チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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23話 父母と今後の方針を相談しよう

マニル島から帰還した翌日、俺は朝食を食べた後、昨日リーガル父上とエステル母上が厳しい表情を浮かべていた件について説明を受けるため自宅の一室に移動した。

この部屋にいるのは俺・父上・母上だけで、部屋には鍵をかけて話が漏れないようにされているため、かなり重要な話になりそうだ。

 

「アドリアン、教皇へ送った抗議文の返答が来た」

父上は苦虫を噛み潰したような顔で返答が記載されているだろう手紙を俺に手渡してきたので読んでみる。

表情からして、予想通りこちらの納得など得られない回答なんだろうな。

そんなことを思いつつも手紙を読んでいく。

 

内容を要約すると『勇士ザファーは何よりも優先すべき魔女狩りの任務を忠実に行っただけであり、文句を言うのはお門違いである。むしろ、貴方の息子が魔女ではないのを確実にしたことに感謝するべきだ。繰り返しになるが魔女狩りは最優先で行うべき事柄であるので、任務遂行の支援となる善意の浄財はいつでも待っている』というところか。

この内容では父上と母上はそりゃ表情も渋くなるよね。

例の石の件についてはスルーしているし、以前の想定通り、ジーヴ村の件について法で争った場合は握り潰されるか事実を曲げられると判断して良いだろう。

 

ただ、手紙を読んで気になったのは、俺のことを言及する所と浄財、即ち寄付の所で、筆圧がかなり強くなっている所だ。

 

美食家のトーチャー家、トーチャー家次男の勇士ザファーは個人的に俺を恨んでいる、教皇が意識して書いたのは俺と寄付のこと……もしかしたら……。

 

「アドリアン?何か気づいたのかしら?」

 

母上が俺に問いかけてきたので、俺は、ジーヴ村で過剰な形で検査を受ける羽目になった理由は、もしかしたら黄金芋の輸出が遠因かもしれないことを伝えた。

 

父上と母上はなぜ黄金芋?という表情だったので、バベリア大陸で最も黄金芋を買い付けた所はどこか、二人に尋ねた。

 

「確かトーチャー家とそこに連なる中立派閥のバベリア貴族が大量に黄金芋を買っていたが……っ!まさか、そういうことなのか?」

 

父上が気付かれたな。顔色からして母上もだ。

恐らくだが、以下のような流れでジーヴ村の一件は引き起こされたのだろう。

 

まず、勇士ザファーはセルビス氏の指示で不仲とは言え一応縁のあるトーチャー家やトーチャー家と昵懇の中立貴族に対し、資金調達を望むセルビス氏への寄付を強要した。

だが、美食を好むトーチャー家や関連する中立貴族は、現在非常に高額で取引されている黄金芋の購入により財政の余裕がなかった。

そのため、セルビス氏の権力を盾に勇士ザファーが自分と縁のある中立貴族を脅して回っても、中立貴族達から思ったほど寄付が集まらなかった。

中立派から資金を回収しようとしていたセルビス氏は予想より寄付が集まらなかったことに苛立っていた所、黄金芋の発見者である俺がジーヴ村で真水作りを実験している情報が回ってきたため、恐らくセルビス氏以上に俺に対して苛立ちを募らせていた勇士ザファーに俺への嫌がらせを兼ねた強制検査へGOサインを出した。

指令を受けた勇士ザファーは、本人の危険な気質から強制検査の任務にかこつけて自分の邪魔をした俺を壊そうとした、といった所だろう。

 

ざっくり言ってしまえば、金が予想より集まらなかった不満をぶつけられたのだ。

実際には多少ずれがあるかもしれないが、大まかな流れは合っていると思う。

父上も母上も頭が痛いって顔をしてるよ……。

 

「お前がジーヴ村であのように扱われた理由は分かった。だが、それは教皇とあの勇士を許す理由には全くならんな」

 

と父上は吐き捨て、母上も表情を更に険しくして言葉を紡ぐ。

 

「シューベトの民も、貴方が理不尽な検査を受けたことに怒ってるのよ。こちらが感謝すべきと言われても、到底納得できる話ではないのだから」

 

ああ、勇士隊の人に俺が検査されている現場を見られているから、そこからシューベトの人達にも話が回っちゃったか。

……なんかもう積極的に魔女狩りしようぜ、なんて流れにはならない気がしてきたぞ。

まあセルビス氏による魔女狩りの強要はいずれ必ず行われるだろうから、シューベトも結局魔女狩りに参加させられるのには変わらないだろうけど……。

 

おや、今度は父上が別の手紙をこちらに差し出している。

今度はどうも困惑しているようだが……。

 

「ところでアドリアン、昨日お前が渡してくれた国王陛下からの手紙を読ませてもらったのだが……こちらを読み終わってからでいいので教えてくれ。お前は陛下と一体何を話したのだ?」

 

ん?陛下の手紙に何が書かれていたんだ……?

