兵藤物語   作:クロカタ

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今章は今話で終わりですね。


悪魔と人間 8

 レーティングゲームが行われている場所とは、別の場所。そこにグレイフィアと魔王ルシファーことサーゼクスが見定めるような眼で、画面の先の男を見つめていた。

 

「……サーゼクス様、彼は―――」

「私にも分からない。少なくとも私が知り得る神器の力や異能の力とは少し違うみたいだね」

 

 爆炎に身を焼かれ、吹き飛ばされた一誠と木場。

 木場のリタイヤを宣言したのは、いいが、どうにも一誠のリタイヤ判定を出せずにいた。理由としては、彼は痛みに呻きながらも必死に動いているという点。

 恐らく、あの身に纏われたスーツが彼を守ったのだろう。ライザーの『女王』の爆発ですら、耐え抜くその耐久性には驚くべきものがあるが、それだけではないだろう。

 

「このまま、続けさせるべきでしょうか?」

「………」

 

 望まぬ結婚はできるだけさせたくはないが、リアスには悲しい思いはさせたくない。メイドではなくリアスの義姉としての彼女の言葉にサーゼクスは無言を貫く。

 特例とはいえ、種族の壁を越えられない人間をレーティングゲームと言う熾烈な争いに参加させているのだ。むしろ単体で『兵士』4人『騎士』1人―――木場と合わせたならば『兵士』7人と『騎士』2人という半数近い人数を打倒できたという事実は評価されてもいい。きっとこのゲームが終わり、彼の武勇を聞くものならば彼を転生悪魔にさせるという要望が集まって来るに違いない。

 

 だが、このゲームが終わった―――つまり、勝敗が決してからの話だ。

 この状況ではリアスは、不死身のライザーに能力と自力で敗北し、彼と婚約を結ばなくてはいけないだろう。

 

「グレイフィア、人間は弱いと思うかい?」

「……いえ」

「なら見守ろうじゃないか。リアスが認めた彼を」

 

 それに、サーゼクスは彼が普通の人間とは思えなかった。

 サーゼクスだけが、捉える事ができた光景。

 『超越者』だからこそ知覚できた前兆。

 

 爆発に吹き飛ばされ、変身が解除された一誠の瞳が、ほんの一瞬だけ―――

 

 赤く輝いたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆発に巻き込まれ次に目を開けた時には、一誠の視界は緑で一杯だった。霧が深く、先が見えない深い森、その場所で立っていた。

 

「ここは―――」

 

 自分はレーティングゲームをしていたはずだ。

 爆発で旧校舎の裏まで飛ばされた訳じゃあるまいし、なにより自分が知っている森より遙かに木々が生い茂っている。

 

「………あれ?ここって」

 

 夢で見た時があるようなないような。

 周りを見渡すと、木の周りを上る様に生えている蔦から見覚えのある果実が生っている。間違いない、ここは―――

 

『そう、ここはお前の夢の中』

「ッ!」

 

 背後から聞こえてきた声に振り返るとそこには、自分と同じ背丈の民族衣装のようなコスプレをした少年が立っていた。

 身長で同じ背丈だということは分かるが、その顔は頭に巻かれた布と首元を覆うよう民族衣装に包まれ判別ができなかったが、この状況では怪しい事には変わりない。

 

『ここはヘルヘイム、お前がいる現実の世界とは違う世界。そして、生物が存在しない世界』

「な、何言ってんだよ!お前、ここは夢の中だって―――」

『ああ、夢の中だ。だから俺はここに存在できるし、お前もここにいる。だがそれは些細な問題さ、重要なのは、お前がここで何を求め、何を手に入れるかってことだ』

 

 一誠の言葉を半ば無視するように矢継ぎばやに訳の分からない事を語り掛けてくる。

 その声は、どこかなじみ深いもので、どこか響きのある音として一誠の頭の中に入って来る。

 

「求、める?」

『兵藤一誠。お前は、この先何をどうしたい?今、目を覚まして『女王』と闘って勇ましく敗れるか?それとも力に溺れてライザーを滅する力を手に入れるか?』

「………」

『ここは、お前の世界だ。お前が望むのならば、どんな力も手に入る――――世界を制する事すら容易だ』

 

 

 ―――――お前は全ての世界を制するんだ。

 

 不意にその言葉が、頭の中で思い浮かべられる。思えば、あの言葉から今の自分が始まったのではないのだろうかと思う。

 アーシアと友達になって、仲間ができて、今ライザーの眷属達と闘った。

 そして今、リアス達は窮地に立たされている。負ければリアスが望まない結婚をしてしまう。それは嫌だ、自分を仲間といってくれた彼女には、そんな思いはして欲しくない。

 力が要る。不死身のフェニックスすらも屠れる圧倒的な力が。

 

