感想返信しようと思いましたが、思いのほか時間が取れなくて……全部は返せませんでした。
感想を返信できず、申し訳ないです。
取り敢えず、質問だけ返しておきたいと思います。
今回は4話ほど更新したいと思います。
堕天使、悪魔、天使が駒王学園にて会談を行うその日。
会談の参加を義務付けられたリアス、グレモリー眷属達は会談が行われる校舎の会議室へ行ってしまった。しかし、眷属の中でギャスパーだけは旧校舎に待機が命じられていた。
人見知りの気があり、神器の扱いが不慣れなギャスパ―では会談で粗相をするかもしれないというリアスの判断からきたものなのだが、他ならぬギャスパーも残る事を快諾していたからのことである。
しかし、待機を命じられた者がもう一人居た。
「今頃、部長達。会談の真っ最中なんだろうなぁ」
携帯ゲームをして不安を紛らわせているギャスパーの隣で座っているツンツン頭の少年、兵藤一誠である。彼らの周りには人の気はなく静けさの中、ぼんやりと窓から見える校舎をジッと見つめていた一誠はふと、何気なしに呟く。
「そういえば、イリナも来たんだよな……」
昨日、学校から帰って来た一誠に彼の母が「イリナちゃんから電話があったわよー」というある意味で衝撃的な事を伝えてきた。伝えられた電話番号を携帯で掛けると、やや気まずそうな声音のイリナが電話に出る。
―――どうやら、彼女自身あんな別れからこんなに早く会うことになるとは思っていなかったので、色々気まずいらしいのだ。
一誠としては、気まずいにしても喜ばしい事には変わりないので、会話に花を咲かせていると―――イリナがミカエルの付き添いで駒王学園のある街に来ているという事を聞かされた。成程と思う反面、彼女もミカエルの付き添いと言う重要な立場に置かれた大変だろう、と感心していたのだが……。
「イッセー先輩、どうしましたか?」
「………ん?何でもないぜ」
無言で校舎を見つめていた一誠を心配気に見上げたギャスパーに、安心させる様に笑いながら再び校舎へと視線を向ける。
「どんなこと話してんのかなぁ……」
旧校舎に居る一誠が会談の内容に注目している一方で、三勢力による会談は順調に進んでいた。
三勢力のトップによる話し合い、コカビエルが起こした事件の顛末―――そして、アザゼルからの和平を結ばないかという提案。和平に関してはミカエルもサーゼクスも反対どころか賛成の意を示し、長らく続いていた三竦みにようやく友和への道が開けた。
「―――と、こんな所だろうか」
今後の戦力、陣営への対応についての話が一段落ついた頃、サーゼクスのがその一言を吐いたことを皮切りにその場にいた全員が緊張を解くように大きく息を吐いた。
「いや、まだだ」
だが、アザゼルだけは肩の力を抜かずにジッとサーゼクスとミカエルに視線を向ける。何だと言わんばかりにその場の全員が訝しげな眼でアザゼルを見ると、その視線に非難を感じたのかおちゃらけるように手をサッと上に挙げ、不敵な笑みを浮かべつつアザゼルは口を開く。
「兵藤一誠についてだ」
「……彼、か」
「!」
リアスは心臓の一瞬鼓動が跳ね上がるのを感じた。話題に上がらないよう一誠を旧校舎へ待機させたはずなのにまさか会談が一段落したときに出て来るとは露にも思わなかったのだ。
天使側にいるイリナも眷属達も、ソーナも皆一様に驚いた表情を浮かべる。
「分かってるとは思うが……和平を結ぶに当たって、兵藤一誠は他勢力に渡さねぇように配慮するべきだ」
突然の申し出にサーゼクスとミカエルは疑問符を浮かべるが、当のアザゼルは真剣な表情だ。人を小馬鹿にしたような男である彼を知っている身とすれば意外な光景だが、逆に考えればそれほど重要な要求だという事と考えられる。
「それは勿論ですが、何故?彼の事は聞いています。先程、リアス・グレモリーが説明してくださった通りにコカビエルを打倒した人間だと……」
「コカビエルはどうしようもねえ奴だが、簡単にやられるような奴じゃねぇんだよ。言っちゃあ悪いが、一人の人間と、悪魔として若いリアス・グレモリー率いる眷属達じゃあ、万に一つも勝ち目はない」
