兵藤物語   作:クロカタ

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今日三度目の更新です。


禁断の芽吹き 9

 三人の前に現れた天野夕麻、又の名をレイナーレ。

 一樹にとっては自分を悪魔になる理由を作った張本人。

 アーシアにとっては自分を拾ってくれた堕天使。

 

 イッセーにとっては―――

 

「手前……ッどの面下げて出てきやがった!!」

「はぁい、イッセー君……だったかしらね。今度こそあなたを殺してあげたいけど、今は貴方に構ってる暇はないの」

「なんだと!!」

 

「おい!!兄さん!!」

 

 一樹に肩を掴まれる。

 こんな時に何だ!!そういわんばかりに一樹を睨み付けると、そこには苛立つように肩を震わせ、一誠を恨みの籠った目で見る一樹の姿。

 

「何時、彼女と知り合った!!」

「ッ!!離せ!!今、そんな事話してる場合じゃねえだろ!!お前、こいつに殺されかけたんだぞ!!お前はそのことはどうでもいいのかよ!!」

「兄さんには関係ないだろ!!」

 

 こいつッ。

 薄ら笑いを浮かべているレイナーレを指さしそう言うと、一樹に気づいたレイナーレは薄ら笑いを冷笑に変え、路傍を見る石ころのように一樹を見る。

 

「へぇ、生きてたの。しかも悪魔?嘘最悪じゃない」

 

 悪魔ってあの悪魔?ファンタジーとかに出る?

 驚いたように一樹を見た一誠を見た、レイナーレが面白いものを見たとばかりにくすくすと嗤う。

 

「イッセー君は人間だったわねぇ。教えてあげるわ、そこで怯えてる哀れな子羊はもう人間じゃないの。悪魔という一種族に転生したのよ」

「何……転生?」

「あぁ、悲しいわねぇ。弟が汚らしい低級悪魔になっているなんてねえ」

 

 何故、一樹が悪魔に――――思いつく理由とすれば、リアス・グレモリーが一樹の傷を治した時を考えれば―――

 

「……グレモリー、先輩か?」

「正解!」

「だからッッ!!兄さんは、何で知っているんだ!?」

 

 喚く一樹は無視する。

 操作された記憶は既に戻っているのだ。そのことを一々説明する気もないし、そんな場合じゃない。

 一誠の言葉にこれ以上の説明は不要と判断したレイナーレは、一瞬だけ一誠を一瞥した後、一誠の後ろにいるアーシアの方を見る。

 

「……レイナーレ、さま」

 

 アーシアがレイナーレの名を呼んだ事に驚愕する一誠。

 堕天使だというから、清いイメージの教会とは関係なんてないと思っていたのに―――

 

「アーシアになんか用か?堕天使がよ」

「粋がらないでほしいわねぇ……と言いたいところだけど、特別に教えてあげるわ。その子はね、私たちの所有物なの。返してもらえるかしら?」

 

 『所有物』、その言葉に対して嫌悪感を覚える。

 アーシアはモノじゃない。そう言い返そうとするが、それよりも早くレイナーレがアーシアの方に話しかけていた。

 

「逃げても無駄なのよ」

「……嫌、です。私、あの教会に戻りたくありません。人を殺すところになんか……戻りたくない、です」

「そんなこと言わないでちょうだい、アーシア。貴方の神器は私たちの計画に必要なのよ。ね、私と一緒に帰りましょう?これでもかなり探したのよ?あまり迷惑を掛けないでちょうだい」

 

 人殺しをする教会。アーシアは確かにそういった。

 レイナーレの言っていた神器を持つ者を殺す行為を一樹以外にもやってるというのか。

 

「お前、一樹にしたみてえに、神器持った奴を殺しまわってんのか!!」

「そうよ、だって危険なんですもの。まあ、そんな事はどうでもいいわ。私は一刻も早くアーシアを連れて行かなくちゃならないの」

 

 しれっとそう言い放つレイナーレに、怒り心頭とばかりに拳を固め睨み付ける一誠。

 

「嫌がっているじゃないか!!それに彼女を連れてどうするつもりだ!!答えろレイナーレ!!」

 

 さっきから無言だった一樹が叫ぶ。

 すると、さっきまでの表情が一変し、不快だと言わんばかりに不機嫌になる。

 

「下級悪魔、私の名を呼ぶな。私の名が穢れる。関係のないお前があまり出しゃばると、殺すぞ」

 

 手に光を集めだしたレイナーレ。

 流石にこれ以上の挑発はまずいと判断し、一樹に警告を投げかけようとした瞬間―――

 

「セイクリッド・ギア!!」

 

 何かを叫んだ一樹の左腕に光が覆い、赤い籠手へと変貌していく。

 一瞬、何が起こったか理解できなかったが、これがレイナーレの言っていた神器というものだと数舜した後に気づく。

 

「兄さん、下がってろ。足手まといだ」

 

 心なしか自信満々にそう言い放つ一樹が前に出る。一樹の左手の籠手はそれほどの力があるのか……だがあまり力は感じない。

 一方、一樹の神器を見たレイナーレはというと―――

 

「無知は悲しいわね。貴方程度のありふれた神器じゃ私に指一本触れることすら不可能よ」

「煩い、お前なんてボクだけで十分だ。ここで終わらせてやる。動け神器!僕に力を貸せ!!」

 

≪BOOST!≫

 

 左手から野太い音声が流れたと共に、一樹は走り出す。

 この自信、何か策があるのか?もしかしてレイナーレを打倒できるほどの奥の手があるというのか?

