助けに行くことができない。
殺される―――――そう思い、歯を食いしばり問答無用でインべスの集団を突破しようと試みようとするが、時すでに遅くインべスは男子生徒目掛けて突進を仕掛ける。
だが、それでも男子生徒は慌てない。
なんと、男子生徒は向かってくるインべスなぞ、歯牙にもかけないとばかりにひらりと体を捻り、その勢いを利用しインべスの背部を後方に押し出し突進を躱したのだ。
事も無げにインべスをあしらった彼に、驚く面々。
「其処のお前、この世界についての事情を聴かせて貰うぞ」
「は?この世界?」
突然、訳の分からない事を言われながらも、インべスを押しやった一誠が、再び視線を男子生徒の方に向けると、一誠やリアス達にとって衝撃的な物体が男子生徒の腰に巻かれているのが見えた。
白を基調にしたバックル。
一誠とは正反対な色合いを持つ、それを身に着けた男子生徒はベルトに装着されているカードケースのようなものから一枚のカードを取り出し、インべス達に見せつけるように構える。
「お前、それ……」
「変身」
掲げたカードをバックルの上方に挿入し、両側面を押し込み半回転させる。
【KamenRide―――Decade!!】
男子生徒の身体をマゼンタ色の光が覆い、その姿を変容させる。
緑色の目、マゼンタと黒を基調としたアーマーにバーコードを模したような頭部。
一誠とは似てもつかないその姿に、彼は思わず呆然としながら疑問を投げかける。
「何者なんだ……お前」
その言葉が聞こえたのか、マゼンタ色の戦士に姿を変えた男子生徒は両手を埃を払うように鳴らしながら答える。
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」
【鎧武】というライダーの世界がある。
ビートライダーズと呼ばれるダンスチームに関係する若者たちが、アーマードライダーへと変身し世界の命運を託される世界。
「かかってこい」
だがこの世界はどう見てもダンスとかそういう感じを行う世界ではないようだ。
【仮面ライダーディケイド】へと変身を果たした士は、ライドブッカーをソードモードにへと変え、近づいてきたインべスへと切りかかる。
「ハァ!!」
「―――ッ!!」
ライドブッカーの刃がインべスを切り裂き大きな火花を上げる。
士はさらに、ライドブッカーを振るい、続々と自分に群がって来るインべスを連続で切り付けていく。
「こいつら相手なら―――これだな」
ライドブッカーを開き一枚のカードを取り出し、変身時と同じようにバックルへと挿入する。
【KamenRide―――Ryuki!】
ディケイドの身体が再度光に包まれ、その姿を赤を基調とした騎士へと姿を変える。龍を基調とした頭部に、赤いライダースーツを覆う鋼色のアーマー。
【仮面ライダー龍騎】―――鏡の世界を戦う戦士。
「姿が変わった?」
「イッセーとは違うの……?」
「質問は後から受け付けてやる。こいつらを倒した後にな」
【AttackRide―――Strikevent!】
再びバックルにカードを挿入した彼の右手に、上空から飛来してくるようにやって来た、手甲【ドラグクロー】が装備される。
士は前方にいるインべス達を視界に収めると、右腕に装備されたドラグクローを引き絞る様に構える。龍の頭部を模したドラグクローの口の部分にあたる場所から火が噴き出す。
「ハァァァ――――ッ!」
そのまま勢いよく手甲を突き出し、強烈な火炎をインべス達目掛け放射する。
純粋な超火力に流石のインべスも耐えられなかったのか、数体まとめて燃え上がり、跡形もなく消滅してしまった。
丁度、他の面々もインべスを殲滅することができたらしく、それ以上のインべスの出現は見られなくなっていた。
「……終わったか」
変身を解き元の姿に戻り、自身と同じ制服を着ている面々に向く。
案の定、警戒はされているようだが、毎度の事のようなものなので気にする事ではない。
特徴的な制服を着た紅髪の女生徒と、その仲間らしき面々が士の前にまで歩み寄ってきた。
「助けてくれたのは感謝するわ」
「礼には及ばない。似たような事は何回もしているからな」
主に鳴滝のせいで。
「………貴方には聞きたいことが山ほどあるの」
「構わん……と言いたいところだが、もっと落ち着いたところに移動しないか?」
