チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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30話 泉で〇〇を受け取ろう(半強制)

俺は今も泉の縁取りに腰かけている。だが、どうやら夢を見ているらしい。

周囲を見渡すと、水が満ちた古代神マリーの泉と、復活しているマリーの森が目に入る。

 

そして、俺の隣には面識のない成人女性が座っていた。

女性は裸足で、民族衣装のような服とフードを身に纏っている。

彼女は整っていながらもどこかおっとりとした印象を受ける顔立ちで、神族としての特徴も備えているが、特に目を引くのは、エイリンと全く同じ文様を顔に持っている点だ。

加えて、彼女の瞳孔は白く輝いていた。

……この女性が、純血神族・古代神マリーということで間違いないのだろう。

文様から察するに、エイリンは古代神マリーの末裔だったのか……。

だからエイリンの魔力はマリーの泉との親和性が高かったのかもしれない。

 

俺は古代神マリーに挨拶をしようとするが、夢であるせいか声が出ない。

仕方ないので、古代神マリーに体を向けて頭を下げる。

その後、恐る恐る古代神マリーの表情を窺うと、彼女はどこか困惑しつつもそれ以上に嬉しそうにしているのが分かる。

怒っているとかそういう訳ではないのか、と少々だけど安堵する。

 

古代神マリーも特に言葉を発しないが、俺の右手に彼女の手を重ねてきた。

そして、彼女は触れ合っている手を通して俺に何かを流していき……その何かを流し終わった直後、意識が徐々に浮上していくのを感じた。

意識が完全に浮上しきる直前、脳裏にデルカル大陸にある残り2つの泉のイメージが浮かび、俺は夢から覚めていった。

 


俺は意識を取り戻し、現実のマリーの泉に戻ってきたことを確認した。

 

『アドリアン、目覚めたか。……体調は大丈夫か?』

 

「大丈夫だよ。でも古代神マリーは一体何を……」

 

フレアに返事をしながら古代神マリーが俺に何を渡したのかを俺は疑問に思いながら立ち上がる。

そのまま自分の体を確認してみたが、その直後に自分の体に異変が起こっていることを認識した。

 

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即座に魔力を感知されなくするリストバンドを今も装着していることを確認する。

続けて自分の胸に手を当てて集中し、自分の心にある内的世界から俺自身の魔力が漏れていないかも調べ、こちらもきちんと俺の中に収められていることを認識する。

 

嫌な予感を覚えながらも、これまでも状況確認に役立っていたミッションリストを覗いてみることにする。

まずクリア済みミッションに、「偉業達成:黒い魔力の完全浄化方法を確立しよう」というこれまでとは表記が異なるミッションがキラキラした豪華なウィンドウ枠で表示されている。

これまでのミッションクリアと同様に転生特典用ポイントも貰えているようだが……え、何このポイント量。

桁3つか4つぐらい間違えていないか?

これまでこの世界で集め続けたポイントの合計以上の値がカウントされているんですけど……。

 

バグってるんじゃないかというポイント量は一旦置いておき、そのままクリア済みミッションを確認していき……今回魔力が付与されている原因だろうミッションを発見できた。

そのミッションは「古代神マリーの加護を受け取ろう」と表記されていた。

うえぇ、やっぱりか……。

 

俺の体に付着している魔力をよくよく確認すると、エイリンの魔力と近しい波形であった。

つまり、この魔力が古代神マリーの魔力であり、加護なのはもう疑いようがない。

 

 

いけない。このままだと、魔力感知を防ぐリストバンドがない時は加護の魔力が魔力探知機に引っかかる。

 

大急ぎで精神を集中し、自分の内的世界に自前の魔力格納場所とは別枠となる古代神マリーの加護を格納するスペースを作り出す。

王立図書館にあった古書の記載から察するに、純血神族の魔力は純血神族自身の分身にして体の一部であるとも見做せる気がするので、あまり適当な環境に放り込めない。

先ほど見た幻想を元に健在だった時の古代神マリーの泉と森をイメージし、作り上げた加護格納用スペースに投影しておく。

貰った加護が俺の意志に従ってくれるか不安になりつつも、古代神マリーの魔力を操作してみたが、拍子抜けするほどあっさり加護の魔力は俺の内的世界の格納スペースに収まった。

こちらも王立図書館の書籍で確認した通り、神族から付与された魔力は、付与した本人から取り上げられない限り、魔力を与えられた者が自由にできるということだろう。

 

『アドリアン、落ち着いたか?私からはアドリアンの変化が分からなかったのだが……』

 

俺の状況がひと段落したと判断したフレアが声をかけてくる。

そうか、装備しているリストバンドの効果でフレアは古代神マリーの加護を感じとれなかったんだな。

俺は意識を失っている時に見た夢の内容と、古代神マリーの加護を受け取ったことを改めてフレアに説明した。

 

『ううむ……。古代神が加護を渡してきた原因は、黒い魔力の石の完全な浄化に成功したからとしか、私には思えないな……』

 

