チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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26話 浄化研究期間の出来事を振り返ろう その2

俺とフレアは小休憩を済ませ、机に浄化研究2年目のメモを並べている。

しばらく素材集め・研究・訓練・真水作りや作物栽培・道路整備の手伝いと雑多に続いていくのを振り返り……このあたりからか。

 

△年D月a日

国王陛下からの派遣人員として、シューベトに王宮特使ヨハネスさんが来訪。

リーガル父上とエステル母上の政務補佐役を引き受ける。

任期は6年で、ルイスさんと同じく、俺から引き抜き依頼が来れば応じるよう国王陛下から仰せつかっているとのこと。

 

『確か、マニル島へ来訪した時に世話をしてもらった召使いだったな。大抜擢と言えるのではないか?』

 

当にその通りだね。

召使いさん改めヨハネスさんはとても頭の良さそうな方だったから、召使いの業務と並行して猛勉強を進めていたのかもしれない。

王立図書館の一般開放分だけでもかなりの情報量があるし。

 

『リアート村の出身であるためか、貧しい人への支援政策を提示する人物だったな。それと、神族に対して非常に強い尊敬の念を持っている』

 

国王陛下がヨハネスさんを推薦したのは、多分神族に対する姿勢が陛下と一致していたからだろうね。

ヨハネスさんが来てから、とても助かる点とちょっと大変な点がそれぞれ出てきている。

 

『助かる点は任された政務補佐の仕事を十全に仕上げてくれる所で、大変な点はヨハネスとリーガルの衝突に対し、アドリアンとエステルが口を出す必要が時折出てきたことだと言っていたな』

 

そうそう。

国王陛下から派遣されただけあり、ヨハネスさんは各種政務の手伝いを見事にこなしてくれている。

ただ、他村へのリソース提供、特に最も貧しいリアート村への支援を実施する提言を彼はよく行っており、父上と衝突している場面が散見されている。

彼の提言を聞いていると、最終的にはそうしたいって頷ける気持ちは確かに出てくるから、ヨハネスさんは多分理想が高い人なんだろうな……。

 

『政策決定権を持っているのは領主のリーガルである以上、理想論を一気に通すのは難しいというのがアドリアンの判断だったか』

 

父上はリアート村からの軍事侵攻をかつて退けており、その分他村にキツくなるのはもうしょうがない。

ヨハネスさんの提言を100として、それを一気に通すのは父上がまず拒否するけど、提言内容を10~30くらいに抑えてシューベトにも+となる要素をアクセントに加えると結構案を通せるからね。

俺が父上に対して発言すると案が通るのをヨハネスさんは不思議がっていたけど、この辺りのポイントは今後もヨハネスさんに経験を積んでもらいつつ覚えてもらおう。

 

また、俺と父上・母上はシューベトの魔女狩りへの対応についてヨハネスさんに説明し、シューベト領内の救荒作物栽培と真水作りのサポートをヨハネスさんにお願いしている。(流石に古代神・神殿長達の計画については伏せているが)

古い作物や水をリアート村・ジーヴ村に回す案は母上が父上の裁可を既に得ているので、魔女狩り対策として現在準備しているシューベト領内での勇士隊による救荒作物栽培や真水作りが軌道にのれば、自然と他村に回るリソースを増やせるからね。

シューベト領内で出来の悪かった見切り品相当の作物は捨て値で他村に回す案を俺が新規に通したので、猶更だ。

 

それとヨハネスさんは魔女狩り参加を完全に拒否できないか頻りに言っていたが、父上が「教皇の勢力が強すぎて、最終的にはどうしても要請を躱せなくなる」と回答すると、がっくり項垂れていたのは流石に可哀そうだった。

裏の事情である「古代神達が進めている計画の妨げになり得るから、魔女狩りを完全に廃するようには動けない」とは言えない分、なおさらだ。

父上はシューベト領民や勇士達が魔女狩りに積極的に参加したくないと思わせる腹案を練っているらしく、俺と母上もヨハネスさんに協力して秘密裏に神族を支援すると言ってヨハネスさんを慰めたけどね……。