士の言葉に女生徒はこくりと頷き、士を学園の奥のほうに案内する。
道中、さりげなく聞いてはみたが、この連中はオカルト研究部とやらに所属する学生たちらしい。
「それにしても、ここの学生はこんなにも遅い時間まで活動しているのか?どうにも分からん」
「あ、いえ。そう言う訳じゃないんですよ」
「ん?」
士の独り言にツンツン頭の男子生徒が、苦笑いしながらそう返す。どういうことだろうと、言及しようとするが、男子生徒は困ったように頬を搔く。
「すごく説明しづらいんですよ。部長達の活動については……えと―――」
「士、門矢士だ。士で構わない」
「あ、オレは兵藤一誠です」
「兵藤一誠……?」
全く以て葛葉紘太とは似つかない名前。
士は少しだけ表情を顰めながらも、一誠と並ぶように歩いていると、何かが気になったのか一誠がやや遠慮がちに士に質問を投げかけてきた。
「あの、士さんのあの姿はなんなんですか?それにあの怪物について知っているようでしたし……俺の変身とは全然違う感じがしたんですけど」
「俺はディケイド、お前と同じ仮面ライダーだ」
「仮面ライダー?なんすかソレ?」
知らないのはある意味当然か。
鎧武の仮面ライダーの総称はアーマードライダーだったし。他の世界でも明確な『仮面ライダー』を定義する名称はあやふやだからな。
「希望の魔法使い曰く、全ての人の自由を守る戦士の名、らしいぞ」
「……何かカッコイイっすね」
「お前は鎧武だろう?他のライダーはいるのか?」
「え?何でオレが鎧武だって……?それに俺以外に仮面ライダーなんて……士さん以外見た事が無いんですけど……」
バロンや龍玄がいないのか。
龍騎の世界のように争い合っているような世界じゃあないのか。
加えて、インべスについて全く知らないと見える……葛葉紘太の【鎧武】の世界ではユグドラシルという組織によってベルトが開発されたらしいが、そうすると一誠はどうやってベルトを手に入れたのか……。
「ベルトはどうやって手に入れた?」
「あー、俺は一回悪……じゃなくて化け物に襲われて、その時にコイツが出てきたんです」
そう語ると、一誠が掲げた掌が一瞬光り、その手の中にバックルとオレンジロックシードが握られていた。葛葉紘太の世界のベルトを知っている士としては、突然現れたベルトに驚きを隠しえない。
「………俺の知っているものとは違うな」
「このベルトについて知っているんですか!?オレもコイツに関しては全く知らないんですよ!」
「こいつはインべスが生息するヘルヘイムの森に対抗するために創られたベルトだ。だが、お前の持つそのベルトはどうやら少し違うらしいな」
ベルトの出自がよく分からないのはよくある事だ。
士自身同じようなものだったからだ。
「少し違うって……もしかして士さん―――」
「ついたわよ」
一誠が質問を言い終えるよりも前に、目的地についてしまったようだ。周りが暗くて視界が良好とはいえないが、よく目を凝らすと目の前にはやや古びた校舎らしき建物が見えた。
「ここで話を聞かせて貰うわ」
「アンタらの話も聞かせて貰うぞ」
「構わないわ」
先程の戦闘からして、オカルト研究部とやらに所属する面々が異質な力を持っている事に、士は少しばかり興味を惹かれるのだった。
旧校舎に入っていく士と一誠達―――。
その面々を新校舎の屋上から、見ている一つの陰があった……。
ラフな服装の男は、興味深そうに旧校舎に入っていく面々を見ながら楽しそうに、手元の青色の銃を回す。
「偶然この世界に来てみたのはいいけど、まさか士がいるなんてね……でも―――」
銃を持つ手とは別の手で拳銃の形を型作り、その人差し指を士の隣にいる一誠に向ける。
「お宝は、僕のものだ」
その後、士はオカルト部室という場所に招かれ、リアス・グレモリーと名乗る女生徒から大まかな説明を聞かされていた。
悪魔という存在が実在している事。
この場に居る一誠以外のメンツが全員悪魔だという事。
神話の世界の生物たちが実際にいる事。
彼女から聞かされた話に士は暫し腕を組み悩むような動作をした後、脱力しながら顔を上げる。
「大体分かった」
「本当に分かっているのかしら……」
リアクションが薄い士に対して苦笑いする面々だが、別の世界で散々人間の姿をした別の存在と何度も遭遇している士からすれば、あまり驚くような事ではない。