『お前の記憶はお前のモノじゃない。だからお前の力もその行動原理も、お前が自分で手に入れたものじゃない』

 

 こいつが誰だかは分からない。

 怪しさバリバリの不審者だが、自分が力を望めば要望通りの力をくれるのだろう。―――あの廃工場での銀色の姿の力を手に入れる事さえ。

 

『だが、それは紛いないお前自身だ。迷いも、怒りも、喜びも全てお前が手繰り寄せたお前だけのものだ。だからお前はにはこれからもいくつもの選択が課せられる。そして今、オレが出す選択肢も、ここからの『物語』を左右する重大なものの一つだ。さあ、選べ兵藤一誠。お前は壊すための力を望むか?』

 

 ―――決まっている。

 アーシアの時に誓ったんだ。この力は、彼女の為に、守るために使うんだって。

 

「破壊だけが力じゃない、守るためにオレの―――バックルの力を使う!!」

『………それがお前の選択なら、俺は文句は言わない』

 

 すると、黒色の塊が一誠の懐に投げ込まれる。

 瞬間、一誠の頭の中に、その塊が使われた光景が流れ込む。

 それは陣羽織のような装甲を身に纏った自分と同じような仮面の戦士が、異形の怪人や自分と似た姿の敵と戦っている光景。

 咄嗟にレモンのロックシードを取り出した一誠は、少年を見る。

 

『見せてみろ。お前の選択がこの先どんな物語を紡ぐのかをな』

「あ、おい待て!お前名前は―――」

『最初に言っただろう。オレはお前の夢の中の存在、そこから考えてみな。……ついでに忠告しておく、ライザーは手強いぜ?』

 

 用は済んだとばかりに、森の方に歩き出す少年。一誠の声に無言で人差し指を振り消えていく少年。思わず追いかけようとする一誠だが、不意に目の前の景色が霞んでいくことに気付く。

 

 

 

 

 

「………う……」

 

 視界が鮮明になる頃には、元の場所―――運動場に戻っていた。右手にレモンのロックシードと黒い錠前を嵌める部分がついた塊。

 

「あら、生きていましたの」

 

 立ち上がった一誠を覗き込んでいたレイヴェルや【僧侶】の一人は驚いたように、声色を高くする。ぐわんぐわんと覚束ない思考を回転させ、状況を把握しようと周囲を見渡すと、校舎の方へ向かっていく女性の姿が一誠の視界の端に映る。

 

「木場、朱乃さん……」

 

 リタイヤしてしまった仲間の事を悔やむように拳を握りしめる。しかし悲しんでばかりはいられない。まだゲームは終わっていないのだ。

 変身が解除されてしまったが、まだ変身し直せばいい。まだ、自分は戦える。

 

「まだ戦いますの?」

「終わってないだろ。数は同じだ、後はライザーを倒して終わりだ」

「だからもう、終わりです。分からないのですか?戦力を欠いた貴方達ではもうお兄様には勝てませんわ」

「フェニックスが不死身だからか?」

 

 一誠の言葉にふふんと頷くレイヴェル。

 そんな反応をするレイヴェルに、一誠は呆れた様に額を抑える。

 

「だからさ、お前は分かってないんだよ」

「何をですか?」

「オレッてさ、バカなんだよ。バカだから、どんな事でもやってみなくちゃ、気が済まないし、痛い目をみないと学ばないんだ」

 

 レイヴェルが絶句するのが分かる。当然だろう、どんなに理論づけて警告しても全く聞きやしないのだから。彼女は一誠の事が、ちゃんちゃらおかしい生き物にしか見えているに違いない。

 

 必要はないとばかりに、レイヴェルから視線を逸らし、前を向く。もう振り向く必要はない、一誠は全速力で走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リアス、リザインするんだ。これ以上は他の場所で見ている君のお父上にもサーゼクス様にも恰好がつかないだろう。君はもう詰んでいる、君も分かっているだろう?頼みの赤龍帝も、『聖母の微笑』を封じただけで回復不能に陥ってしまった。彼が火傷でリタイヤするのは時間の問題だ」

 

「……くっ」

 

「まあ、そこの下級悪魔くんはよく頑張ったと思うぜ?なんせ、ゾンビのように執念深く蘇ってきたからな」

 

 リアスにはもう退路がなかった。

 アーシアは、先ほどやってきたライザーの女王に能力を封印され、援護に来てくれた一樹もフェニックスの炎を受けて酷い火傷を負ってしまった。

 

