チート転生アドリアン君 作:ブロンズ探検家
幸いなことに、炎を纏う巨大ゴーレムとの戦闘は終始俺が優勢に進めていた。
巨大ゴーレムは見た目通り膂力と耐久力に優れているが、動きはそこまで速くなく、隙も十分見出せる。
ゴーレムが放つ炎と拳のどちらも余裕を持って回避できるし、拳なら火傷を考慮しなければ力任せに弾き返せるだろうと感覚的に分かる。
訓練の積み重ねに加えてシューベターの助けもあり、ゴーレムの堅固な身体も易々と貫ける。
総じて俺にとって与し易い相手だったようだ。
だが、相手の攻撃で所々地面が熱されているので、足場にできる箇所が少しずつ狭くなっている。
時間を掛けるのは余り得策ではない。
一気に決めるべきという己の直感に従い、これまで秘密基地以外では1度も使ってなかった異世界の剣術を適用し、更に「異界法則の重複」も利用して決着を付けに掛かる。
巨大ゴーレムも俺が何かすると察知したらしく、俺の攻撃でかなり傷ついた両腕を構えて防御体制を取っているが恐らく無駄だ。
「最小限の効率で剣撃の威力を無駄なく伝える異世界技術」と「斬撃を飛ばす異世界技術」を同時に使用し、異界法則の重複現象を発動させた斬撃を巨大ゴーレムに飛ばす。
巨大ゴーレムの両腕と胴体は薄紙のように切断され、ゴーレムはそのまま力を失ったようにガラガラと全身が崩れ落ち、心臓のように脈動しているゴーレムの核であろう物体が最後に残された。
あ、斬撃が溶岩エリアの奥に飛んでいった。
洞窟の奥地を揺らしちゃったみたいだけど大丈夫かな……。
ゴーレムの核を回収しつつ何となくミッションを見てみると、「ラバロードを撃破しよう(初回)」というミッションがクリア済みとなり、大量の転生特典用ポイントを獲得していた。
ふむ、あの巨大ゴーレムはラバロードって名前だったのか。
こうしてミッションに表示されたってことは、ラバロードが洞窟のボス格という見立てはやっぱり合っていたんだな。
また、ミッションリストを眺めていると「ラバロードを撃破しよう(2回目以降)」というミッションが追加されている。
貰えるポイントは初回のミッションと比べてガクッと落ちるみたいだが、ミッション内に「♾️」のアイコンが付いているので、これは何度でもポイントが獲得できるミッションということなのだろう。
周回クエストだなぁと思いつつも、同行してくれている2人に無事であることを伝えるため、俺は熱された足場を避けつつ2人が弾き飛ばされた方に向かった。
道を塞ぐ大岩越しにサーチさんとベリータさんと会話し、こちらが無事であることを2人に伝えることができた。
2人も手足を軽く擦った程度で大きな負傷はないそうなのでホッとした。
「アドリアン様、ご無事で本当に良かったです……!」
「すみません、肝心な場面でお役に立てませんでした……」
と2人が言ってくるが、今回の現象は恐らく巨大ゴーレムが自然発生するタイミングに偶然居合わせてしまったことで起きたものだ。
流石にアレを事前に警告するのは無理があるだろう。
サーチさんも俺の予想を肯定していたからそう的外れではないと思う。
落ち着いた所でそろそろ合流をしたいが、赤熱した大岩が邪魔である。
ただ、ラバロードを撃破したことで道を塞ぐ大岩もゆっくりと冷えてきているので、岩が冷え切ったら俺が岩を持ち上げて退かす旨を2人に伝え、了承してもらった。
「え?……アドリアン様が持ち上げる?あたしの身長の倍はあるこの大岩を?」
「ああ、伝承に伝えられる超人の方々に伍する力をアドリアン様はお持ちだからな。これくらいの岩なら問題なく動かせるだろう」
「……アドリアン様って本当に規格外な方なのね」
ベリータさんは困惑しているみたいだがサーチさんが説明してるみたいだし多分大丈夫だろう。
……ん?何かがマグマの川を流れてきているな?
