チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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24話 シューベト領内で日常を過ごそう

リーガル父上・エステル母上と方針を話し合った翌日、

俺は自室で今日実施予定の勉学を朝のうちに全て済ませ、残りの時間をどう過ごすか考えていた。

黒い魔力の石の浄化研究用の部屋は今日の夕方頃に一旦準備できるということなので、それまで何をするか……ああ、そうだ、真水作り用の鍋と蓋、それとを浄化研究用の素材を早めに注文しておく必要があった。

よし、今日は町に繰り出して工房の職人さんと大陸渡りの行商人の皆さんの所に顔を出しに行こう。

時間が余ったら町の人達の手伝いをしたり、町の子ども達と遊んでもいいかもしれないな。

それじゃあシューベト町に行こうか。

 


町の工房に出向き、真水作りに使った鍋と蓋について、工房の職人さんに再度作成依頼を出しておいた。

とりあえず5組を注文したが、さすがに他の注文もあるのは承知しているので、少しずつ作ってもらうことになるだろう。

 

手持ちの溶けない氷は蒸留装置の蓋を3組分冷やせるぐらいの量だから、適当なタイミングでジーヴ村付近の氷の洞窟に行って素材集めをしてもいいな。

効率は落ちるが、海水で蓋を冷やしても特に問題はないんだけどね。

 

大陸渡りの行商人は植物・鉱石を扱う方がシューベトに来ていたので、まず植物を扱う行商人の方からバベリア大陸でしか得られない素材を色々購入していく。

続けて鉱石を扱う行商人の方からも同様にバベリア大陸由来の鉱石を購入したが、こちらはそんなに種類はなかった。鉱物資源はデルカル大陸の方が豊富だからそこはしょうがない。

ただ、ありがたいことに以前俺が相談していた「レアメタル」が手に入ったらしく、そちらも購入させてもらった。

リアート村の鉱山で取れたそうなので、相場より少し多めに金額を渡し、可能ならリアート村に何らかのリソースを回してもらえるよう行商人の方にお願いしておく。

そこまでしなくても、と行商人さんは言っていたけど、まあただの自己満足だ。

 

さて、シューベターも持ってきているから武器職人ザルエルさんの所に行こうか、なんて思っていた所にフレアが町の上空に飛んできている。

フレアが穏やかで会話も可能という話は既にシューベト町に広まっているせいか、町の人達はフレアのことを見て驚きはしても怯える様子はないようだ。

フレアに手を振ってる子どもいるぐらいだし。

 

こっちに近づいてきているので俺に用があるのだろうけど、どうしたのだろう。

 

(あの老いた鍛冶師の所に行くのだろう?私もアドリアンの剣がどのようになるのか気になってな。一緒に行かないか?)

 

そういえばフレアも一応ザルエルさんと面識があったか。

せっかくなのでフレアに乗せて行ってもらおうかな。

 

ジャンプしてフレアに飛び乗り、手を振ってる子にちょっとだけ手を振り返した後、そのままシューベト東門北東にあるザルエルさんのお宅に向かうとする。

 


飛んでいることもあり、あっという間に鍛冶職人ザルエルさんの工房に到着だ。

ザルエルさんは工房外で伸びをしており、フレアが一直線に飛んできたので体をビクっとされていたが、俺がレアメタルを入手したことを伝えると一瞬で目に炎が燃え始めた。

やっぱり鍛冶職人さんなんだなぁ、なんて当たり前のことを思いつつもシューベターとレアメタルをザルエルさんに預ける。

精錬作業の完了予定を伺うと、今日の昼過ぎ頃にまた来てほしいとのことなので、一旦工房を後にした。

 

フレアは剣が精錬されるまでの間、以前調べた情報を元にカルダリア湖付近にいる若い同族を探してみたいということで、カルダリア山方面へと飛んで行った。(フレアの方がもっと年若だろうけど)

