チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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22話 国王陛下とお話しよう

俺は大急ぎで机の上に広げていた書物を戻し、メモをしていた手記も回収してバベリア国王・ラファエロ陛下とお話する準備を整えた。

ちなみにラークさんにもちゃんと断りを入れてくださったらしい。

ラークさんが驚いていないか微妙に心配である。

 

楽にして良いと国王陛下におっしゃっていただいたこともあり、今俺と国王陛下は地下書庫の机を挟んで椅子に座って向き合っている。

ちょっと胃が痛い……。

 

「難しいかもしれないが、どうか緊張しないでくれ。始めは図書館の2階にいるかと思ったが、地下書庫に来ていたのだな。その年齢で古代言語を読み解けるとは……」

 

こちらを気遣いつつも関心したように国王陛下は言葉を紡ぐ。

いや、古代言語を習得したのはついさっきで、それも転生特典に思いっきり頼った上でなのですが……。

そんなことを国王陛下には言える訳もなく、俺は恐縮しきりである。

 

「まずは、国を治める者として言わなければならないことを改めて伝えよう。デルカル大陸の飢餓対策、誠に大義であった。君の働きによって、デルカル大陸の食料事情は改善傾向となった。今一度、礼を言わせてもらおう」

 

緊張しているのもあり、陛下の感謝に対して俺は無言で頭を下げる。

 

「本来であればもう一つ、いや二つか。君が尽力してくれた件について褒賞を渡すべきなのだが、謁見までに間に合わなかった。もし何かあれば後で言ってくれたまえ」

 

二つ……?一つは真水作りだろうけど、もう一つは何だろう?

 

「海水から真水を作り出す方法を発見した功績は、もはや語るまでもなかろう。もう一つは、ルイスの相談に乗ってくれた件だよ。教皇からの圧力により思い悩むことが多くなっていたルイスが、君と語り合って以降ずっと前向きになり、以前のような力強さを見せてくれるようになった」

 

今、ルイスは私の護衛をしているよ、とも陛下は言われる。

気配を感じ取るために軽く集中すると、地下書庫への階段上に確かにルイスさんの気配がする。

そうか、陛下の話を聞く限りだが、ルイスさんは元気になったんだな。

根本的な問題解決には全然貢献できていないんだけどね。

 

「それと、君の手記を覗き見るつもりはなかったのだが、少しだけ目に入ってしまった。君は神族について調べていたのかね?」

 

あちゃー、メモを見られちゃったか。

これは誤魔化せない。

国王陛下に興味本位で神族を調べていた旨を伝える。

 

「そうか……。君も知っての通り、現在バベリア大陸では神族の方々が未曾有の危機に晒されている。私はそれに対して碌に有効な手が打てず、教皇に押されている有様だ。君の暮らすデルカル大陸でも、教皇が直接圧力を掛けてくれば神族を排斥する流れを覆すのは困難だろうな……それにしても、あの方々が殺められてしまったのは……あまりにも代償が大きい……」

 

疲れ切った表情で国王陛下が話すが、途中から自分に言い聞かせるようになっているな……。

ハッとした国王陛下は首を振って会話を再開する。

 

「すまない。そう、君は神族を調べていたとのことだが、神族の方々について、いくつか質問させてくれ。少々気になることがあってな。君にとって、神族とはどのような存在かな?」

 

デルカル大陸の泉には神殿長がいないので答えにくいかもしれないが、と国王陛下は続ける。

うーん、例えば面識のあるパディさんやフィリアとどういう関係でいたいかということなら……。

理想論かもしれないが「互いに助け合える良き隣人や友人」でいたいと陛下に回答した。

 

「ふむ……では、デルカル大陸には現在神殿長がいないが、奇跡を扱い人々に恩恵を与える神殿長がデルカル大陸の泉に再び帰ってきてほしいと思うかね?デルカル大陸に住まう人々のことは気にせず、あくまで君個人の感性で答えてくれて構わない」

 

