チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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14話 ジーヴ村へ出張しよう

フレアの体から炎が漏れ出さないようになり、俺はいつも通りの日常にフレアの世話と訓練と教育を加えつつ老武器職人ザルエルさんの試作品完成の日を待ち、完成日となる今日を迎えた。

 

そんな訳でザルエルさんの工房へお邪魔した所、物は無事完成していた。

出来上がった片刃の鋸は刃の部分は注文通り熱を帯びており、特徴的な大振りの鞘が付属している。

確かに氷を切り出しやすそうではあるな。

使い続けると刃の熱が冷えてしまうが、ラバラック素材の大半を投入した鞘に刃を納めることで熱を充填できるとのこと。

こういう形で熱を持続させるとは、と驚いてしまったがザルエルさん本人は熱の充填が可能な期間がおよそ10年に限られ半永久とはいかなかった点に不満が残ったそうだ。

無茶振りしたこっちとしてはできる範囲内で十分すぎる仕事をしてくれたからそこまで気にしなくてもいいんだけどね。

……ただ、さすがに素材確保の手間が大きいから、次は普通の氷切り出し用鋸を注文しよう。

 

鋸の代金を支払い工房から出ようとした所、ザルエルさんは俺が腰に佩く名剣シューベターを見せてほしいといってきたので取り扱いに気をつけるよう注意した上で貸してあげた。

食い入るようにシューベターを観察するザルエルさんになぜそこまでシューベターが気になるのか聞いてみると、なんとシューベターはザルエルさんの先代となる鍛治職人によって鍛造されたものらしい。

今は失われた技術で作られているシューベターだが、観察しているとほんのり作り方が分かる気がすると興奮気味にザルエルさんは語っていたなぁ。

ただ、ザルエルさんが言うには、現代の技術を使って不純物を除いて結晶構造を整えるとシューベターは更に強力な武器にできるそうだ。

非常に珍しい金属だが、『レアメタル』を使って最新技術で精錬すればもっとシューベターを強化できるので、もしレアメタルを見つけたら自分にシューベターを精錬させてほしいとザルエルさんはお願いしてくるのだった。

 

ちらっとミッションリストを見ると、予想通りザルエルさんの依頼がまた追加されている。

まあ先の無茶振りもちゃんと対応してくれたし、ザルエルさんは確かに技術面では信を置ける人だと思うので、レアメタルを見つけたら持ってくることを約束してシューベターを返してもらい、今度こそ工房を後にした。

 

シューベト町に戻って行商人の皆さんにレアメタルについて相談してみた所、鉱山で極稀に採掘できる金属ということで、鉱石や貴金属を扱う行商人に前金を多めに渡してレアメタルを発見したら俺に回してもらえるようお願いし、快く了承してもらえた。

 

さて、ちょっと脱線したけどこれでジーヴ村出張に持って行く物は揃った。

リーガル父上とエステル母上に報告し、出張の予定を調整しよう。

ジーヴ村はリアート村より遠い上それなりの期間滞在することになるため、サーチさん・ベリータさん・お世話になるジーヴ村在住の地主さんの準備もあるだろうからすぐ出発とはいかないはずだ。

俺も今からしっかり荷造りしておかないとね。

俺が内訳を確認し損ねて購入したサイズ違いの防寒着ランブリオも、サーチさんとベリータさんに貸し出す分に回せるので結果オーライである。ジーヴ村に3着全部持って行くことにしよう。

 

そういえば、ジーヴ村は埠頭が近いからそこからならきっと海や船も見れるはず。

どちらもこの世界ではまだ一度も見たことがないから、出来れば海水確保以外でも埠頭を散策してみたい。

ちょっとワクワクしてきたな。

 


ザルエルさんの工房を最後に訪れてから5日経ち、とうとうジーヴ村出張の日となった。

この5日間も秘密基地の機能を使ってフレアの育成に注力していたから、実際の体感時間は5日より長いんだけどね。

同行メンバーはカルダリア洞窟探索時と同じく、探検家のサーチさんと傭兵のベリータさんだ。

また、今回ヘクター教官やソード兄弟は直接同行しないが、父上の計らいで俺が出張している間はジーヴ村方面の巡回担当に回るため、教官達とはジーヴ村でも顔を合わせることがあるかもしれない。

 

同行する2人と俺はしばらくジーヴ村で過ごす為、皆相応の荷物になっているのが確認できる。

まあ、1番荷物を抱えているのが子どもの俺なのは絵面がちょっと変だけどね。

シューベターを始めとする武装群・洞窟探索用の基本装備・3人分の防寒装備・氷切り出し用のザルエルさん製ラバラック鋸・真水作り用の巨大な鍋2つと専用蓋に加え、孤児院の子ども達への手土産として用意したこの世界の勉強用テキストと童話本多数の他、準備期間中に自作したけん玉・木とんぼ・木製コマ等の玩具群を袋等に詰めて背負い、序でにドラゴンの幼体を肩に乗せている。