「君の眷属はほぼ全滅、そして残っているのは人間ただ一人」

「ライザー様、その人間ならば騎士と共に私が片づけておいたので、じきにリタイヤしますわ」

 

「なっ……イッセー、が?」

 

 まだリタイヤしていない事から、まだ無事だと思っていた一誠が既に敵の女王により攻撃を受けていたなんて……。

 最早、奇跡すらも縋る事が出来ないのか。

 リアスは徐々に自分の足元が崩れていく感覚に陥る。

 

「君にはあまり攻撃したくはないんだがな……しょうがない、変わりに君の眷属を狙うとするか」

 

 再び背に炎の翼を展開したライザーは、その炎を倒れ伏す一樹に向けて放とうとする。これ以上、下僕たちの苦しむ姿を見たくはない。

 荒れ狂うように吹き荒れる火の粉に顔を顰めながらリアスは―――

 

「分かっ、たわライザー……」

 

 力なくその言葉を発した。

 ライザーもその言葉を聞くと上機嫌に翼を仕舞い、リアスを見る。

 

 心を占めるのは、こんな男と結婚させられる嫌悪感でもなく、結婚を強要してきた親でもなく、自分の為に戦ってくれた眷属達に対する、感謝と謝罪の念。

 自分が不甲斐ない『王』なばかりに、こんな結果になってしまって―――

 

「ライザー、私の負―――――――」

 

 

 

 

 

『部長ォォォォォォォォ!!』

 

 

 

 

 屋上の扉が勢いよく開かれ、黒髪の少年が飛び出してくる。

 ライザーの『女王』は眼を見開き驚き、アーシアは彼の名を呼び、一樹は顔を顰めながら、無意識ながらも微かな安堵の表情を浮かべる。

 

「兵藤一誠ただいま到着しました!!」

「イッ、セー……」

 

 体は煤だらけだが、その五体には目立ったような怪我はない。

 リアスは僅かに希望を抱くが、すぐにその表情を悲哀なモノに変え、こちらに駆け寄って来た一誠に話しかける。

 

「イッセー、もういいの。このゲームは私達の―――」

「部長、まだ終わってません」

「ライザーは、不死身なの……っ」

「………うーん」

 

 リアスの言葉に困ったように頬を搔く一誠。

 しかし、すぐに何時ものような卑屈な笑みではない、朗らかな笑みを浮かべライザーの方に体を向けると彼はリアスから視線を外し―――

 

「じゃあ、見ててください。俺が今からあの焼鳥野郎を倒します」

「……え?」

「だから、諦めないでください。俺達は部長の為に戦ったんですから」

 

【オレンジ!】

 

 バックルを腰に巻き、オレンジロックシードを頭の上に掲げ、錠前にはめ込む。一誠の頭上に生成されたアーマーは、バックルのカッティングブレードを倒すと同時に彼を頭を飲み込み鎧へと変わる。

 

【オレンジアームズ!花道オンステージ!】

 

 もはや見慣れた、鎧武者の姿になった彼はそのままライザー目掛けて走り出す。見慣れない能力に顔を顰めるライザーだが、自ら飛び込んできた一誠に嘲笑を浮かべながら、炎の翼を前方に放つ。

 

「そんなもんでッ……俺が止められるはずがねえだろぉ!!」

 

 無双セイバーと大橙丸を連結した薙刀で、炎を切り裂く。

 そして驚愕するライザーの顔面を左拳で力の限りぶん殴る。

 

「ッ……貴様、俺に攻撃は―――」

「んなモン知るか!!」

 

 再度、渾身の拳を顔面にぶつける一誠。

 鼻が折れ、口から血を流すライザーだが、炎に包まれるとすぐに回復してしまう。後退したライザーを視界に収めながら、怒りで拳で震わせながらそのままライザーに指を突きつける。

 

「俺はお前をぶっ潰す!!」

「人間ごときがッこの俺をぶっ潰すだと!?寝言言うなァ人間がァ!!」

 

 人間だからと侮っていた一誠に、傷をつけられ怒りを露わにするライザーは、全身から炎を噴き出させながら鋭く一誠を睨みつける。

 

「あぁ、人間だ!弱くて脆い……ッ少しだけ人とは違う力を持っただけの人間だ!でもなぁ、この力でも俺は戦えるッ、皆と肩を並べて戦える……この力にどんな意味があるかは分からねえ……でも俺は―――」

 

 一誠はバックルの左側に嵌められているフェイスプレートを外し、錠前を嵌める部分が付随している黒い塊【ゲネシスコア】を代わりに嵌め込み、レモンのロックシードを取り出す。