……?ちょっと意図が分からないが、神が帰ってくることを望むリアート村等の状況を気にせず答えるのならば、「帰ってきてもこなくてもどちらでも構わない」が俺の答えになるかな。

神殿長がデルカル大陸の泉に帰ってくるならば、よほどひどい相手でない限り新たな隣人として良好な関係でいるよう努めたいと俺は考える筈だ。

帰ってこないならこないで別に気にせず、これまで通りやった方がよいと思うことをやりたいこととのバランスを取りながら進めていくだろう。

どちらの場合であっても自分の生き方にさほど影響しないと思う。

俺は国王陛下の質問にそう回答すると、陛下は目を伏せ、沈痛な面持ちで言葉を紡いだ。

 

「ああ、やっと君の考えに得心がいった。君に比類なき力がある故かもしれないが、君は神族にあらゆる意味で依存していないのだな。……私とは大違いだ。私は、あの方々が見守っていない今の世界が……どうしようもないほどの苦境に陥っていると思えてならないのだ……」

 

……なるほど、リアート村の村長程ひどくはないが、陛下も神族を強く頼みにしている方なんだな。

俺は神族の人達とは隣人や友人として付き合っていければとは思えども、彼らに「皆を救ってくれ」とか「泉を復活させてくれ」とか別に願ったりしないしなぁ。

リアート村にいる時も感じた通り、俺の考え方や在り様はこの世界において一般的ではないということだ。

 

国王陛下は神族との協調・調和を強く願って国を治めている方なのは周知の事実だ。

神族を殺め・捕縛するのを是とする現在のバベリア大陸の状況を思えば、謁見の間で感じた印象のように、気が沈むのは当然でもある。

ただ、為政者である以上立ち上がらないといけないのだが……。

今国王陛下に必要なのは、ルイスさんと同じく今後についての希望なのだろう。

 

神族の今後についての希望……。

なんとかなるかもしれない。陛下がそう思える何かで俺が渡せるのは……。

……しょうがない。俺の推測した古代神や神殿長の計画を話そうか。

実際それぐらいしか思いつかないし、立ち直った国王陛下に多少なりともセルビス氏を抑えていただき、デルカル大陸に魔女狩りが輸出されるのを遅らせてもらえれば、という打算もちょっとはあるし。

 

「国王陛下。一切根拠のない、妄想と断じられてもおかしくないのですが……」

 

そう前置きし、ここだけの話にしてほしいとお願いした上で、俺が6歳の頃に推測し、この場で得た情報を元に補強した古代神・神殿長の予想される計画を国王陛下に説明していった。

 

 

国王陛下は静かに俺の推論を聞き、最後まで聞き終えた後は、一滴の涙が陛下の頬を伝っていた。

 

「そうか……。神殿長の方々は人間を見限られた訳ではなく、若き神族の方が新たな未来を拓けるようにするために今の状況を作り上げられたというのだな……。そして、この苦境でもあがける人間を彼らが見出さそうとしているかもしれないと、君は言うのだな……。君の知恵は、泉の如き深さよ……」

 

流石にそれは褒めすぎです。

ゲーム脳と傍目八目の状況が合わさって多少なりとも推測できただけだし、人間の方は推測の確度も低いと伝えたのですが……。

そもそも始めに根拠はないって断った筈なんだけど、陛下は信じきっちゃってるよ……。

……多分、それだけ追い詰められていらっしゃったんだろうな。

セルビス氏の所業はどう考えても大問題だしなぁ。

 

「これほど若い君が、この上なく頑張っているのだ。私にも、まだできることがある……。ありがとう、アドリアン君。ルイスだけでなく、私も君に励まされてしまったな」

 

国王陛下の表情に気力が戻られたようだ。

とりあえず、話した甲斐はあったかな。

 

「相応に話し込んでしまったな。私はそろそろ戻るとしよう。君も、程よいところで休むようにな。……そうそう、先に話した追加の褒賞だが、君に何か希望はあるかね?」

 

