チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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3話 城への避難と転生特典解放

アンシエントドラゴン襲撃の報を受け、俺は勇士達の護衛を受けつつ領地で最も防備の厚いシューベト城に速攻で避難させられた。領主の一人息子である以上残当の扱いと言わざるを得ない。

現時点の自分ではこの緊急事態に対応できないし、むしろ邪魔になるだけなのは分かりきっている。

ただ、エステル母上を館に残してしまっているのがもの凄く気がかりだ。

後から避難させるとリーガル父上は言っていたが、弱りきった母上を館から移すことができるとは思えない。父上は何か考えがあるようだったが……。

 

という訳で、現在は貸していただいた城の一室にいる。

母上を残してしまう申し訳なさに加え、先んじて避難したことへの後ろめたさを順次避難中であるシューベト領民にも感じてしまうが、どうにもできないことなので無理矢理心に棚を作り、今の自分でも確認できることを進めることにする。

 

それは6歳になって解放された残りの転生特典についての確認である。

 

この世界とは別の世界にある能力や物品をポイント消費で取得できるという特典の内容は概ね自分の想定通りで、某竜を探すRPGの魔法や剣技を覚えたり、ファンタジー小説に書いてあるような装備や物品等を呼び出したりできるのは間違いないさそうだ。

頭の中にリストが浮かぶので、そのリストにフィルターをかけたり検索したりしながら欲しいものを選ぶ感じである。

ただ、SF作品出典の巨大ロボットなどはどれだけリストを検索しても見つからなかったので、

転生先のこの世界に明らかに合わなそうものは呼び出せないという認識で良さそうだ。

 

また、嬉しい想定外として前世の現実世界にあった物品は自分が想像できるものはほぼリスト内にあったので、この異世界でも漫画やゲームに興じるなんてこともできることが分かった。

前世の趣味をこっそり楽しむための秘密基地みたいな所をどこかに作れればいいんだけどな。

領地の見回りとかにかこつけて場所探しとかしたいなぁ。もしかしたら自室に秘密基地を作る能力なんてのもあるかもしれない。

まあ、まずは生き延びないとどんな夢を持っても画餅になってしまうけど……。

 

 

気を取り直してこの特典を使うために必要なもの、つまりポイントの取得方法を確認した所、

何というかよくあるソシャゲのミッションをクリアする形式だった。

 

ミッション形式は大きく分けて2つあり、1つは毎日・毎週更新されるであろうデイリー・ウィークリーミッションで、取得できるポイントは抑え目だが、ミッション内容が「一定時間肉体を鍛える」・「〇〇の学習を進める」など、とっつきやすい物ばかりが揃えられていた。

 

もう一つが通常ミッションに区分けされているが、こちらはちょっと数えきれないくらいの項目がずらっと頭の中にリスト化されているのが分かる。

「剣術大会で優勝する」・「探検家資格を取得する」など色々なミッションがありあっちこっちに目移りするが、高精度のソート・フィルター機能も併設されているみたいで「領主を継ぐ」「勇士になる」などのイメージを浮かべると関連するミッションを取り組みやすいと思える順に勝手に抽出してくれる。

 

「今の自分でもできること」をイメージしても、流石に数は少ないがちゃんとミッションがソートされて頭に浮かんでくる。このイメージなら、城への避難時に偶々持ってきていた「植物図鑑を読破する」とか「シューベト山の山頂に咲いた青い花を採取する」なんてミッションがピックアップされている。

山の方はご丁寧に目的地までのマップまで付いている親切設計だ。

とはいえ、この非常時に今から山へハイキングに行くなどと言い出したら正気を疑われるのは間違いないな……。

 

それにしても、転生前に遊んでたゲームのイメージが特典形式に反映されてるんだろうか?

分かりやすいから別にいいんだけどね。

 

これで最後の特典を確認できたが、ポイント取得が必要である以上この特典で今すぐ現状を打開するのは正直難しい。この世界でも特に強力なドラゴン種と言われるアンシエントドラゴンに対抗できそうな強い能力や装備は必要ポイント数が当然のように多い。戦闘回避用のスキル取得を目指す方がまだ現実的である。

 

「今の自分でもできること」でソートしたミッション内にもアンシエントドラゴンをどうこうするものは影も形もない以上、自分が起点となって現状を打破するのは不可能と判断していい。

そうなると、状況の急変に対応できる可能性を少しでも上げるべく、この部屋で出来そうなミッションをこなすしかないか……。正直先行きの不安で胸いっぱいになっていて、特典の幸運がなんか上手いこと発揮されないかな、なんて事も思ったりするが、まだやれることがあるのに幸運を祈るのも違うからなぁ。幸運に賭けるのはやれることをやった後だ。

 

 

そんな訳で避難1日目、考えを整理した俺は部屋に籠って寝る直前までミッションをこなしている。持ってきた読みかけの植物図鑑を速読で読み終えた後にヘクター教官の教えをベースに訓練をしているが、訓練の量はともかく基礎となる訓練内容は体を鍛え始めた時とそこまで差がないのに、明らかに身体能力の伸びが跳ね上がっている。

これも才能や成長補正のおかげなのかな?