ただ、俺が教皇の配下に黒い魔力の石によって汚染されそうになった件がもうシューベト領民に完全に広まっているから、例え父上の腹案がなくとも、教皇の配下の仕打ちに憤っているシューベト領民はセルビス氏の施策に積極的には協力しなさそうな気はしている。

 

……ヨハネスさんの件はこんな所かな。

次のメモを見ていこう。

訓練の協力や素材集めと研究について記載されたメモを読み進めていき……後は神族関連と真水作りのことが並んでいるな。

 

 

△年E月d日

ルーカス・エイリンを伴い、ジーヴ村のパディさん・フィリアを訪ねる。

バベリア大陸由来の素材について一般的な調合方法と注意点をパディさんに教授してもらう。

教授後はルーカス・フィリアの勉強を見る。

ルーカスとフィリアは勉強の進捗について競い合っていた。

同じ教材だとフィリアの方が年上の分有利の気がしたが、流石にやっている問題については各々年相応のものだった。

 

△年E月v日

食料と本を持参しルーカス・エイリンの様子を見に行く。

一緒に遊んだり勉強を見てあげる。

エイリンがややよそよそしくなっているが原因は不明。

ルーカスが何かを指摘していたが、直後にエイリンから殴られていた模様。

 

△年G月f日

パディさん・フィリア宅訪問時、塩分を集める物質についてパディさんから伝達あり。

カルダリア洞窟に出没する甲殻類・モレフの皮の裏側に所定の下処理を施すことで塩分をある程度吸着させることができる模様。

海水を鍋に流し込む際、下処理済みのモレフの皮を張り付けた筒を通すことで塩を一定量除けるので、真水作りの効率化に使用可能。

皮の表側が硬いため逆浸透膜としては使えず。

 

△年G月r日

ラバロードの核とラバラックの角を窯へ纏めて入れてしまった所、一気に水が沸騰。

ラバラックの角が着火剤となってラバロードの核を一時的に活性化させている模様。

海水の沸騰時間短縮に使用可能。

処理したモレフの皮で作った筒と合わせることで、初期の蒸留装置と比較して海水から真水を作る速度を短縮できていることを確認。

以降カルダリア洞窟・ジーヴ村方面の氷の洞窟で改良版蒸留装置に使用するモレフの皮・ラバロードの核・ラバラックの角・溶けない氷等の定期的な採取を自身の業務とする。

後日追記:カルダリア洞窟奥・ジーヴ村方面の氷の洞窟奥に秘密基地の入り口を追加。

 

『神族のパディが以前相談したものを見つけてくれてよかったな』

 

逆浸透は無理だったから理想的とまではいかなかったけど、海水を煮詰める前に例のモレフ筒を通せば塩の大半を取り除けるのはありがたかったよ。パディさんに感謝だ。

モレフ筒をぶんぶん振れば張り付いた塩を割と簡単に落とせるし、濾し器で塩を分けていた時より塩の純度が上がって味も良くなったしね。

 

ラバラックの角とラバロードの核の件は、本当は一個ずつ煮込んでみようと思ったら間違えて両方同時に窯にいれちゃったのが原因だけど、工程をミスしたおかげで結果的に海水の蒸留速度を上げるのに転用できるようになった。

 

モレフ筒と瞬間沸騰用素材を追加した改良版の蒸留装置で、真水作りの効率はグッと向上したけど、それはカルダリア洞窟・氷の洞窟で採取できる素材の需要が上がったことを意味している。

特にカルダリア洞窟にいるラバロードを打ち倒せる戦力は、シューベトには俺以外存在しない。

デルカル大陸全体の勇士となると、ルイスさんなら恐らくラバロードにも勝てるが、定期的に採取が必要なものだからフレアに乗って現地までの機動力を確保できる俺が適任なんだよね。

そのため、カルダリア洞窟・氷の洞窟での素材回収を俺の仕事に追加した。

 

