組織を裏切ったネフライトと彼に想いを寄せる大阪なるはダークキングダムの刺客に襲われ絶体絶命の窮地に陥っていた。
そんな彼らの前に現れたのはこの時代にいないはずのちびうさを名乗る筋骨隆々の巨人だった。

【注意事項】
・この物語はフィクションです。
・美少女戦士セーラームーンの二次創作です
・残酷なシーンが含まれます
・本小説に登場する人物、団体等は実在するものと一切の関係がありません。
・タイトルにちびうさちゃんとありますが本小説に登場のムキムキがちびうさちゃんである確証はありません




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人の恋路を邪魔するやつにゃ、俺のおみ足が火を噴くぜ

「あー、〝死合(けんか)〟してぇ」

街行く人もまばらな0時すぎの爽やかな夜風に当たろうとちびうさは麻布を練り歩いていた。

血気盛んな彼は夜も更けたというのに闘争心が抑えきれず家にいてもソワソワとするだけだったので、頭を冷やすため、あわよくば強そうなヤカラへ〝命を懸けて戦う(ナンパする)〟ために歓楽街を見て回っているのだ。

ところでこの男がセーラームーンRから登場したあの『ちびうさちゃん』かどうかはわからぬ。もしかしたら遺伝子改良を受けたか成長ホルモンを注入されてムキムキマッチョマンになったのかもしれない。

はたまた自分をセーラーちびムーンだと思っているだけの大男かもしれない。

家を出てしばらく、血の匂いを想像して思わずヨダレを垂らしたちびうさ?が「いかん、いかん」と口を拭いた刹那、公園の方で爆音と怒号か聞こえた。

爆竹で遊んでるのかと思ったが硝煙の匂いはしなかった。焦げ臭さと生き物の体液、そして青臭い匂い。梅雨時の田園地帯で嗅ぐ、スダジイのムワっとした香りに似ていた。

異音の元へ向かいながらタンクトップを脱ぎ捨てる。カバンのポーチからバンテージを取って拳に巻く。拳ダコで浮腫みあがったナックルが白い衣にお色直しされている時、ちびうさの目が座り始めた。

ムエタイパンツとスニーカーだけを身につけた巨漢は、真夜中の高級住宅街に見合わない血なまぐさい公園へ、さながらリングインするラウェイファイターの厳格な態度で入場した。

広場の低木の影に横たわる男と彼を庇う若い女。2人は手負いで、はだけた衣類の下からは荒い息の度に生傷や打撲痕が見え隠れしている。

取り囲むのは魑魅魍魎の形相の怪物立ちでシルエットこそ手足の長い、スタイル抜群の女だが肌の色はそれぞれ曇色の赤、緑、紫。茨のような触手の束を変形した腕から伸ばし、棘は度々放電して火花を散らす。

「なるちゃん…逃げるんだ」

「いやよ…三条院様を置いていくくらいなら私も死ぬわ」

物の怪の女たちはほくそ笑み、男の足元から突き出す触手を応酬した。

触手は大阪なるに構わずに真っ先に三条院正人に襲いかかった。

彼は背後のなるへ振り返り、庇うように抱いてから跳躍したため茨の矢尻を躱しそこねて足首をやられた。アキレス腱に茎がめり込んで筋繊維を突き破って反対側から出てきた。棘が真っ赤に染っている。

「いや…!?三条院様!」

女の悲鳴をあざ悪ようにもう片方の腕から射出された茨の槍が、這いつくばった三条院の背後からトドメを誘うとした。真上からの打突が彼に到達すれば、肋骨がくだけ、肺に穴を開けながら、心臓を破壊して必ず命を奪うだろう。

必死の一撃が死を招きかねたのは、異形のバラですら弾いてしまう魔性のバスト──ちびうさの大胸筋だった。

肉壁が出来上がるまで韋駄天の如く、あっという間に三条院と触手の間に割って入ったちびうさはガードを閉めるどころか自然体の姿勢のまま、分厚い胸筋で茨を受け止めた。

それどころか棘は頑強な皮膚を貫けず、山肌のような筋肉の表面に激突するやいなや、接地点から王冠状に広がりながら崩壊してしまった。尖端はグズグズに解けたような有様で殺傷能力はもはや有していない。

胸に散った植物片を優しく、撫でるような仕草で払う姿は官能的だった。

不敵に微笑んで口から覗いた歯の白さは真っ暗な天に煌めく火球の如く、ちびうさの余裕の現れであることに違いない。

「貴様、何者だ」

「俺は修行者だ。手負いの者を寄ってたかっていたぶるなど退屈しよう。彼らの代理を務めたいがいかがかな」

ちびうさの要求に顔をしかめて女が答えた。

「何様のつもりか。我らダークキングダムに従う妖魔。幹部の要職につきながら人間の小娘に心を奪われたネフライトを抹殺する命を承った。邪魔だてするならば死より恐ろしい目に合うと思え」