「色々な世界を回っては来たが、ここまで幻想的な世界はなかったな。少しばかり驚いた」
「驚いているのは私達の方よ……異世界を回っている人間なんて。にわかには信じられないわ」
「だが、事実だ」
「分かっているわ……はぁ」
朱乃と呼ばれる黒髪の女生徒に差し出された紅茶を口に含みつつ、尊大に足を組みソファーに背を預けた士を見て重いため息を吐くリアス。
士から聞かされた話はそれほどまでに衝撃的だったのだ。
「とりあえず、住む場所をくれ。野宿は勘弁なんでな」
「清々しいほどに図々しいわね……構わないわ。貴方は私達の協力者という形で私が見張るわ」
「勝手にしろ」
「……そういえば、貴方ここの制服を着ているわね?貴方が別の世界から来たとしたら、その制服は……?」
「ここでの俺の立場は、ここの学生という事になっている」
「滅茶苦茶ね……ハァ……まあ、いいわ。とりあえずは貴方の話を信じてみる事にするわ。今日の所は解散としましょう。でも皆、インべスが現れたら一人で相手しない事ね?」
「「「はい」」」
インべスト戦って疲労も少なくはない。眷属達を見てそう判断したリアスは、取りあえずその場で解散として部室から出る。
一緒に帰るのは一誠と一樹アーシアとリアス、そして士。一緒に帰る面々を見た士はやや怪訝な表情をしながら一誠に問いかける。
「お前等一緒に住んでいるのか?」
「え?あ、ああ」
「ふぅん……」
何か言われるのか……?そう思い構える一誠だが、士はリアス達と同居していることには興味がないのか、無関心だ。そのまま士は無言のまましばらく夜道を歩いていると、不意に何かに気付いたように背後を振り向く。
そのまま面倒くさそうな表情を浮かべると前に向き直りリアスに声を掛ける。
「…………おいグレモリー」
「何?」
「少しイッセーを借りるぞ」
「……何故?」
「話がある」
「ここではできないの?」
「ああ」
士の言葉に渋る様に腕を組み、一誠の方に視線を向けるリアス。事情を聞いたとはいえ、あれが本当だとは限らない、さっき会ったばかりの男とイッセーを二人きりにしてもいいのか?
「部長、大丈夫です。士さんは悪い人じゃないですから」
「……分かったわ。できるだけ早く戻るのよ」
「はい!」
「悪いな」
リアス達とは離れ、士と共に帰り道近くの公園へと移動する。
公園―――レイナーレと会い、自分が非日常へ初めて足を踏み入れた場所。ここでリアスと出会い、一樹が悪魔になった。それからライザーやその眷属達、そしてコカビエルとも戦った。数か月前の自分では決して想像だにしないであろう体験。
ある意味この場所が始まりともいっていいだろう。
……そういえば、いやに士が周囲を警戒しているのが気になるが、何かいるのだろうか。
「士さ―――」
「おい!出てこい!!」
公園の中心で立ち止まると同時に背後に振り向き、叫ぶ士。何事かと思い一誠も後ろを振り向くと、公園の入り口の角に誰かが潜んでいるのが見えた。
「ばれちゃったら、しょうがないね」
「な……ッ」
全然気づかなかった。
士は追跡してくるこの男に気付いて、自分を連れてここに移動したのか……。
「また学生かい士。似合わないなぁ」
「抜かせ、それより……何でお前がいる?―――」
怪しげな男を面倒臭げに見据えた士に対して、男は薄らと笑みを零し月明かりの下に出てきた。
一誠から見たら、出てきた男の纏う雰囲気は―――
「海東」
どこか胡散臭かった。
「久しぶりだね、士」
「ああ」
海東大樹、仮面ライダーディエンド。士と同じ仮面ライダーの一人であり、泥棒。
時には敵対し、時には共闘した間柄だが今この状況でこの男が出てくるのはどうにも解せなかった。
「どうしてお前がここにいる?」
「ここに来たのは偶然さ。偶然此処に士が来ているのを見つけて、そして偶然『お宝』も見つけちゃったわけさ」
「……?ということはお前はこの世界についてよくは知らないのか?」
『お宝』、に少し引っかかるが、そちらの方は後回しにする。こいつにとってのお宝は大抵碌な物じゃないからだ。まずはこの世界について詳しく知っておきたい。
「いや、この世界の大まかな事は知ったつもりだよ?といってもこの世界はどうにも神秘に関係する秘匿性が高いからね、細かい事までは分からない」
「それでもいい、話せ」