少なくとも身体能力の制御を重視する方針は間違っていなかった。

ポイントが溜まって魔法とかを覚えることができたら、魔法の訓練も同じように成長できるのか調べてみたい。

訓練後は着替えた後すぐに床に入る。状況の変化で心が疲弊しているので今日は寝付けるか心配だったが、訓練での疲労のおかげかゆっくりと眠りに落ちていった。

 

 

避難生活の2日目、全く想定していなかった事態が起こった。

エステル母上がシューベト城に避難してきたのである。それも復調した状態で。

 

直ぐに母上への面会を希望し、短い時間だが母上に会わせてもらった所、

万全とは言えないが意識はしっかりしており、支えがあれば歩くこともできるようになっているとのこと。

ちょっと涙ぐんでいるのを自覚しつつもどうやって回復したのかを母上に尋ねると、なんとリーガル父上が治癒効果のあるアクセサリーを入手し、それを母上に送ったそうだ。ただ、父上がどこで入手したのかは答えてくれなかったという。

件のアクセサリーを見せてもらった所、その白色クリスタルからは確かに何らかの力のようなものが渦巻いているようだった。

 

超常の力が込められている上、出所を伝えない、いやおそらく伝えられない物品……。

父上、表に出せない類いの取引をしてこれを手に入れたんだな……。

 

父上がどんな無茶なことをしたのか正直怖い所があるが、以前のように頭を撫でてくださる笑顔の母上を見たら気にならなくなってしまう辺り、我ながら現金なものである。

 

病み上がりの母上の負担にならないよう程よいタイミングで面会を切り上げ、部屋に戻って避難1日目と同じくミッションを進めていく。今日は寝つきが昨日より良くなりそうだ……。

 

 

避難生活3日目、とうとうアンシエントドラゴンがシューベトに仕掛けてきた。

シューベト城はシューベト町のすぐ南西に位置しており、幸か不幸か借りている部屋の窓はシューベト町の方向を向いていたので、おそらく才能によって強化されている視力とごく僅かなポイントで取得できた小型望遠鏡の合わせ技で町の様子を今は見ているが、

黒く輝く鱗に覆われた前世の西洋ドラゴンそのままの偉容がこうして現実に現れて町を襲う光景は率直に言って悪夢そのものである。

 

ドラゴンでもごく若い個体なら勇士達が連携すれば戦えるのかもしれないが、襲撃を仕掛けてきた成体と思われる巨大な個体相手にはそうもいかない。

防衛を務めるシューベト勇士の一隊は竜尾の一振りであっという間に壊滅させられ、続け様に飛び上がったドラゴンは炎の吐息をシューベト町に叩きつけ、家屋を次々に焼き払っていく。

 

尾の一撃で体の骨を砕かれ、恐怖と苦痛の表情を浮かべたまま死亡した勇士を望遠鏡越しについ見てしまい、強い吐き気を覚えてしまうが何とか堪えつつ絶望的な戦況を注視する。

……!!まずいっ!?リーガル父上が前線に出てきている!!いやここで踏ん張らないとシューベトが壊滅するから、勇士達を鼓舞するために前に出るのは領主としては正しいんだけど!?

 

慌ててドラゴンの狙いを確認しようと視線を向けると、どうもドラゴンの様子がおかしい。

攻撃を中断して町の東を見つめている。

 

ってアンシエントドラゴンと同じぐらい巨大な赤いドラゴンが飛来して、そのまま町を襲うドラゴンを攻撃したぞ!?

 

赤い竜からブレス攻撃を受けたアンシエントドラゴンはブレスが直撃する寸前で退避に成功し、乱入した赤いドラゴンを警戒している。

 

飛来した赤いドラゴンはシューベト町の門前に陣取りアンシエントドラゴンを睨み付けているが、何とリーガル父上が赤いドラゴンに近づき、何事か話しかけている。

今の状況と父の口元の動きから、町を守るための助力を依頼しているのは分かるが……。

 

あっ赤いドラゴンが頷いた!本当に了承してくれたの!?

ファンタジー世界ならドラゴンって種族としてのプライドが高いだろうから断られると思ったのに!?

 

直後赤いドラゴンはアンシエントドラゴンに飛びかかり、激闘が始まった。

双方がブレスをぶつけ合い、爪牙を突き立て合い、巨大な尾を叩きつけ合う。

黒い竜の首筋に牙が食い込んだと思えば、赤い竜の脇腹が爪で抉られる。

2体の巨大な竜による戦闘によりシューベト門前もどんどん陥没していき、無惨な状態となっていく。

 

日が暮れる頃まで続いた大迫力の怪獣バトルも遂に終わりを迎え、双方重症ながらも命には届かずに決着となった。

アンシエントドラゴンが血を流しながらドラゴンバレー方面に撤退することで戦いの幕は降りる。

そして赤いドラゴンも役目は済んだとばかりに踵を返し、傷だらけのまま東へと飛び去っていった。

 

自分が何かをした訳でもない。だが、それでも生き残った……。

集中して戦闘を見続けていたことによるストレスと生き延びた安堵が混ざっていて、体が酷くぐらついている。

小型望遠鏡を仕舞い込んだ後はベッドに倒れ込み、あっという間に意識を手放した。

 

ちなみにこの騒動の後で知ったが、町の守ってくれた赤いドラゴン……強力な炎熱を操るマグリックドラゴンは、バベリア大陸の神殿長に仕える神官であり、守護動物とも呼ばれている存在なんだとか。

守護者とかガーディアンじゃないんだ、なんてどうでもいいことを考えたりもしたが、大陸を飛び越えてシューベトに駆けつけ、父や勇士の方々はもちろん城に避難した自分や母上を含めた皆を守ってくれたあのドラゴンに心から感謝しておこう。

 

……町と領民に被害が出ているのに、あの赤いドラゴンはかっこよかったとか、自分を背中に乗せて飛んでくれないかなとか思ってしまった俺はちょっと不謹慎だよな……。反省しよう……。




魔女の泉シリーズでは、主人公が行う鍛錬の効果は現在の能力×n%で決まるため、自分の能力が上がれば上がるほど鍛錬効率は上昇します。
本作主人公である転生アドリアン君も上記システムの恩恵を受けております。
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