兵藤物語   作:クロカタ

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二話目の更新です。


外伝 兵藤物語【悪】 6

 駒王学園屋上、その屋上にフリードと一誠は居た。

 眼下にはコカビエルと統合された聖剣を使う一人の神父。フリードが居ない代わりに別の適性があるものを聖剣使いとして仕立て上げたようだが、完全に聖剣の力に吞まれている。

 

 あれでは、今さっき禁手に至った木場でも苦も無く倒せるだろう。というより、一誠は木場が禁手になって安心した。元々木場は一樹とは比べものにならない程に技量がある騎士だ。修業のある無しに禁手に覚醒している所を見ると流石としてか言い様がないが―――。

 だが順調に進んでいる反面、僅かだが違う事が起きている。

 

「何で、お前がいるんだ……」

 

 統合された聖剣の数は合っている。

 だが、統合された聖剣の持ち主が無傷の状態で此処に居る。橙色の髪をツインテールにして揺らしている、かつて友達だった彼女。

 

「イリナ……」

 

 紫藤イリナが其処にいた。あちらのイッセーとは違う形で仲良くなり、最悪の形で離ればなれにしまった親友が、ゼノヴィアと共に其処に居た。彼女も自分を忘れている、松田と元浜と同じように。自然と歯を噛み締めながら、眼下の一樹を見下ろし、笑みを浮かべる。

 

 

 

『神器!答えろ!!答えてくれぇ!!何でッ、答えないんだよ!!』

 

 

 

 

「んー、ありゃあ何だ?何しようとしてんすか?」

「思い通りにならないから、ドライグに文句を言っているんだな、あれは」

「へー、てっきり目覚めろ俺の左腕目覚めろー的な厨二的な展開を自ら呼び起こそうとしているかとーあ、俺別にそういう腕が目覚めるとかそういうのないっすからね!これ大事!フリード=サンはノーマルでピュアな真人間でっす!!」

「お前が真人間であってたまるかバカ野郎」

 

 ようやく赤龍帝の籠手になったソレを右手で掴み、声を上げている。滑稽だ、ライザーと戦わなかったから碌な修業もしていない、状態じゃ並の中級堕天使すら相手にならない。

 

「ん?ドライグって誰?ドライバーかなんかすか?」

「いや、あいつの神器の事だ」

 

 しかし、今の状況を見る限りコカビエルは完全にリアス・グレモリーを相手に遊んでいる。本来は、赤龍帝のイッセーが倍加の譲渡によって食いつく筈なのだが、当の赤龍帝が役立たずなので朱乃もリアスも消耗するばかり。小猫も木場もゼノヴィアも現状、コカビエル相手では手も足も出ないだろう。

 ―――木場が目覚めた聖魔剣で統合されたエクスカリバーを持った神父を切り払った……状況的に頃合いか。

 

「そろそろ行くぞ」

「おっし来ましたァ!!」

 

 手をパンパンと叩いたフリードが校舎の中へ走っていく。流石にこの高さから降りるような化け物染みた戦闘能力はないフリードは、下から向かわせる手筈で、屋上に残った一誠は―――。

 

「―――すいません、リアス……皆……」

 

 悲しげに呟きながら腰に出現した手の形をしたバックルにあらかじめ嵌めていた指輪を添える。

 

【CHANGE―――NOW】

 

 一誠の体にとてつもない異物感と魔力が満ち溢れると同時に、彼の真横から現れたクリーム色の魔法陣が体を包み込むようにスライドし彼の体を白い仮面ライダーの姿へと変える。

 

「今、助けます」

 

 変身を終えた一誠はふわりと屋上から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶望的な状況の中、ソイツは現れた。

 リアスも朱乃も、一樹も木場も小猫もアーシアもゼノヴィア―――そしてイリナも、目を見開きながら空から舞い降りた白いローブを纏った仮面の戦士を見た。

 

「………」

【CONNECT】

 