 

「あれは―――」

 

 一誠がどうやっても変身できなかった、レモンのロックシード。一体何故今になってアレを使おうと―――

 

 

「後悔なんてしない!!」

 

【レモンエナジー!!】

 

 レモンエナジーロックシードが開錠され、一誠の頭上にレモンを模した楕円の球体が生成される。彼はオレンジロックシードは外さず、そのままレモンエナジーロックシードを増設したゲネシスコアに嵌め込み、カッティングブレードを切る。

 

【ミックス!!】

 

 今までの変身とは違う音声と共に、オレンジアームズが球体へと戻り、頭上のレモンアームズと融合し、その姿を今までの果物然とした形ではなく、黒色の角ばった形に変える。

 そして、融合したソレは一誠の頭を飲み込み、鎧へと変形する。

 

【オレンジアームズ!花道オンステージ!―――ジンバーレモン!ハハーッ!】

 

 その姿は、武将が纏う陣羽織のような装甲に、レモンの断面を模した装甲の模様。

 黒色に彩られた頭部の意匠―――そして、彼の右手に握られた弓と矢が一体化した武装、創世弓【ソニックアロー】。

 他の形態とは一線を画すその形態に、戸惑いを隠せないリアス。しかし、一誠の力を知らないライザーとその『女王』は嘲笑を浮かべる。

 

「っで?何だ?そんな姿になった程度で俺に勝てると思ったのか?甘ぇんだよ人間が!」

 

 身に纏う炎を一誠目掛けて放つ。尋常じゃない熱量を誇るフェニックスの炎を目前にした一誠は、ソニックアローを左手に持ち替え、弓を引き黄色に輝く光の矢を打ち出す。

 

「ハァッ!!」

 

 放たれた矢は、迫りくる炎を容易く突破しライザーの顔の横を掠めるように通り過ぎる。

 

「このッ……」

 

 乱暴に頬を拭うと、翼をはためかせ一誠目掛けて加速するライザー。人間に三度も手傷を負わされた事は、彼のプライドを大きく傷つけた。

 こいつは焼き尽くす、例えゲームだろうが殺す。危険な思考に陥っているライザーに対して一誠は、ソニックアローを左手で構え、ライザーに合わせるように瞬間的に走り出し、すれ違いざまに彼の胴体をソニックアローで一閃する。

 呻き声が背後から聞こえると同時に、振り返り続いて斬撃を加える。

 

 圧倒、その言葉が正しい。

 オレンジアームズとは段違いの強さでライザーを、弓のような武器で切り刻む一誠。自身の不死力に頼り切りなライザーは、技量と腕力で圧倒する一誠の攻撃にただただ苦悶の声を上げる事しかできない。

 

 一誠は、ソニックアローにレモンエナジーロックシードのエネルギーを籠め、扇状の斬撃に変え打ち出す。柑橘類の断面が空中に浮きだし、ライザーを真っ二つに切り裂き後退させる。

 

「くっ、はは!だが無意味だ!お前ではオレを倒しきることなど不可能だ!!」

 

 確かに不死身のフェニックス相手には、僅かに及ばないだろう。

 だが―――

 

「ゴフッ」

「ライザー様!?」

 

 ビチャリとライザーが吐血する。不死身のフェニックスである彼が吐血したことに、信じられないとばかりに驚愕の表情を浮かべるライザーの『女王』。

 一誠の一撃か、はたまた一樹やリアスが蓄積させてきたダメージなのか―――定かではないが、今の一誠には言える事がある。

 

「無意味じゃない……ッ!!」

 

【ロック・オン】

 

 バックルのレモンエナジーをソニックアローに装填し、カッティングブレードを一度傾け、弓を構える。

 

【オレンジスカァッシュ!!】

 

 同時、ソニックアローの射線上に柑橘類を思わせる断面が幾重にも重なるように出現し、ライザーに向けられる。

 

「貴様なんぞに!!フェニックスである俺が……ッ俺が負けてたまるかよぉォォォ!!」

 

 口から止め留めなく血を流しながら、翼を広げ宙に上がる。

 腐っても上級悪魔、まだまだ途轍もない魔力を内包した炎を撒き散らし、大きな炎の塊を作り出す。

 

 ライザーの上昇に合わせ、ソニックアローを上方に向けた一誠は、狙いを定め、凄まじいエネルギーが集約された矢を撃ち出す。

 

「俺達は一度だって無意味な事なんてしてない!!食らえライザー!!」

【レモンエナジー!!】

 