セルビス氏からの魔女狩り参加を求める圧力は日々強まっており、デルカル大陸への魔女狩り上陸までそう猶予がないことを加味し、既に各地域の単独での探索は父上と母上から許可が下りているため、素材採取の際、それぞれの洞窟奥地にこっそり秘密基地の入り口を追加しておいた。

これで素材採取の日は自由時間が相当量確保できたので、だいぶ助かった。

 

バベリア大陸に行った時も適当な場所に秘密基地の入り口を設置できれば、2回目以降は気軽にバベリア大陸を訪問できるようになるから、基地の入り口設置を忘れないようにしないと。

ただ、セルビス氏のお膝元であるバベリア町・元アラムート神殿長の神殿を建て替えたという教皇城に行くのは言うまでもなく大問題だから、活動地域を考える必要がある。

そう考えると、バベリア大陸で秘密基地の入り口を設置する場所は、絶対にセルビス氏の支配下ではない場所……フレアの目的地・バベリア大陸のドラゴンバレーが一番適切かな。

まあそこは実際にバベリア大陸に行った時に改めて決めよう。

 

さて次は素材集め・改良版蒸留装置の具合の確認・浄化研究の失敗がずっと続いて……その次は、うん……。

 

『う、うむ……(エイリン、相談に乗ったはよいが……すまない……)』

 

 

△年I月d日

ルーカスとエイリンの家に本や食べ物を届けるが、ルーカスは不在。

エイリンから結婚を求められたが、断る。

 

 

……物凄く驚いたよ。

ストレートに「今日から私をアド君のお嫁さんにしてください!!!」と言われたから……。

 

『……漫画や小説などを読んでいると、男女がつがいとなる場合、誤解のない言い回しの方が望ましいと私は思えた。そういう意味では適切な意思表示のように思えるが……』

 

うん。それは間違いない。

加えてエイリンは美少女で性格もとてもいい子だよ。

でも……それでも応えることはできない。

 

だってエイリンは年齢がまだ1桁だよ!!

領主の息子である以上、俺はお相手を見つけたら両親に報告しないといけないと思っている。

年齢1桁の子どもと結婚するなんて俺が抜かしたら、父上はもちろん母上にも大目玉を食らうよ!!

将来付き合ってとかならともかく、すぐに結婚を求められてしまうと断らざるを得ないよ……。

 

『……人がつがいになるには、一方が若すぎると問題になるのだな。覚えておこう(私がエイリンにすべきだった助言は、”将来的に”と言うようにするか、勝負を焦りすぎてはいけないということだったか……)』

 

エイリンとは若干ぎくしゃくしたけど、今は以前の通り交流できているから良しと思おう……。

 

 

△年I月m日

ルイスさん率いるジーヴ村のデルカル大陸支援隊と連携を取るため、少数だが交代でジーヴ村へシューベト勇士を派遣することが決定。

初回の派遣人員は中級勇士に昇格したソードさんとブレイドさん。

素材採取業務のついでになるが、フレアと共にソード兄弟をジーヴ村に送る。

ソード兄弟はルイスさんの堂々とした振る舞いと傑出した強さに感服していた模様。

 

△年I月x日

ヨハネスさんから肥料の不足について提言。

家畜の糞はシューベト用の肥料に使われているが、肥料を他村に回るようにできないかとのこと。

ヨハネスさんの提言を受け、ジーヴ村南の埠頭とその近辺で大量に落ちている海鳥の糞を活用することを父上と母上に提案。

以下の案を実行することを承認。

 

小遣い稼ぎをしたいジーヴ村の村人に海鳥の糞を買い取る旨を通達。 

※ただしジーヴ村に派遣したシューベト勇士は業務として海鳥の糞回収に強制参加。

回収してもらった糞の2/3をシューベトで買い取る。(残りの1/3はジーヴ村の肥料用)

買い取った海鳥の糞を肥料化し、一部はシューベトが使用。

残りをリアート村に用途を限定して提供。(俺が発見した作物に使用)

 

各々が獲得するもの

シューベト:公共施設を自費で整備する名声・少量の海鳥由来の肥料・リアート村から提出される海鳥由来の肥料を使用した場合の作物栽培記録(資金・少数の労働力と引き換え)

