チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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15話 孤児院の子達と日常を過ごそう

ジーヴ村での1日目の朝を迎えた。今日は孤児院の皆と過ごす日となる。

フレア・サーチさんと挨拶を交わし、家の外に出る。

程なくしてベリータさんとも合流できたので、早速3人+1体で孤児院に向かうとしよう。

 


孤児院を訪ねると、まだ大半の子ども達は眠っていたが、俺と同じぐらいの年齢の女の子が朝食の準備をしていたのでお手伝いを申し出ると、支援物資の食材を切ってほしいとお願いされたので了承する。

子ども達が食べることを考慮して野菜等をなるべく細かく切っていき、料理番の女の子に切った食材を引き渡していく。

女の子は少量の水で茹でたキノア(地主さんの土地産)と切った食材を直ぐに炒め始めており、料理にかなり手慣れているのが手つきから窺える。

多分家主さんの使用人が皆の食事を作れない時は、いつもこの子が代わりに作っていたんだろうな。

後はもう大丈夫ということで、サーチさん達や起きてきた年長の子ども達と協力して皆の分のお皿を出して並べていく。

そうこうしているうちに地主さんの看病がひと段落した使用人さんも合流し、料理番の女の子にお礼を言いつつ皆で朝食となった。

質素ながらもこうして皆で和気藹々と食べる食事もいいなと思いつつ、俺はキノアの炒め物を頬張るのだった。

 


朝食を食べた後は、体を動かしたい子ども達をベリータさんが担当しつつ、俺は勉強したい子ども達とフレアに文字や計算を教えている。

フレアはもう文法の組み立てとかも達者なので、そろそろ明確に言語で会話することが出来るだろう。

しかもフレア、計算を間違えてる子の式でミスしている箇所を尻尾で示しているよ。

ああ、ミスしてた子も気づいてフレアにお礼を言って、フレアも頷いてる。

それにしても、この子頭良すぎないか?

さすがに気になったのでフレアのステータスを確認すると、賢さを示すパラメータが飛び抜けて成長しており、次いで素早さ・器用さが高まっているのが確認できる。

秘密基地での訓練はフレアが好む特訓の比重が大きいとはいえ、それ以外の特訓もきちんとこなしてもらっているのでその他のステータスも決して低い訳ではない。

 

素早さは特に好んでいた飛行訓練で、器用さは毎日欠かさずやっている炎熱エネルギー制御で上がっているだろうから納得できるんだけど、賢さがここまで伸びているのは一体なぜなんだろう?

 

……あ、休憩中や普段一緒にいる時にやっていた言葉のレクチャーや情操教育が「勉強」というトレーニング扱いになっているのか!

そこに俺が取得した異世界技能による成長ブーストとフレアに取って伸びやすい能力であることが重なって賢さが突出したってことなんだな……。

まあフレア自身も楽しんでいるし負担になってないなら悪いことではない。

考察を切り上げて子ども達に勉強を教えることに集中しようか。

 

ちなみにサーチさんは例のがたいがいい男の子を始めとする年長組の子達が釣りに興味を持っているということで、地主さんから許可を取った上で、地主さんの資材倉庫から材料を拝借して彼らに釣竿の作り方をレクチャーしている。

サーチさんは教えを受けている子達以外の釣竿も作っているようなので、どうも午後は埠頭に行って釣りをする展開になりそうだね。

ジーヴ村出発前に望んでいた通り、真水作り以外で埠頭へ行けそうなので嬉しい限りだ。

 


昼食のさつまいも料理を頂いた後、俺とフレアとサーチさん、そして釣りに興味がある孤児達は釣竿と釣果を入れるための水桶を持って埠頭に来ている。

また、ベリータさんは釣りに興味が無いということで、孤児院で使用人さんの補佐を受け持っていただいている。

おお、大きな帆船が出ていく。船体がやや沈んでいるから貿易船かもしれない。

それに海がとても澄み切っている。

前世のような水質汚染が全くないってことなんだろうな。

おっと今は釣りをする場所の確保だ。

船が停泊する場所で釣りをするのは迷惑なので、皆で船着場からやや離れた所へ移動した後で釣りを始めることになった。

 