「はぁ、全く変わらないな士は……この世界は言うなれば仮面ライダーが必要のない世界。……いや、『鎧武』が必要のない世界と言ってもいいね」
「……お、俺が必要のない世界?」
海東の言葉に思わず口を挟んでしまった一誠だが、それも無理はないだろう。彼にとってリアス・グレモリーとその眷属達を守るために浸かって来た力を全否定されたようなものだ。
その事に気付いた海東は一誠に詫びるように手を横に振る。
「ああ、違うんだよ、みかん君。そう言う意味じゃない」
「違う……?」
「君の力は本来インべスと闘うための力だ。だけどこの世界にはインべスもヘルヘイムもいない」
「戦うべき相手がいないってことか?」
イッセーの言葉に頷く海東。
だがそれじゃ解せない、『鎧武』がこの世界に必要のない存在ならば何故、イッセーが『鎧武』になれる?必要性がなければライダーは生まれない。
オルフェノクがいる555の世界然り、魔化魍がいる響鬼の世界然り。
「……それなら、何故この世界にインべスは現れた?本来いないはずの存在じゃないのか?」
「それなんだよ、士。この世界にインべスが『自然』に出現することはありえないんだ。なのに出現した、これから導き出される結論は簡単だ」
「……」
………まあ、考え得る限りそれしかないだろうな。
「何処かの誰かがインべスを引き入れているって所か?」
「そうだね、でも僕達の知っている『鎧武』の世界のインべスは既に別の場所に移ってしまった。……言うなればあれははぐれインべスとでも言うべきかな?」
「引き入れている奴を分かっているのか?」
「それは僕にも分からないね、鳴滝さんなら知っているんじゃないか?恐らく彼もこの世界を見つけているはずだからね」
士が鳴滝を苦手にしていると分かっている上での言葉である。嫌味な奴だ、と内心毒づきながらこれからの事について考える。
現在の最優先事項はインべスの撃退とその原因を倒す事。
「あのさ、さっきから話についていけないんだけど……つまりどういう事なんだ?」
「とりあえず害になる奴らを倒せばいいって事だ」
「お、おぉ……」
ちゃんと分かっているのか?
曖昧な返事をする一誠に軽いため息を吐いた士は、海東の方を向く。
「俺は俺で勝手にやらせて貰うぞ海東」
「僕もそのつもりだよ士」
「………イッセー帰るぞ」
「わ、分かった」
胡散臭い笑みを向けてくる海東を訝しみながらも、公園から出ていくべく出口に足を向ける。一誠も慌てて士について行こうとすると―――。
「待ちたまえ」
何時の間にか手元に『青い銃』、ディエンドドライバーを構えた海東が士たちを呼び止めた。
「どういうつもりだ」
「言っただろう?僕もそのつもりだって。お宝を目の前にして僕が黙っているはずがないだろ?」
「……イッセーか」
「は!?俺!?」
「御名答だよ」
海東が一誠を『お宝』と称したからには、葛葉紘太とは違う何かがあると考えても良い。……だがこれは厄介な事になってしまった。場をかき乱すことに関して、コイツ以上面倒くさい奴は知らない。
「士さん……どうするんですか?てかお宝ってなんのことですか……?」
「お前の持つ特別な力、アイツはそれが欲しいらしい」
「俺の力って……」
「―――話している暇はないようだ」
バックルを取り出した士が前方を見据えると、海東が自身の右手に持つ『ディエンドドライバー』に士と同じ形状のカードを挿入している光景が目に入る。
「―――行くよ」
【KamenRide―――】
ディエンドドライバーから待機音声が流れると、そのまま上方へ掲げそのままトリガーを引き撃ち出す。すると銃身から複数の長方形の物体が射出されると共に海東の身体をフィルムが重なる様に青色の戦士へと変えていく。
【―――Diend!】
「あれって士さんと同じ……?」
「そうだよ、僕も通りすがりの仮面ライダーだからね」
【仮面ライダーディエンド】、ディケイドと対を成すような姿の戦士。
変身を終えた海東が銃を一誠と士の方に向ける。明確な敵意はないが穏便には済ませられない―――そう判断した士と一誠はバックルを取り出し腰に装着する。
「何が何だか分からねぇが。やるしかない!!」
「まったく……お前と闘うのも何度目だろうか……」
【オレンジ!】
【KamenRide】
一誠がロックシード、士がカードをバックルに挿入し変身する。同時に二人の身体がライダースーツに包まれ【仮面ライダー鎧武】と【仮面ライダーディケイド】へと姿を変える。