 白い仮面の戦士が、右手に嵌められた指輪をバックルの手形に添える。すると彼の真横に魔法陣が発生、柄のようなものが飛び出し、それを引き抜きくるりと回す。

 

「魔法……!?……まさかライザーを襲撃した白い魔法使い!?」

 

 白いローブ、琥珀色の仮面、ライザーを襲った犯人像とそっくりな外見にリアスは無意識にそう呟く。

 その声が聞こえたのか、僅かに後ろを振り向いた白い仮面の戦士、一誠は魔方陣から取り出した槍【ハーメルケイン】を構え、無言で上から見下ろすコカビエルを見据える。

 

「何者だ」

「………」

「だんまりか、まあ貴様程度の実力者が増えた程度で、この俺がどうにかなると思っているのなら……それは大きな間違いだぞ?」

 

 依然として無言の一誠、その態度が気に入らなかったのかフンッと鼻を鳴らしたコカビエルはその手に光の槍を生成し、投擲するべく構える。対して一誠は、そんなコカビエルに対して、冷静に取り出した指輪を左手に嵌めながらバックルの手形に手を添える。

 

【GRAVITY―――UNDERSTAND?】

 

「な…ッがぁ……」

 

 バックルからそんな音声が鳴ると同時に、一誠がコカビエルの頭上に手をかざす。すると彼の頭上に現れた黄色い魔法陣が彼を押し潰すように下方へ落下し、コカビエルを地面に叩き付けた。

 

 コカビエルが重力魔法により地面に押し付けられている間に、ハーメルケインを引く様に構えた一誠が流れるような速さで接近し、重力に逆らい立ち上がろうとするコカビエルの腹部にハーメルケインを突き刺した。回避すら許さない動きでコカビエルを容易く傷つけた彼に絶句する後ろの面々。

 

「グッアッ……ッ」

「………」

 

 引き抜くと同時にくるりと横に一回転しながら胴を横に一閃し、追撃を浴びせる。その攻撃に速さ等は感じられない、言うなれば精巧すぎて反応できない攻撃―――。一誠の経験と白い魔法使いの元来のポテンシャルが合わさった、強力無比な連続攻撃がコカビエルを切り裂いていく。

 

「何者だ……ッ!貴様!!悪魔……いや化生の類ではないな!!」

「……」

 

 生成された光の剣を手刀で叩き落としながら、機械のようにコカビエルを嬲る。その様相に呆気にとられる面々だが、その次の瞬間、激昂したコカビエルが血だらけのまま、一誠を光力で吹き飛ばし、その隙を突きその手に巨大な槍を出現させる。

 

「―――危険だ……ッ、貴様は!!」

「……随分と良く喋るんだな……お前はもっと怖い奴かと思った」

「なんだと……ッ」

 

 ハーメルケインを盾にして防いでいた彼は、バサリとローブを翻しながらここで初めて声を出した。

 

「あの時、滅茶苦茶デケェ存在だったお前が今はこんなにも弱く見える」

「ッ少し腕が立つくらいで調子に乗るなよ!人間がぁ!!」

 

 彼の言葉が癪に障ったのか、憤怒の形相のままその手の槍を一誠とその背後のリアス達目掛けて投げつけた。一撃体育館を崩壊させた光の槍以上の攻撃が迫り、絶望のあまり動けなくなる面々だが、その場から動こうとしない一誠は逆手に持ったハーメルケインを両手で持ち、仮面の口に当たる部分にあてがう。

 

「―――」

 

 幻想的な音色がハーメルケインから発せられると共に、琥珀色の波動のようなものが迫り来る光の槍を空中で停止させる。ハーメルケインによる【演奏】を奏でた彼は、さらに強い音色を発し停止した光の槍を一瞬のうちに粉々にさせた。

 

「―――バカな……何だ……何だソレは!」

「魔法だよ」

 

【CHAIN―――NOW】

 

 コカビエルが動揺している間に右手の指輪を付け替え、コカビエルの体を光の鎖で縛り付ける魔法を発動させた。宙から現れた光の鎖がコカビエルの動きを封じると同時に、彼は助走をつけて飛びあがり強烈な飛び蹴りを叩きこむ。