真水作りの件のことか。こちらについては特に考えていなかったんだよなぁ……。

 

「ふむ、特に希望がないということであれば……そうだな。では、ある意味において、バベリア大陸以上の苦境であるデルカル大陸の力になれる人手を送るとしようか。準備があるから即座に、とはいかないだろうがね」

 

国王陛下はそう言い残し、地下書庫から出ていかれた。

……ルイスさんも国王陛下と共に移動したみたいだ。

人手か。国王陛下が動かせる人員で信頼できる方をデルカル大陸へ派遣する、ということかな。

誰がどの村や町に来るのかは分からないが、まあ流石におかしな人は来ないだろう。

……リアート村への常駐は現地の環境を鑑みればまだまだ無理か。

派遣人員が来るならジーヴ村かシューベトだと思っていいな。

 

ちょっと気疲れしちゃったけど、国王陛下が前向きになれたのなら、今回陛下とお話できたことに意味はあったのだろう。

さて、夕食の時間も考えればもう少し時間の余裕があるし、後は2階の一般的な本を気の向くままに読んでみようかな。

 

そう考えた俺は再び2階へ行って様々な本を速読で乱読した後、ラークさんやフレアと合流し、一緒に今日も寝泊まりする迎賓館へ戻るのだった。

 


マニル島2日目の朝を迎えた。

そろそろ波が落ち着くためデルカル大陸行きの船を出せると連絡を受けたので、朝食を取った俺とラークさんとフレアはマニル島の埠頭へ移動している。

 

おっと、ルイスさんが来ているな。

 

「アドリアン様。陛下からの手紙を預かっておりますので、お父君にお渡しください」

 

国王陛下からの手紙?確かにバベリア国旗の押印が押されているが……。

とりあえず受け取り、シューベトに帰り次第、父上に渡すことを伝える。

 

「ありがとうございます。それでは、またアドリアン様とお会いするのを楽しみにしております」

 

ルイスさんは一礼すると立ち去って行った。

手紙の中身が気になるが、勝手に開ける訳にはいかないな。

父上が伝えるべきと判断すれば俺も内容は分かるし、そうではないなら知らないほうがいいのだろう。

そう考えた俺は手紙を懐にしまい、デルカル大陸行きの船に皆と共に乗り込んだ。

 


行きと同様にやや揺れが激しい船旅となったが、行きの船旅と異なり魔物にも襲われることなくジーヴ村に到着した。

船旅でお世話になった船員の方々にお礼を伝え、俺とラークさんはフレアに乗ってシューベトへと一気に帰還した。

ただ帰り際、雲が晴れた時にジーヴ村北西方面に空に浮かぶ神殿を見かけたけど、あそこはなんだったんだろうな。

空中神殿なんて実にファンタジーらしい建物だし、いつか探検してもいいかもしれない。

 

シューベト東門前でラークさんとも別れ、俺は自宅へと戻って父上と母上に無事帰還した旨を報告したが……2人の表情は険しさがある。俺に対してのものではないようだが……。

状況を聞きたかったが今日は疲れているだろうということで、明日の朝食後に説明してくれるらしい。

了承の旨を伝えるが、忘れないうちに国王陛下からの手紙を父上に渡し、その後俺は自室に戻った。

 

荷物を片付けた後、俺は自室の椅子に腰かけて今後の方針について思案している。

俺が次にやるべきと感じたことは黒い魔力の石の浄化を完全な形で行うこと。

どういう方針で研究を進めるか。その前に父上と母上が納得してくれるかどうか。

少しでも効率良く進めるために考えを整理しているが、父上と母上の先ほど浮かべていた表情がちょっと気にかかってしまう。

まあ、本格的に方針を練るのは明日父上と母上の話を聞いてからでも遅くないか。

 

俺は今日はもう今後のことについて考えるのは止めることにし、(相当先行しているので急ぐ必要は全くないが)領主の息子としての勉学を進め、就寝時間には秘密基地に行って気分転換と訓練をフレアと一緒にして1日を終えた。

 

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