チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

3 / 84
本作は転生アドリアン君の視点がメインとなる予定です。


2話 転生先はファンタジーな世界

大病を患うことなく幼年期を過ごし、自身の転生特典や俺が転生した世界の状況もより深く知ることができた。

 

まず、赤ちゃんの時に使用人の言語が分かった時点で気がつくべきだったのかもしれないが、

どうもこの世界の言葉について、読み書き会話の全てに翻訳補正が入っているようだ。

外国語の勉強は結構大変だから、そこをサポートしてもらえたのは正直助かった。

ただ、特典による才能の向上によって翻訳補正なしでも簡単にこの世界の言葉が扱えるようになってたけどね。

いきなり赤ん坊が言葉を話すのはおかしいので、特典の検索機能を使って得た情報を元に表向き言語を覚える速さを調整したが、それでも周囲の皆さんには天才だと驚かれた。

 

加えて才能の向上は頭脳面だけでなく、身体能力にも発揮されていた。

前世と比較して体が自分の思い通りに動かせる感覚がずっと強い。

ただ、この体が引き出せる出力も間違いなく向上している確信があるので、体を鍛える時は身体能力の制御に力を入れた方が良さそうな気がするなぁ。

歩けるようになるタイミングも言葉と同様に調整しながら過ごしたが、やっぱりこっちも非常に早い成長速度だって言われている。

 

有り難いのは、領主の息子っていうのもあるだろうけど俺の早熟ぶりが周囲の方には好意的に受けとられたことだ。

この世界では人間の中にも一般の人とは隔絶した能力を持つ存在が稀に生まれることがあるらしく、過去に前例があるのも受け入れやすい土壌となってくれたようだ。

今生の父親であるリーガル父上も大変喜んでおり、

父と交流のある勇士達*1

「もしかしたらバベリアにある泉の()()に並べるぐらいの傑物になるんじゃないか?」

なんて冗談めかして話していた。

 

 

そう、()()である。やっぱファンタジー系だったかぁ……。

 

 

この世界はバベリア大陸、デルカル大陸、ウルパ大陸の計3つの大陸からなっており、

いずれの大陸にも神族がいるそうだ。

地図の縮尺から察するに、前世の感覚では大陸というより島のように思えるが、そこは置いておく。

父の領地であるシューベトが存在するデルカル大陸には、特に強力な神族で神として崇められている神殿長がかつて治めていた『泉』という施設が3つある。

デルカル大陸から神殿長達は居なくなってしまったそうだが、今も1つだけ稼働している泉はシューベトに肥沃な大地や水という恵みを齎している。

去ってしまったデルカル大陸の神殿長達は古代神とも呼ばれ、今でも結構な数の人達に崇められているみたいである。

ちなみにお隣のバベリア大陸にある5つの泉には、なんと全ての泉に神殿長が今なお存在しており、泉を管理しながら人々に直接恩恵を与えているとのこと。

 

3大陸のまとめ役であり、父の上役でもあるバベリア国王も神族や神殿長を敬っており、良好な関係を構築しているようだ。

リーガル父上は神殿長を始めとした神族を殊更尊敬しているって訳でもないみたいだけどね。デルカル大陸には神殿長がいないし、そんなものかもしれない。

 

神族の特徴として肌が暗めで顔に紋様、そして白髪で耳が大きいので見た目ですぐ神族だと判別できるが、人間との決定的な違いとして魔力の有無もある。

ゲームみたいに魔力を用いて炎や氷といった自然現象を操る他、魔力を通して物品を強化したり他者の傷を癒したりもできるみたいだ。

神殿長みたいな強大な神族だと魔力を用いて引き出せる現象も桁外れで、泉の施設を使って天候の操作や死者を蘇生することも出来るという。

 

異世界のアイテムや能力を取得する特典が解禁されれば自分でも同じことは可能だろうけど、中々にやばい。たかだか幼年時のスペックが凄いぐらいで件の勇士さんが言ってたように

泉の神族=死者も復活させられる神殿長に並び立てるとか、冗談でも大言が過ぎるよね。

 

そんな凄い神族の皆さんは神殿長の泉付近で暮らしているのかな、と思ったが別にそんなことはなく、人間と比較して個体数は非常に少ないが普通に人里でも暮らしている神族もいて、人間と結婚する神族もいるとのこと。

大体の神族は神殿長が今も存在しているバベリア大陸で暮らしているみたいだが、

デルカル大陸内にある村落にもごく少数だが神族がいるらしいので、いつか会ってみたいものである。

 

 

新たに生まれ落ちることになったこの世界について神族以外の事柄も日々学んでいるが、気がかりなことが2つある。

 

1つ目はデルカル大陸で稼働している泉が3つのうち1つだけ、という点である。

 

他2つの泉が稼働していない=枯れているということは、枯れてしまった泉付近で暮らしている村は生活が苦しいのでは?そんな考えが浮かんだ。

疑問の答えは各種資料や聞き込みですぐに調べられたが、はっきり言ってシューベト以外の村は想定を遥かに超えて貧しい。

デルカル大陸にシューベト以外の主要な村落は2つあり、どちらも枯れた泉の近くにある村である。

大陸南部にある海に面したジーヴ村はバベリア大陸と貿易ができる分まだマシだが、

大陸東南部のリアート村は荒地ばかりな上、シューベト以外の交易ルート付近も砂漠化してしまい、単独では生存に最低限必要な食糧や水に事欠く有様である。

 

シューベトはリアート村やジーヴ村へ対して物資支援を行っており、その規模も徐々に拡大しているようなのでそこは不幸中の幸いなのかもしれないが、もしシューベトの泉も機能停止したらデルカル大陸は確実に危機的状況に陥るよな……。

