チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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9話 リアート砂漠でも育つ作物を手に入れよう

リアート村の隣にある勇士キャンプで準備をすませたが、初回の巡回業務は砂漠の地形に慣れることを優先するため、規定ルートを外れた移動はしない旨をヘクター教官は小隊メンバーに通達した。

作物捜索は2回目以降の巡回にするよう暗に言われているが、砂漠の特異な環境を考えれば納得できるので自分も異論はない旨を教官に伝え、リアート村南部に広がるリアート砂漠の巡回を開始した。

 


……砂漠は確かに独特の環境だな。

砂地に足を取られないよう注意する必要があるし、風が吹いた時は砂が目や鼻に入りかねない。

ただ、装備しているマントの効果もあるかもしれないが、雲で太陽が隠れているお陰か想像よりも暑くは無かったのでそこは助かった。

1番心配していたソード兄弟の体調だが、時折飛んでくる砂を鬱陶しそうにしているぐらいで砂漠での巡回は問題無さそうだった。

結構な期間俺と一緒に訓練をしたし、相応に肉体が鍛えあげられたということかもしれない。

毒持ちの砂漠サソリを中心とした、シューベト周辺に出没する魔物よりかなり強い相手でも、1対1ならソード兄弟も問題なく対処できていたから、小隊メンバーの力量面で巡回が妨げられることはないだろう。

ラークさんの実力は言わずもがなだし。

巡回業務の終盤で2度出現した巨大なサソリも1匹目はラークさんが危なげなく撃破し、2匹目も俺が一撃で仕留められたので、警戒を緩めなければ明日以降の作物捜索も大丈夫だろう。

想定していたルートを魔物を排除しながら回り切ったので、1日目の巡回は無事終了となった。

 

勇士キャンプに戻った後、明日以降に俺が回りたい箇所をヘクター教官が確認してきたので、地図を取り出し目星を付けていた場所を小隊メンバーに共有した。

行きたい所は大きく分けて2つあり、1つ目はミッションから確認できた野生化した作物の場所で、位置はリアート村北部に集中している。

2つ目はリアート村用の作物を2種類ほど転生特典で配置した場所で、位置はリアート砂漠内を指定している。

呼び出した作物の異世界適応はオンにしているが、念のため巡回ルートからはあえて見逃しそうな位置にしたので、これまで活用されてなかったのも納得できる配置になっている筈だ。

リアート砂漠には砂漠の主という強力な魔物の巣もあるが、巣の位置からも相当離して作物を配置しているので、砂漠の主に作物回収を妨げられる可能性も低いだろう。

場所の共有後、明日はまず回収が簡単なリアート村北の作物を回収することになった。

その後リアート砂漠方面の規程ルートを1周巡回し、残りの時間でリアート砂漠内の作物を回収するという日程を立て、少々早いが夕食・就寝となった。

ちなみに以前さつまいもを調理してくれたブレイドさんは、野外の料理もとても美味しく作ってくれました。

煮る・焼く・炒めるの簡単なキャンプ料理なのにああも美味いのは不思議だよね。

レシピも教えてもらえたので万々歳である。

 


2日目の巡回兼作物捜索で、初手は予定通りリアート村北部の野生化した作物を回収しに向かった。

いずれも特に障害も無く回収できたが、回収した植物は野草の類など栽培できるか微妙なものが大半だった。

ただ、巡回ルートから死角となる位置に生育できそうなものが1種類だけひっそりと生えていた。

転生特典の検索機能で確認した所、見た目と色は異なっているがおそらく前世でいう「ソルガム」に相当する作物だろう。

最早皆手慣れた手付きでささっとソルガムを回収し、リアート村の村長にソルガムの想定される特徴を伝えつつ引き渡す。

父が追加で出した条件も村長には了承いただいているので、シューベトで栽培する分のサンプルも村用とは別に配置してもらっている。

ヘクター教官が回収班を事前に手配してくださっているので、シューベト用のサンプルは回収班によってレフガトの泉南側の荒地に運ばれ、試験栽培されるだろう。

続けてリアート砂漠にある特典で呼び出した作物を回収に向かう。台車とスコップを忘れずに持って行こう。

 