 

「ぐ、がああああああ……ッ」

「茶番は終わりにしよう。お前にとっても、俺にとってもそれが一番良い」

 

 着地と同時に指輪を付け替え、拘束されたままのコカビエルを視界に収める。

 使う魔法はライザーを倒したものと同じ魔法だが、今回は手加減はしない。こいつはイッセーの記憶の中でも害悪な存在だから―――。

 

「消えろよ、害悪」

【Explosion―――NOW】

 

 全力の魔力を投じて放たれた魔法、【Explosion】は魔力を亜空間にて圧縮し、それを空間に解き放つことで強力な爆発を発生させる超魔法、それがコカビエルの目と鼻の先に発生し、その空間、否、コカビエルの居る場所のみを焼き払うかのように焦がした。

 

 断末魔は無かった。悲鳴の声を上げる事もないまま、コカビエルはこの世から消え去った。圧倒的、その表現が正しい程にコカビエルを蹂躙した彼は、次に背後のグレモリー眷属に体を向ける。敵か味方か分からない、相手に警戒するリアス達。だがコカビエルを圧倒する化け物相手に勝てるはずがないのは分かっている。

 

「久しぶりだな、リアス………グレモリー。前に会った時は教会だったか……」

「……前……?……貴方まさか!」

 

 幾分か回復したリアスが、一誠の発した言葉に反応するように目を見開く。グレモリー眷属には忘れる事が出来ないであろう、数か月前の事件、堕天使が潜伏する廃教会に現れた龍を使役する漆黒の戦士。

 

「……堕天使を殺して……ライザーを襲撃して……今度はコカビエル?」

「俺は俺の目的の為に動いているだけだ。その為には手段を選んでいる場合じゃない」

「その目的は何……?」

「俺がするべきことを成す」

 

 あの時とは打って変わり白いローブを纏った魔法使いの姿へと変わった彼は、緊張したリアスが投げかけた質問に正直に答える。彼女からしてみれば、目の前の白い魔法使いは何時敵になるか分からない危険人物。

 

 ―――だが、白い魔法使い……一誠がリアス・グレモリー及び、一樹を除いた眷属達に危害を与える事は絶対に無い。彼にとって彼女らは、こことは違う【イッセー】にとってかけがえのないほどに大切な存在だからである。楽しいときも悲しいときも一緒に分かち合った仲間達、もう二度と自分が手に入れる事が出来ない【幸せ】。

 

「するべきこと……まさか、まだ一樹を殺すつもりなの?」

「そうだ」

 

「!」

 

 だからこそ、その幸せを奪い取った異分子は殺す。仲間達と彼らの未来に悪影響しか与えない不要な存在は消す。兵藤一樹は醜悪な人間、いや人間という事すらおこがましい外道、そんな奴は野放しにしておけるはずがない。

 

「何故なの!?彼が何をしたというの!?」

 

 言えるわけがない。言葉にしたらきっと次の瞬間にはハーメルケインで兵藤一樹の首を撥ねてしまっていただろう。まだ早い―――殺意を必死に押しとどめ平静を装いながら、彼は校舎に取りつけられている時計を見据え数秒ほどしてから思考彼女の質問に答える。

 

「許されないこと、だ。―――時間も押してきている、次の目的に移らせて貰う」

「何を―――」

「フリード、やれ」

 

 

「フリードくん!いっきまぁ―――すっ!」

 

 一誠がその言葉を発したその瞬間、光の剣を携えたフリードが窓を突き破り現れた。突然の乱入者に反応できない面々をぐるりと見回し、醜悪ともとれる笑みを浮かべたフリードは懐から銃を取り出し、神器を展開したまま座り込んでいる少年、兵藤一樹へと照準を向ける。

 

「おっ久しぶりー皆さーん!特にアーシアちゃんと一樹くーん!!こんにちは死ね!!」

「フリード・セルゼン!?何故ここに!?―――一樹くん!!」

「え、な、なんでお前が―――」

 