 

ジーヴ村:海鳥由来の肥料・資金(労働力と引き換え)

 

リアート村:海鳥由来の肥料の大半(作物栽培記録と引き換え)

 

△年J月n日

真水作りの拡張に伴い他村への水の提供は改善傾向だが、ヨハネスさんからもう少し何とかならないかと提言あり。

転生特典で水分を多く含む作物を呼び出すが、非公開図書を調べる体裁を取るため、父上・母上の許可を貰ってマニル島王立図書館に赴く。

 

特典で呼び出した作物は「カラハリスイカ」。

リアート砂漠内で、巡回・素材採取等でもまず訪れない外れの地に配置場所を指定。

異世界適応機能をオンにして作物を呼び出した後、非公開図書の植物図鑑にカラハリスイカが記載されたことを確認。

カラハリスイカの回収は作物捜索に難航しているよう見せるため後日に回し、時間一杯まで浄化研究用の素材について加工・調合方法を調査。

 

△年J月z日

リアート砂漠よりカラハリスイカを回収。

他の救荒作物と同様の条件でリアート村・ジーヴ村に提供。

レフガトの泉南の荒地でも栽培。

後日追記:全ての地域で無事生育を確認。

 

『この辺りの活動は、私が生まれていない時にアドリアンがやっていたことに近いらしいな』

 

シューベト町の外で一番初めにやった活動が作物捜索だからね。

ある意味手馴れている。

もともと水分を補う作物は呼び出そうとしていたし、ヨハネスさんの要望はちょうどいい機会になった。

転生特典で呼び出した作物をいきなり見つけてしまったら余りにも唐突すぎるから、王立図書館でアリバイ作りをしたけどね。

カラハリスイカは大量に水分を含む・保水性に優れる・砂漠でも生育するという3拍子が揃ったリアート村・ジーヴ村で確実に役立つ作物だ。

ヤシの木より先に特典リストから見つけていれば、最初のリアート村提供用の作物はこちらだったかもしれないぐらいの代物である。

ヨハネスさんも喜んでくれたが、報告を済ませて俺がヨハネスさんから離れた後、「これがあの時あれば……」とヨハネスさんは小さく呻いていた。

 

……ヨハネスさんがリアート村で経験しただろう飢えと渇きは今でも彼を苦しめている。

残念ながら、水と食料について一切不足なく過ごしてきた俺では、ヨハネスさんの苦しみを分かち合うことはできないだろう。

 

ヨハネスさんと俺は穏やかにやり取りできていると思うが、それでもふとした時、本当に僅かではあるが、マニル島で感じた俺への隔意がヨハネスさんから浮き彫りになる時がある。

本人としてはちゃんと抑えているつもりかもしれないが……心のどこかで思っているんだろうな。

何もかも恵まれたお前に自分が経験した苦労や絶望など分からないだろうって。

それが確かな事実である以上、反論はできない。

 

『経験上、あるいは立場上、どうしても共感できない相手もいる、ということか。だが、それでも大陸に蔓延る飢えと渇きは減りつつある。アドリアンが目指す先へ着実に近づいているのだから、腐らずに進めていけば良いと私は思う。いつか、ヨハネスがアドリアンに見せようとしない不和も晴らせる時が来るだろう。役に立てるかは分からないが、私もヨハネスのことをよく見ておくようにしよう』

 

……ありがとう。まあ今は黒い魔力の石の浄化研究が最優先だけど。

でも、こうして研究結果を眺めていくと、次にするべきアプローチが見えてきたと思う。

多分、これで駄目なら転生特典による能力等に頼るしかないだろう。

俺が死んでしまった後に石を浄化出来なくなる可能性があるから、出来るだけこの世界の素材でどうにかしたいが……。

 

『次の研究の方向性が定まったのだな。だが、それはメモの残りを見てから改めて聞かせてもらおうか』

 

分かった。それじゃあまた小休憩をいれて、最後の三年目以降のメモを見ていこう。

……魔女狩りがデルカル大陸にとうとう輸入されてしまった所だから、気が重いけどね。

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