肩にいるフレアは日にちを経るにつれ、身長・体重ともに確実に成長しているので、もう少し育ったら手で抱えるか自分でついて来てもらう形になるだろう。

 

ちなみにおもちゃについてはこの世界でも再現できそうな物の作成技術を転生特典で獲得して作ってみたが、なかなか悪くない出来だと思う。

 

大荷物を抱えている俺を見て、サーチさんとベリータさんが苦笑しつつも少し荷物を引き受ける旨を申し出てくれたので、貸し出し予定の防寒装備は2人に持ってもらうことにする。

 

それでは父上と母上を始めとする人達に挨拶を済ませ、ジーヴ村に出発するとしよう。

 


ジーヴ村への移動は順調そのもので、レフガトの泉南部の荒地と大陸中央に広がるデルカル峡谷を渡す大橋を大過なく通過し、ジーヴ村へ到着した。

ついでではあるが、転生特典で呼び出し移植されたヤシの木が移動途中の荒地でも無事に育ってるのを確認できたので何よりである。

 

ジーヴ村は外部から来た様々な背景を持つ人が多く、やや雑然としていながらも割と静かな村という印象だ。

俺達のことをちらとは見ても感心を向け続ける人が少なく、あまり周りに興味を持たない人が多い所なのかもしれない。

まあ先ずは村の北側にある地主さんの家に向かおう。

 


ジーヴ村の地主さんとの挨拶は無事に終わり、地主さんの所有する土地内にある小さな空き家を2件宿代わりに貸していただけた。

地主さんが高齢で体調が良くないというのは確かだが、使用人さんの看病で回復傾向にあるのは幸いだった。

ただ、使用人の方は地主さんの看病に回りがちで、事前に話を伺った通り孤児院の人手が不足しているため、できる範囲内で孤児達の相手をしてほしいとお願いされたので当然了承している。

 

体調が優れない方と長話するのは申し訳ないので早めに地主さんのお宅から退出し、貸していただいた空き家に向かう。

2件のうち1件はベリータさんが、もう1件を俺とサーチさんが使うよう割り振りを決めて一旦荷物を家に置き、借りた鍵を掛けて外に出る。

 

そのまま3人で予定を話し合おうとしたが、周囲を見ると王宮勇士と思しき赤毛の人が台車から荷物を下ろしているのが目に入った。

どうやらバベリア王宮の支援物資を地主さんに届けに来たようだ。

だが使用人の方が手伝いに回れず、1人で荷下ろしをしているので大変そうである。

サーチさん達に了承をいただき、俺達が荷下ろしの手伝いをする旨を勇士の方に伝えた。

王宮勇士さんは始め俺達が余り見慣れない人物であるため不思議がっていたが、自分がアドリアンと名乗ると、「ああ!最近もの凄く活躍されているシューベト領主の御子息か!」と俺が誰か察したようだ。

というか、シューベトはジーヴ村から大分距離が離れているのに、領主はともかく領主の息子の名前なんてよくご存知ですね。

 

「何をおっしゃるんですか。貴方が発見してジーヴ村に提供していただけた作物で、この村の餓死者は一気に減ったんですよ。国王陛下が直接差配されている物資輸送隊に所属する俺が、貴方のことを知らない訳がないでしょう。……ドラゴンを飼うほどの剛の者とは存じ上げませんでしたが」

 

と、デルカル大陸への物資輸送隊所属・上級勇士のトランさんはフレアを見てちょっと戦慄しつつも話してくれた。

自分のやっていることは無駄じゃなかったと感慨深くなったが今は彼の手伝いだ。

荷物に割れ物がないことをトランさんに確認し、皆で荷下ろしを手伝っていく。

 

「おお、アドリアン様が上古の英雄並みに力があるというのは本当だったんだなぁ」

と、俺が運ぶ大量の荷物にトランさんは驚いていたが、無事支援物資を所定の配置場所に持っていけた。

 

軽い休憩がてらトランさんと雑談し、その中で俺達が真水を作る方法を確立しにきた旨を話すと

トランさんは仰天されていたなぁ。

……その直後に今度は俺が仰天する話を聞かされたけどね。

 

「俺の上司から聞いた内容なんですが、デルカル大陸全体に貢献した貴方を国王陛下がマニル島のバベリア王宮に招いて、貴方の望む褒賞を渡したいって話が出ているんですよ」

 

えっ、そんなことになってるの?サーチさんとベリータさんも目を剥いているよ。

 