 照準を向けられているというのに動こうとしない一樹に、焦燥した木場は聖魔剣を構えフリードへ斬りかかろうとするが、その前に一誠が放った光る鎖により拘束され身動きが取れない状態になる。

 

「祐斗!?いきなり何を―――」

「お前達は弱すぎる。さっきの体たらくは何だ?……コカビエルに手傷すら負わせられないなんて……今の状況もそう、決して対処できない事態じゃなかった、それなのに呆気なく兵藤一樹を人質に取られてしまうなんて……それでレーティングゲームで勝ち進めると思っているのか?」

 

 其処まで言い切った彼の心情は自己嫌悪の気持ちで一杯だった。そもそも、一樹のみならずグレモリー眷属の成長の機会を潰してしまったのは、他ならない一誠だ。それなのに自分はソレを責めている。

 

 でも、これは必要な事だ。記憶の中のグレモリー眷属はライザーという強大な敵を相手を打ち倒すために修業し、強くなった。一誠が忘れ去られてしまった世界のライザーは彼によって、戦闘不能に陥りグレモリー眷属とレーティングゲームをする機会が無くなってしまった。この齟齬を解決させるのは簡単だ―――。

 

「お前達は弱い、コカビエル程度にすら勝てないようじゃこの先の戦いは生き残れない」

「……ッ」

 

 彼自身が強大な敵として彼女らの前に立ちふさがればいい。目の前で遙か格上、コカビエルを圧倒し殺すというお膳立てはもう済んだ。後は適度に一樹を痛めつけるようフリードに命令して、テレポートで帰ればいいだけ―――。

 

『―――随分と、愉快な事になっているようだな』

 

 フリードに指示を出そうとしたその瞬間、遙か頭上から声が聞こえた。その声が聞こえた方向に目を向けると、光翼を輝かせながら、銀色の鎧の男が近づいてきていた。

 

「……来ちまったか」

 

 その姿を視界に収めた一誠は、小さくそう呟きながら大きなため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【白龍皇】、一樹の【赤龍帝】と対を成す存在の登場にどよめく面々を余所に、イリナはボーッと白い魔法使いを見ていた。

 兵藤家で写真を見てから、イリナはおかしな感覚に囚われている。頭の中で大事な何かが欠落してしまったような喪失感―――何を失った、何を無くしてしまった。その事で今までずっと悩んでいた。

 

 聖剣を奪還するという重要な任務にも手が付けられない程に思い悩んだ彼女は『擬態の聖剣』を奪われてしまうという失態を犯してしまった。幸い、五体満足で生き延びる事が出来たが―――結果的にグレモリー眷属の剣士から剣を借りなければ戦えなくなってしまった。

 

 戦いに役に立たない自分に不甲斐ない思いを抱くと共に、強大な力を振るいグレモリー眷属とゼノヴィアを圧倒するコカビエルに、恐怖を抱いた。

 このままでは殺される。

 

―――イッ――く――……。

 

 彼女は無意識に誰かの名前を呼んだ。覚えのない名前だったが、その名前を呟いたその瞬間に彼は現れた。

 白いローブを纏った大きな指輪の魔法使い。

 

 彼により瞬く間にコカビエルを滅した。

 それがどれほど異常な事かは理解が及ばなかったが、彼が声を発したその時、彼女は胸が締め付けられるような思いに駆られた。

 聞いたことのない声なのに、何年も前の幼かった【彼】の声に重なる。

 

「アザゼルに頼まれて来てみれば……これは……興味深いな」

 

 白い魔法使いがフリード・セルゼンに指示を出し一樹を人質に取った後に現れた銀色の鎧の男。その鎧の男はゆっくりと白い魔法使いの前に降り立ち、興味深げに全身を眺める。

 

「フフフ………魔法にも精通しているつもりだが……お前のような魔法を使う奴は知らないな」

「やっぱり見ていたか……白龍皇」

「知っていたのか、何だつまらないな」

 

