チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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25話 浄化研究期間の出来事を振り返ろう その1

黒い魔力の石の浄化研究を始めてから3年以上経過し、俺も13歳になっている。

現在は秘密基地の自室で次の研究方針を整理している所だ。

苦戦するのは分かっていたが、これまで試したことは基本的に全て失敗しているので、流石にちょっと胸にくるものがある。

分かっていたことではあるけど、魔女狩りもデルカル大陸に輸入されちゃったしなぁ。

そろそろ発想を変えてアプローチをする必要があるかもしれないな……。

そんな事を頭の中で考えていると、器用に爪で漫画を読んでいたフレア(体を縮小済み)が声をかけてくる。

 

『アドリアン、煮詰まっているようなら、研究を始めてからこれまでの動きを振り返ってみるのはどうだ?新たな手法を試す前に見落としがないかを確認できるし、休憩がてら研究以外の活動内容を思い返すのも悪くないと思うぞ』

 

確かに、いい案かもしれない。

俺は研究を始めてから、日々の出来事を軽くメモするようにしているので、それを見返せば頭の中を整理できるし、メモに記載した研究以外の出来事に思いを馳せるのも気分転換になるだろう。

 

フレアも漫画を本棚に戻し、こちらに近づいている。

どうやら一緒にメモを見返す心算のようだ。

基地内のキッチンからフレア用の水と俺が飲むお茶を取ってきて、メモと一緒に机に並べていく。

これで準備は万端だ。

それじゃあフレアと一緒に約3年分のメモをざっと見ていこうか。

 


⚪︎年A月a日

まずは無理であることを承知で物理的な石の損壊で黒い魔力を砕けるかを試す。

砕く、押し潰す、すり潰す、その他何れも想定通り効果なし。

 

⚪︎年A月b日

予め採取しておいた古代神レフガトの泉を元にした魔力水を使って黒い魔力の石を煮詰める。

窯の火力を調節して王立図書館の記載にあった通りの温度で処理した所、黒い魔力の石を無事普通の魔力石にできていることを確認。

だが、作業完了後、研究室に置いてあった普通の石が少しずつ黒い魔力の石に変わる。

この手法では完全浄化には至らないことを改めて確認。

 

『黒い力そのものに有効な何かを見つける必要があるのはこの性質故に、だったな』

 

そうなんだよね。処置をした石は魔法媒体とか魔力消費の肩代わりとか色々使えるんだけど、他の石が黒い魔力の石になってしまい、大陸全体における黒い魔力の総量は下げられない。

汚染元を真の意味で排除できていないのだ。

汚染元として仮称している黒い力をどうにか出来る素材を探していたが、ことごとく失敗したからなぁ。

 

しばらく試行錯誤が続くからここはざっと流し読みして……この辺りからか。

 

 

⚪︎年B月d日

ルーカスとエイリンの家に本や手製のおもちゃを持っていく。

時間があったので、農家の方からまたもらってしまった黄金芋でおやつを作って二人に振る舞う。

二人とも頬を緩めていたから、きっと気に入ってくれたと思う。

 

⚪︎年B月e日

勇士隊の皆に真水作りの手法を共有。

ついでに蒸留後に残った結晶を濾し器で濾し、塩として使えるかを調査。

質は売り物になる程ではないが軍用・家庭用などには扱えそうであることを確認。

海水はシューベト城西の海岸で採取。

ジーヴ村より海水を回収する手間が大きくかかるが、海水の回収で勇士の体力作りになる上、真水作りや海岸までの道路整備で魔女狩りの人手が足りないという話に更に説得力を持たせられると、父上は黒い笑顔を浮かべていた。

また、海岸までの道路沿いで、勇士隊を使って作物の栽培を進める予定。

 

『リーガルは教皇から既に心が離れているようだな』

 

今まで親しくしていた分、ジーヴ村での事件のせいで好感度が反転してしまったんだろうな。

俺としては凄くありがたいけど。

 

 