「……彼の力について何か知っているのかい?」
理由を聞きたいサーゼクスが問いかけると、アザゼルは面倒くさそうに頭を搔く。
「……初めてだぜ。神器であれなんであれ、ルーツってもんがあるのによ、イッセーのそれにはなにもありゃしなかった。……しかもアイツ、自分の中になんらかの意思がいる、とか言っているから何かしらの意思が封じ込められた神器と何か関係あるのか?と考えて調べてもなんも出やしない。……サーゼクス、お前はちゃんと分かっているようだが一応言っておく、イッセーはただの人間じゃねぇ。いや、人間すらも超越した何かになる可能性にだってなり得る。悪く言うなら危険な存在だ」
「アザゼル、君は……」
「うちの白龍皇様が嬉々としてイッセーの事を語ってんだぜ?んでもってコカビエルを一時とはいえほぼ封殺ってのがこれまた興味深い。聞いたところによれば眷属にできねぇって話じゃねぇか。アジュカ・べルゼブブの転生悪魔のシステムを拒否する兵藤一誠の特性、堕天使側の俺から見てもかなり異常だぜ?」
サーゼクスの親友、アジュカ・べルゼブブが作ったとされる悪魔転生システム『悪魔の駒』。大抵の種族は転生悪魔に変えられることができるが……何故か兵藤一誠は転生することができない。普通ならあり得ない事だ。駒の数が足りない……という考えもあるが、それでも転生する生物の力量を測る為、反応はするのだ。
だが駒は一誠に反応すらしなかった。つまり駒の効果を受け付けない体、もしくは特性を持っていると見ても良い。
「……イッセー君が『神』に類似する種族、だと?」
「その眷属、または俺達が知らない新しい存在になりつつある……ま、今の段階で一番有力なのは、兵藤一誠が既に別の種族にへと転生しているっつーものだが……その可能性も考え得る中で高いだけだ」
「………ふむ」
やけに頷きながら興味津々とばかりに語っているアザゼルに、サーゼクスは苦笑いしながらもアザゼルの提案を吞むつもりでいた。
兵藤一誠、妹であるリアスが保護している人間。
ただ一人でライザー・フェニックスを倒し、コカビエルを打倒した実力者。力を持ってしまった人間は危険な思考に陥る、サーゼクスは先日兵藤家に止まる際、若干だがその事に不安を抱いていた。しかし、一誠は驚くほど邪気がない人間だった……。悪意の無い真っ直ぐな少年――――良い少年だ、と思う反面、危ういとも思えた。
「俺が二度目にイッセーに会った時、アイツは俺に面白い事を聞いた。『ヘルヘイムって何だ』だと。これだけじゃあ判断材料は足りねぇが。北欧が絡むと厄介な事になりかねない、全く北欧が関わっている可能性があちゃあ、……この和平を機に動き出す奴らも合わせて面倒臭いことになりそうだぜ」
ヘルヘイム、その言葉を聞き僅かに表情を鎮めた一部の面々だが、リアスは別の意味で衝撃を受けた。一誠がリアスにではなくアザゼルに自分の力について聞いたことにだ。確かに、アザゼルは神器に詳しいとは聞いたことはあるが―――だとしても、一誠に頼りにされなかったことは少しショックだった。
反面、【北欧】という言葉が出て来て驚く面々は、まさか一誠が北欧神話と関わりのある力を持っているのか?と様々な推測を立てその力を見極めようとしていた。
ざわざわと騒がしくなる会議室の中でサーゼクスは冷静に言葉を放つ。
「………分かった、イッセーくんには何者かの干渉が及ばないように警戒するとしよう。……しかし、アザゼル、和平を機に動き出す者とは一体?」
「あっ…………段階を見て話そうと思っていたんだが……まあいいか、そ――――」
しまった、と言わんばかりの表情でため息を吐くも、自身の言葉はこの場にいる全員の耳に入ってしまっているので出し惜しみはできないと理解した彼は観念したように肩を落とし言葉を紡ごうとしたその瞬間―――。
時が止まった――――。
「はっ!?」
掛かり慣れた感覚、そうこれは、ギャスパーの時間停止を喰らった時の感覚。
体が止まったのは一瞬だけで、直ぐさま動けるようになったリアスが周りを見ると、各国のトップ、それに白龍皇、グレイフィア、ゼノヴィアに木場、一樹だけが時間停止を免れていた。