方向からして溶岩エリアの奥、さっき斬撃を飛ばしてしまった方から来たみたいだけど……。
足場に気をつけつつマグマの川に近づいて調べてみると、赤色と黒色が神秘的に混ざった大きな石が流れてきている。
石はそのまま俺の立っている所に流れてきたので、水の外套を取り出しマグマに気をつけつつそっと石を拾い上げる。
外套越しに腕に抱えた石は色も美しいが形も綺麗な楕円形で、マグマを流れてきたはずなのに不思議とそこまで熱くない。
もしかしたら凄い貴重品かもしれないし、違っても良い記念品になるだろうと俺はそのまま外套越しに石を抱えて元いた場所に戻ろうとした。
しかし戻る道中、抱えた石に異変が現れた。
具体的には石の上側にヒビが入っている。
……力加減を間違えた?いやそんな筈はないと若干混乱している間にもヒビが石全体に広がっていき、同時に石の中で何かが動いているのを感じ取った。
ここまで変化が生じてやっと俺も理解した。
これ石じゃない。卵だ。
卵の殻を破り、俺の腕の中で今産まれてきた生き物は、赤い鱗に覆われた表皮、爬虫類のような黄色い瞳、体や口から時折漏れる火、尖った角と牙と爪、小さな翼と尾、そんな特徴を持っていた。
端的に言うと、ドラゴンの子どもそのものだった。
幼竜は自分の体から出る火で暑そうにしていたので水の外套で包んであげると火は消火され、その子も気持ちよさそうにしている。
多分ミッションに何か出てると思ったので検索すると、案の定「ドラゴンを仲間にしよう」という新規ミッションが追加されていた。
ドラゴンを仲間にできるのか、リアルでドラ⚪︎エモンスターズやモン⚪︎ンストーリーズやモンスターフ⚪︎ームできるんだ、とちょっと高揚しつつ、転生特典からドラゴンを仲間にできるであろう技能を獲得する。
が、問題が発生した。さっき思い浮かべた3つのゲームをベースにしたドラゴンを育てられるだろう異世界技能を貰ったばかりのラバロード撃破報酬ポイントを半分ぐらい削りながらそれぞれ取得して、3つの異世界技能を活用しながら順番に小竜に仲間になってくれるよう頼んでみたが、小竜はこちらを見つめてはいるもののどうもピンときていないようだ。
もしかしたら、小竜が既に産まれてしまってから技能を獲得しているせいで、各種技能を発揮するタイミングを逸しているのかもしれない。
何処となく困惑気味の小竜を水の外套越しに優しく手で支えながらもどうすれば良いかを思考する。
産まれた後の生き物と絆を結ぶためのもの……そうだ、あれがあった。
某8人の旅人が織りなすRPGの2作目、狩人がパートナーと絆を結ぶ際に使用した特別な干し肉を特典で取得し、小竜に差し出す。
小竜は素直に干し肉を口にし……無事にドラゴンを仲間にするミッションはクリアされた。
同時に、この小竜と強い結びつきが産まれたのを実感する。
どうやらお互いの心が結ばれ、考えていることを互いに伝え合えるようになっているみたいだ。
多分干し肉だけでなく、さっき獲得した異世界技能も何らかの影響を与えているのかもしれないな。
美味しそうに干し肉を頬張っている小さな赤い竜を撫でながらこれから一緒に来てくれるかを言葉と心の両方で尋ねると、今度は了承してくれた。
応じてくれたからには、次はこの子の名前を考えないと。
できればシンプルなものがいい。特徴的なのは体から溢れる程の炎……、よし。
太陽で起こる最も強力な熱を出す現象の名。これならピッタリだ。
「君の名前は『フレア』にしよう」
心の中でも問題ないか聞いてみてると、赤い幼竜『フレア』は嬉しそうに頷いている。
気に入ってくれたのなら何よりだ。
通路を塞ぐ大岩を見ると、あと少しで熱が収まりそうだ。
岩を退けたら2人にもこの子のことを説明しないと。
おっと、フレアのステータスが閲覧できるようになっている。
この子はオスで、パッと見では素早さと賢さが特に秀でているみたいだね。
育てる時の参考にしよう。
あと、種族名もステータス欄に書いてあるな。
やっぱりレッドドラゴンやファイアドラゴンとかかな、なんて思いながら欄内を見てみると、『マグリックドラゴン』と記載されていた。
マグリックドラゴン……マグリックドラゴン!?