妖魔の女の口調に怒気が混じる。三体の殺気がビリビリとちびうさを刺し始めた。

「そちらの事情、承知」

続けてちびうさ、

「されど俺は修行者。貴様らのような強者共と相まみえて、命欲しさにみすみす引き下がるわけがあるまい。手合わせ願おうか」

それを聞いた妖魔たちは堪忍袋の緒を切らし、ネフライトからちびうさに照準を定めた。

「そこまでカッコつけて泣いて詫びても生かさんぞ!」

「ガハハハ、血だ!血を見たい!貴様ら魑魅魍魎の流す血潮が赤いのか、貴様らの血で地球を見下ろす月が落涙するのか俺は見たい!殺してやる!」

ちびうさは絶叫しながら仁王立ちした。

──ノーガード?この男血迷ったか。

血走った眼をした妖魔達はなすがままの標的を嘲笑いながら首をやった。動く前に取り囲んで大男の瞳孔が揺れる前に前後左右から切り払った。タイミングはほぼ同時だった。大男の血が四方八方に吹き出すはずだった。

 

次の瞬間、妖魔達は高度400mの空中に投げ出されていた。芝地区の東京タワーや元麻布の高層タワーマンションが自分たちの足元にある。今しがた自分たちがネフライトを締め上げていた公園はずっと西の方に、十番街の活気に紛れてほとんど見えなくなっていた。

何があったのか理解できなかった。わかるはずがなかった。

腕を引き抜いた瞬間、視界の景色か入れ替わって自分の体を支える地面から離れ離れになった。かと思うと今度は重力が地球へ引き戻しにきている。

パニックを起こした3人は虚空を踏んで手足をばたつかせて、身に覚えのない腹部の痛みに悶えた。

鳩尾の辺りが陥没して、相撲取りの手型みたいな傷跡が衣服越しに残っている。触ると湿り気が真っ赤な生暖かいインクを指に印をつけた。

正体は掌底の打撲痕だった。

ちびうさは妖魔達が首を切り裂くため踏み込んだタイミングに合わせて腹部に連撃を食らわせ、軸がぶれて空中に投げ出された彼女達の足を刈り取って遥か彼方まで蹴り飛ばしたのだ。

「浅いぞ小童(こわっぱ)

血の匂いを嗅ぎつけたハゲワシの如く背後に気配が現れたちびうさの傷口は完全に塞がり止血していた。

感じ取った茨の女が振り向こうとすると女の真上には鬼の形相で大太刀を上段から自由落下の加速を借りて五体を切り裂かんとする若者があった。

血柱が立ち上る!大量流血の花弁が摩天楼に咲き乱れる!

ちびうさは叩き切った。

ローキック、それに続くレバーへのミドルキックが茨の女を襲ったのだ。

太刀筋は女の右ふくらはぎから左のハムストリングスまで一の字に両断し、血肉が花火のように空中で爆裂して個体液体諸共地上へ崩れ落ちた。

胴体の方は落下するより早いうちに横あいから押し返されて、オフィスビルの外壁に突き刺さった。

遺体の表面は大量の穴が空いていた。煙を吐き出す気孔からは真っ赤な杭がはみ出ている。

途端、生き残った2人の妖魔達は六本木の歓楽街を目指して退避行動をとった。

真夜中でも人気の多い場所を飛んで民間人を盾にしようというのだ。

首都高目黒線を辿る形で飛翔する妖魔共。その真下を走るドライバー達は、フロントガラスに差し込むナトリウム灯の光に、翼を生やした霊長のような異様な影が混じっていることに気が付かない。

やっと頭上を仰いだのは爆竹のような破裂音が車内まで響いた時で、橋梁は音速で飛ぶ2体の接近によって嫌な音を立てながら揺れた。

大地が泣き崩れたように陸橋の揺れは激しくなる。乗用車が耐えかねて転げ周り、血の涙が流れる。

妖魔共は無防備なドライバー達の頭上から必殺の怪光線を撒き散らしたのである。

雨のように降り注ぐレーザービームは遮音壁を叩き、橋桁は火花が舞っい続け、ドライバーだちはパニックを起こして玉突き事故が連発する。

負傷者たちは命からがら道路上に脱出するが、彼らが張ってまわった先にいたのは腹を好かせて火炎地獄にやってきた鬼畜どもだ。

妖魔達は負傷したドライバー達を捕まえると生物の生死を司る生命エネルギー「エナジー」を吸い付くした。

このエナジーは妖魔の食性の根幹をなすものである。補給を行い、ちびうさから受けた傷を治すための治癒力を少しでもつけようとしての行動だった。

しかし、追跡者は妖魔達の残虐行為に怒り狂った。

街灯りで鮮やかな藍色に色付いた空の上で、ちびうさは自分の吐いた血反吐を食らいながらキレ散らかした。

ちびうさに眉間に浮かぶ青筋が破裂してしたたか血を吹いた。

幸いにも色は赤い。けれども吹き出した血はたちまち固まりドブのように黒ずんでいく。

しかし怒髪衝天の言葉通りに逆立つツインテールと265ポンド──120.2kgの肉体は憎悪で強ばって赤紫色に変色した。マムシの毒腺の色を想像して頂ければ彼女が如何に憤っているかわかるだろう。