「いやいや、外部からの支援以外で荒地と砂漠が広がるデルカル大陸の飢えを減らすって、これまで誰にもできなかった偉業ですからね。まあ、他に全く理由がないかと言うとそうでもないですが」

 

トランさんから詳しく話を伺うと、神族を尊敬しているバベリア国王陛下は泉の戦争・魔女狩り発令・バベリア大陸で殺害・捕縛され続ける神族達、と凶報続きの状況を打開すべく娘のソフィア姫と行動しようとするも、教皇セルビス氏に宗教乱逆の罪を被せられてバベリア大陸西海域の孤島にソフィア姫を島流しにされてしまったという。

更なる凶事に見舞われたバベリア国王は非常に気落ちされてしまったが、そんな時に届いたデルカル大陸での餓死者減少の報告は、国王陛下にとって久々の朗報で殊の外お喜びになられ、

ソフィア姫とさほど変わらない年齢でありながら見事に成果を出した俺に国王陛下は興味を抱かれ、一度直接会ってみたいとお考えになられたそうだ。

 

「恐らく近日中に、お父君のリーガル様当てに貴方を王宮へ招待したいというお話が回る筈です。真水作りの件も成功すれば、更なる褒賞授与となってもおかしくないと俺は思いますよ。飢えの減少に並ぶ偉業ですからね」

 

うわぁ、想定よりずっと大事になっているぞ。

でも父上はセルビス氏に好意的だから、セルビス氏と対立している国王陛下のお誘いを断る可能性もあるか。

父上の判断次第になるが、どう転んでも対応できるよう注意しておこう。

 

「俺には水を作る方法なんて全然分からないですが、アドリアン様がデルカル大陸の希望であるのは分かります。頑張ってくださいね!」

 

トランさんは去り際に明るく挨拶をして手を振り、空の台車を引っ張って去っていった。

 

 

……衝撃的な話を聞いてしまったが仕切り直しだ。

改めて3人で今後の予定を話し合おう。

まず、今日はもう夕方に近い時間なので、孤児院の方達に挨拶した後は顔を覚えてもらうのを兼ねて時間の許す限り孤児達の相手をして終わりにする。

そして明日は終日孤児院のサポート、明後日は真水作りのために氷の洞窟を探索、3日後はまた孤児院のサポートと1日置きに真水作りに関連した活動を進めるよう提案し、2人に了承してもらえた。

それじゃあ孤児院の皆に挨拶に行こう。

 

 


多少ばたついたが一応孤児院の皆と顔合わせができた。

孤児を見ている地主さんの使用人と会ったが、地主さんの看病で孤児院を空けることが多く、人手は歓迎するとのことだった。

孤児の皆には俺達のことは既に話していると使用人さんは伝えると、彼はそのまま慌ただしく地主さんの看病に行ってしまった。

しょうがないのでこのまま孤児の皆が集まっている部屋を訪ねて皆と挨拶をしている。

大体10数人ぐらいで、5〜14歳ぐらいの年齢幅といった所かな。

 

挨拶が終わった後、1番がたいがいい男の子が「あんた強いんだろ!俺に勝ってみろ!」と突撃してきたので、周囲の家具と男の子を傷付けぬよう気をつけつつ、突進の勢いを利用して男の子を優しく地面に転がす。

何回か立ち上がって突進してくるが同様にふわっと受け流すと、「すごいな!それどうやるんだ?」と目をキラキラさせながら尋ねてきたので機会があれば説明してあげる旨を伝える。

他の子達も「おー!」という感じで拍手している。

上手いこと尊敬を勝ち取れたようだ。

 

その後、俺達はお土産に持ってきた学習用の本や童話本・おもちゃを部屋に配置しているが、大体の子は俺の肩に乗っているマグリックドラゴン・フレアに目を奪われている。

案の定フレアに触ってよいか子ども達に聞かれたので本竜に尋ねた所、了承の意が返ってくる。

子ども達や、悪人以外で本気で困っている人には親切にするよう情操教育をしてきたのが活きているかな?

フレアは自分に触りたがる人が多いのを不思議がっているけどね。

まあ君はとても珍しい存在だから今後も同じ事があると思うので慣れてほしい。

1人ずつ順番にかつ優しく触るよう注意し、子ども達にフレアを触らせてあげるのだった。

 

ん、童話を読んでほしい?いいよいいよ。

フレアも興味あるみたいだしこの辺にクッションを敷いて読み聞かせてあげよう。

それと、そっちのお兄さん(サーチさん)お姉さん(ベリータさん)とも良かったら一緒に遊んであげてね。

 

うん、ジーヴ村でも多分やっていけそうだ。




物資輸送隊のトランさんは本作のオリキャラです。
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