 放たれた矢は、空中に展開された断面のエフェクトを通り威力を増しながら、ライザーへと迫る。大きな炎を生成しすぎたライザーは、炎を防御に回す事ができず、その身に迫る光の矢に恐怖する。

 

「ま、待て、お、お前分かっているのか?この婚約は悪魔の未来の為に―――」

「俺は人間だ!!そんなこと俺には関係ない!!」

 

 ―――そう一誠が叫ぶと、絶望の表情を浮かべたライザーは光の矢に貫かれ、身に纏った炎を花火のように霧散させ、力なく屋上から地面に向けて落下し、地面に落ちる頃には、粒子となって消えて行った。

 

 彼が何故、吐血したかは一誠は理解していない。

 エナジーロックシードの凄まじいエネルギーが彼のフェニックスの再生能力自体を妨害していたかもしれないし、圧倒的な火力でねじ伏せる彼は、長期戦には向いていなかったからかもしれない。

 だが、結果的には―――

 

『『王』であるライザーフェニックス様が戦闘不能に陥った事で、この試合リアス・グレモリー様の勝利です』

 

 その言葉を聞き、一誠は変身を解く。

 屋上を見渡すと、呆然自失と膝をつき放心しているライザーの『女王』と、何時の間にか屋上まで飛んで来たレイヴェル。

 そして、ほっとした表情を浮かべながら、封印から解放されたアーシアに治療されている一樹。

 

 そして――――背後を振り向き、紅の髪を靡かせた彼女を見る。

 

 貴方の言葉でここまで頑張れました―――

 仲間と貴方が認めてくれたから―――

 オレを勇気づけてくれたから―――

 

 だから、あの時言えなかった言葉を今、言おう。

 仮面を被らず、偽りのない言葉で。

 

「部長、俺を仲間と言ってくれてありがとうございます」

 

「イッセー……ッ貴方って子は……本当に……ッ」

 

 今、自分はどんな顔をしているのだろうか、と考えながら自分の懐に飛び込んできたリアスに真赤になりながらも、戦闘の疲労の影響で気絶してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ライザー・フェニックスとのレーティングゲームは、リアス・グレモリー率いるグレモリー眷属と一人の人間の勝利で幕を閉じた。

 レーティングゲーム後、魔王サーゼクスは、リアスから驚くべきことを報告された。

 

『兵藤一誠には『悪魔の駒』が反応を示さない』

 

 駒が足りなくて拒否するのではなく、反応を示さない。、

 彼は、即座に四大魔王の一人アジュカ・べルゼブブ―――転生悪魔というシステムを構築した男に連絡を送る。多忙な彼は、煩わしそうに応答していたがサーゼクスの言葉を聞くと興味深そうにふむふむと頷く。

 

『可能性としては、既に人間から別の生物に転生しているか、だね』

 

 それはないだろう。

 リアスから聞いた彼の出生は、ごく普通の家庭だ。弟が赤龍帝だという特異な点を除けば、どこにでもいる少年だろう。

 続いてアジュカが出した仮定に、僅かにサーゼクスは表情を渋らせる。

 

『彼が悪魔の駒をも受け付けないほどの、神格を有しているかのどちらかだね。まあ可能性としては考えられるけど……それは限りなく少ない確率とみてもいいよ』

 

「………まさか、いやそれは」

 

 ありえない―――のだろうか?ゲームの最中、一瞬だけ見えたあの『赤い眼』は何だったのか?微かに感じ取った形容できない力は結局、レーティングゲームが終了しても分かる事はなかった。

 

『しかし、サーゼクス。データで送られた彼の姿、実に興味深い』

「むむ?やはりそう思うかい?」

 

 先程までややシリアスな話をしていた魔王二人は、仕事そっちのけで一誠の変身した姿について会話に花を咲かせた末に、様子を見に来たグレイフィアに大目玉を食らうのだった。

 




森で出てきたのはオリキャラではありません。
……解釈によっては、オリキャラに近い?……かもしれません。


外伝を更新しようと思うのですが。
イッセーの悪堕ちパターンです。

というか、この作品のプロトタイプのようなものです。


一応、注意事項をここで載せたいと思います。

・イッセーがブチギレて悪堕ち。
・一樹が本編より、ゲス……というか、形容できない程終わってる。
・本編がかわいく見える程の仕打ち。
・戦闘描写は無し。堕ちる過程のみ。
・イッセーに与えられる特典は鎧武ではなく『悪ライダー』

 あくまでプロローグに近い外伝の様なものなので、注意事項を呼んで無理だと思ったならば読むことはお勧めしません。

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