【オレンジアームズ!花道オンステージ!】
【Decade!!】
周囲に暗闇が満ちる公園に本来集まるはずがなかった三人のライダーが集う。
「食らえ!」
変身を完了したと同時に士がライドブッカーをガンモードにして海東目掛けて数発打ち込むが、海東は容易く弾丸を撃ち落とす。
両者の間に火花と煙が舞うが、その煙を刀で切り開いた一誠が全速力で海東目掛け接近し攻撃を仕掛ける。
「はぁぁ!!」
「おっと!」
一気に肉薄し無双セイバーと大橙丸を振るった一誠の攻撃を後方へ退がりながら回避、同時に何時の間にか取り出した【カード】を銃に装填する。
「お仲間を呼んであげよう」
【KamenRide―――】
ディエンドドライバーの側面に特徴的な文様が浮かび上がる。士の使っていたように別の姿に変身するのかと、身構える一誠。だがそんな一誠の予想を裏切るかのように、銃身から何かがが飛び出し海東の目の前に停滞し人の形状を形作る。
【Baron!】
「なっ……!?」
現れたのは一誠の良く知るバナナアームズを纏った騎士の顔を思わせる赤色の戦士。一誠が驚いたのは相手の姿ではなかった。士から他にも仮面ライダーがいるとは聞いていたので、ライダーが召喚された事にはさして驚いてはいないが、驚いたのは召喚されたライダーの腰に装着されているもの。
『フン……まさか貴様が相手とはな』
「俺と、同じ……」
自身のつけているベルトと全く同じ形状をしていた。
「海東ォ!!」
『AttackRide―――Blast!!』
召喚された二人のライダーを一誠に任せ、士は海東を相手に銃撃戦に持ち込んでいた。Blastにより銃身が朝なるように分身し、ショットガンのように銃弾が海東目掛け吐き出される。
「甘いね!」
『AttackRide―――Blast!!』
海東も士と同じカードを用いエネルギー弾を放った。両者同じカードは使えど、ディエンドは銃主体のライダー、遠距離線では圧倒的にディケイドが分が悪い。
案の定、海東の放ったエネルギー弾は士の弾を突破し直撃する。
「ぐ……ッ、海東!お前の言うお宝とは何だ!!」
「君も薄々は気付いているんじゃないか?」
「………」
「彼はクウガやアギトのように、自身の力でライダーの力を扱えるという事は、それを可能にするだけの力が彼の中に眠っているという事だ。彼が戦っているところを見て確信したよ………」
ライドブッカ―をソードモードにして斬りかかりながらも思考する。
本来の鎧武の変身は『戦国ドライバー』を介して行う。そのベルトのあり方は、555のベルトのものに限りなく近い。
だが一誠は、バックルとロックシードをそのまま手のひらに出現させた。バックルはまだしもロックシードを自ら生成することは、ロックシードについて詳しく知っている者から見たら異常の一言に尽きるだろう。
なにせヘルヘイムに実る果実が人の身で生成したというのだから。
「………禁断の果実か」
「どういう理由かは分からないけど、彼の中には彼にさえ手に余るほどの強大な力が眠っている。命を作り上げ全てを支配するとてつもない力……まさしくお宝だ!!だから今度ばかりは邪魔しないでもらおうか!!」
「ふざけるな!」
銃を下から切り上げ、空いた脇腹に蹴りを入れ吹きとばす。
「お宝なんて俺には関係ない、俺はお前が勝手するのが気に入らんだけだ」
「やれやれ……」
剣を突き付けられた海東は起き上がりながらも銃を構えた。
―――一誠の方は大丈夫だろうか……。
「誰だお前はァ!!」
『それはこっちの台詞だァ!』
大橙丸とバナスピアーがぶつかり火花が散る。
目の前にいる自分と同じ『ライダー』。そいつと今は闘っているのだが、何故か戦っているうちに不思議な感覚に襲われていた。
会ったことはないのに見覚えがある。
『貴様は葛葉ではないのかッ!!』
「誰だよソレ!!オレは兵藤一誠だ!!」
『イッセイッ!?まあいい!貴様がオレの前に立ちふさがっている以上、オレは貴様を倒す!!ただそれだけだぁ!!』
赤色のライダーは一誠の首を殴りつけるようににランスを振るってくる。
その攻撃を避けながら士達の方を見やる。―――あちらもまだ決着はつかないようだ。
『何をよそ見をしている!!』
【バナナスカァッシュ!!】
「まずッ―――」