「砂漠に生える木があるとは……」

「砂丘で隠れていて、ここまで近づかないと分からなかったな……」

「ジーヴ村への道からも外れてますしね」

 

昨日魔物を排除したおかげか、大した敵にも襲われず無事目的地に到着した。

今回転生特典でリアート砂漠に配置した作物はどちらも樹木なので、皆もこれが目的のものだとすぐ分かったようだ。

砂漠にあってもおかしくない木として、俺はヤシの木をリアート砂漠に2種類配置したたのである。

ヤシの種類は「ナツメヤシ」と「ココヤシ」で、収量重視でかつ運びやすいよう背が低めのタイプを選択している。

ナツメヤシはデーツという栄誉豊富な実が得られ、ココヤシは有名なココナッツが取れる。

ココナッツは胚乳部分が食べられるが、飲み水にも欠くリアート村なら実の中に入っているココナッツウォーターの方が重要かもしれないな。

ココヤシは前世では熱帯で雨量の多い地域で生育するもので、リアート砂漠に配置できる種類があるか心配していたが、それでも条件を満たす品種があって助かった。

呼び出せたココヤシは品種改良されたものか、もしかしたら別の異世界産なのかもしれないね。

ブレイドさんは可食部が直ぐに分かったらしく、ヘクター教官に許可を取った上でデーツとココナッツを食べられるかを試食し、問題ないことを確認した。

ココナッツには水が入っていることに皆驚愕してたなぁ。

 

落ち着いた所でリアート村へヤシの木を運び込む作業に移る。

背がかなり低い品種を選んでいるので比較的若い個体は台車で運べるため、スコップで木の周りの砂を除いた後にヤシの木を引っこ抜いて台車に乗せ、リアート村とヤシの木群を往復して村にヤシの木を運び込む。

リアート村の人達も砂漠に樹木があることに驚愕していたが、こちらの声掛けにより何とか立ち直り、ヤシの木の植え替え作業に入っていった。

 

一部の若木はリアート砂漠にも残しておき、次は比較的背が高い成熟した木を運ぶ必要があるのだが……。

 

「流石に台車には乗りませんな……」

 

ヘクター教官が困った様子で呟く。

他のメンバーにも聞こえたようで、俺以外の皆はどうしようか、という雰囲気で頷いている。

そう、いかに背が低い品種でも勇士キャンプから持ってきた台車に成長したヤシの木を乗せるのは大きさ・重量共に無理があった。

 

台車に乗らないのはもうどうしようもないので、これまでより手間はかかるが手作業で直接運ぶことを俺は提案した。

 

「手作業……?一体どうされるおつもりですか?」

 

とラークさんが聞いてくるので、こう回答した。

掘り出したヤシの木を俺が直接手で持っていくと。

 


「とんでもない力技で解決されましたな」

 

と苦笑いしているヘクター教官。

転生特典と訓練で得た腕力なら実際に運べてしまうのでこれが手っ取り早い。

ただ両手を使ってヤシの木を運ぶため、魔物の警戒を皆に任せきりにしてしまうのが心苦しいけどね。

俺の負担を軽くできないかとラークさんが運搬役の交代を一度申し出てくれたのだが。

 

「お役に立てず申し訳ありません……」

 

ラークさんは大きく育ったヤシの木を持ち上げることができなかったので、運搬役は俺が固定で務めることになった。

 

落ち込んでしまったラークさんを小隊の皆で励ましつつも、俺たちは成長したヤシの木をリアート村に届けることに成功したのである。

見た目は子どもの俺が大きな木を素手で運んできたのを見て村の人達はまたも唖然としていたが、再度声掛けして正気に戻し、ヤシの木の栽培予定地に案内してもらった。

指定された場所に皆で穴を掘り、ヤシの木の植え替えを完了させた。

 

そろそろ日が暮れるので今日の業務はここまでとなり、明日はリアート砂漠の巡回で魔物を排除した後、残りの時間を全てヤシの木の運搬に回す予定とし、一旦解散となった。

といっても勇士キャンプにて寝泊まりするだけだけどね。

 

