チート転生アドリアン君 作:ブロンズ探検家
雷竜イメルから雷の勇者の話を聞いた翌日、俺とフレアは秘密基地経由で再びバベリア大陸のドラゴンバレーに訪れた。
遠目に岩石飛竜達がいるが……ちゃんと鉱石を集めてくれているみたいだ。
峡谷内の隅に金鉱石と転写石が積み上げられているのが確認できた。
フレアが飛竜達に鉱石を持っていくと声をかけた上で、鉱石の山を秘密基地入り口まで運んでくれたので、転生特典ポイントを消費して秘密基地内に倉庫を追加し、集めた鉱石を倉庫にしまっておく。
……こうしてせっかく鉱石を集めてくれているんだし、鉱石を回収に来たときはバベリア大陸の黒石窟でも黒い魔力の浄化剤をまいて少しずつ浄化しておこうか。
ちょっと寄り道をしたが、改めて、勇者の魔力が込められた碑石を目指すことにしよう。
『アドリアン、教皇の手の者を誤魔化すのはどうするつもりだ?手持ちのアイテムが充実して特典用のポイントも有り余っている現状、取れる手段は幾らでもあるとは思うが』
と、フレアが言ってくるので、以前気晴らしで遊ぶために獲得した「音・気配ごと透明になる衣」を2つ取り出す。
新しく獲得せずとも、これがあればまず俺達がバベリア町付近に来たと察知されないと思う。
姿隠しの衣をお互い装備すれば対策はこれでバッチリだ。
「姿を変えられる杖」と合わせて使おうかとも思ったが、透明化だけでも十分だろうという判断でもある。
『よし、お互い体が透明で見えないから注意して飛ぶぞ』
了解、と返事をし、俺を乗せたフレアはバベリア町方面に向けて飛び立った。
バベリア町付近を守る勇士達に全く察知されることなく、目的地の滝まで到着した。
フレアには待機してもらい、俺はイメルからもらった雷の勇者の剣を携え滝の中に泳いで入っていく。
滝裏の洞窟をそのまま泳いで進み、特に障害もなく簡単に岸辺に到着した。
小さな洞窟の奥に進むと、突き立てられた剣の文様が刻まれた碑石がそこにあった。
……碑石から確かに魔力を感じるな。それも、多数の人の……。
ただ、全ての魔力の波長が似通っているから、恐らく雷の勇者に連なる血縁者の魔力が集められているのだろう。
そうなると、この碑石は勇者の血縁者の墓標でもある可能性が高いのか……。
しばし無言で碑石に向かって祈りを捧げた後、改めて黒ずんだ勇者の剣を地面にある剣の差し込み口らしき場所に突き立てる。
碑石の文様が蒼く輝き、突き立てられた剣へ碑石に蓄えられた電撃属性の魔力が降り注ぐ。
魔力を浴びた勇者の剣は、黒い刀身に文様が浮かび上がり、剣の先端が稲妻のように輝き始めた。
雷の勇者の剣……雷竜イメルは「ライトニングブレード」と呼んでいたか、とにかく剣の復活に成功したようだ。
俺かフレアが剣に魔力を通すなり、あるいは鍔のあたりで魔力石を砕くなりして剣の先端まで魔力を通せば、雷竜イメルをどこにいても呼び出せるんだったな。
あまり活用しないかもしれないが、人手ならぬ竜の手が必要な時は力を貸してもらおう。
まずはフレアの元に戻ろうか。
バベリア町付近に留まり続けるのもよろしくないだろうし、一旦ドラゴンバレーまで移動しよう。
最後まで勇士達に見つかることなくバベリア大陸のドラゴンバレーまで撤収できた。
雷竜イメルの所にも顔を出し、ライトニングブレードを復活させたので今後召喚することがあるかもしれない旨を伝え、イメルから了承を貰っている。
『さて、まだ相応に時間がある。バベリア大陸で今日、できそうなことややりたいことはあるか?後は、アドリアンが今後どのようにバベリア大陸と関わっていくか、というのも気になるな』
その言葉に対し、フレアに今後の動きについて考えたいので待ってもらいたい旨を伝える。
まずはミッションリストを呼び出してバベリア大陸でできるミッションを優先するようソートし、気になるミッションを探していく。
……?いくつかのミッションが時限付きになっているな。
目星をつけたこの「決死隊に参加しよう」・「決死隊を支援しよう」とかもだ。
決死隊……これは以前シューベトに来た大陸渡りの行商人と……あとは物資輸送隊のトランさんから雑談時にちらっと聞いた名前だ。
確か、バベリア王国で権勢を振るう教皇セルビス氏を打倒するために結成された組織だったはず。
噂の範疇だが、セルビス氏への抵抗勢力の中では最も強いとも言っていたか。
ミッションリストに出てきているということは、結構重要な勢力なのかもしれない。
「決死隊に参加しよう」のミッションは分身とかを活用するなら可能だろうがそこまでする気は今はないので飛ばし、「決死隊を支援しよう」の方を確認する。
支援の方は歩合制ミッションという初めて見るタイプのミッションで、決死隊への貢献度によって転生特典用ポイントが溜まっていくという内容だった。
ふむ、セルビス氏に抵抗する勢力を支援すれば、魔女狩りの悪影響を抑えられるかもしれないな……。
でもこの「#年F月g日まで」の時限付きミッションがそこかしこにあるのは何故だろう……?