 残念そうに肩を竦める白龍皇とは対照的に、白い魔法使いはその手の槍を突然振り上げ白龍皇へ叩き付けた。白龍皇が手甲で槍を受け止めると、ガキィィンと甲高い音が周囲に響く。

 

「―――どういうつもりかな?」

 

 槍を叩きつけた白い魔法使いに殺気を放つ白龍皇。濃厚な殺気にイリナは全身の血が凍るような感覚に陥りながらも目を離さずにいると、槍を持つ手に力をいれた白い魔法使いが白龍皇の甲冑に顔を近づけ―――。

 

「――――――」

「ッ!?」

 

 何かを囁いた。聞き取れなかったが、白龍皇は明らかに動揺したような声を上げ、槍を受け止める力を弱めた。構わず彼は一言二言呟いてからサッとその場を離れる。

 

「伝えたぞ」

「ああ、確かに聴いた」

「なら今は退け、ここにはお前が求める赤龍帝は居ない」

「………どうやらそのようだな」

 

 一樹を一瞥し、落胆したように肩を落とした白龍皇は白い魔法使いの指示に従う様に光翼を展開しふわりと浮き上がる。

 

「ま、今回は赤龍帝よりも面白い奴を見つけられたから良しとしよう……また会おう、白い魔法使い」

「……ああ、白龍皇……ヴァーリ」

 

 満足そうに頷いた白龍皇はそのまま空高く飛び上がっていき、姿が見えなくなってしまった。その姿を見送った彼は脱力するように手に持った槍を下げ、グレモリー眷属達の方を向く。

 

「……ッ!白龍皇とコンタクトを取るのが目的だったの……?」

「違う、その後ろに居る奴等に用がある……」

「まさか、堕天使勢力に……!?」

 

 アザゼルという名前を出した白龍皇から考えれば、堕天使勢力の事を言っていると考えられるが、彼はリアスのそんな疑問を無視するかのように、彼女からフリードの方へと視線を移す。、

 

「もう此処に居る意味はなくなった………フリード、帰るぞ」

「まだオレ一樹きゅん血祭にあげてなーい!!」

「予定が狂ったんだよ……早くこっちに来い。置いてくぞ」

 

 頭を抑え疲れ切ったような声を出す白い魔法使いに「待って~、流石に走って帰るのは嫌なり~」と驚くほどの切り替えの速さで、銃と剣を懐を仕舞い駆け寄るフリード・セルゼン。

 彼は別の指輪を右手に付け替えるとそれをコカビエルを倒した時と同じように、バックルの手形に添える。

 

「また、会おうリアス・グレモリー……」

「ばいばいきーん、クズ悪魔のみなさーん」

 

 白い魔法使いの横に光の渦のようなもの生成される。そこに白い魔法使い、手をひらひらと振ったフリードが笑顔で入っていくと光の渦は力を失う様に消滅した。

 

「………あの人……」

 

 白い魔法使いが光の渦に入り込む瞬間、イリナは見た。彼がほんの一瞬だけ自分の顔を見て、僅かに肩を震わせた……気のせいかもしれないが、彼女にはそれがつらいことを必死に我慢している、あの時の【彼】の姿と重なるのだった。

 

 【彼】という人物は未だに思い出せない。でも、自分が創りだした妄想上の存在ではない事が分かる。【彼】は確かにそこに居て、それでもって自分にとってとても大切な人だった。

 

「―――ッ」

 

 ―――絶対に思い出して見せる―――

 

 頭に微かな痛みを感じながら、イリナは人知れずそう心に誓うのだった。

 

 




皆さん、なんとなく想像できているようですが―――
本編でも要望されていた『ヴァーリチーム』ルートです。


イリナの事もあるので、今話これからの物語が大きな影響がある話となります。




後は、本編と外伝を分けたいと思うので、取り敢えず【悪】1話から4話を外伝として分けて、一週間ほどしたら5話と6話を外伝の方に移動させたいと思います。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

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