⚪︎年C月b日

リアート村の鉱山で落盤の連絡あり。フレアに乗って急行。

村人がドラゴンに仰天するも、俺が卵から育てた個体で、危害を加えたり悪意を持った振る舞いをしなければ人を襲わない旨を説明。

フレア自身が人間の言葉で補足したことで村民に更に驚愕されるも俺が鎮静化させ、鉱山へ。

鉱山の通路を崩さないよう落ちてきた岩石を排除。

鉱員は軽症だが他は何事もなく生還。

 

『リアート村の人々とはあまり話せなかったな。シューベトの人々よりドラゴンを恐ろしいと思う気持ちが強いのだろうか。それとも、生活に余裕がないからだろうか』

 

どちらもあり得ると思うけど、そこに強大な相手への対抗手段がないというのも加わるかもしれない。

シューベトは、俺が一種の抑止力として機能している面もあるから。

 

『私が乱心してもアドリアンなら止められる、ということだな。確かにそれは疑いなき事実だ。リアート村にはそれがない……安心を齎す存在がいない、か。難しいな』

 

前にリアート村に来た時と比べて作物も育ち、人々の表情と血色も良くなっていたから生活は改善傾向にあると思うけど、例えば王宮勇士隊がリアート村を長期的な活動拠点とするのはほぼ不可能だろう。

ままならないものである。

 

 

⚪︎年C月k日

フレアと共にジーヴ村のパディさん・フィリア宅を訪問。

手土産に手製のおもちゃと本の他、ジーヴ村で手に入りにくい食料も持参。

黒い魔力の石の浄化のため、神族に伝わる素材の調合方法を聞きにいく。

魔力が必要な工程もあったが研究の参考にするという理由でそちらも教えてもらう。

調合方法の伝授後はパディさんと共にフィリアの相手をする。

 

『確か、この時のフィリアはシューベトにいる神族、ルーカスとエイリンのことを気にしていたな』

 

ルーカス達も他の神族のことを話したら興味を持ってくれたから、予定の空いている時に二人を引き合わせてあげたんだよなぁ。

フィリアとルーカスは口喧嘩したりもしてたけど、結構相性良さそうだったな。

 

 

⚪︎年D月f日

大量に溜め込んでいた転生特典用ポイントを使用。

自室の拡張・トレーニング場・戦闘シミュレータの機能向上を実施。

 

肉体のトレーニング用に以前購入した装着者に重力負荷を描けるリストバンドの高級版を取得。(他者にも重力負荷をかけられる上、逆に重力負荷を軽くもできる。フレアの訓練にも併用予定)

 

以前取得した魔法の上級版を取得。魔力トレーニングの方法で高難易度版が閲覧可能となる。

 

勇士に指示を出すことが偶に出てきたので「指揮に関連する異世界技能」を取得。

 

フレアの希望・提言を受け、「仲間に一時的な形態変化を施し強化させる異世界技能」・「複数の異なる力を掛け合わせて同時運用できるようになる異世界技能」を取得したが、こちらは要訓練。

 

後日追記:形態変化・登録形態

・翼を強化して機動力を高めた形態

 備考:翼の内部構造とエネルギー収束効率を変化させているだけなので、外観上は翼がより赤熱した色になる以外は変化なし

 

・爪や尻尾先端を強化して近接での戦闘力を高めた形態

 備考:翼と同様、内部構造とエネルギー収束効率の変化のみのため、外観上は爪と尻尾がより赤熱する以外変化なし

 

・前2つの強化に加えて肉体強度・ブレスの威力も引き上げた高出力形態

 備考:前の2つの強化に加え、肉体構造にフレアの要望通り手を加えているため大幅な外観上の変化あり

 

・全ての異世界技能による強化を発揮させるための決戦形態

 備考:基本的に基地内シミュレータのみで運用

 

『あのシミュレータは実に高性能だ。もう会っただけの相手もほぼ再現可能となったしな。模擬戦の状況設定も非常に細かくできるようになっているし、まだ上があると来ている』

 

強化後のシミュレータではシューベト襲撃時のアンシエントドラゴンも出せたからなぁ。

シミュレータ上とはいえ、あのドラゴン相手にも余裕で勝てるようになったのはやっぱり大きな自信になる。

シミュレータで新規解放された機能のミラーマッチで出てきた自分の写し身の方が余程強かったのがちょっと微妙な気分になったけどね。

ただ、非常に良い修練になるのでフレア共々ミラーマッチはよく利用している。

それにシミュレータを更に強化すると訓練用の仮想世界すら展開できるみたいだから、機能拡張の日が楽しみだね。

 