というか、泉を管理する神殿長がいなくなったシューベト以外の泉2つがとっくに枯れてしまったという事実がある以上、同じく神殿長がいないシューベトの泉による恩恵もどこかのタイミングで停止するという前提で考えた方が良さそうだ。

 

すぐに思いつく対応策としてバベリア大陸かウルパ大陸に移住するという手段が浮かんだが、領を治める立場になり得る以上その手段は難しい。領民全体に移住対象を拡大すれば尚更だ。

となると、デルカル大陸の人々が生きていくのにどうしても必要になるもの……そうだな、最後の泉が枯れた場合でも食糧や水を確保できる下地ぐらいは作りたいな。

この異世界では魔物のような危険な生物も存在しており、幼少期を無事に過ごせているのは領主の1人息子として産まれたのがかなり大きい。

自分の腹案を上手く実現できれば納税や交易で間接的に自分を支えてくれたデルカル大陸の皆さんへの恩返しにもなるだろうし、少しずつ方策を練っていこう。6歳で解放される例の特典もこの件の力になるはずだ。

 

……なんか転生時に想定していただろう状況とは違う形で特典を使うことがままありそうだな。

異世界転生定番の強力な魔法や剣技を取得して各地を冒険し、巡り合わせが良ければ素敵な人と恋愛して……みたいな転生テンプレートも興味はあるんだけど、そこはフル開放された特典の内容と自分の周囲状況を見ながら理想と現実のバランスをとっていこうか。

特に恋人云々は領主の息子である以上政略結婚となる可能性が十分あるだろうし、あまり考える必要はないかもしれない。リーガル父上も勇士時代に活躍した結果、もう亡くなっている祖父・2代前のシューベト領主からの感謝兼取り込みによって祖父の娘に当たるエステル母上と結婚したみたいだしね。

ちなみに1代前の領主となるエステル母上は入り婿のリーガル父上に領主の立場を譲ったそうだ。

 

 

さて、もう1つの気がかりだが、こちらは俺が5歳になっても回復の見込みが全く立っていないエステル母上の体調のことである。

 

この件については当然ながらリーガル父上も焦っており、バベリア王宮や様々な要人との伝を使って医療や薬剤に心得がある人達を招いて治療を依頼しているが、皆手の施しようがないという状況だ。

バベリア大陸にいる神殿長の元へ連れて行って治療を願うにしても、弱りきったエステル母上が別大陸への船旅に耐えるのは到底無理である。

 

……特典の解禁と治療できそうなアイテムの取得は、多分間に合わない。

 

せめてできることを、という思いでエステル母上の元へ毎日お見舞いに行くが、徐々に徐々に衰弱する今生の母の様子に無力感が募っていく。

エステル母上の意識があった時は部屋を訪れる度に頭を撫でてもらったが、今ではお見舞いの時にも母上は意識がない時がままある状態だ。

 

こんなに早く、家族を見送らないといけないのか……。

 

 

母の件で気分が沈んでいるのを自覚していたので、鬱屈した気持ちを少しでも晴らすためリーガル父上に頼み込み勇士の体作りと剣術訓練をさせてほしいとお願いしてみた所、指導を付けてくれる教官を手配してもらえた。

指導教官はヘクターという名前で、歳は50代ぐらいに見えるが背筋がしゃんとしており、落ち着いた性格の軍人だった。

ヘクター教官は依頼した体力作りや剣の扱いだけでなく、戦闘時の心構えや立ち回り、野外活動の仕方や各大陸に出没する魔物等、勇士が身につける各種技能や教養をとても分かりやすく指導してくださった。

 

「体力作りはともかく、技術や知識は3ヶ月もしない内に教えることがなくなりそうだがね」

なんてことを教官には苦笑いされながら言われてしまったけどね。特典によって才能に分厚い下駄を履いているからさもありなん。

 

そんな一幕はあれどもヘクター教官が尊敬できる素晴らしい方であるのは変わらない。

訓練の合間合間に聞かせていただいている教官の経験談もためになるものばかりで、しっかり頭に叩き込んでいる。

 

自分が歳を重ねたらこんな経験豊富でかっこいい人物になれるかな、とも思える人に出会えたのは本当に幸運である。自分以上にエステル母上のことで苦しんでいるのにワガママを聞いてくれたリーガル父上に感謝しないと……。

 

 

そんなこんなで母上のお見舞いを行いながらも訓練や勉学に励む日々を過ごしていたが、

俺が6歳になる頃、バベリア大陸から届いたとんでもない情報が耳に入る。

 

なんでもバベリア大陸の泉を治める神殿長に対して、人間の軍隊が戦争を仕掛けようとしているらしい。

 

ええ……?何がどうなったらそんな事態になるんだ……?

泉を治める神殿長を殺めてしまったら、デルカル大陸の枯れた泉のようにバベリア大陸の泉も停止してしまうんじゃないのか?

バベリア大陸に住む人々の首を絞める行為にしか思えないんだが……。

 

 

別大陸での戦争とはいえまずは状況を把握しないと、などと呑気に考えていたが、

そんな余裕を吹っ飛ばす事態がここシューベトでも発生してしまう。

 

 

シューベト南西の峡谷・ドラゴンバレーに住む特に強力な竜種であるアンシエントドラゴンが、ここシューベトを襲撃しようとしているとの急報が届いたのである。

 

 

……まずは生き残れるかどうかを心配しないといけないなぁ。

この世界、割とハードモードかもしれない……。

*1
騎士のような職業軍人のこと。




転生アドリアン君「神殿長がいないから多分泉は使えなくなるな」
バベリア大陸の人達「神殿長を排除すれば多分泉を自由に使えるな」
大陸間での枯れた泉の有無にもよるかもしれませんが、どちらも一理ある考え方に思えます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。