さて、俺もまた時間が空いてしまったがどうするか……。

シューベト郊外に出てきたんだし、面識がある農家の皆さんの手伝いでもするか。

 


ふう。結構な数の農家さんを手伝えたな。

力仕事以外にも植え付けを手伝ってしまったけどあれで大丈夫だったかな……。

農家の方は十分上手くできていると言ってくれたけどちょっと心配だ。

 

ちなみに手伝ってもらったお礼ということで、農家の方々から形が悪いせいで売り物にはできない作物をいくつか貰っている。

最後の老夫婦からは傷があるとはいえ黄金芋も貰っちゃったしなぁ。

俺が見つけてないと育てられなかった作物なんだから遠慮せず持っていけと老夫婦に言われてしまい、結局受け取ってしまった。

まあ、秘密基地内の食事にでも使わせてもらおうかな。

 

……そろそろ昼食時だ。

一度自室(と秘密基地)に戻って荷物を置き、昼食を取ったらまたザルエルさんの工房に行ってこよう。

 


昼食後、俺は再度ザルエルさんの工房前に来ている。

程なくしてフレアがこちらに飛んできたが、心の繋がりからして結果はあまり芳しくなかったようだ。

フレアから直接話を聞いてみた所、

 

『カルダリア湖で同族を見つけたは良かったのだが、どうもまだ知性が育っていないようでな。会話しようとしても全く話が出来なかった』

 

とのことだった。

縄張りを荒らしに来たと判断されて攻撃もされてしまった、とも続けるフレア。

それ大丈夫だったの?

 

『ああ、率直に言って弱い個体だったからな。縄張りを脅かすつもりも戦闘の意志もないことを再三伝えようとはしたが、無視してこちらを攻撃してきたので、やむを得ず一撃加えて制圧した。あの個体を怯えさせてしまったかもしれんな……』

 

悪いことをしてしまったとフレアは語る。

うーむ、成体のマグリックドラゴンが居る場所に行く時は、俺が一緒の時の方が良さそうだな。

その方が荒事になっても対応しやすい。

 

『そうだな。念のため、もう少し力を付けてから成体の同族を訪ねるとしよう。さて、引き留めてしまったな。工房で剣を受け取るのだろう?』

 

そうだった。

会話を切り上げ、改めてザルエルさんの工房内にお邪魔する。

 

 

ザルエルさんは仕事を終えたらしく、満足そうな表情を浮かべていた。

ザルエルさんからシューベターを返してもらい、軽く持ってみる。

最新の精錬技術で強化された名剣シューベターはグッと軽くなり、扱い易くなっているのが分かる。

感覚的なものではあるが、恐らく切れ味も劇的に向上しているようだ。

ついでにザルエルさんの依頼達成で大量の転生特典用ポイントも手に入り、いいことずくめである。

ザルエルさんはテンションが上がっているらしく、自分が強化したシューベターを「ザルエル・シューベター」と呼称していたが、まあ普段はいつも通りシューベターと呼んでいいだろう。

少なくとも俺はそうする。

ただ、ザルエルさんにとってはこれで終わりではないようで、更に腕を磨いて失われた鍛治技術を復元し、シューベターを超える剣をこの世に作り上げてみせようと闘志を燃やしていた。

こういう好きなことに一途に情熱を燃やせるのは個人的にはかなり好感が持てるな。

精錬を施してくれたお礼と共に、剣が完成したら是非見せてほしい旨を伝えて俺はザルエルさんの工房から立ち去るのだった。

 

 

工房の外で待っていたフレアに対し、彼が見たがっていた精錬後のシューベターを見せてあげると、

 

『確かに剣から感じられる圧が強くなっている。あの老鍛治師は良い仕事をしたようだ。……ふむ……』

 

フレアも納得のいく剣の出来栄えだったようだ。

でも同時に何やら考え込み始めたな。

どうしたんだろう。

心の繋がりでフレアの意志を感じ取る。

 

(アドリアンは秘密基地での訓練時、剣に気等を帯びさせて威力を引き上げていたな?)