サーチさんは釣りに興味がある年少組に釣りの仕方を教えており、年長の孤児達は事前にサーチさんに教わっていたのか中々様になった竿捌きで釣りを始めている。

俺も皆から少し離れた所で釣り糸を垂らすことにした。

 

風が気持ちよく、波も穏やかだ。

俺はのんびりと糸を垂らしながら、釣りや魚等フレアが興味を持ったものについてこの子と心を通じ合わせて伝えている。

フレアはこの場所で釣れる魚の味が気になっているみたいだ。

うん、そろそろ君の食事のタイミングだし魚が釣れたら食べてみるといいんじゃないかな。

もしボウズになったらごめんね。

 

心の中で雑談をしていると、誰かが近づいてくる。

釣竿を一旦固定し、立ち上がってそのまま後ろを振り返ると、俺がいつか会ってみたいと思っていた存在がそこにいた。

 

白い髪、長い耳、暗い色合いの肌、右頬に浮かぶ植物の蔓に似た赤い紋様が特徴的な成人男性が、薄緑色の瞳と表情に穏やかな気配を湛えながら歩み寄ってきている。

こうして目の当たりにするのは初めてだが、神族の方だ。

彼の体から魔力を感じ取れることからもう間違いない。

 

「初めまして。突然すみません。シューベト領主の息子さんとお見受けしますが……」

 

そう声をかけてきたので、確かに自分がアドリアンです、と回答する。

 

「やはりそうでしたか。アドリアン君、私は君から大きな恩を受けましたので、お礼を伝えに来たのです」

 

お礼?こちらの方とは初対面の筈だけど……?

ちゃんと話を聞くべきだと思ったので俺の隣に腰掛けるよう勧め、神族の方からお話を伺うことにした。

 

「ジーヴ村に回していただいた作物のおかげで、私と娘のフィリアも日々の食事に困る事がこれまでよりもずっと少なくなりました。本当にありがとうございます」

 

声を掛けてきた神族の方はジーヴ村在住のパディさんという方で、俺が発見した作物をジーヴ村に提供した件についてお礼を言いたかったそうだ。

うーん、王宮勇士のトランさんも言っていたけど、作物の提供は俺の想定よりずっと影響が大きくなっていたんだなぁ。

 

ああ、俺がどうしてそんなに感謝されているかフレアがもう少し詳しく話してほしがってるみたいだ。

トランさんの時はフレアもそこまで気にしてなかったけど、神族という今まで見たことがない存在からもお礼を言われているのが引っかかったのかな。

パディさんにフレアのことを紹介し、ちょっと説明の追加をお願いすると、パディさんはフレアの賢さに驚きつつも笑って了承してくれた。

 

「そうですね。まず、枯れたデルカル大陸の町や村をこれまで治めた方々は、いずれも少量しかない食料の分配をどうするか頭を悩ませていました。」

 

限られた数しかないお肉やパイをどのぐらいの大きさで切り分ければ良いか、ということに悩んでいた訳ですねとパディさんは語る。

うん、分かりやすい例えだ。フレアも頷いている。

 

「どう切り分けても大陸で暮らす皆をお腹いっぱいにできずに困っていた時、アドリアン君はお肉やパイそのものを増やしてみせたのです。これは、今まで領主や村長を務めた方々が誰も成し遂げられなかった事なのですよ」

 

革新的とすら言えるでしょうとパディさんは話す。

そこまで言われると気恥ずかしい気持ちが強くなる。

自分の生まれや転生特典に頼っている身である分尚更だ。

なんにせよ、追加で解説いただいたパディさんにフレア共々お礼を伝える。

 

「お礼を言うべきはこちらですよ。そして、受けた恩は必ず返すべきであると考えています。もしアドリアン君に何か困っていることがあり、私が力になれそうことがあればどうか遠慮なく言ってください」

 

とパディさんは穏やかに言っている。

 

困っていることか。

今やっている真水作りの手法自体は一応確立できているから何とかなるとは思うけど……。

そうだ、逆浸透膜の件があった。

 

「それでは、塩分を吸着できる膜や物質について、もし心当たりがあれば教えていただくことはできないでしょうか?」

 