ソード・ブレイド兄弟は夕食の準備に向かい、俺とヘクター教官とラークさんはリアート村の村長に成果を報告し、発見したヤシの木の想定される特徴を伝えた。

村長もココナッツから飲み水が取れることに驚いていたなぁ。

今回持ってきた成長したヤシの木はココヤシの方なので、ココナッツを1つ取って短剣で手早く穴を空け、村長に飲んでみるよう促した。

 

「ああ、このような神のお恵みがあったのですな……モレル神に感謝せねば……」

 

ココナッツウォーターを飲んだ村長は涙ぐんでいたので、ヤシの木はいらない子扱いにはならなさそうである。

こんなの飲めないと言われてしまったらどうしようもなかったからなぁ。

ラークさんは「神より先に持ってきた人間に感謝するのが先ではないのか」と言わんばかりの厳しい目で村長を見ていてヘクター教官に宥められていたけどね。

明日も成長したヤシの木を運び込むので、あらかじめ植え替え用の穴を掘っておいてほしい旨を村長に伝え、俺達は全員勇士キャンプへ戻って夕食を取り、あとは休息に務めた。

 


遠征3日目はリアート砂漠の巡回ルートから魔物を排除後、直ぐヤシの木の運搬に移った。

多少サソリの魔物が出たがサクサク撃破し、成長したヤシの木をリアート村へどんどん運び込んでいく。

台車で運ぶよりはどうしてもスピードが落ちるので3日目だけでは作業は終わらず、4日目にもつれ込んだが何とか成長したヤシの木の植え替えも完了した。

リアート村の人達も食料と飲み水の当てが出来、大喜びしていたので何よりである。

 

流石に皆消耗していたので村か勇士キャンプで各々数時間ほど休憩を取り、シューベトへの帰路に就くことになった。

俺は幾らか分けてもらったデーツとココナッツを味わいながら少し村を歩いている。

やっぱりリアート村は元々泉の加護が前提にあった村だから、泉が枯れてしまった今、暮らすには厳しい環境なんだよな。

取れる資源もリアート鉱山の鉄鉱石と貴金属ぐらいだし。

まあソルガムやヤシの木の生育がこの地で上手くいけば、

そんなに無いとは思うが、推定神殿長ないし古代神達の計画がポシャってデルカル大陸から全ての泉の加護が失われる時代が来たとしても、何とか食い繋ぐぐらいはできる可能性を残せるだろう。

ただ、水分についてはジーヴ村共々ココナッツ以外の作物を呼び出す等、もう少しテコ入れしてもいいかもなぁ。

まあ次やろうとしている真水を作る方法を確立してからかな、などと考えていると、後ろから視線を感じたのでゆっくり振り返る。

 

俺より年下であろう痩せこけた少年がこちらを、というより俺の持っているデーツとココナッツを見ていた。

俺は彼のために大したことはできないが、今欲しがっているだろうものを渡すことはできる。

少年に近づき、デーツとココナッツを示してこれが欲しいか尋ねると、逡巡してから頷いたので、デーツを幾らかと手持ちのココナッツを1つ手渡した。

ただ彼は「弟の分も欲しい」と言ってきたので、さっき渡したのと同じ数のデーツと手元にあった最後のココナッツを渡してあげた。

少年は小さな声だが「ありがとう」と言ってくれたので、俺も「どういたしまして」と返事をし、軽く彼の頭を撫でてその場から立ち去った。

 

やっぱり飢えはきついんだな……。

リアート村の現状も合わせ、幼少期に一切不自由なく育ててもらえた自分があまりにも恵まれていることをつくづく実感する。

デルカル大陸の皆が今より多少はマシな明日を想えるようこれからも動くつもりだが、現在の大陸状況・世界情勢では一足飛びとはいかない。

コツコツ出来ることをやっていくしかないなと軽く息を吐きつつも、そろそろ休憩時間も終わる頃なのを思い出したので、残りのデーツを頬張りながら帰りの荷造りをしに勇士キャンプへ戻ることにした。

通りすがった少年と彼の弟に幸運があることを願いつつ……。




今更ですが、ソード・ブレイド兄弟は本作のオリキャラです。
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