 

……国王陛下の手紙の内容を要約すると『君の息子のおかげで、将来の展望に大きな希望が持てるようになった。その思考の深さは知恵の泉と呼ぶに相応しい。私が心から感謝していたと君の息子に伝えてほしい。彼の力と知恵がこれからもデルカル大陸全体のために使われることを強く願っている』となっている。

陛下、貴方はどれだけ心理的に追い込まれていたんですか……。

 

「それでアドリアン、どうなのかしら?」

 

と、母上も気になっておられるのか催促をしてくる。

 

俺は言葉を濁しつつも、神族のことをどう思うかということについて会話し、完全に憶測に過ぎないが神殿長達が練っていたであろう計画について陛下にお話したことを2人に伝えた。

 

父上も母上も計画の詳細を続けて聞いてくるが……本当に話してしまっていいのか?

話してしまうことの影響がすぐには読みきれず、逡巡してしまう。

 

俺の迷いが見抜かれたのだろう。

母上が言葉を重ねる。

 

「アドリアン。あなたに何があろうと、あなたが何を思おうとも、私とリーガルはあなたの味方よ。あなたの抱えているものをどうか話してちょうだい」

 

父上も頷き、声をかけてくる。

 

「お前がこれまでやってきた活動には、全て理由が、理があった。そのお前が推測したことを、私は決して軽くは見ない。断定できずとも構わない。予想される計画について話してくれ」

 

軽く見られないのが問題でもあるんだけどなぁ。

でも、父上がセルビス氏に喜んで協力するなんてことには現状なり得ない。

それなら、もう言っちゃってもいいかな……。

ちょっとやけっぱちになりつつも、結局俺は父上と母上にも俺が推測した古代神・神殿長の計画について話すのだった。

 


「大陸全土を後継となる神族の育成に使う……。教皇や魔女狩りもそのための舞台装置に過ぎないだと……」

 

「自分達の後継者をそこまで追い込むなんて……。古代神や神殿長はどれほど厳しい方々なのかしら……」

 

ああ、二人ともさっきより頭を抱えてしまっている。

 

「アドリアン……。否定されるのを承知で聞くが、古代神達の計画を阻止するよう動くのは、シューベトにとって有効な手立てとなるか?」

 

そう父上が聞いてくるので「全くならない。やってもただ計画が後ろ倒しになるだけなので、むしろこちらが介入する余地がなくなっていく」と回答する。

更に後継となる神族が純血神族という特別な神族の可能性が極めて高く、試練に失敗・死亡しても再度やり直しできる旨を詳しい理屈は省いて二人に説明する。

人間に邪魔されて後継の方が死亡した場合、人間に対する悪感情が募った状態で試練をリトライされることになるので、大陸で暮らす人々にとって悲惨な結果となる可能性が上昇してしまうことを合わせて伝えると、とうとう父上はこめかみを揉み始めた。

 

「……では、アドリアン。後継の神族が試練を果たすために動き出すのに、後何年とお前は予想する?」

 

重ねて父上が尋ねてくるので、思考を回す。

魔女狩り開始が4年前、後継の方が魔女狩り開始の時に幼少期、大体0~10歳と仮定し、ある程度育成が完了してから動き出すとするなら……。

大雑把になるが大体今から5~10年後と、父上に予想を伝えた。

 

「分かった。では、教皇が魔女狩りに賛同するようかけてくる圧力を、可能な限り躱し続ける方針でいく。おそらく後継の神族が動きだすまでに圧力を躱しきれなくなるだろうが、その場合は形だけ魔女狩りの要請を受け入れる態を取り、実際には魔女狩りをする余裕がないことにする。後継の神族が抱くであろう魔女狩りへの憤りは、舞台装置の教皇達へ矛先を向けてもらうとしよう。こちらが魔女狩りに及び腰なら、勝手に向こうからデルカル大陸へ勇士を送り込んでくるだろうしな」

 

デルカル大陸に乗り込んでくる教皇派の連中には好き勝手にシューベトの領地へ踏み込ませないよう今から法を整えなければ、なんてことを父上は言い出す。

ということは、父上はセルビス氏に面従腹背の姿勢で接するつもりなのか。

主なヘイト役を教皇派勇士に押し付けることになるが、この方法ならデルカル大陸での魔女狩りを防ぐ形とはならないから、古代神の計画阻止にも繋がらない。

 

 

「リーガル。魔女狩りの余裕がないなんて、そんな話にどうやって説得力を持たせるのかしら?」

 

そう母上が父上に問いかけると、父上はニヤリと笑われた。

 