 

フレアが言うように、確かに異世界技能を磨いていく中でいつの間にかできるようになっていた魔力剣や闘気剣は、基地内限定で練習を重ねている。

才能補正もあり、自分でいうのもなんだが結構高い練度に達しているが、フレアは何を言いたいんだ?

 

(その剣は非常に完成度が高い。ならば、アドリアンの力に加えて、私の炎熱の力を上乗せしても十分耐えられそうだと思ったのだ)

 

おお、面白い発想だ。どうしてそんなことを思い至ったのかが気になるな。

 

(異世界技能による強化を使えば、アドリアンは私を強くできる。他にも、最初期の炎熱制御訓練の時、アドリアンから受け渡してもらった魔力も私を強化している。その逆、私が起点となってアドリアンを強化するにはどうするか、というのを前から考えていてな。それで、この案は実行可能だろうか)

 

可能か不可能かだけで問えば、可能ではある。

ただ、今持っている気や魔力と併用した形でフレアの炎熱を上乗せする必要があるので技術的な難易度が高いと思う。

時間的な費用対効果を考えるなら、関連する異世界技能を取った上で練習するべきだろう。

そうだな、「複数の異なる力を掛け合わせて運用するための異世界技能」を獲得すれば実用化まで持っていける旨をフレアに伝える。

 

(ではそちらの技能もポイントの余剰を見つつ獲得を目指すとしようか。ポイントはアドリアンが強くなるだけでなく、私の力量向上でも獲得できるようだから励まねばな)

 

ポイントの余剰は今も相応にあるけどね。

フレアはやっぱり求道者気質だなぁ。

以前も思ったけど、俺と似て強くなること自体が楽しいんだろうな。

 

今の時刻は……研究室の準備が出来るまでまだまだ時間があるな。

予定通り、町を回って皆と交流しよう。

 

『アドリアン、私も同行しても良いか?シューベト町の人々がどのように過ごしているのか興味があるし、町民と話もしてみたいのだ。体がこれ以上大きくなると、町に降り立つのは難しくなりそうだしな』

 

了解。ただ、フレアの移動範囲は大通りに限定した方がいいな。

当然だけど、通行する人や大通りに面した家を吹き飛ばさないよう気をつけてもらおう。

 


俺とフレアはシューベト町に戻り、日暮れまで町の人々と交流して過ごした。

俺が荷運びやら何やらを手伝っている横で、フレアは通りかかった町の人達に話しかけており、皆をちょっとギョッとさせてたなぁ。

まあ、なんだかんだ町の人々はフレアとの会話に応じてくれたのでよかったよ。

フレアが皆を怯えさせないよう彼なりに気を使っていたのもあるだろうけどね。

最後の方はやっぱり子どもの相手をフレアはしており、俺が同乗した上でだが、背中に子どもを乗せて飛んであげていた。

 

『アドリアンもそうだったが、空を飛ぶというのは人々の叶えたい空想なのだろうな。今日の最後に知り合った、あの神族の兄妹も同様だったしな』

 

そう、フレアの言うように、俺はとうとうシューベトで暮らしている神族に出会ったんだよな。

俺より幼い子達で兄妹の神族だったけど、顔の紋様が兄妹間で違っていたから恐らく血の繋がりはないのだろう。

神族の兄妹はフレアのことを物陰からこっそり見ていたので、町の子ども達がフレアから離れた後、一緒にフレアに乗ってみないかと俺が誘ってみたら、二人ともコクコク頷いてたなぁ。

 

神族のお兄さんはルーカス、妹さんはエイリンという名前で、ルーカスの方は黄色い瞳・両頬に長方形の紋様を持つちょっとだけ生意気な男の子、エイリンの方は茶色の瞳・目下の両頬に横2本線の紋様を持つのんびり屋の女の子という印象だった。