ギャスパーは用心の為に旧校舎に居て貰ったはずだ。それがどうして―――
「っ!」
最悪の可能性に思い至ってしまったリアスは、すぐさま会議室の窓に張り付き外の様子を見る。暗い雰囲気を放つ旧校舎と駒王学園の敷地内で魔法のようなものを発動させようとしている謎の集団が見える。
「アザゼル!これは―――」
「攻撃を受けているのさ」
やけに落ち着いているアザゼルは、若干の興奮状態にあるリアスを諌める様に順々に説明をし始める。
簡単にまとめると、今三大勢力の会談はテロ集団に襲われているらしく、周りの面々が時間停止にかかったように止まっているのは、旧校舎にいるであろうギャスパーが何者かにより強制的に禁手状態にされ、その影響で止まってしまったということだ。
「ギャスパーが旧校舎でテロリストの武器にされている……ッ?それに、イッセーも……ッ」
ゆらゆらと紅い魔力が漏れ出ているリアス。
一誠なら、そう簡単にやられはしないだろうが、もしものことを考えると心配だ。彼だってベルトの力がなければ常人よりも凄まじい身体能力を持つ人間。魔法使いの攻撃をまともに受ければひとたまりもない。
「ククク……」
リアスが静かに怒りを燃やしている一方で、旧校舎の方をジッと見つめていたヴァーリが静かに笑みを漏らす。その瞳に何処とない無邪気さを感じたアザゼルは、やや呆れ気味にヴァーリを見、声を掛ける。
「おいおい、どうしたよヴァーリ」
「いや、な。やっぱり兵藤一誠は面白いなぁって」
「はぁ?……は?」
旧校舎の窓から見える僅かな中の様子を見てアザゼルは呆ける様に口を開ける。アザゼルの様子を見てか停止を免れた面々が一様にして旧校舎を見やった瞬間―――。
『うひゃあああああああああああああああああああああああ!!』
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』
まるで映画のように、鎧武へと変身を果たした一誠がギャスパーを抱えたままバイクで壁をぶっ壊して二階から飛び出してきた。
ギャスパ―は叫び声を、バイクを運転している一誠は巧みにバイクを乗りながら攻撃を仕掛けて来る魔法使い共を刀から放出したエネルギーで薙ぎ払っている。
その光景の何がおかしいのか、肩を震わせながら見ていたヴァーリは居てもたってもいられなくなったのか、白銀の鎧を纏い会議室の窓を開く。
「外の奴らを片づけて来る」
「ああ……行って来い」
一瞬だけ無言で佇んでいる一樹の方に視線を向けるも、興味を失ったように直ぐに外を向き光翼を広げ飛び上がる。
外へ飛び出したヴァーリの姿が一瞬の内に掻き消えると外から攻撃を加えていた魔法使いたちが消えていく。その光景を一瞥したアザゼルは、ヴァーリに視線を向けられビビっている一樹を見て大きなため息を吐き、懐から腕輪のようなものを取り出し一樹に放り投げる。
「ほらよ」
「え?」
「そいつは神器の力をある程度抑えるもんだ。そいつを嵌めれば短時間だが対価を支払わなくても『禁手』になれる。……お前の力じゃ外の奴らは倒せても中級以上のの魔法使いには敵わねぇだろ。持っておけ」
戸惑いながら受け取った腕輪を見ながら一樹は目を丸くする。渡されるとは思わなかったからだ。そもそもギャスパーの傍に小猫ではなく一誠が居るという時点で、原作の流れとは違うということを悟っていた。
だから自分はこのまま戦わなくちゃいけないのかと思っていた。アスカロンもあるから大丈夫だと思っていた彼だが、先程アザゼルから渡された腕輪を見て、僅かに唇が震わせる。
「………ま、折角の禁手の機会を活かすか殺すかはお前次第だけどな」
その反応に気付いているのか、分かっていたとばかりに頭を搔いたアザゼルはカズキからサーゼクスの方を向きひらひらと手を振る。
「全く、お前の妹は厄介な奴等を抱え込んじまったなぁ……」
「君の方が厄介さ、今の所はね」
「はぁ……」
にっこりと笑い何気に毒を吐いてくるサーゼクスにやれやれとばかりにため息を吐き出すのであった。
ギャスパ―には小猫ではなく、イッセーが着くことになりました。
すぐさま次話も更新致します。