一瞬の油断、その隙を突かれ赤色のライダーはカッティングブレードを傾け、バナスピアーから巨大な穴菜上のエネルギーを生成し突きを繰り出した。
「うぐあぁぁぁあぁああああああああ!!?」
その攻撃をもろに食らってしまった一誠は鎧から煙を上げなが地面に叩き付けられる。
強い、コカビエルとはまた違った強さだ。だが自分も負けられない。若干ふらつきながらもすぐに起き上がり、無双セイバーと大橙丸を構えようとすると―――。
「うぐぁ……ッ」
突然の頭痛が一誠に襲い掛かった。
この久しぶりの感覚、『鎧武』の力に目覚める前のものだ。
頭痛と共に頭の中に浮かび上がったのは鎧武者と目の前の赤いライダー『バロン』がこことは別の場所で戦っている姿、そして彼らの周りには多数のインベス達。だがそのインベス達は二人のライダーに付き従うように争い会っている。
「おま、えは……カイトッ」
『……ッ!何故オレの名を知っている!!』
「知らねぇ、よ……」
銀色の将軍。
赤色の怪物。
そして、黄金色に輝く果物をその手に持った、儚げな笑顔を浮かべている男の姿。
「……分からねぇ……でも、俺はお前を知っている!!」
『なに!?』
頼れる味方だった気がするし、敵だった気もする。
だが、感情的に従うならば―――
「お前は――――」
叫ぼうと立ち上がった一誠、だがそんな一誠目掛け緑色のエネルギー体が直撃した。
「ぐぁ!?」
『何!?』
背中に痛みを感じながら背後を振り向くとそこには空間に現れたチャックのような物体がそこにあった。
「……な、なんだよアレは!?」
突如空間に現れた亀裂に驚愕する一誠だが、亀裂から発せられる禍々しいオーラをすぐに察知し武器を向ける。
『クラックだと……』
「知っているのか!?」
『……貴様は知らないのか!!』
「知らねぇよ!!何で俺が知っている前提なんだよ!?」
あの亀裂の事を知っていそうな男に質問をしてみるが、驚かれる始末。このベルトをしている上であの亀裂は知っていなければいけない事なのだろうか。
『………ァ………』
「何か来るぞ!!」
『分かっている!!』
武器を構え、クラックと呼ばれた亀裂の奥を見る。暗い空間の奥で何かを引きずる音と共に、うめき声が聞こえる。インべスではない。
もっと人に近い声だ。
『カツラバ………コウタァ…………』
『!!!?』
クラックから出てきたのは、人でもインべスでもなかった。緑色の体色の化け物。その手にはヘルヘイムの森の中で見た果実がつけられているハルバードに似た槍が握られている。
だがイッセーが驚いたのはそこではなかった。
化物の身体を覆うように纏わりついている黒色のオーラ。……いや、僅かに黄金色が混ざっているあたり純粋な黒色ではないが、禍々しい気配を発している。
「な、なんだよ。あれもインべスなのかよ!?」
「オーバーロードだ」
「っ、士!」
海東との戦闘を中断してこちらに来た士が、オーバーロードと呼ばれる存在を警戒しながら話しかけてくる。
「ヘルヘイムに住む知的生命体。それがオーバーロードだ」
「そんな奴がなんで……」
「分からん。海東、アレはどういうことだ?」
「僕にも分からないね……バナナ君は何か分かるかな?」
『俺に訊くな……だが、一つ言える事があるとすれば―――』
バロンは、クラックの中で呻いているソイツを睨みつけると、苦虫を潰したような声音で言葉を吐きだす。
『俺の前に死んだ奴が現れた事だ』
『……………オマエラノ………セイデェ………』
オーバーロード。
フェムシンムの王、ロシュオに仕える者にて、王に反旗を翻した裏切りの怪物。
禁断の果実の力の一端を持つ人間に敗れ去った、欲に溺れて、身を滅ぼした愚か者。
そして、奇跡の残りかすに魅入られた憐れな死人。
その名は――――
『ヨコセェ……キンダンノ……カジツゥ……』
レデュエ。
レデュエがロシュオから抜き取った、黄金の果実の抜け殻にもし力が残っていたなら……。
30分にするならこれくらいかな、と意識しながら書きました。
予想以上に前篇が長くなったことに加え、後編はまだ完成していないので、今日の更新はこれで終わりです。
もしかしたら、次回は後編ではなく、そのまま第4章を更新するかもしれません。
リハビリがてらに短編を書いてみました。
【『A』 STORY 】
原作は、ガンダムビルドファイターズトライです。