俺もそう思う。

マリー神殿にあった忍耐の部屋でも黒い魔力の石を利用した機能を使っていると予想されるので、黒い魔力の石の対処は古代神達にとって重大事だった可能性が高い。

そのため、黒い力ごと浄化をして見せた俺に対して、古代神マリーは加護を渡してきたのだろう。

彼女の意図が褒美か加護を通じた監視かまでは分からないが……いや、両方という可能性もあるか。

 

さてこの後どうするか……と言いたいんだけど、もう行動が固定されている気がしてならないんだよなぁ……。

 

『最後に見たイメージだな。デルカル大陸にあるモレルの泉とレフガトの泉を示した、と』

 

「そっちの2つの泉にも行ってね」ってことだよね……。

ミッションリストで「今すぐクリアできるもの」をソートしても、「古代神モレルの加護を受け取ろう」・「古代神レフガトの加護を受け取ろう」・「偉業達成:デルカル大陸の全ての古代神から加護を受け取ろう 達成率:1/3」ってミッションが新しく出ているし……。

特に最後のミッションは、黒い魔力の石の完全浄化達成には及ばずともこれまでのミッションとは一線を画す量のポイントが貰えるみたいだ。

でも、何かに巻き込まれそうな気がするから、できればスルーしたいなぁ……。

 

『アドリアン。気持ちは分からないでもないが、その願いが叶うか自分でも既に答えが見えているのではないか?私も付き合うから手早く済ませよう』

 

うん、分かってる。ただの愚痴だから。

ここで流してもまた招かれるだけだろうし。

古代神から加護を貰うのは人によっては名誉な上、悪いことではない筈なんだけど、正直戸惑いの方が強いんだよなぁ。

デルカル大陸でも魔女狩りが発生しているからデメリットもあるし。

はあ……。

 


俺はフレアに乗ってリアート村南東にある古代神モレルの泉を訪れた。

フレアには待機してもらい、荒地の奥にあるモレルの泉に近づいていく。

 

ふと、泉の縁取りを見てみると、巨大な黒い魔力の石がデデンと1つ置いてあるのを確認した。

同時に、マリーの泉にいた時にも感じた意識が俺に向けられているのを感じ取る。

……石の浄化を実演しろってことだよね、これ。

小さく息を吐きつつも懐から浄化剤を取り出し、黒い魔力の石に振りかける。

マリーの泉の時と同様、巨大な黒い魔力の石は一瞬でただの石へと変ずる。

 

直後、マリーの泉でも感じた魔力の波動による意識の断絶を感じる。

モレルの泉の縁取りに腰かけつつ、俺はその波動を受け入れた。

そのまま意識が暗転する。

 

 


夢の中でも俺は古代神モレルの泉の縁取りに腰かけている。

周囲を見渡すと、魔力水が満たされた古代神モレルの泉と、ごくごく少量の木々と草原が見受けられる。

過去のモレルの泉はこんな情景だったのだろうか。

 

加えて、俺の正面に神族の成人男性が佇んでいるのを確認した。

男性はシンプルなローブとフードで身を包み、長柄の武器を携えている。

彼は長髪・怜悧な印象を受ける顔立ちで、ルーカスと全く同じ文様が彼の顔に刻まれている。

古代神マリーと同様白く光る瞳孔も持っているので、彼が純血神族・古代神モレルということだ。

だが、古代神モレルの顔色を見ると、どうにも無表情で感情が窺えない。

ちょっと怖くなったが、立ち上がって古代神モレルに対してお辞儀をする。

 

俺の行動に対して古代神モレルは軽く頷き、武器を携えていない方の手を俺に向ける。

彼の手から俺に加護が受け渡されていき……受け渡しが完了した直後、一瞬で意識を浮上させられた。

最後の瞬間、レフガトの泉のイメージを俺の脳裏に残した上で。

 


俺は夢から覚め、現実のモレルの泉に戻ってきた。

俺の体に古代神モレルの加護であろう魔力が付与されているのを確認したので、古代神マリーの加護と同様に、内的世界にモレルの加護を納めるスペースを準備する。

スペースに投影するイメージは幻想で見たモレルの泉をベースにするが、ちょっと殺風景だったので、古代神モレルに少しでも心地よく過ごしてもらえるよう沢山のお花畑をイメージに追加しておく。

そして古代神モレルから貰った加護をたった今作った内的世界のスペースに納め、ここでしなければならないことは完了した。

 

それにしても、古代神モレルの顔の文様がルーカスと同じってことは、ルーカスはモレルの末裔だったんだな……。

ただ、モレルの泉には神官や守護動物がいないみたいだし、ルーカスが泉に魔力を貯めに行くのは危険度が高すぎる。

それに、魔女狩りがなくなった場合でも、エイリンが暮らすマリーの森でルーカスは過ごしたいだろうし。

 

『無事にモレルの加護を受け取れたようだな。何か、変わったことはあったか?』

 

フレアの問いかけに、ルーカスが古代神モレルの末裔であることが分かったことを伝える。

 