「その命貰い受ける」

凄まじい打撃の連打が赤い妖魔に襲いかかった。

退くことを許さない音速の連打だ。

拳を振り抜く度に手首の周りにソニックブームが発生し、それは打撃音と重なって自動拳銃さながらの騒音に変わった。

あまりのスピードにちびうさの剛腕は目視不可能で、外野は大気との摩擦熱で引き起こされた陽炎を辿るのが精一杯だった。

音が潰えた時、ちびうさの眼下に転がる死体というのもはばかられる灰色の塊が勝者が誰なのかを決した。

最後の生き残りの妖魔は再び逃げ出した。

自尊心も捨てて逃げ出した。

腹部の殴打で奪われた体力はまだ回復していなかった。彼女の肝臓は破裂していたのだ。戦いを続けられるはずがなかった。

焦りと恐怖が彼女のミスを誘発し、危うく古川に落ちそうになって急浮上して水面から飛沫の柱を打ち上げた。

あの男はダメだ。今の私では勝てない。逃げなくては。仲間の仇を取れないのは情けないが今は生き延びなくては。

紫の妖魔は十番商店街に墜落し、集まってきた野次馬たちの物珍しそうな顔を血まみれにした。

心臓にパンチを叩き込んで胸をカッ捌いて心臓をえぐり出した。心房にかぶりついて生命エネルギーを奪い取った。

ネオンに彩られた街路で起こった惨事に人々は逃げ惑った。

妖魔は容赦なく押さえつけてエネルギーを奪い取った。

呼吸が落ち着いてきた。肝機能も回復している。

痛みが引いて敵への恐れが少しは薄れたが、妖魔にはちびうさとまともに戦うという選択肢は頭になかった。

──悲しきかな、運命は彼女に選ぶことを許さなかった。

妖魔の足元へ伸びる影。

向かってくる男はゲームセンターのやかましい照明に背を照らされて顔は不鮮明だが、逆光の裏側に「殺す」の表情が張り付いていることは間違いなかった。

生きる修羅、ちびうさ。

妖魔の表情が凍りついた刹那、視界から消失した彼を追って振り仰いだ首が吹っ飛んだ。

死角への着地と絶妙なタイミングで頭蓋を撃ち抜ちぬいた右足はハイキックの勢いのままスピンして、流血のカーテンをはためかせてアップライトの構えに残心した。

「…成敗」

「見事だ…戦士よ」

首なしの死体がアーケードを叩き割って鈍い破裂音をたてた。生々しい勝利のゴングに聴衆の歓声が加わった。

大通りの方からは騒ぎを聞き付けたパトが赤い点滅と甲高いサイレンを狂ったように鳴らしながら近づいてきた。

まとわりつく野次馬共を振り払いちびうさは走り去った。騒然とする繁華街は警官隊の到着と戦士の消失にしだいに落ち着きを取り戻していった。

 

 

 

彼が目覚めたのはあくる日の朝だった。

身体は包帯まみれで胸と腕にチューブがごちゃごちゃに刺さっている。

肩のあたりに暖かい風が当たっているので目を落としてみると赤髪の少女が枕元に顔を埋めて眠っていた。

寝息を立てる少女を愛しく思って頭へ手を伸ばすと目覚ました彼女が飛びついてきた。土偶みたいに腫れた目を涙でいっぱいにしている。

少女は怖い目に遭わされて彼のことも心配でとても辛い思いをしたことだろう。

ネフライトはなるのことを抱き締め返した。

「なるちゃん。ごめんよ。怖い思いをさせて」

「いいの、三条院様が無事ならいいの…」

ネフライトはふと思った。自分はどうやって助かったのだろう。

胸に穴を空けられてからの記憶が曖昧だった。

たしか筋骨隆々のピンク色の髪をしていた珍妙な格好の大男が妖魔に食ってかかっていたような。

ネフライトが難しそうな顔で悩んでいると大阪なるが膝の上にもたれかかってきた。

「三条院様…」

緊張がほぐれて安心し、眠りについた彼女をみてネフライトは嬉しそうに微笑んだ。

 

 

病室の入口で大男が引き戸に手をかけるのをやめて踵を返した。

廊下ですれ違おうとした中学生の集団、その中で1番目立つ金髪お団子頭の女が声をかけた。

「面会した人?ネフライトは大丈夫なの?」

「あいつらなら無事さ。まああれや。もう少しの間は邪魔しないでやってくれ」

そう答えると男はピンクのツインテールを揺らしながら病院を後にした。

奇っ怪な大男が誇らしげに微笑んでいたのをたくさんの人が目撃した。

 

 

 

 




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