表示されたの日付に起きるミッションをフィルター機能で確認した時、俺は疑問が解けた。
現在はリストに表示されているだけだが、この日付だけにアクティブ状態になるミッションがあったからだ。
そのミッションは「教皇城での最終決戦に参加しよう」・「教皇城での最終決戦を支援しよう」となっていた。
……ミッション名から察するに、恐らく魔女狩りの決着が就くXデーがこの日になるということだ。
厳密にはバベリア大陸の、と枕詞が付くだろうが。
それでもこの日以降はデルカル大陸に教皇派の勇士が増援で来る可能性は一気に落ちるはず。
この想定が正しければ、魔女狩りの終結は予想期間内で割と早めになりそうだな。
とりあえずXデーまでにとある腹案用の浄化剤をきっちり用意するのは確定だ。
決戦日の腹案実行にはちょうどバベリア大陸で力になってくれる人ならぬ
予想を外したら無駄な動きになるからイメルにちょっと申し訳ないけど……。
決戦での対応は置いておき、改めて今後どう動こうか考えよう。
全く予想していなかった偉業達成により、特典用ポイントに不足することは然う然う起こらない。
浄化研究期間で得た各種能力やアイテムを駆使すれば、デルカル大陸での活動をメインにしつつ、バベリア大陸でもある程度活動することは容易いだろうし、足りなければ追加で異世界のアイテムや技能を取ればどうとでもできる。
ただ、神殿長や古代神の後継となる神族と試練前に会うのを控える方針はそのままにするつもりだけど、興味があるかないかの2択なら、やっぱりあるんだよなぁ……。
後継の重要度が高いだろうデルカル大陸では古代神の後継と関わる可能性は始めから完全に捨てているけど、
デルカル大陸ほど後継の比重が重くないと予想されるバベリア大陸の後継の方なら、大陸を巡るだろう試練が開始した後ならちょいちょい支援してもいいかも、なんて考えが頭に過ぎる。
加えて、そこまでやるならいっそ転生特典用ポイントをもっと積極的に使って同時にデルカル大陸をテコ入れしていく案も胸の中で膨らんでくる。
再び転生特典で作物なり肥料なりを呼び出したとしても試行錯誤に時間がとられるから、投入タイミングを調整していけば、バベリア大陸での魔女狩り終結までは作物や肥料を呼び出した影響が大きくならないようにすることもできると思う。
ただ、俺の行動によるこの世界への影響度がこれまでより上昇する分、ジーヴ村の一件のように何らかのバタフライエフェクトは覚悟する必要がある。
今確認した教皇城での決戦日がずれるなんて困った事態などもあり得るかもしれないし、俺が全く想定できていない状況に陥る可能性は相応に高くなるだろう。
別の行動方針としては……そうだな、これまでの行動方針を守りつつ、バベリア大陸での支援活動は片手間程度に抑えるという所か。
そしてバベリア・デルカル大陸での魔女狩りが終わった後、状況をみて俺の手が必要そうな所にテコ入れをしていく感じかな。
この場合はイレギュラー要素が小さくなるので、俺が積極的に動くよりも状況の流れを確定させやすい。
こちらの案でのバベリア大陸での活動は、俺の腹案をイメルに実行してもらう教皇城での決戦タイミング以外では、決死隊の支援ぐらいに絞る形になると思う。
まあ積極的にポイント活用する場合もバベリア大陸の後継の方が動き始めるまで大して動けないだろうから、それまでは大陸内の地理確認なり情報収集なりを直接自分で行っておく感じになるのかな……?
……取れる手段が多すぎてちょっと思考がばらついてるな。
一旦整理しよう。
これまでの方針をベースに動く場合は、バベリア大陸での活動は決死隊の支援と教皇城決戦時の支援に絞り、魔女狩り終了後に状況を見て転生特典ポイントを使い、両大陸の状況を見て(おそらくデルカル大陸になるだろうけど)必要な所にテコ入れをする案だ。
もう一つの案は、魔女狩り終了前から積極的にポイントを使ってバベリア大陸・デルカル大陸で追加で活動することだ。
こちらの案を採用する場合は前案の支援活動に加えて、デルカル大陸での追加の環境整備・バベリア大陸で神殿長の後継となる神族の支援を合間合間に差し込んでいく予定だ。
後継の支援は試練開始後になると思うけどね。
じっくり考えた結果、俺はバベリア大陸での活動方針をフレアに伝えた。
【これまでの方針を維持し、バベリア大陸では間接的な支援を行う】
【これまでより積極的に動き、バベリア大陸ではある程度直接的にも活動する】
ルート選択があるRPG。一本道のRPG。
それぞれの良さがあると思います。