 だが、一誠の期待を裏切るかのように、レイナーレが投擲した槍は走り出した一樹の腹部を勢いよく貫く。目の前に鮮血が舞い、腹部に穴をあけた一樹が飛んでくる。

 

「雑魚ね……力が倍になっても、こんなに弱めた槍すら打ち返せない。常人並みの魔力と常人以下の身体能力が倍になっても、所詮は下級悪魔。私との差は決して埋まらないわ。ねえ、イッセー君、初めて会った時と同じ展開になったわね」

「お、お前ぇぇぇぇ!!」

「イッセーさん、やめてください!!」

「アーシアッ!?」

 

 バックルとロックシードを取り出した一誠をアーシアが止める。

 彼女は腹部から止めどめもなく血を流し気を失った一樹に近づくと、一樹の腹部に手を当て、淡い緑色の光を放出させる。

 

「お願いです……私のために……イッセーさんまで……傷つかないでください……」

「――――ッ!!」

 

 泣きながらに一樹を治すアーシアに一誠は絶句する。

 アーシアの言葉にしめたとばかりに笑みを強めたレイナーレは追い打ちとばかりに、言葉を投げかける。

 

「アーシア、イッセー君を殺されたくはなかったら、私と共に戻りなさい。儀式には貴方の神器が必要不可欠なのよ。それにイッセー君、君もよ。君が大人しくしてれば、そこの下級悪魔の事も見逃してあげるわ。貴方が、そこの下級悪魔より相当面倒なんですもの……もし敵対の意思があれば、まず最初にそれを狙うわ」

「くっ……弟を狙うのか!!」

 

「分かりました」

 

 一誠の言葉を遮って、アーシアはレイナーレの提案を受ける。

 

「アーシア!?」

「イッセーさん、こんな私と友だちになってくれてありがとうございました」

「いい子ね、アーシア。それでいいのよ」

 

 一樹の治療を終わらせたのか、ゆっくりと立ち上がったアーシアはレイナーレの元に歩いていく。

 下手に動けない俺は、変身もできず。呆然と立ちすくむしかなかった。

 

「待て、アーシア!!」

「本当に、本当に……ありがとうございました……さよう……ならっ」

「ふざけんじゃねえ!!友達をみすみす見捨てるなんて――――」

 

 瞬間、倒れ伏す一樹のすぐ横に光の槍が突き刺さる。

 駄目だ、これ以上動くと一樹が殺される。なんでオレはこんなにも何もできないんだ。

 

「イッセー君、不出来な弟を持つと苦労するわね」

「レイナーレッ」

 

 嘲笑う堕天使はアーシアを抱えたまま空高く飛び上がる。

 憤る気持ちはもう届かない。

 何故、こうにも届かない。

 遠くに行ってしまう彼女を、呼び止めることすらできなかった。

 

「俺にッ……覚悟がなかったからだッ」

 

 奴を―――レイナーレという人の形をした堕天使に、立ち向かう覚悟がなかったからだ。

 自分のせいだ。自分が弱いせいでアーシアが連れていかれた。

 

「俺が、助けなくちゃ……」

 

 過ちは繰り返さない。今日友達になった彼女を、どこまでも優しい少女を命に代えても助け出す。例え、相手がどんなに大勢でも、人の形をした怪物でも。

 

「……助、けるんだ」

 

 一樹を肩で担ぎ上げ、走り出す。

 その行く先は―――駒王学園。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 駒王学園の旧校舎の入り口で気絶した一樹を転がしておく。今は、一樹に一々気を使っている場合じゃないし、リアス・グレモリーにも事情を説明している暇はない。起きた一樹から事情を聴いてもらえればそれでいい。

 儀式というものは既に始まっているかもしれないんだ。儀式という言葉にどれだけ深い意味が込められているかは理解できないが、あの堕天使のやることだ。絶対碌なモノじゃないはずだ。

 手遅れになる前に、たった一人でもアーシアを助けに行く。

 

 一樹を旧校舎に放置し、走り出した一誠。目的とする場所は町はずれの古びた教会。

 

「待っていてくれアーシア」

 

 太陽が沈み街頭に照らされる道を全速力で走る一誠。

 不思議と息が切れないのは、一誠の体になにかしらの変化が起こっているからだろう。

 

「!」

 

 教会のすぐ近くまでに近づくと、突然『三本』の光の槍が上方から道を走る一誠に向かって飛んでくる。風切り音を感じ、咄嗟に避けた一誠が上を向くと、そこには黒い翼を生やした三人の堕天使が嘲笑の笑みを浮かべ、浮かんでいた。

 

「あれれー、避けられちゃったよ」

「レイナーレ様の言う事はあながちウソじゃなかったようだな。ドーナシーク」

「うむ、面白い存在もいたものだな」

 

 三人の堕天使に対し、一誠は無言でバックルを腰に取りつけベルトを装着する。

 その様子に、疑問に思いながらも堕天使の一人、ドーナシークは自身の絶対の有利も疑わずに、意気揚々と一誠に嘲笑の言葉を投げかける。

 

「人間、お前にはここで死んでもらう。お前は神器を持ってはいないが危険人物だからな」

「きゃははっ、ビビり過ぎだってドーナシーク!どうみてもただの人間じゃん!」

「油断するな。レイナーレ様が要注意と言ったんだ。甘く見ると痛い目を見るぞ……」

 

 堕天使三人。

 この数相手では圧倒的に生身の一誠が不利だろう。だが、今の一誠にはそんな事は関係ない。右手で握りしめたロックシードをさらに強く握り、小さく……そして力強く呟く。

 

「―――もう迷わない」

 

 どんな奴が相手だって、もう迷わない。

 覚悟を決めた……彼女の為に戦う覚悟を――――

 

 

 

「変ッ身……ッ!」

 

 

 

 彼女を絶対に助ける。

 




次話もすぐさま更新致します。
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