『そうだな。だが、私の意見で取得した能力は記載通り要訓練だった。今は問題なく使いこなせているが、取得当初は私もアドリアンも苦戦したものだ』

 

俺の場合、異なる力を同時運用する能力によって気と魔力を掛け合わせて扱う事は出来たものの、フレアの炎熱を複合して使う場合は安定感を欠いてしまい、周囲に高熱の火の粉を大量に撒き散らしてしまう有様だった。

今ではフレアのエネルギーを俺自身や剣の強化に自在に振り分けられるものの、訓練場所が秘密基地でなければ確実に小火騒ぎになっていただろう。

 

フレアの形態変化は変化先を4つほど登録できたので、フレアの希望を反映し、メモの通りに登録したが、翼を強化した形態ではシミュレータ内とはいえ事故りかけたからなぁ。

 

『私が超高速機動の制動を誤って地面に追突しかけたからな。加えて、私が機動を制御できるようになっても、騎乗したアドリアンの負担については想定していなかった……今はもう慣れたようだが』

 

最初に高機動形態に乗せてもらった時は意識がブラックアウトしかけたからねぇ……。

当初高機動形態に騎乗する場合、異世界技能を使って気流を読んでルートを指定したり若干速度を緩める指示を出したりして、搭乗者に負担がかからない飛行方法を俺が示さないと運用できなかった。

今は肉体が更に鍛えられた上、機動にも十分に慣れたからそこまでせずとも高機動形態に騎乗可能だが、もし高機動形態で同乗者がいる場合は、俺が乗って乗り手の負担が少ない飛び方を指示するのはほぼ必須だろう。

流石のフレアも自分の体ではない搭乗者の負担を抑えた飛び方というのは俺の指示なしでは厳しかったみたいだし。

 

『だが、これで他大陸へ行っても余裕で日帰りできる。高機動形態であれば、抑えめの速度でも計算上片道30分未満でバベリア大陸へ移動できるからな。研究がひと段落して手の空いた時期で構わないから、バベリア大陸のドラゴンバレー行きに付き合ってほしい』

 

雷の勇者に従ったドラゴンの件だね。

もちろん覚えているのでいつか必ず行こう。

 

それにしても形態変化なんだけど、3つ目は理解できる。

身体の構造が変わるから、基地の外ではよっぽどの事が無い限り使えないけどね。

最後の4つ目は本当に必要だった?

 

『……アドリアンが言っていた「全部盛り」というのをやってみたかったんだ』

 

そ、そうか。気持ちは凄く分かるから納得したけど、誰と戦うつもりなんだってぐらいの強さになるからなぁ、あれ。

俺も気と魔力を複合して運用した時点で異界法則が三重重複になるし、そこに別の異世界の武器・剣技・魔法等のいずれかを加えればあのフレアと同等以上になるから、人のことを全く言えないんだけどね……。

お互い基本的にシミュレータで遊ぶ用だと割り切ろう。

 

……そろそろメモの続きを読んでいこうか。

 

 

⚪︎年E月t日

新規獲得した能力の制御に成功。

ただし、フレアの高機動形態は騎乗の際に工夫を要する。

ザルエルさんに倣い、フレアの力を乗せたシューベターを暫定で「フレア・シューベター」と呼称。

また、ドラゴンバレー南部で成体のマグリックドラゴンと友好的な接触に成功。

肉類の提供を対価に、フレアへ訓練を付けてもらうことを了承してもらう。

 

『流石に成体ともなれば、人語は無理でも竜のやり方で意思疎通は可能だったな』

 

竜言語も転生特典で聞き取り・会話はできたが、喉の音域の関係上、俺が竜の言語を発音する際は訛りが出てしまうらしいため、俺が竜の言葉で発言する時はフレアに通訳を頼んだけどね。

何にせよ、まだ若い個体なのに自分の炎熱を完全制御できているフレアに成体のマグリックドラゴンは興味を持ってくれた。

更にフレアが丁寧に成体竜に接したせいか、成体竜はとても機嫌をよくしており、フレアとの会話に快く応じてくれた上、フレアが会話の最後に願い出た訓練への協力依頼を受け入れてくれた。