アンシエントドラゴンからシューベトを守ってくれたあの竜の神官とフレアは同じ種族なの!?
じゃあ、あの竜の出身はこのカルダリア洞窟の可能性もあり得るってことか……。
一方的かもしれないけど、不思議な縁を感じてしまったなぁ。
「あら、愛嬌があって可愛い子ね」
「アドリアン様、肩に乗せたその生き物はサラマンダー、ではありませんな。ま、まさか……」
冷え切った大岩を大過なく退けて2人と合流する。
ちなみにフレアはすぐに火を消火できるよう水の外套に包んで肩に乗せている。
探検家のサーチさんは概ね察しているみたいだが、ドラゴンの卵が孵る場面に居合わせた結果、フレアに懐かれたので連れて帰って育てる旨を説明した。
流石に転生特典関連は話せないからね。
ん、フレア、ベリータさんがなんて言ったか気になるの?こういう意味だけど……。
『可愛いより、強い、かっこいい方がいい』って?
それは今後の成長と特訓次第かなぁ。
というかこの子かなり賢いな。
心を繋げられるから言葉の意味を割と簡単に伝えられるのもあるけどさ。
ラバロードに襲われるアクシデントに加え、全く予想してなかったものを拾ってしまったことで当初の目的を失念しかけたが、元々集めていたラバラックの素材自体はちゃんと回収できている。
武器職人のザルエルさんに素材を届けに行く必要があるので追加のトラブルが起きる前にさっさと撤収することにした。
ちなみに帰りの道中、ベリータさんがフレアを撫でてみたいと希望し、フレアに問題ないか尋ねてみたらOKが出たので、火に気をつけるようベリータさんに伝えた上でフレアに触らせてあげた。
興味深そうに鱗の生えた背を撫でるベリータさんを見て、あまり物怖じしない人なんだろうなと俺は思った。
ザルエルさんの工房にお邪魔した所、ザルエルさんは既に試作品作成に取り組み中で余り手が離せないようだったので、素材を渡した後は試作品の完成予定だけ伺い、1週間後に再度ザルエルさんの工房を訪ねることになった。
真水作りの蒸留装置に使う鍋2つと蓋は町の職人に依頼して既に完成しているため、
ジーヴ村への遠征は早くても1週間以上後になる、ということだ。
素直に氷用の鋸を作ってもらった方が良かったと思わないでもないが、素材提供のミッション達成で沢山ポイントが貰えたのでよしとしよう。
素材を引き渡した後はシューベト東門に戻り、サーチさんとベリータさんにカルダリア洞窟探索に協力してくれたことについてお礼を言い、1週間以上後になるがジーヴ村への出張と氷の洞窟探索時も力を借りる旨を伝えて解散となった。
さて、俺はこれから家に帰って報告に行くんだけど、フレアのことはどう説明したものか。
俺は肩に乗っているフレアを水の外套越しに撫でつつ考えてみたが、妙案はすぐには出てこない。
サーチさん達経由で話は回るだろうから誤魔化すのは無理だし、素直にウチで育てたいと父上と母上にお願いしてみようか。
ダメって言われたら秘密基地内だけで育てるしかないかな……。
幸運「以前ドラゴンに乗りたいって思ってたから気を利かせてみました」