「エステル、アドリアンが言い訳を用意してくれているじゃないか。レフガトの泉の枯渇とカルダリア火山の噴火だ。確実に来る天災に備え、救荒作物の栽培と真水の作製に人手(勇士)を割いているから、魔女狩りにはとても手が回らないな」

 

なるほど、そういうことにするのか……。

父上、もう完全に腹を括ってるな。

母上も覚悟を決めた表情で頷いている。

 

「アドリアン、後継の神族が育成を受けている場所を予想できるか。可能ならそこに人を近づけない方がよかろう」

 

それについてはもう予想しているので、「霧の森」が最も可能性の高い旨を父上に伝える。

 

「誰かに言われずとも踏み込まない場所ではあるな。念のため、森から湧き出た魔物の排除以外では森に近づかないよう領内に通達しておこう。それと……」

 

ん?父上が何かを言いたそうにしているが、どうしたのだろう。

 

「アドリアン。お前は、次に自分が何をするかをもう決めているのではないか?」

 

父上、鋭いですね。

俺がそう言うと、「これまでのお前を見ているとな」と父上は笑っていらっしゃる。

母上も「あなたはいつもやらなければいけないことを自分で増やして抱えていたものね」なんて言いながら苦笑されているな。

ただ、俺が次にやろうとしていることは、危険度がこれまでとは桁外れに高いんだよなぁ。

それでも言わない訳にはいかないので、黒い魔力の石の浄化方法を確立するために動くつもりであることを父上と母上に伝えた。

 

「アドリアン!それは余りにも危険よ!あれほど危うい目に遭ったのだから、分かっているでしょう!?」

 

母上が青ざめた顔で止めようとしてくる。うん、まあそうなるよね……。

 

「アドリアン、お前も知っているはずだ。あの石は教皇以外には……そうか……そうなるのか……。浄化できるように、しなければならないのか……」

 

父上も制止しようとするが、途中で何故俺がこう考えたのかを思い至ったようだ。

 

「リーガル……?」

 

母上が父上に疑問の視線を向けており、父上が母上に回答する。

 

「教皇とその一派は、他者を汚染するという用途に黒い魔力の石を使ってくる、という事だ。対抗手段を今から用意する必要がある。そういうことだな、アドリアン?」

 

父上の言葉に俺は頷く。

デルカル大陸での魔女狩り開始までには間に合わない可能性が大だが、それでも絶対に対応できるようになる必要がある。そう俺は回答する。

 

「アドリアン……」

 

母上が悲痛な声を掛けてくるが、決意は変わらない。

これはやらなければいけないことだ。

 

「……浄化方法を見つける道筋は立てているのか。全くの無計画では止めざるを得ない」

 

父上が問うてきたので、王立図書館の古代言語で書かれた蔵書から、泉の魔力水を用いて不完全ながらも石を浄化する手法は既に押さえており、大本の汚染源となる黒い力に有効な物質を見つけ出し、既存の手法や使用する魔力水に発見した物質を加える方針でいく旨を俺は二人に説明した。

 

「下地は既にあり、そこに手を加えていくということだな。お前のことだから無策はあり得ないと確信していたが……。ならば、シューベト城地下の隠し部屋を用意するのでそこで浄化手段を研究するように。ただし、安全面についてはこれまでの最大限以上に注意を払え。また、先ほど言った教皇派の追求を躱すための準備やシューベト勇士の訓練でお前に協力してもらうつもりなので、浄化研究のみに集中することは認めない。分かったな?」

 

真水作りの手法共有や教皇派勇士に対抗するためのシューベト勇士の育成等と並行して浄化研究を進めろ、ということだろう。

俺は父上に了承の返事をした。

 

その後も俺・父上・母上で今後の予定について細かな調整を重ねていき、

もう昼前ということで昼食を三人一緒に取った後、今日は解散となった。

 

 


昼食後、俺は自室に戻って話し合いの顛末を改めてフレアと共有している。

 

(結果的に、古代神達の計画を父母に話してよかったのではないか?アドリアンは魔女狩りを実行したくなかったのだろう?)

 

そうだね。状況が著しく変わっていくからちょっと戸惑う所もあるけど。

 

(いつも通り、目の前のことを一つ一つ片付けていけばそう悪いことにはなるまい。教皇派への対策・勇士の訓練の手伝い・そして黒い魔力の石の浄化に使えそうな素材集めだったな。素材集めは私の翼が力になれるだろう)

 

正直とても助かる。改めて、頼りにさせてもらうことにする。

 

さて、それじゃあ、今日やる予定の勉強とポイント稼ぎの読書を進めようかな。

 

(……そういえば、勇士の訓練も私が手伝った方が良いか?)

 

そ、それは父上が許可した上で、かつ相手次第かな。

下手したら勇士達の心を折りかねないよ……。

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