「塩分を吸着?……すみません。今すぐに思い当たるものはありませんが、それを何に使うのですか?」

 

む、神族の方もご存じじゃないか。残念。

海水から真水を作る際、その膜なり物質なりがあると効率が上がる旨をパディさんに説明すると、パディさんは絶句されていた。

 

「ーーー。それが叶えば、泉の加護がなくとも、このデルカル大陸でも水を得ることができる……。い、いや、アドリアン君、君は『効率化のため』と言っていた。もしや、もう既に……?」

 

「はい、海水から真水を作る方法について、もう理論はあります。実際に試して確認する必要はありますが。」

 

「どうすれば海の水を飲める水に錬成できるのか、私では全く想像がつかない……。どうやって返せばよいか分からないほどの恩を、また君から受けることになりそうですね」

 

そうか、この世界では蒸留という発想がない可能性があるのか。

そういえば父上と母上に蒸留装置の説明をした時、2人ともあまりピンときていないようだったな。

天候の操作や死者の蘇生も叶う神殿長の奇跡がこれまであった分、前世で当たり前にある手法がこの世界では確立していないということはこれからもあるかもしれない。気を付けよう。

 

「塩分を引き寄せる物質については私も手すきの時に探してみましょう。私達の家の位置を教えておきますので、この件以外でも私が協力できそうなことがあればいつでも訪ねてきてください。デルカル大陸を救うであろう君の助けになるのに、否やはありませんから」

 

パディさんはジーヴ村外れにある彼の家の位置を俺に教えると、軽く頭を下げ、立ち去っていった。

 

……とてもいい出会いだったな。

デルカル大陸を救うというのは表現が大げさすぎると思うけど、俺の活動の成果をここでも確認できてよかった。

 

あれ、フレアどうしたの?

竿が引いてる?……本当だ。

上手く釣れるか分からないけど、お魚との初バトル、やってみようか。

 

 

俺はそのまま釣りを楽しみ、前世のアジらしき魚が2匹、クロダイらしき魚が1匹の計3匹が本日の釣果となった。

 

ちなみに年長組で背が低い男の子はもの凄い釣果で、水桶が一杯になるまで魚を釣り上げていたのは驚いちゃったな。

釣っていた本人も自分の才能にビックリしていたね。

 


釣りを終え、孤児院に戻った後は夕食の準備だ。

夕食の準備は使用人さんも参加できたので、料理番の女の子と協力して3人で釣ってきた魚を捌いていき、煮つけ・塩焼き・煮込み鍋と料理をたくさん作り、フレアも含めて皆でご馳走に舌鼓を打った。

釣りの才能が開花した背の低い男の子は食事中ほかの子に口々に褒められており、ちょっと照れていたのが印象的だった。

 

食べ終わって片付けを済ませた後は寝るまで少し自由時間があり、俺は持ってきたおもちゃの遊び方を孤児の皆に教えていた。

作ったおもちゃはどれも遊んでもらえたけど、特にコマが好評だったかな。

どちらが長く回せるかを競ったり、テーブルの上でコマ同士をぶつけ合わせたりするのが楽しかったみたいだ。

おおう、フレアもけん玉を掴んで遊んでるよ……。

しかも結構上手い。2番目に小さい皿に玉を乗せられているし。

 

 

おや、どうしたの。……歌を聞いてみたい?

うーん、この世界の歌はあんまり知らないな。

空の〇跡やF〇Xの主題歌とかでも大丈夫か……?

 

 

実際に歌ってみた所、孤児の皆にはかなり好評でした。

フレア、〇の意志、そんなに気に入った?

歌詞に出てきた言葉の意味は後で教えてあげるからね。

 


孤児の子達に他にも色々歌ってあげていたが、そろそろ就寝の時間となった。

皆に挨拶し、俺たちも借りている家に向かう。

サーチさん・ベリータさんと明日の氷の洞窟探索について改めて予定を確認し、

それぞれの家のベッドで横になるのだった。

 

さて、明日が真水作りの第1歩となる。

色んな人が期待しているみたいだし、気合を入れていこうか。




魔女の泉3に出演するトレント・パディとフィリアの父は同名とします。
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