 

『成体の同族が好意的だったのは、私のような若い個体と穏やかに接触することが稀だからかもしれないな。カルダリア湖の個体と違い、良い出会いとなってよかった。あの時点で明確に私より格上となる成体の同族から教わった体やブレスの扱い方は大変参考になった』

 

お肉の提供に釣られたからのような気もするけどなぁ。

ちょっと食いしん坊な気質があの竜にあったし。

マグリックドラゴンは小型ドラゴンの肉が好みではあるんだろうけど、俺が転生特典で取得した肉類もあの竜は喜んで食べていたから良かったけどね。

どちらにしても、成体のマグリックドラゴンがフレアの教官役になってくれたのは非常にありがたかった。

今ではフレアもあの竜に勝利しているとはいえ、あの竜がフレアの育成に尽力してくれた事実は今後も変わる事がない。

 

『ああ、指導をしてくれた相手への敬意を忘れてはいけないな』

 

あの竜に勝利した後、凄い場所に案内してもらった分、尚更だね。

さて、次は勇士の訓練経過や研究の失敗記録が続いて……これが1年目最後のメモか。

 

 

⚪︎年L月s日

溶けない氷集めのため、ジーヴ村近郊の氷の洞窟探索を実施。

洞窟探索前にフレアに乗ってジーヴ村を訪問した際、見慣れない建物が1件建っていたが、国王陛下が派遣した新設部隊・デルカル大陸支援隊の勇士詰所であることを確認。

隊長は王宮最高勇士の座を返上したルイスさん。

陛下からの褒美ということで引き抜きにも応じるとのこと。

 

『これには驚かされた。最高勇士の座を手放したことではなく、彼がデルカル大陸に来たことに』

 

ルイスさんとジーヴ村で会ったのは俺もびっくりしたよ。

「私が王宮最高勇士の地位に無くとも、共に理想の勇士を目指したいと迷わず言ってくれた者だけで部隊を新規に設立したのです。そうそう、アドリアン様のご要望や引き抜きには最大限応じるよう陛下から仰せつかっておりますので、御用があれば何なりとおっしゃってください」なんて笑いながら言ってたし。

 

『国王からの褒美の一環でもあるとはいえ、最高の勇士たらんとするルイスがこの大陸に来たのは、彼がアドリアンに感謝していたからだろうな』

 

そうかなぁ。結局最高勇士の座を手離すことになってしまっているけど……。

 

『それでもさ。あの後2度目の模擬戦を見学させてもらった。アドリアンも認識しているだろうがルイスは1度目と別人のように強くなっていた。アドリアンの言葉で心の靄が払われたから、ルイスは新しい道を見つけられたのだろう』

 

あの予期せぬ再会後、せっかくの機会なのでとルイスさんに再び模擬戦を誘われ、村の郊外で手合わせしたが、ルイスさんの気迫・剣を受けた時の重み・剣筋と判断の鋭さが1度目の手合わせと比して明らかに向上していた。

ルイスさんは弛まぬ訓練と偶に実施する俺との模擬戦により現在は更に強くなっており、ジーヴ村の住民を始めとした人々の力となりながら最高の勇士を目指して前へと進んでいる。

俺との会話がルイスさんにとって良い影響となったのなら、きっと喜んでいいのだろう。

 

さて、次は2年目のメモだ。1年目のメモを一旦片付け、小休憩してから続きを見ていこうかな。




勝手に設定・武器
<フレア・シューベター> 
ザルエル・シューベターにフレアの炎熱エネルギーを上乗せした形態の仮称。
物理攻撃力が65%上昇、火傷付与、火炎属性の攻撃時100%の追加ダメージ。
毎ターン物理攻撃力・火炎属性攻撃時の追加ダメージがそれぞれ10%ずつ上昇する。

使用可能スキル
火竜斬
5ターンに1度使用可能・全体攻撃・火炎属性
装備者の力と魔力・フレアのステータス平均により威力変動

※魔女の泉3の仕様を参照 魔女の泉R仕様の場合は各種数値上昇
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