兄妹の話を聞いてみると、二人には既に両親がいないらしく、エステル母上の密かな支援を受けながらシューベト町外れの古民家で暮らしているとのことだ。

母上が神族を支援しているのは全く知らなかったけど、デルカル大陸でも魔女狩り発生が予想される今、神族を助ける行為は一段と危険度が高まっているからしょうがないね。

 

ルーカス・エイリンと一緒に一頻り遊んだり飛行を楽しんでいたが、日没が近くなったのでお開きとなった。

 

「アド、フレア!また遊ぼうな!」

「アド君、フレア君。絶対また会おうね!」

 

そう二人はお別れの挨拶を残し、仲良く並んで家に帰っていった。

両親がいないためか、二人ともしっかりした子達だったな。

 

『ああ、好ましい気質の兄妹だった。だが、魔女狩りを警戒してか、他の人達と深く交流はできていないようだ。少し気にかけておくとしよう』

 

それはありがたい。

あの子達もフレアのことを怖がっていなかったからきっと心強いだろう。

俺もジーヴ村の孤児院の時みたいに、たまにおもちゃや本でも差し入れしに行こうか。

さて、いい時間になったしシューベト城の地下に行ってみようか。

いつも通り就寝時間に秘密基地で落ち合う約束をフレアと交わし、フレアと別れた俺はシューベト城への移動を開始した。

 


複雑な移動ルートを経てシューベト城地下の隠し部屋……黒い魔力の石の浄化用に用意された研究室に到着した。

部屋に入ってまず目に入る棚には様々な大きさのガラス瓶や調剤器具、基礎的な薬品の材料等が沢山詰められている。

部屋の奥に置いてある椅子・テーブルは書類記載用と調剤用でそれぞれ用意され、調剤用テーブルの上に分厚い手袋と複数の魔力探知機が置いてあった。

手袋を装着した上で探知機の黒い魔力の石を使って実験しろ、ということなのだろう。

また、予めリクエストした通り、魔力水を煮詰める為の窯も設置してくれている。

……この部屋を見られたら魔女扱いされても文句は言えないな。

 

もうそれなりに遅い時間なので、窯や各種器具等に不備がないことだけを確認して、俺は研究室を後にした。

 


自宅に戻った後は夕食を食べ、ポイント獲得用の読書を就寝時間まで行った。

就寝時間となってしばらくしたら、部屋に鍵を掛けて秘密基地に移動する。

人里から離れた位置に設置した秘密基地への入り口からフレアも合流し、俺達はいつものように訓練や模擬戦闘をこなしていく。

勿論訓練だけでなく、合間合間にゲームをしたり漫画や小説を読んだりしながら感想を言い合い、楽器を弾いたり夜食を食べたりしながら楽しい時間も過ごしている。

 

うん、今日も充実した1日だったな。

……実際には24時間以上経っているけどね。

 

さて、明日からは黒い魔力の石の浄化について本格的に研究していくことになる。

一筋縄ではいかないが、やれる限りやってみよう。

まずは古代神レフガトの泉か、泉から流れ出た水筋から魔力水を採取する所からだ。

俺とフレアは明日の予定を話した後、秘密基地を出て各々の寝床に戻り就寝するのだった。

 

 

 

 


浄化研究開始時点で、俺は浄化研究が年単位で時間がかかるため、試薬の完成はデルカル大陸での魔女狩り開始までに間に合わないと予測しており、実際にその通りになった。

 

訓練・勉学・父上や母上の手伝い等と並行しながらではあるが、俺は黒い魔力の石を完全に浄化する手段を現実時間で3年以上にわたって根気よく研究し、遂に浄化剤の完成に漕ぎつけたのだが……。

 

浄化剤の完成がまさかあんな事に繋がるとは、研究を始めた時の俺には全く予想できていなかった。

悪いことではない筈なんだけど、正直戸惑いの方が強いんだよなぁ。

はあ……。




黒い魔力の浄化に目処が付くまでの出来事は次話以降ダイジェスト3話分で進めます。
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