『血の繋がりが無い兄妹だが、双方古代神の末裔とは。だが、アドリアンの推測した通り、ルーカスがモレルの泉を満たすために活動するのは無理があるだろう。魔女狩りが起こっている上、周辺環境がまだまだ厳しいからな』

 

そうなんだよね……。リアート村はつくづく逆境続きだ。

自分の故郷であることを差し引いても、ヨハネスさんがリアート村の支援を優先したがるのも納得である。

まあそれは一旦置いておく。

今は最後の一つ、古代神レフガトの泉に向かおう。

 


フレアに乗って飛んでいき、無事見慣れた古代神レフガトの泉に到着した。

これまでと同じようにフレアには近くで待っていてもらい、現在も魔力水が満たされているレフガトの泉に近づいていく。

周りを見渡すと、近くの平岩の上に小さめの黒い魔力の石が置いてあるのが見えた。

石を視界に入れた瞬間俺に注目する意識を感じ取ったので、古代神の意図した通り、浄化剤で石の浄化を済ませる。

想定通り、魔力の波動を感じ始めたので、これまでと同様レフガトの泉の縁取りに腰かけて波動を受け入れ、意識を落としていった。

 


夢の中、周囲を見渡すと、現在と同様水の満ちたレフガトの泉と、周囲の草や木々が目に入る。

ただ、草木の植生が少々異なることから、これは恐らく古代神レフガトの肉体が健在だった頃の情景なのだろう。

 

そして、やはり俺の隣に神族の成人男性が腰かけていた。

男性は古代神モレルよりも少々装飾の多いローブとフードで身を包み、見覚えのある長柄の杖を手に持っている。

この杖は……そうだ、思い出した。

家の家宝として保管している、古代神レフガトが携えたと言われている杖だ。

 

彼の容貌はやや細面で古代神モレルよりは短めの髪、そしてどこか涼やかな印象がある。

また、これまで夢で会ってきた古代神と同様に、瞳孔が白く光っている。

一瞬神族が共通して持つ文様が分からなかったが、彼は両目の上瞼に沿う形で、アイラインのような赤い文様を持っていた。

彼が今もシューベトに恩恵を与え続けている純血神族・古代神レフガトに間違いないだろう。

俺は体を3人目の古代神に向け、これまでの古代神と同様、彼に対して頭を下げる。

 

古代神レフガトはゆっくり頷き、古代神マリーと同様自分の手を俺の手に重ねて加護の受け渡しを開始する。

ただ、彼の表情をみると、古代神マリーと同様喜んではいるが、同じくらい不思議そうにこちらを見ているような気がする。

どういうことだろう……?

疑問を解消する間もなく加護の受け渡しが完了し、意識が浮き上がるのを感じ取る。

ただ、夢から覚める直前、森のイメージがほんの一瞬見えたような気がした。

 


現実のレフガトの泉に戻った俺は、直ちに新たに付与された古代神レフガトの加護を納めるスペースの作製準備を始める。

イメージは当然レフガトの泉とその周辺環境だが、恐らくより馴染みがあるだろう夢で見た植生の方に合わせて格納スペースを整備する。

そうしてレフガトの加護も無事に心の内的世界内に納めることができた。

また、古代神同士でやり取りしたい時があるかもしれないので、加護の領域同士は行き来ができるよう心の内的世界内でルートを確保しておく。

流石に3つの加護の領域は自前の魔力を入れているスペースと完全に区切っているが……。

 

『アドリアン、無事に終わったようだな。……今日はもう帰るか?』

 

そうするよ。何だかどっと疲れた気がする……。

父上と母上に浄化剤完成を報告し、今後の予定を共有して後は休もう。

ああでも、加護の詳細をきちんと確認しないといけないから、今日の秘密基地での活動は加護の調査をしないと。

何にせよ、まずはシューベトに戻ろう……。

 

 

黒い魔力の浄化剤完成の報告を受けた父上と母上は喜びつつも俺を労ってくれたが、俺が消耗しているのを見て取ったらしく、「とてつもなく難しい研究に神経を使っていたのだから、しばらくゆっくりしなさい」と休暇を言い渡された。

消耗しているのは確かだけど、原因は研究ではなく古代神から加護を受け取ったことによる気疲れなんだけどなぁ。

まあいいや。

今日は秘密基地に行く時間まで何も考えないで休憩しておこう……。




転生アドリアン君は古い純血神族達の共通目標に対する手段を独自に確立してしまったため、
元々デルカル大陸再生計画における最重要のピースであることも合わさり、古代神から目を付けられました。
ただし、古い純血神族達の悲願達成への道筋をつけたのには違いないため、彼らに粗略に扱われることも基本的にはないでしょう。


おまけ 心の中の世界に格納された皆さんの反応

マリー「ここは、私の森……。この子はどうして魔力の扱いがこれほど卓越しているのかしら?」

モレル「彼はなぜ、戦闘の神である私の領域に大量の花畑を用意したのだろうか?花は嫌いではないが、理由が分からんな……」

レフガト「ふむ、驚くほどの再現率だ。それはそれとして、これ程精力的に動いているこの子が、霧の森には全く近づこうとしない理由を知ることができると良いのだが……」
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